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2021年03月10日 12:13 更新

【医師監修】妊娠中期に出血したらどうすればいいの? 考えられる原因と対処法

妊娠初期には少なくありませんが、妊娠中期になると不正性器出血はあまり見られなくなります。だからこそ、この時期に出血があったら自己判断せず、きちんと対応しなければなりません。妊娠中期の出血にはどんな問題が考えられるか、その原因と対応、不正性器出血に間違う可能性がある出血についても解説します。

妊娠中期の出血は注意が必要

妊娠中期の出血の注意点について知りたい女性
Lazy dummy

俗に言う「安定期」に入った妊娠中期(妊娠14~27週)になると、つわりがおさまることが多く、おなかの膨らみも目立ってきます。胎動を感じ始めるなど、おなかにいる赤ちゃんの成長を実感できることから、ママになるという気持ちがより高まる時期かもしれません。

そんなときに、不正性器出血(以下、出血)があると不安になると思います。
妊娠中は普段と比べて、出血しやすいといわれています。実際、妊娠8週ごろまでの妊娠初期では、約30%に不正出血が見られるが、この時期の出血の有無が流産の確率に影響することはないとされています[*1]。

一方、妊娠中期で出血をすることは、あまり多くありません。
そのため、この時期に出血があった場合は妊娠に何らかの問題が起こったサインである可能性が高く、出血の量や状態によっては、ママやおなかにいる赤ちゃんの生命に危険が及ぶこともあります。
妊娠中期の出血では、どんな原因が想定されるか、どんなことに注意が必要なのかみていきます。

自己判断せず、主治医の指示を受けて

一般的に、妊娠中の出血には特に心配のいらないものもあれば、すぐにでも医療処置を受けなければならないものまで、さまざまです。

とくに妊娠中期の出血には注意が必要なケースも少なくありません。「出血かも?」と思ったら、自己判断せずにすぐに主治医に電話し、その指示に従いましょう。

また、出血と一口で言っても、その状態は多様です。
出血のことで頭が混乱していると、主治医に状態を適切に伝えられないこともあるので、連絡する前に下記のリストを参考にメモを作っておくとよいかもしれません。

<医師に伝えたいこと>
・出血の状態(出血が始まった時期・量・色・におい・出血に異物が混じっているか、など)
・お腹の症状(腹痛・お腹の張りなど)
・全体の体調や症状(吐き気・貧血・発熱・急に体調が悪くなったなど)


相談の結果、すぐの診察が必要であれば早急に受診を。経過観察でよいということであれば、その指示に従います。経過観察となった場合は、日常生活で気をつける点はないかも聞いておきましょう。

妊娠中期に起こることがある出血の原因とその特徴

出血の原因は人それぞれですが、妊娠の時期によっても起こりやすさは変わってきます。
ここでは、妊娠中期の出血の原因となることが多い、切迫流産や切迫早産、前置胎盤、常位胎盤早期剥離、子宮頸管ポリープについて紹介します。

切迫流産/切迫早産

妊娠22週より前に妊娠が中断することを「流産」、それ以降に赤ちゃんがママの体外に出てきてしまうことを「早産」と呼びます。切迫流産とは流産の一歩手前、切迫早産とは早産の一歩手前の状態です。

切迫流産/切迫早産は妊娠中期の出血のなかで最も多い原因であり、少量で特に切迫早産の場合は少しネバネバしている(粘液性がある)こともあるようです。破水している場合は、水っぽいおりものに出血が混じることもあります。下腹部の軽い痛みや張り、規則的な痛み、圧痛などの症状がみられることもあります。

妊娠週数や体の状況により対応はさまざまですが、破水していればすぐ入院となります。破水していない切迫早産や、妊娠16週以降で子宮収縮のある切迫流産では子宮収縮抑制薬など、破水している切迫早産では抗菌薬などによる治療を受けることになるでしょう。

前置胎盤

胎盤が正常な位置よりも低い、腟側にくっついている状態をいいます。
全分娩のおよそ1%弱で起こると言われ[*2]、2人目以降の妊娠、帝王切開など子宮の手術をしたことがある、以前にも前置胎盤だったことがある、出産回数が多い、高齢出産、双子などの多胎、喫煙などに当てはまると発症リスクが高まるとされています。

前置胎盤は、妊娠中期の妊婦健診時の超音波検査で見つかることが多いのですが、前置胎盤のある妊婦さんの半数以上に、妊娠中期以降、特に妊娠後期に痛みを伴わない少量の出血がみられることも分かっています(警告出血)。

妊娠中期の前置胎盤は、予定日が近づくにつれて正常な位置に戻っていくパターンも多いため、ほとんどの場合では安静にしながら、外来で様子を見ていくことになります(そのため妊娠中期の前置胎盤を「前置胎盤疑い」と呼ぶこともあります)。妊娠31週末までに真の前置胎盤かどうか診断されます[*2]。

前置胎盤と診断されたら、早めに入院し、前もって日を決めて行われる帝王切開(予定帝王切開)により出産となることが多いでしょう。ただし、警告出血が多量の場合にはそのまま入院し、緊急帝王切開となる場合もあります。

常位胎盤早期剥離

赤ちゃんがまだおなかにいる段階で、胎盤がはがれてしまうことをいいます。はがれた胎盤の程度によって症状は異なりますが、出血は少量のこともあれば大量出血となることもあります。はがれた胎盤と子宮の間に血液が溜まることで、性器からの出血がみられないこともあります。

ほかに、下腹部痛や腹部が板のように硬く張る、下腹部の圧痛などが起こり、出血量が増えるとさらに胎盤がはがれ出血も進むので、貧血、ショック症状などを伴うこともあります。こうなるとママとおなかの赤ちゃんともに危険な状態になるので、すぐに緊急帝王切開を行います。

大量出血によって播種性血管内凝固症候群(DIC※)という状態に陥ると、さらに出血が止まらなくなるため、輸血などの処置も必要になります。

※体中の細い血管に小さな血栓ができ、血管を詰まらせたり出血を起こしたりする状態。

子宮頸管ポリープ

子宮頸部にできた良性の腫瘍で、成人女性の2~5%に見られます[*3]。出産経験のある女性や40代以降の女性に多いことがわかっています。

とくに症状がないことが多いのですが、おりものの増加や出血がみられることもあります。一般的にポリープががん化することはまれですが、出血が続くと感染が起こりやすく流産や早産のリスクが高まるため、ポリープの状態や大きさなどによっては妊娠中でも切除することもあります。

性器以外からの出血の可能性も

下着やトイレットペーパーに付いた血液を見て、不正性器出血かもと不安になる妊婦さんも少なくないでしょう。ですが、なかには性器以外の場所から出血していることもあります。

痔による出血

不正性器出血と間違いやすい、代表的なトラブルが痔からの出血です。
真っ赤でポタポタたれるような出血がみられたら、痔が原因ということも考えられます。

痔にはいくつか種類がありますが、妊娠中にできやすいのは、内痔核(いぼ痔)です。肛門の内側にあるクッション状の組織(静脈叢)がうっ血して、いぼ状に膨らんだ状態で、ある調査によると、妊娠した女性の3割ほどが痔を経験していることがわかっています[*4]。

内痔核の主な原因は便秘です。
妊娠中はさまざまな理由で便秘になりやすく、トイレでいきんでしまうと、それがきっかけでうっ血が生じ、内痔核ができてしまうのです。

痔を予防するにはまずは便秘解消から

妊娠中にできた痔核は、出産後に徐々に改善していくので、過度に心配する必要はありません。ただ、妊娠中は痔になりやすく、痔になると痛みも出ることがあるので、生活の質が下がります。「作らない・悪化させない」ための生活を心がけましょう。

そのためには、まず行いたいのが便秘の改善です。
水分を十分に摂る、食物繊維の多い食事にする、適度な運動をする、といった対策が有効です。
それでも便秘が改善できないときは、薬を使うという手もあります。便秘薬のなかには妊娠中でも飲めるものもあるので、主治医に処方してもらいましょう。
お風呂に入って、肛門の周囲の血行をよくすのも痔の予防としては効果的です。
便秘予防については下記の記事も参考にしてみてください。

痔ができてしまったときは、入浴時などにシャワーで患部を洗って清潔にします。
トイレのウォシュレットを使うのは問題ありませんが、ビデは尿路感染症(後述)を起こすリスクがあるので控えます。
痔の症状が強い場合は、主治医に座薬や軟膏を処方してもらいましょう。

尿がピンク色をしていたら

尿がピンク色をしていたら、尿路感染症による血尿が疑われます。
尿路感染症とは尿道や腎臓などに生じた感染症で、原因の多くが大腸菌です。
女性は尿道と肛門が近い上、尿道の長さが約4cmと短い(男性は約20cm)ため[*5]、男性より尿路感染症にかかりやすいといわれています。

さらに、妊娠すると子宮が大きくなり尿道を圧迫するため、感染リスクが高まります。
血尿のほか、残尿感があってすっきりしない、排尿時や排尿後にしみるように痛い、尿が濁っている、普段とは違う匂いがするといった場合は尿路感染症が疑われるので、かかりつけ医に相談しましょう。

まとめ

妊娠中期の女性
Lazy dummy

つわりも治まることが多く、心身ともに妊娠ライフにも慣れてくる妊娠中期ですが、この時期に出血したらまずは医療機関に連絡を。緊急の治療が必要になったり、妊娠の継続が難しくなったりする場合も少なくありません。
落ち着いて出血の状況を主治医に伝え、指示を仰ぐことが大切です。

(文:山内リカ/監修:直林奈月先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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