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2022年12月12日 17:27 更新

【医師監修】50歳で妊娠・出産できるのは何%? 妊娠可能年齢と高齢出産のリスク

晩婚化が進み、40代後半に出産する女性もそれほど珍しくなくなってきました。しかし50歳以上となるとまだまだ稀。加齢とともに妊娠することは難しくなり、また妊娠期間中や出産によるリスクも低くありません。ここでは50歳以降の妊娠・出産の可能性について詳しく解説していきます。

50歳での妊娠・出産はどのくらいの割合?

50代での妊娠は可能か考える女性
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ときどきニュースになるアラフィフのタレントや歌手の出産。こうした話題を見聞きすると、「50歳になっても子供が産めるのでは?」と思う人もいるでしょう。

特に、50歳近い年齢で、今から妊娠・出産にチャレンジすべきか悩んでいる女性や、もう一人子供が欲しいと考えている女性などにとっては、こうしたニュースは朗報かもしれませんが、実際のところはどうなのでしょうか。

50歳以上の女性から生まれた赤ちゃんは0.007%

まず、50歳を過ぎて妊娠や出産をしている人はどれくらいいるか、見ていきましょう。

50歳以降の出産については、厚生労働省がこんな統計を出しています。平成30年の人口動態統計にある「母親の年齢別でみた出生数」で、これをみると2018年は全国で68人の赤ちゃんが50歳以上のママから生まれています。

2000年以降、その数は増えていますが、出生数の総数は2018年は91万8400人なので、50歳以上のママから生まれた赤ちゃんが全体に占める割合は「0.007%」。かなり少ないことがわかります[*1]。

実は35歳以上なら「高齢出産」

同じ50代でも、若々しい女性もいればそうでない人もいます。
しかし、体や心の健康・見た目の若さは日々の生活や食事・運動などの努力である程度保つことができますが、どうしても年齢に抗えないものもあり、その一つが「子供を産むこと」です。

高齢出産というと40代の出産をイメージする人もいるかもしれませんが、実はそれよりずっと若く、日本産科婦人科学会では「35歳以上で初めて出産(初産)する人」を “高年初産婦” と定義しています。

2人目以上の場合、いつからを高年齢とするか特に決められていませんが、出産回数にかかわらずおおむね35歳以上の妊娠ではそれより若い場合と比べてさまざまなリスクが高いので「ハイリスク妊婦」とされています。つまり「子供を産む」という点からしたら、30代半ば、40代でもすでに高齢なのです。

一方で、女性の出産年齢が高くなっているのも事実です。

近年、結婚や出産が遅くなっていることが指摘されていますが、内閣府の「少子化社会対策白書(令和元年版)」によると、年代ごとの女性の出産年齢のピークは、1975年は25歳、1990年は28歳、2005年と2017年は30歳。さらに、2017年では30歳以上での出生率が増えています[*2]。初婚年齢が上がっているのに比例して、出産年齢も徐々に上がっています。

その背景にあるのは、若い女性において、仕事と妊娠、出産、さらにその先にある子育てとの両立が難しいという現状でしょう。

50歳の妊娠・出産が難しい2つの大きな理由

50歳の妊娠が難しい理由について医師より説明を受ける夫婦
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50歳での妊娠、出産が難しい理由は、大きく2つあります。
一つが卵子の問題、もう一つが女性の体の問題です。

理由1|高齢になるほど卵子の質は低下

一般的に、高齢になるほど妊娠しにくくなるといいますが、それは「卵子の質」が高齢になるほど低下するためです。そのことを示した研究があります。

アメリカのCDC(疾病予防管理センター)が行った研究ですが、不妊治療中の高齢の女性に自身の卵子を用いても出産に至る確率は低いままでしたが、こうした女性に若い女性(ドナー)の卵子を移植すると、出産できた確率が上がったのです[*3]。

これは、加齢による妊娠・出産力の低下は、体の老化というよりもむしろ卵子の老化による質の低下の影響を大きく受けていることを表しています。

卵子の元になる細胞のことを卵母細胞といいますが、これは母親の胎内にいるときに作られ、その後、新たにできることはありません。

この卵母細胞は年齢とともに減っていくだけでなく、質の低下も起こってくることが分かってきました。年齢の高い女性の卵母細胞ほど卵子に成長するときに問題が起こりやすく、妊娠に結びつきにくい卵子ができてしまうのです。

理由2|婦人科疾患が増えて妊娠しにくくなる

もう一つの理由は、年齢が上がると子宮筋腫などの婦人科疾患にかかる割合が増えるということ。こうした病気があると妊娠しにくいことが分かっています。

例えば、子宮筋腫が大きくなると、筋腫がじゃまになり受精卵の着床やおなかの赤ちゃんの成長を阻害してしまうことがあると言われています。また、本来は子宮内にあるはずの内膜組織が子宮以外の場所にまでできてしまう子宮内膜症では、内膜組織がくっついてしまうことで卵管の動きが鈍くなるため、卵子の移動が妨げられます

子宮筋腫や子宮内膜症では、上記の理由以外にも女性ホルモンのバランスの乱れなども伴うため、総合的に妊娠につながりにくいとされています。

20代前半と比較すると40代後半の自然妊娠率は20分の1

では、年齢を重ねるとどれくらい妊娠しにくくなるのでしょうか。

自然妊娠する率(妊孕率)を分析した海外のデータを見ると、
20代前半を100%とすると、
・30代前半:80%後半
・30代後半:70%程度
・40代前半:40%程度
・40代後半:5%程度

と50歳に近づくと急激に確率は下がります[*4]。

早い人で40代前半、遅くても50代後半で閉経

50歳での妊娠を考えるときには、「閉経」も壁になります。

日本産科婦人科学会によると、閉経とは「月経が永久に停止した」状態のこと。日本人の場合、早い人では40代前半、遅い人では50代後半に閉経を迎えます。閉経を迎えると、排卵や排卵に必要な卵巣の働きが止まるため、妊娠・出産はできなくなります

ただ、この閉経について、正しく理解していない女性も少なくないようです。
そもそも、同学会では、「月経が来ない状態が12ヶ月以上続いたときに、“1年前を振り返って” 閉経としている」としています。そのため、今現在、自分が閉経しているかどうか知ることは難しいのです。

自分は閉経したと勘違いした結果、望まない妊娠をしてしまうケースもないわけではありません。実際、厚生労働省「衛生行政報告例(平成30年度)」によると、毎年十数件、50歳以上女性が人工妊娠中絶手術を受けています[*5]。

その理由はさまざまだと思われますが、50代で妊娠する確率は限りなくゼロに近くても、生理があれば絶対に起こらないわけではありません。50歳代でも閉経前であれば、予期しない妊娠を防ぐためには避妊は大切です。

50代で妊娠を望むときにやるべきこととは?

ここまでで50代での妊娠・出産はかなり難しいことを説明しました。それでも子供を望むのであれば、なるべく早く産婦人科医に相談を。自然妊娠の確率がかなり低いため、不妊治療を考える必要があります。

1日でも早く専門家に相談を

体外受精や顕微授精などの生殖補助医療(ART)の進歩は著しく、今や年間6万人近い子供たちが不妊治療によって生まれています[*6]。

その数は年々増加しており、こうした不妊治療によってなかなか子供に恵まれなかった夫婦も子供が授かるようになったのも事実で、高齢出産が増えたのは、生殖補助医療の向上により妊娠率が上がったという考え方もできるでしょう。

生殖補助医療には、卵巣から卵子を採取して、体外で精子と受精させ、数日後に受精卵を子宮内に戻す「体外受精」、この受精の過程を顕微鏡を用いて行う「顕微授精」などがあります。
もちろん、こうした生殖補助医療の成績も若い人のほうが高くなります。

日本産科婦人科学会の報告によると、生殖補助医療を行った際の30歳前後の生産率(赤ちゃんが生まれる率)は約20%ですが、40歳を過ぎると10%を下回り、45歳をすぎると1%以下となります[*6]。

50歳以上の治療成績を見ると、2017年の治療数は563件で、妊娠まで至ったのは4件。生産数(出産数)はたった1件でした。つまり、治療を受けても赤ちゃんが生まれる確率は0.2%です[*6]。

50歳で治療を始めたとしても、1回の治療で妊娠、出産にまで結びつく可能性は高くありません。しかも、治療の回数を重ねるほど年齢は上がるため、さらに妊娠しにくい状態になるというジレンマをかかえることになります。

妊娠できたとしても、妊娠中に起こる合併症や周産期死亡などのリスクも高くなります。
50代での妊娠を望む場合は、それらをきちんと理解した上で、 出産後のプランも踏まえて治療に臨むことが通常よりもさらに大切になってきます。残念ながらうまくいかなかった場合の治療のやめどきなども、夫婦で話し合っておきましょう。

まとめ

50代の妊娠・出産はとても稀
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晩婚化にともない、出産の高齢化も進んでいるなか、40~50代での妊娠や出産の話題が報道されると、アラフィフの自分でもまだ大丈夫と思うかもしれません。しかし、これはとても特殊かつ稀なケースで、子供を産む力が年齢とともに急激に低下することは事実です。

それでも、どうしても赤ちゃんがほしいのであれば不妊治療という選択肢も。この年代で子供が欲しいと思ったら、一日も早く専門家に相談してみましょう。

(文:山内リカ/監修:浅野仁覚先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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