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2018年12月04日 14:38 更新

しっかりと説いて聞かせるだけ! 現代でも使える江戸時代のしつけ法

歴史エッセイストの堀江宏樹さんに、現代でも使える江戸時代の育児について教えてもらいました!

Lazy dummy

昔の日本を訪れた外国人たちが驚かされたのは、日本の子供たちの優秀さと、親たちの親たちのしつけ能力の高さでした。織田信長の時代、日本にキリスト教の布教活動に来ていたルイス・フロイスはこんな言葉を残しています。

「日本の子供は十歳でも(略)判断と賢明さにおいて五十歳にも見える(フロイス『ヨーロッパ文化と日本文化』、戦国時代末期)」

50歳! とはさすがに言い過ぎですが、落ち着いてたんでしょうねぇ。ちなみにヨーロッパの子供は10歳どころか青年になっても、親の仕事を満足に手伝える者は少なかったとか。

フロイスの時代からしばらくたった江戸時代、鎖国中の日本にもしばしば外国人は使節などでやってきました。そこでもやはり日本人の親子の仲の良さ、家庭の雰囲気の良さも彼らの目には不思議に思えるほどでした。

しかも、イメージからしてしつけに厳しい上流階級の子供たちだけでなく、庶民の子供たちでも同じなんですよね。

日本とヨーロッパのちがい

たとえば江戸の庶民ママたちは子供たちを背負ったり、手を引いたりしながら仕事先にも連れていっていましたが(=連れて行けていましたが)、それは子供たちが十分におとなしかったから。

ヨーロッパでは教育の名のもとに、言うことを聞かない子供を怒鳴りつけたり、ムチで叩く体罰すらフツーに行われていました。家庭から口論する声が聞こえるなんてことも普通。
しかし、日本では、「どこでも子供をむち打つことはほとんどない。子供に対する禁止や不平の言葉は滅多に聞かれないし、家庭でも船でも子供を打つ、叩く、殴るといったことはほとんどなかった(ツュンベリー『江戸参府随行記』、江戸時代中期)」……のだとか。

江戸時代の育児書に書かれていること

江戸時代にはたくさんの教育書が書かれていますが、そのほぼ全てが「大声を出して怒鳴ったり、手をあげるのは絶対にダメ」ということをルールとして掲げているんですね。子供には「やさしく、でもしっかりと説いて聞かせるだけ」……と説かれているのですが、それだけで本当にOKなら、江戸時代のママたちは魔法を使えたのかと疑問に感じられるかもしれません。

しかし実際は、江戸時代にも子育てに悩む親や、虐待をはじめとする問題行為をする親だってたくさんいました。だからこそ、江戸時代にはたくさんの教育書が書かれたのだと筆者は思いますよ。江戸時代の親たちも大いに努力していたんです。

早期教育が重要?

江戸時代にも早期教育が重要だという思想がありました。しかしそれは現代のように知能を伸ばすための早期教育ではありません。
現在でいう小学校に入る5、6歳以前の教育といえば、道徳や生活のルールを子供に覚えてもらえるよう、基本的にそれだけを一生懸命に伝えるということが重視されたのは、現代とは多少違うのかもしれませんね。

たとえば両親や祖父母を「お父様・お母様」「お祖父様・お祖母様」というように、様づけで、庶民の場合でも呼ぶようにせよという教えもありました。現在では行き過ぎのように思うかもしれませんが、立場を教えこむという意味で、重要なことでした。

自分より偉くて、尊敬できる人たちだからこそ、自分を守ってくれるのだ……と子供に思わせられますからね。そうすると、自分を守ってくれる、大事にしてくれる人のいうことは聞かないとダメだ、と子供も考えるようになっていくわけです。

江戸時代のしつけのポイント

このように江戸時代のしつけのポイントは、出来る限り早い時期から、子供たちにとっての親や祖父母を「自分と一緒に暮らしている人たち」ではなく、「えらくて、尊敬できる人たち」だと子供に徹底的に伝えることに尽きるようです(逆に何らかの理由で不良青年に育ってしまった場合も、同じように丁寧に根気強く接していけばちゃんともとに戻ると考えられていました)。

幼児教育は主にそれだけを幼い時から叩き込んでいくわけですから、江戸時代のしつけのポイント、おとなしい良い子を育てるコツはまさにそこにあったようです。

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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