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2021年01月14日 14:25 更新

【医師監修】子供の水虫は何科に行く? 子供が水虫になった場合の正しい治療法や予防法をチェック

足の指の間の皮がむけたり、白くふやけてジュクジュクしたりする水虫。子供でもなることがあるのでしょうか。また子供が水虫になった場合、小児科と皮膚科、どちらを受診すれば良いのでしょうか。水虫の治療、予防方法とあわせて解説します。

子供も水虫になる?

水虫になった足
Lazy dummy

水虫というと「中年以上の大人がなる病気」というイメージがありますが、じつは子供も水虫になることはあります。

水虫とは

そもそも「水虫」は正式な病名ではありません。正しくは「足白癬(あしはくせん)」といいます。

白癬とは、皮膚糸状(ひふしじょう)菌というカビの一種である白癬菌が皮膚に付着し、感染することで生じる病気のこと。足にできた白癬なので「足白癬」と呼ばれ、その通称が「水虫」です。

足白癬がなぜ水虫と呼ばれるようになったのかには諸説あるようですが、中でも有力なのは皮膚の異常を「水の中にいる虫のしわざ」と考えたという説です。

江戸時代、田んぼで農作業をしている時に足がかゆくなったり、水ぶくれができたりすることが多く、それらを昔の人が田んぼの水の中にいる虫=水虫のせいと考えたことから、この通称が生まれたといわれています。

水虫になるとどうなる? 3つのタイプと主な症状

水虫になるとどんな症状が生じるのでしょうか。水虫の症状は大きく以下の3つのタイプに分類されます。

小水疱型(汗疱型)

小水疱型(しょうすいほうがた)、汗疱型(かんぽうがた)と読みます。主な症状は足の裏に生じる小さな水ぶくれです。水ぶくれが破れると皮が剥けてきます。こうした症状が毎年暖かくなると生じ、涼しくなると自然に治るという場合、水虫である可能性が高くなります。

趾間型

趾間型(しかんがた)と読みます。趾間とは、足の指の間のこと。その字が示す通り、足の指の間の皮が剥けたり、白くふやけたりするのが主な症状です。小水疱型と同様、暖かくなると症状が現れ、涼しくなると自然に治まっていきます。

角質増殖型

角質増殖型は、比較的珍しいタイプの水虫といえます。角質が増えて足の裏全体が硬くなり、ヒビやアカギレなどを起こすのが主な症状です。

小水疱型や趾間型と違い、季節によって症状が変化することはほとんどなく、むしろほかのタイプでは症状がおさまっている冬期のほうが、皮膚にひび割れなどが生じ、痛みを感じやすいかもしれません。爪白癬という爪の水虫を併発します。

かゆみがあるのは、実は10%程度

一般的に水虫の症状というと「かゆみ」を想像する人が多いかもしれませんが、じつはこれは大きな誤解です。水虫の症状としてかゆみが生じるのは、感染者の中でも10%程度といわれています[*1]。

これは裏を返せば水虫であっても90%はかゆみを感じないということ。ですから、自分が水虫になっていることに気付かず過ごす人も少なくありません。

また、かゆみがある人でも、かゆくなるのは夏場の暖かい時期のみで涼しくなるとおさまるケースが多いようです。このように水虫は「意外とかゆくないことが多い」のです。

足のほか、手や頭にできることも

白癬菌は、足にだけ感染するわけではありません。白癬菌は、髪の毛の主成分であり、皮膚や爪を構成する成分でもある「ケラチン」というタンパク質の一種を栄養源にしており、ケラチンが存在する場所であれば、どこにでも――足以外の皮膚や髪の毛にも感染することがあります。

白癬菌が体のどこに感染するかによって、病気の呼び名は以下のように変わります。

● 手に感染した場合:手白癬
● 爪に感染した場合:爪白癬
● 外陰部(股)に感染した場合:股部白癬(通称:インキンタムシ)
● 髪の毛に感染した場合:頭部白癬(通称:シラクモ)
● 顔に感染した場合:顔面白癬
● 上記以外の部位に感染した場合:体部白癬(通称:ゼニタムシ)

なお、ケラチンは皮膚には存在するものの、粘膜にはそれほど多くありません。そのため口の中や目の中、性器の内部など粘膜で覆われている部位が白癬になることは、基本的にないと考えてよいでしょう。

子供も水虫になる

子供が水虫になる可能性は、もちろんあります。白癬菌はケラチンがあれば、体のどこにでも感染するわけですから、子供も例外ではありません。ただし白癬になるには、白癬菌が皮膚に長時間付着していることが必要です。

大人のように長時間、靴や靴下を履いたままの状態でいると、白癬菌が皮膚に付着したままになり、感染が起こります。しかし、靴下を履かずに過ごす機会の多い子供は、白癬菌が足に付着しても床などとこすれるため、実際に付着している時間は短くなり、足白癬を発症することが少ないのです。水虫の子供があまり多くないのには、こうしたことが影響していると考えられます。

どこからうつる? 水虫の感染経路と予防法

水虫になった子供の足
Lazy dummy

白癬菌はどこから感染するのでしょうか。主な感染経路や家庭でできる予防法を紹介します。

足拭きマットやスリッパなど。家庭内感染が多い

水虫の原因菌である白癬菌への感染が最も多く起こるといわれる場所、それはじつは家庭内です。家庭内でも特に足拭きマット(バスマット)からの感染が多いといわれています。

多くの家庭では、バスマットは家族で共有しているというケースが多いはず。家族1人1人に専用のバスマットがある家庭は珍しいでしょう。家族の中に白癬菌に感染している人がいた場合、バスマットを介してほかの人の足にも白癬菌が付着します。そうして付着した白癬菌が足の裏や足の指の間などで繁殖し水虫になるというケースが、水虫感染の大部分を占めているといわれます。

そのほかスリッパの共用も、バスマットと同様に水虫の感染を広げると考えられています。くれぐれも注意しましょう。

動物から感染することも

白癬は人以外の動物にも発症します。例えばミクロスポルム・カニスというカビは、犬や猫に感染して白癬を生じさせることがあります。こうした白癬にかかった動物と接触すると、人間にも白癬がうつってしまうことが考えられます。

したがってペットなどの皮膚の様子にも、普段からしっかりと気を配っておくことが大切です。皮膚に異常が見られた場合は、動物病院で適切な治療をしてもらいましょう。また、野生の動物や管理者がわからない動物にはむやみに触れず、触れた場合は手や触れた部位をすぐに洗うなどの対策を取ることが必要です。

まずは家庭内に持ち込まない!

家庭の外で言えば、銭湯や健康ランド、サウナなどの温浴施設にある足拭きマットも要注意です。それらの場所には、ほぼ間違いなく白癬菌がいると考えてよいでしょう。

といっても、むやみに恐れる必要はありません。不特定多数が使用する足拭きマットを使用したら、清潔なタオルで足の裏や指の間などをきれいに拭き取り、十分に乾いてから靴下や靴を履くようにしましょう。そうすれば家庭内に白癬菌を持ち帰る可能性はだいぶ少なくなります。足を乾かす時間が十分に取れない時は、帰宅したらすぐに足を洗うようにするとよいでしょう。

また最近では、柔道やレスリングなどの格闘技を行っている選手の間で白癬の集団発生が起こっているという報告もあります。原因となっているのはトリコフィトン・トンスランスという、主に欧米で頭部白癬を引き起こしているカビの一種です。

海外遠征などを通じて日本国内に持ち込まれたと考えられており、格闘技の練習や試合を介して感染が拡大。感染力が強く、一度感染すると治りにくい菌で、頭部白癬や体部白癬を集団発生的に起こしているようです。足への感染はまだ確認されていないようですが、注意しておくに越したことはないでしょう。

水虫の最大の予防方法は「足をきれいに洗う」こと

では実際、水虫を予防するにはどうしたらよいのでしょう。

日本皮膚科学会によると、皮膚に付着した白癬菌が皮膚内に侵入し、感染が成立するまでには最低24時間かかるといわれています[*2]。それはつまり、白癬菌が付着しても24時間以内に洗い流せば感染を防げるということ。毎日足をきれいに洗うことは、水虫の予防につながると考えられます。

ただし上記の報告には続きがあり、皮膚に傷などがある場合は感染が12時間で成立するそうです。足の裏の皮膚は体の中でもぶ厚いほうの部類に入るものの、軽石やヤスリなどで強くこすり洗いをすると皮膚が傷つき、水虫の感染リスクが高まります。

足を洗うときはよく泡立てたせっけんやボディーソープでやさしくなでるようにし、くれぐれも強くこすることは避けましょう。

無症状でも気を付けて

また最初にもお伝えしたように、水虫になっていてもかゆみなどの自覚しやすい症状が現れることはそれほど多くありません。なぜなら白癬菌が皮膚の角層の下部にまで増殖しないと、かゆみが生じないからです。

こうしたことから自分が水虫になっていることに気付かず、放置してしまっている人も少なくありません。目立った症状が見られない場合でも、足を清潔にしたり部屋の掃除をしたりするなど、水虫の感染拡大防止に気を付けておくことが大切です。

子供が水虫になったら? 正しい治療法をチェック

水虫になった子供の足に治療薬を塗る様子
Lazy dummy

「子供は水虫にかかりにくい」といわれるものの、なる可能性は十分にあります。もしも白癬菌に感染したら、どうすればよいのでしょう。

子供の水虫、受診するのは小児科? 皮膚科?

「足の裏に小さい水疱(すいほう)ができている」
「足の指の間や、足の裏の皮が剥けている」
「足の指の間がふやけて白くなったり、ジュクジュクしたりしている」
「足の指の間や足の裏がかゆい」
など、白癬菌に感染している疑いがある場合は、子供であっても皮膚科を受診するのがよいでしょう。症状が出ている部位に白癬菌がいるかどうか、顕微鏡で調べてもらう必要があるからです。

小児科を受診するのは、手足口病や水痘(水ぼうそう)など、皮膚に湿疹などが出て水虫とまぎらわしい病気の可能性もあるときです。

水虫の一般的な治療法

皮膚科を受診して、まず行われるのは検査です。皮膚の上部(角層)や爪、毛など、白癬菌が存在していると思われる部分を少し切り取って顕微鏡で観察し、本当に白癬菌に感染しているのかどうかを調べます。その結果、白癬菌が見つかれば、水虫の治療を行います。

基本は塗り薬で治療

水虫は抗真菌作用のある塗り薬をきちんと使えば、症状が改善する病気です。この「きちんと」というところがポイントで、特に自覚症状がない部分も含めた指の間~足の裏全体に、少なくとも4週間、毎日薬を塗る必要があります。自己判断で薬の塗布をやめず、しっかり塗り続けて、水虫を根治させましょう。

角質増殖型などの場合は飲み薬を併用

子供の場合はあまり多くないようですが、角質増殖型のように皮膚の角層がかなり厚くなるタイプの水虫や頭部白癬などでは、塗り薬だけでの治療が難しいこともあります。その場合は塗り薬と飲み薬を併用して、治療を行います。

子供にも市販薬は使ってもよい?

水虫は市販薬が豊富な病気のひとつです。市販の外用薬を子供に使用してもとくに問題ありませんが、販売されている水虫の薬はまず大人用です。用量などについて薬剤師などに相談のうえ使用したほうが良いでしょう。なお、市販薬の説明書にも書いてあるはずですが、とくに乳幼児の場合は事前に医師に相談するようにしましょう

先ほどもお伝えしたように、水虫には似た症状のある病気がたくさんあります。水虫だと思っていたのにそうではなかった場合、水虫用の市販薬では治らず、かえって悪化させる可能性もあります。そのため市販薬を使って自己判断で治療するよりも、皮膚科を受診して、別の病気の可能性がないか調べてもらったほうが良いでしょう。

治ったと思っても油断は禁物、再発に要注意

水虫は基本的に、毎日塗り薬を使えば、2週間ほどで表向きは完治したように見えます[*3]。ですが、その時点では白癬菌はまだ完全に消えてはいません。そのままにしておくと季節が変わり、暖かくなった時に残っていた白癬菌が活発化し、水虫が再発するおそれもあります。

「治った」と思っても油断せず、医師から指示された期間(塗り薬の場合、最低4週間といわれています)、薬をしっかりと使い続けましょう。

まとめ

「水虫になった」というと恥ずかしさが先に立つかもしれませんが、決してそんなことはありません。むしろ水虫は、誰もがかかる可能性のある病気で、それは子供も例外ではないのです。目立った症状が見られず、かかっていることに気付かないことも少なくありませんが、「どうも暖かい時期にかゆがっている……?」など気になることがあれば、積極的に皮膚科を受診して、適切な治療を心掛けましょう。

(文:山本尚恵/監修:大越陽一先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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