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2022年12月01日 11:58 更新

【医師監修】経産婦は陣痛が短い? 出産経験の有無と陣痛の関係

出産の際に繰り返し起こる子宮の収縮が「陣痛」です。経産婦は初産婦と比較して「陣痛が短い」「出産が早く終わる」などといわれることもありますが、それは本当なのでしょうか? 出産経験の有無と陣痛、そして出産の進み方の関係についてまとめました。

経産婦ってどんな人?

一度以上の出産経験をもつ経産婦
Lazy dummy

まずは、経産婦とはどんな人のことをいうのか、正確な定義を確認しておきましょう。

経産婦=出産経験のある人

初めての出産を「初産」と呼ぶことを知っている人は多いかもしれません。読み方は「しょさん」「ういざん」「はつざん」などさまざまですが、医療の場では「しょさん」という言い方が一般的です。そして、初めて出産を経験する女性のことを「初産婦」(しょさんぷ)と呼びます。

一方、出産経験のある女性のことは「経産婦」(けいさんぷ)と呼んでいます。経産婦の正確な定義は「妊娠22週以降の胎児を1回以上出産した経験のある人」です[*1]。ちなみに、出産経験はないけれども1回以上妊娠を経験したことのある女性のことは「経妊婦」(けいにんぷ)といいます。

経産婦と初産婦のお産は違う?

出産経験の有無は女性の身体に変化をもたらし、お産にも影響を与えます。もちろん個人差はありますが、初産婦と経産婦とでは一般的に、以下のような違いがあるといわれています。

経産婦と初産婦の違い

子宮口が開きやすい

お産を経験している経産婦は初産婦に比べて、産道(出産時に赤ちゃんが通るところ)の組織が軟らかい傾向にあります。産道の一部である子宮頸管も開きやすく、子宮口の開大までが早く進むといわれています。

子宮頸管は、妊娠中、子宮の中に赤ちゃんが留まっていられるよう支える役割を果たしており、そのために必要な強度を持っています。それが、お産が始まると徐々に軟らかくなって子宮口の一部となっていきます。

分娩が始まる前は小鼻くらいの硬さですが、最終的にマシュマロくらいの軟らかさになった頃、子宮口と子宮頸管は一体化し、子宮口が完全に開大。赤ちゃんが出てくる準備が整います。

初産婦より経産婦のほうが、この子宮口が全開になるまでのこの過程が早く、進みやすいとされているのです。

子宮口が開いていくイメージ
子宮口が開いていくイメージ

会陰が伸展しやすい

会陰とは、肛門と腟の間の部分をいいます。お産で赤ちゃんを娩出する際に裂けてしまう可能性がある時は保護したり、あらかじめ手術用のハサミで切開したり(会陰切開)して、裂傷が起こるのを防ぐことがあります。

経産婦は初産婦よりも会陰が伸展しやすく、比較的裂傷が起きにくいといわれています。

陣痛の始まり~お産の進み方

ここまでで解説したように、経産婦ではお産が進みやすい傾向があります。初産婦と比べてどれくらい早くなるのかを知る前に、お産(分娩)の一般的な進み方を確認しておきましょう。おおよそ、以下のような経過をたどります。

(1)分娩の前兆

まずは身体が少しずつ変化し、お産に適した状態に近づいていきます。具体的には子宮底部を支えていた子宮頸管が軟らかくなり(熟化)、子宮口が徐々に開き始めます。

このとき、中には不規則な陣痛(前駆陣痛)を感じたり、産徴(おしるし。血液の混じったおりもの)などが見られたりする人もいるでしょう。

(2)分娩第1期(開口期)

陣痛が規則的な間隔で起こるようになり、やがて1時間に6回以上(10分間隔)になります[*2]。

その後も陣痛の間隔は短く、陣痛の痛みは強くなっていき、子宮口の開大が始まります。およそここまでを分娩第1期と呼んでいます。

(3)分娩第2期(娩出期)

赤ちゃんを実際に生み出す(娩出する)のが、この分娩第2期です。陣痛の間隔はさらに短くなり、痛みが最も強まります。そして子宮口が全開になって破水が起こり(もっと早い段階で破水することもあります)、赤ちゃんが頭から少しずつ外に現れ、娩出が完了します。娩出の完了と同時に、陣痛も感じなくなります。

(4)分娩第3期(後産期)

赤ちゃんを生み出すための陣痛が治まると、今度は「後産期陣痛(後陣痛。こうじんつう)」が起こります。

後陣痛には、子宮内に残っている胎盤を剥がし、胎外に押し出していく働きがあります。胎盤の排出が終わったら、子宮を妊娠していない時の状態に戻す作業=子宮復古が始まります。これが分娩第3期と呼ばれる、最後の段階で、ここまでが一般的なお産の流れです。

経産婦の陣痛は初産婦より短い

分娩にかかる時間が全体的に短くなるといわれる、経産婦のお産。具体的にはどこの時間が、どれくらい短くなるのでしょうか。

子宮口が開くまでの陣痛の平均時間は初産婦の約半分

経産婦と初産婦とで、時間の長さに最も違いが現われるのは分娩第1期です。定期的な陣痛が起こるようになってから(1時間に6回以上の間隔)、子宮口が全開大になるまでには、初産婦の場合10~12時間ほどかかるといわれています。一方、経産婦は平均4~6時間。初産婦の約半分です[*3]。

「1人目の時は陣痛が始まってからが長かったから、今回もまだまだ赤ちゃんは生まれてこないだろう」と高をくくっていると、2人目以降の出産では意外にトントン拍子に進んでしまうことがあります。

個人差やお産ごとの違いは大きいですが、陣痛が来てからあっという間にお産が終わってしまったというケースも少なくないので、経産婦のお産はパートナーに早めに連絡しておくことをおすすめします。

分娩時間もやや短い

陣痛が最も強くなり、赤ちゃんを娩出する分娩第2期にかかる時間も、初産婦の平均が1~3時間なのに対し、経産婦の平均は0.5~1.5時間と、やはり半分程度の所要時間になるようです[*3]。

もちろん個人差はありますが、平均でみると経産婦のほうが短い傾向があるのです。

開始の兆候~お産の開始も初産婦より短い傾向に

そのほか、お産の開始前に赤ちゃんが産道を下りてきて、頭が母体の骨盤入り口部分に固定される(児頭降下)時期は、初産婦ではお産が始まる数週間前に起こるケースが多いのに対し、経産婦の場合は開始間近になることが多いようです[*3]。

つまり、お産が始まる兆候があってから実際に始まるまでの間隔も、初産婦より経産婦のほうが圧倒的に短い傾向があります。

予定日より早くなる? 遅くなる?

出産経験はお産にかかる時間に影響を与えることがわかりましたが、出産予定日についてはどうでしょう。「初産婦の出産は予定日より遅くなり、経産婦は予定日より早く出産をする」といった傾向はあるのでしょうか。

これについては、初産婦、経産婦の違いはあまりなさそうです。そもそも、出産予定日に生まれる赤ちゃんのほうがどうやら少ないようなのです。自然分娩の赤ちゃんのうち、予定通り出産予定日に生まれていたのは6.3%だけだったとする医療機関もあります[*4]。

また、日本産科婦人科学会による2010年の統計では、分娩週数でもっとも多かったのは妊娠39週という結果だったそうです[*5]。

何があるのかわからないのが妊娠、そして出産です。予定日より早く(遅く)なったとしても対応できるよう準備を整えておきましょう。

まとめ

お腹をさする経産婦
Lazy dummy

陣痛の長さや強さには個人差が大きく、今回あげた傾向に当てはまらないことも多々あります。ですがどんなお産であっても、母子ともに健康ならば安産といえます。一般的なお産と比較してどうなのかを気にするのではなく、自分が安心してお産に臨めるかどうかをポイントに考え、来る出産の日までリラックスして過ごしてください。

(文:山本尚恵/監修:窪麻由美先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]経妊婦/経産婦-よくわかる用語辞典|赤ちゃん&子育てインフォ
[*2]メディックメディア「病気がみえる Vlol.10 産科」(第4版)p.240
[*3]メディックメディア「病気がみえる Vlol.10 産科」(第4版)p.251
[*4]AllAbout 河合蘭:出産率が高いのは何週?出産予定日に生まれる確率は?
[*5]日本産科婦人科学会 周産期委員会, 日産婦誌64巻 6 号, 2012.

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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