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2021年01月14日 15:41 更新

【医師監修】これって水疱瘡(みずぼうそう)!? 赤ちゃんがかかったときの症状と対処法

赤ちゃんに熱が出て発疹ができたときは「水疱瘡(みずぼうそう)」の可能性もあります。赤ちゃんがかかると重症化しやすいと言われています。また、感染力が強いので家族への感染も気がかりです。症状や受診、ホームケアのポイントなど対処法を知っておき、疑わしい場合も落ち着いて対処しましょう。

水疱瘡ってどんな病気?

水疱瘡を患った赤ちゃん
Lazy dummy

水疱瘡はよく聞くことのある病気で、その予防接種は定期接種にもなっています。まずどんな病気なのか確認しておきましょう。

ウイルスで起こる感染症

水疱瘡の正式な病名は「水痘(すいとう)」で、ヘルペスウイルスの仲間の「水痘帯状疱疹ウイルス」に初めて感染することで発症する病気です。

感染力が強く、空気感染、飛沫感染、接触感染によって広がります。潜伏期間は2~3週間程度[*1]で、発症すると発熱と同時に全身に盛り上がった発疹ができます。特に多いのは生後6ヶ月~4歳ごろといわれていますが、生後すぐにかかることもあります。たいていは発熱と発疹の症状が出たあと1週間程度で治りますが、肺炎や脳炎、皮膚の細菌感染などさまざまな合併症が起こることがあり、重症化して死に至ることもあります[*2]。

2014年10月に水疱瘡(水痘)のワクチンが定期接種となりました。それ以降、定期接種対象年齢(1歳の誕生日の前日~3歳の誕生日の前日まで)を中心に水疱瘡の患者数自体は減っていますが、3歳以上の子供がかかることは増えています。「予防接種を受けていない1歳前の赤ちゃん」「定期接種対象年齢以上の子供や大人」「アトピー性皮膚炎など皮膚疾患がある人」などは重症化しやすく、入院となることもあります。

赤ちゃんが水疱瘡にかかったら

赤ちゃんが水疱瘡にかかった場合の症状を見てみましょう。もし水疱瘡の可能性があれば受診が必要となるので、その場合の注意点も紹介します。

主な症状は?

一般的な症状は発熱と発疹です。発疹は下記のような特徴的な経過をたどります[*3]。発熱はないこともあります。

(1) 赤い発疹(紅斑)ができる
(2) 次に米粒大に盛り上がった発疹(丘疹)になる
(3) 1日くらいで水ぶくれ(水疱)になったあと膿を持った膿疱になる
(4) 最後にかさぶた(痂皮)になる


症状が進んでいるときは、上記①~④のうち、さまざまな段階の発疹が混在します。発疹には強いかゆみがあり、全身に現れます。体だけでなく頭皮にもできることも特徴です。発疹の数は個人差がありますが、重症だと発疹の数が多くなる傾向があります。

赤ちゃんは重症化しやすいといわれますが、ママが妊娠するより前に水疱瘡にかかったことがある赤ちゃんでは、生後4ヶ月までは、ママから胎盤を通してもらった免疫で守られているので発症しても比較的軽症で済むことが多いのですが、7ヶ月以降は重症化しやすいといわれています[*4]。高い熱が出ることによって熱性けいれんを起こしたり、肺炎、気管支炎などの合併症から重症化したりすることがあります。

水疱瘡にかかったことがない妊婦さんとその赤ちゃんはとくに注意が必要

さらに注意が必要なのは、妊娠前に水疱瘡にかかったことがなく、予防接種も受けていない妊婦さんの場合です。こうした妊婦さんは水疱瘡に対する免疫を持っていないので、生まれた赤ちゃんもお腹の中でお母さんから免疫を受け取ることができず、水疱瘡に対してまったく無防備な状態で生まれてくるからです。こうした赤ちゃんは、通常の0歳児よりさらに重症化するリスクが高くなります。

水疱瘡ワクチンは1歳以下での接種は基本的に推奨されていないので、こうした赤ちゃんも1歳になって水疱瘡ワクチンを接種できるようになるまでは、できるだけ水疱瘡に感染しないように気を付けることになります。ただし、水疱瘡にかかっている人と接触してしまった場合は、月齢やその子の健康状態によっては発症予防を目的とした水疱瘡ワクチンの「緊急接種」を受けられる場合もあります(緊急接種を受けても発症を予防できないこともあります)。こうした状況が疑われる場合は、かかりつけの小児科にまずは電話で相談してみましょう。

なお、水疱瘡に免疫のないママが出産前後に水疱瘡を発症した場合も、注意が必要です。とくに出産5日前~出産2日後の間にママが水疱瘡を発症した場合、治療が行われないと高い確率で赤ちゃんが「新生児水痘」を発症します。新生児水痘は死亡率が約30%にのぼるともいわれており、抗ウイルス薬による積極的な治療を受けることがとても重要です[*4]。

妊婦さんと水疱瘡について、さらにくわしい情報を知りたい人は次の記事も参照してみてください。

いずれにしても妊娠を希望する女性は「妊娠する前に、水疱瘡含め予防接種をきちんと受けておく」ことがとても大切です。

疑わしい発疹が出たら受診しよう

1歳前の赤ちゃんでは重症化する心配があるので、水疱瘡かもしれないときは医療機関を受診しましょう。水疱瘡は空気感染する感染力が強い病気なので、周囲にうつさない配慮が必要です。受診する際は、前もって医療機関に電話をし、どのように受診すれば良いか指示を受けてください。緊急の場合も、受付などでできるだけ早く水疱瘡の可能性があることを伝えてください。

診察の際は下記のポイントを事前にまとめておき、伝えるとといいでしょう。

・いつから、どこに発疹ができたか
・かゆみの有無や程度
・いつから熱があるか、その後の熱の経過(熱計表に記録して持参するとよい)
・そのほかの症状はあるか(機嫌が悪い、咳、鼻水、嘔吐、下痢など)
・これまでに受けた予防接種(母子手帳を持参する)
・水分、食事はとれているか
・おしっこは出ているか
・保育園など、周囲で流行している病気はあるか

治療はどうやってするの? 自宅でのケア方法は?

水疱瘡の治療をするために診察を受ける子供
Lazy dummy

水疱瘡の治療やホームケアについても確認しておきましょう。

水疱瘡の治療法

水疱瘡にかかっても、持病などがない限り、通常は治療の必要はなく自然に治りますが、かゆみが強い場合は、発疹の治療としてかゆみを抑える塗り薬や飲み薬が処方されることもあります。発疹をかいてしまい細菌による皮膚の二次感染が起こっているときは、抗菌薬(抗生物質)を用いて治療します。

発疹の水ぶくれや膿の中にはウイルスが入っています。手にウイルスがつくことや細菌感染の予防のために、薬を塗るときは素手ではなく綿棒などを使って塗るようにしましょう。

必ず使われるわけではありませんが、抗ウイルス薬により治療することもあります。抗ウイルス薬は症状が出てから24~48時間以内[*5~7]に使用すると症状を軽く抑えることができます。投与は早ければ早いほど効果があるとされていますが、抗ウイルス薬でも抑えられない場合もあります。飲み薬ですが月齢が低い赤ちゃんには点滴で投与されることもあります。

飲んではいけない解熱剤があることに要注意!
水疱瘡やインフルエンザなどウイルスで起こる病気で熱さましの薬を飲ませる時は、その種類に注意が必要です。解熱鎮痛剤の種類によっては、非常にまれに脳や肝臓に異常が出る副作用を起こすことがあるからです。必要な際はかかりつけの医師に相談してから服用するようにしましょう。

ホームケアのポイント

お風呂はどうする?

熱があるときは湯船につかるのは控えたほうが良いでしょう。蒸しタオルで体を拭く、汗をかいたらこまめに着替えるなどして清潔に保ちます。熱が下がり、元気が出てきたらシャワーで体を洗います。体があたたまるとかゆみが増すことがあるので、ぬるめのお湯で短時間で済ませましょう。

発疹をかきこわさないためにできること

水疱瘡の発疹はかゆみが強いものですが、かきこわしてしまうと、細菌に感染したり痕が残ってしまうことがあります。かきこわしを防ぐために、爪は短く丸く切っておきましょう。長そでを着せる、薄く包帯を巻く、手袋やミトンをするのもいいでしょう。

赤ちゃんから周りにもうつるの?

これまで紹介してきたように、水疱瘡の感染力は強いです。一度かかったことがあれば、免疫ができているため発症することは稀ですが、かかったことがない家族がいる場合は注意が必要です。

家族への感染に要注意

水疱瘡は大人になってからかかると、子供よりも重症化のリスクが高くなります。水疱瘡は発疹がでる1~2日前から、発疹がかさぶたになるまでの1週間くらいの間、ウイルスが排出されていて、他の人に感染させる可能性があります。

もっとも確実な予防法は、事前に予防接種を受けておくことです。水疱瘡にかかっている人と接触した後、72時間以内に予防接種を受けると、発症を抑えられる可能性が高くなります。また、発症予想日の1週間前から抗ウイルス薬を内服することで発症を予防できることもありますが、これら接触後のいずれの対応策をとっても発症を抑えられない場合もあります[*4, 8]。

ですから、水疱瘡にかかったことがなく、予防接種を受けたこともない家族がいたら早めに予防接種を受けておきましょう。

保育園はいつから登園できる?

水疱瘡の発疹は7~10日ですべてかさぶたになります。その時点で感染力がなくなるといわれています。そのため学校保健安全法では、出席停止期間の基準は「すべての発疹が痂皮(かさぶた)化するまで」と定められています[*9]。

厚生労働省のまとめた「保育所における感染症対策ガイドライン」では、診察した医師による「意見書」やそれに代わる「治癒証明書」は一律に必要なものではないとしていますが[*10]、提出が必要とする保育所は多いようです。通っている施設に確認をして必要な場合は、診察した医師の証明など、必要な書類を用意してから登園しましょう。

予防接種のタイミングについて

水疱瘡の予防接種を受ける赤ちゃん
Lazy dummy

水疱瘡(水痘)のワクチンは定期接種になっています。水疱瘡にかかったことのない生後12~36ヶ月未満の子供が対象で、1歳になったらできるだけ早めに1回目の接種を受けることが推奨されています。

2回目は、1回目の接種から3ヶ月以上(標準的には6ヶ月以上)あけて接種をします。予防接種を受ける前に水疱瘡にかかった場合は、免疫を獲得していると考えられ、基本的に定期接種の対象外となります。

まとめ

予防接種が定期接種となってから水疱瘡にかかる人は減っていますが、感染力が強く、同じ部屋にいるだけで感染することがあります。多くは発熱と発疹で終わり重症化する事は多くはありませんが、予防接種がまだの赤ちゃんなどでは重症化の心配もあります。症状に気づいたらここで紹介した受診の注意を参考に早めに受診し、発疹をかきこわして悪化させないように気をつけながらケアしていきましょう。

(文:佐藤華奈子/監修:大越陽一先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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