お酒や●●まで! ヨーロッパの子育て方法が日本と真逆で衝撃的だった

お酒や●●まで! ヨーロッパの子育て方法が日本と真逆で衝撃的だった

歴史エッセイストの堀江宏樹さんがお届けする江戸時代の子育て最終回! 今回は、17~19世紀のヨーロッパではどのような子育てだったのかをお届けします。


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今回は江戸時代の日本と、同時代のヨーロッパの子育てを比較してみてみましょう。

当時のヨーロッパでは、身分に関係なく教育に罵声とムチは必須だと考えれられていました。江戸時代の日本とは正反対ですね。
そもそも18世紀末になるまで、ヨーロッパでは子供とは「不完全な大人」としか考えられていませんでした。だから家畜をしつけるのと同じ感覚で(!)叩いたり怒鳴ったりしていたのです。

当時のヨーロッパでは、医療知識があまりなかった!?

江戸時代といえば17世紀~19世紀後半に相当するため、その頃のヨーロッパやアメリカといえば、すでに江戸時代の日本以上に医療知識があったようなイメージがあります。しかし……19世紀も後半になるまで、病気の原因となる細菌やウィルスの存在は、当時の文明先進国の欧米ですら気づかれていませんでした。要するに常識のベースが現在とはまるで違うのです。

19世紀半ばのイギリスでは、死人を触った手を洗わずに赤ちゃんを触ると、「なぜか」病気になって死んでしまう率が高くなるようだから、止めてみないかと提唱した医師が「バカか」と嘲笑された記録すら残っています(ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史』)。
同じく19世紀半ばのアメリカでは、六ヶ月の通信教育を受けると医師免許が与えられることもありました(William Bynum『医学の歴史』)。

ある意味、現代に子育てできることはある意味、本当に幸せだといえますね……。そもそもヨーロッパでは教育の常識が中世以来、ちょっとおかしな方向にいってしまっているところがありました。

現代でも人気「スワドリング」発祥はヨーロッパから

たとえば現代日本でも、赤ちゃんをおとなしく眠らせるための「おくるみ」の方法として、「スワドリング」なるテクニックをご存知の読者も多いかもしれません。

ややタイトに巻くため、まるでママの腕に抱かれているような感覚が赤ちゃんにはあり、安心感を与えられるのだそうですが……中世から18世紀ごろまでのヨーロッパの赤ちゃんは往々にしてエジプトのミイラのように身動きすらできないほど強く、包帯でぐるぐる巻きにされていました。

たしかに乳幼児は好奇心が旺盛です。危ないものに触れるリスクを下げるには、動かないように固定しておくのが一番! との意図でしょうが、限度というものがあります。中世のような過剰なぐるぐる巻きは適切な処置とは思えません。

また、理由のよくわからないことで赤ちゃんが泣いたりしはじめると、お酒やアヘン(麻薬)が入ったミルクが与えられ、強制的に静かにされる……なんて恐ろしいことも、ごくフツーに行われていました。

18世紀後半になって、哲学者のジャン・ジャック・ルソーが当時の教育上の常識に対して「危ないよ!」と教育論『エミール』で反論。

その後、ようやく、子供のための子供服がデザイン上から考案される(それまでは大人の洋服を、サイズを小さくして子供にも着せていた)……にいたるのでした。それまでは実は子供服すら、まともなものがなかったのです。

知育第一主義が、今のパパとママを苦しめる元凶

医療や科学、そして教育にまつわる技術・知識の「常識」は17世紀ごろからゆるやかに、そして18世紀~19世紀頃にかけて一気に、欧米を中心として変わりだしました。そして、その結果が現代日本の我々の生活にも影響しているということです。ある意味、江戸時代の教育以上に……。

日本の場合は、開国・文明開化という大きな社会変化を受け、教育の常識も変わりました。親と子の上下関係をわからせることが、子育てで一番大事で最初にすることであり、学問などは後回しで十分。そんな認識が江戸時代の教育の基本中の基本でした。
それが現代では(その手のマナー・道徳教育がおこなわれていないとはいいませんが)、どちらかというと、ヨーロッパ・アメリカの教育システムにありがちだった知育第一主義が教育のベースになった感はあります。

良いこともありますが、その結果、子供たちは○歳になれば、こういうことが出来るようになっている「ハズ」と一元的に管理されるようになり……そのハードルを我が子が超えられなかった場合、親たちは自分の教育能力不足を感じ、大いに悩むという事態にもなりました。

かつては元気に産んで大きく育てられれば、ただそれだけで子育ては大成功だとされてきたのとは大違いです。息苦しさを感じてしまうママやパパが増えるのもうなずけます。しかし歴史を通じて考えれば、現代日本のママやパパたちほど子供たちのことを強く想っている人は少なかったと筆者は考えています。

「誠意をもって考えれば、目的にぴたりと合致しないまでも、大きな見当違いにはならない(略)。親子の心というものは自然と通い合うものだ」。

江戸時代の教育のエッセンスは、教育書『養育往来』のこの部分に言い表されているように思います。

あれこれ悩むのも、わが子を想う気持ちがそれだけ強いからこそ。
江戸時代の教育も細かく見ていけば、そのすべてが理想的だとはいえないところもありますが、江戸時代の親たちのように「なんとかなるさ」とドーンと構えてみる勇気が、悩める現代のママには一番必要なのかな、という気がします。
実際、そうやって大きくなったご先祖様たちがいてこそ、われわれが現代という時代を元気に生きているのですから……。

(C)竹内摩耶
この記事の専門家
歴史エッセイスト・作家 堀江宏樹
1977年生まれ、大阪府出身。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。大学在学中からフリーランスライターとして文筆活動を開始。『仰天! 歴史のウラ雑学 後宮の世界』(竹書房)で作家デビュー。性別を超えた独特の論調で、幅広いファン層をもつ。2016年秋発売の『恐い世界史』(三笠書房)が現在ヒット中。好評近著に『乙女の真田丸』(主婦と生活社)、『三大遊郭』(幻冬舎)。最近の文庫化に『愛と夜の日史スキャンダル』『乙女の日本史 文学編』など。

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