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2020年07月01日 17:04 更新

中高生になっても地域で育児をサポートする「杉並区」の支援体制

引っ越しを考えたとき、転居先は何を基準に選びますか? 共働きで子育てをしていくなら、家賃や勤務先へのアクセスだけで選ぶのは少しもったいないですよね。子育てに関する市のサポート体制や、街全体として育児がしやすい雰囲気なのか等も、検討する上で重要ポイントになります。今回は、子育てしやすい街として人気の杉並区を調査しました。

杉並区ってこんなところ

善福寺川緑地

杉並区は東京都23区の西側に位置し、渋谷区や世田谷区などと共に「城西地区」と呼ばれているエリアです。面積は34.06平方キロメートルあり、23区の中では8番目に広い区となっています。JR中央線、東京メトロ丸の内線、京王井の頭線、西武新宿線など交通手段が豊富なため、都心へのアクセスもよく通勤に便利です。また、ファミリー向けの住宅地として開発されてきた経緯もあり、豊かな緑や川がある子育てがしやすい街として昔から人気があります。

杉並区は、アニメ産業が盛んです。全国に622社あるアニメ制作会社のうち、約2割強にあたる138社が杉並区に集まっています(平成28年現在)。区内には「杉並アニメーションミュージアム」もあり、日本のアニメの歴史を学んだり、アニメ制作の過程を体験したりすることが可能です。
人気アニメの企画展やさまざまなワークショップは無料開催で、大人から子供まで楽しむことができます。また、アニメライブラリーには幼児向けアニメも多数用意されているので、親子連れで気軽にアニメを満喫できる、近隣お出かけスポットとして人気があります。

杉並公会堂

杉並区は「音楽の街」としても有名です。区が「日本フィルハーモニー交響楽団」に練習会場の確保協力などの支援をすることにより、日本フィルは杉並公会堂での公開リハーサル、区役所のロビーコンサート、地域の小中学校で行われる出張音楽教室、保育園や高齢者施設での出張コンサートなどを開催するという友好提携を結んでいます。それにより、区民がより質の高い音楽に触れる機会を数多く持つことが可能です。子供のころから本物の音楽に触れて身近に感じることは、とても貴重な経験になるでしょう。

下高井戸おおぞら公園

区内に300を超える都立や区立の公園があるのもうれしいポイント。川沿いの桜が美しい「善福寺川緑地」、バーベキューやサイクリングが楽しめる「和田堀公園」、デイキャンプができる「井草森公園」、アスレチックのような大型遊具と芝生広場が人気の「下高井戸おおぞら公園」など、子供と一緒に遊ぶのに最適な場所がいっぱいです。

杉並区は交通アクセスの利便性だけでなく、子供を育てていく上で優れた環境が整っているため、ファミリー向けの住宅地として人気が高いエリアとなっています。

杉並区の魅力を徹底調査!

待機児童の解消に全力で取り組む区

都内では「保育園に子供を預けたいのに入れない」「子供を預けられないから、働けない」という切実な声をよく耳にするのではないでしょうか。杉並区も数年前までは同様の状況でした。しかし、区民のニーズに応えるため「すぎなみ保育緊急事態」を宣言し、本格的に待機児童解消に取り組みはじめたのです。区の施設等を活用して徐々に保育園を増やしていき、2018年度には認可保育所が147ヶ所、定員数12,080名まで拡大されました。その結果、翌年度の認可保育園入所申込者は4,147名でしたが、2年連続で待機児童は0(ゼロ)です。希望するすべての子供が認可保育所に入所できる環境を整え、保育の質の確保や障害児保育等の多様な保育サービスの充実に取り組んでいます。

中学生・高校生になっても地域で育児サポート

杉並区では幼児期までだけでなく、中学生、高校生になっても地域ぐるみで育児をサポートしていく体制を目指しています。一時保育など、有料の子育て支援サービスに活用できる杉並子育て応援券や15歳まで続く医療費助成などの金銭的支援だけでなく、さまざまな親子イベントやこども食堂など、親だけが育児を頑張らなくてもよい雰囲気があるのがうれしいですよね。また、子供たちが将来の夢を描いたり、希望を抱いたりできるような次世代育成にも力を入れています。地域から集めた寄付金で「次世代育成基金」を創設していて、その基金を海外留学のサポートに使ったり、豊かな自然やスポーツなどでさまざまな交流・体験などの活動を支援したりしています。

杉並子育て応援券が嬉しい! 子育てしやすい街「杉並区」のサポートとは?

(1)杉並区特定不妊治療費助成

「東京都特定不妊治療費助成事業」の承認決定を受けている夫婦で、杉並区の基準を満たしている場合に限り追加助成が行われます。特定不妊治療にかかる医療費から東京都の助成金額を引いた実費額のうち、治療1回につき5万円または2万5000円(治療ステージで金額が異なる)を上限に助成金の受け取りが可能です。

※年齢制限や回数制限あり

杉並区公式ホームページ 特定不妊治療費助成
https://www.city.suginami.tokyo.jp/guide/kosodate/ninshin/1004674.html

(2)産前・産後支援ヘルパー

産前や産後にヘルパーが訪問してくれる子育て支援サービスを行っています。区から委託を受けた事業所のスタッフが自宅を訪問し、食事作りや洗濯、掃除、買い物といった家事支援をしたり、上の子の送迎や世話をしてくれたりします。

※住民税に応じて利用者負担が異なる

杉並区ホームページ 産前・産後支援ヘルパーhttps://www.city.suginami.tokyo.jp/guide/kosodate/ninshin/1004681.html

(3)訪問育児サポーター

区内在住の1歳未満のお子さんがいる家庭に、専門研修を受けたサポーターが年3回(多胎の場合は6回)まで訪問します。育児経験者や子育て支援活動経験のある区民がサポーターとなり、悩みや話を聞いてくれたり、育児について一緒に考えてくれたりするサービスです。「赤ちゃんがいるから外出できないけれど、話し相手が欲しい」「近くに頼る人がいないから不安」そんなお父さんやお母さんの気持ちに寄り添ってくれます。

杉並区ホームページ 訪問育児サポーター
https://www.city.suginami.tokyo.jp/guide/kosodate/navi/hoikuservice/1004732.html

(4)杉並子育て応援券

一時保育や子育て相談、子育て講座、産前産後支援、家事支援などの有料サービスに利用できる子育て応援のチケットです。所得制限はなく、妊娠中に1万円、出生時に2万円、0~2歳児までは毎年2万円(多胎や小学生以下の兄弟がいる第3子以降は2万5000円)の無償応援券が交付されます。また、0~5歳までは希望に応じて最大2万円分まで有償応援券(1冊3000円で1万円分)を購入することが可能です。

リトミックや工作などの親子交流事業、人形劇やコンサートなどのイベントの参加費としても利用できるので、地域交流やママ友達が増えるきっかけ作りにも役立ちます。

杉並区ホームページ 子育て応援券
https://www.city.suginami.tokyo.jp/kosodate/ouenken/index.html

(5)乳幼児と義務教育就学児の医療費助成(マル乳・マル子医療証)

乳幼児および義務教育就学児(15歳の年度末まで)の保険診療で支払う自己負担分を助成してくれる制度です。所得制限がなく、杉並区に住所があることと国民健康保険または社会保険等に加入していることが条件になっています。医療証を使えば、医療機関等で診察や調剤を受けても保険適用部分に関しては自己負担額0(ゼロ)円です。

※保険診療外の医療費および入院時の差額ベッド代等は対象外

杉並区ホームページ 乳幼児と義務教育就学児の医療費助成(マル乳・マル子医療証)
https://www.city.suginami.tokyo.jp/guide/kosodate/iryohi/index.html

(6)保育園だけでなく、認定こども園が選べる

杉並区では「保育園」だけでなく「認定こども園」を選択することが可能です。認定こども園は、働く親の代わりに子供を預かってくれる保育園と、幼児教育をしてくれる幼稚園の両方のよさを併せ持っている園になります。区内には6つの「区立子供園」があり、保護者の就労状況に関係なく申し込みが可能です。

(7)病児・病後児保育

子供の具合が悪いけれど、仕事を休むことができない保護者の方のために、病児または病児後未就学児を預かってくれる保育施設です。病状が安定している、または回復期にあるけれど、いつもの園に通うことができないときに看護師や保育士が預かってくれるので、安心して仕事に向かうことができます。

杉並区ホームページ 病児・病後児保育
https://www.city.suginami.tokyo.jp/guide/kosodate/navi/hoikuservice/1004733.html

(8)ファミリーサポート事業

兄弟児がいる場合、両方の世話を同時にするのが大変なケースもありますよね。そんなときに活用できるのがファミリーサポートです。小さな子供がいる家庭で助けて欲しい人(利用会員)と手助けできる人(協力会員)が、地域の中で相互扶助できる会員制の組織になります。決められた研修などを受けた地域の方が協力会員となり、有償で子供を預かったり、習い事の送迎に付き添ってくれたりします。

杉並区ホームページ ファミリーサポートセンター(お子さんのいるご家庭を支援)
https://www.city.suginami.tokyo.jp/guide/kosodate/navi/hoikuservice/1004731.html

(9)子ども食堂

杉並区内には無料または低価格で食事を提供している「子ども食堂」が多数あります。集まった人が一緒に食事をすることで地域のつながりを強くすることが目的ですが、年齢を超えたコミュニケーションができる貴重な場所でもあります。子供だけでも、親子で一緒に行っても楽しい時間を過ごせるのではないでしょうか。

杉並区ホームページ 杉並子ども食堂ネットワーク
https://www.city.suginami.tokyo.jp/kosodate/yakudatsujoho/1038443/1038444.html

(10)子どものための居場所づくり事業

杉並区内は、子供たちが安心・安全に過ごせる場所が豊富です。小学生のうちは6年生まで利用できる学童クラブ、児童館や小学校校庭を利用した放課後居場所事業、泥遊びや木工作などで自由に遊べる「子どもプレーパーク」など、学校が終わってからも安心して遊べる場所がたくさん用意されています。また、中高生になっても利用できる児童青少年センター「ゆう杉並」は、体育館、フリークライミング用の壁があるホール、バンド練習に利用できるスタジオ、勉強室など、仲間と一緒に過ごす時間を満喫できる場所です。

(11)安全な街づくり

杉並区では、区民の防犯への意識を高める活動があります。「杉並区安全パトロール隊」は、警察OBが指導員となりパトロール車やバイクで巡回する取り組みです。警察で培った経験を活かして、空き巣などの犯罪が多発している地区を重点的にパトロールします。また、子供の登下校時の安全を守る「子供安全ボランティア」は、各小学校のPTAや保護者だけでなく、防犯自主団体、町会、老人会など、数多くの地域の人々によって活動が行われています。

大東京防犯ネットワーク|暮らしに役立つ防犯情報|杉並区の取組み 1.子供安全ボランティアの結成
https://www.bouhan.metro.tokyo.lg.jp/90_archive/topic/report_2006/03/pickup1.html

まとめ

23区内という立地にもかかわらず、自然が豊かで子育てに最適な環境がある杉並区。警察OBによるパトロール強化や、各学区で作られている「子供安全ボランティア」の見守り活動など、地域の安全に対する意識も高いため治安がよいといわれています。共働き世帯にとって、親の不在時に子供が安全に過ごせる場所があるというのは、働き続けていく上で重要なポイントです。中学生、高校生になっても地域ぐるみで育児を支えてくれる街の雰囲気や、保育園の待機児童0(ゼロ)、学童クラブの充実など、共働き夫婦にとって強力なサポート体制が整っているということが「子育てしやすい街」として人気がある理由かもしれませんね。(安部美和)

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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