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2021年01月13日 14:31 更新

【医師監修】赤ちゃんの虫刺されにはどう対処する? 蚊に刺された時のケアと注意点

大人でも煩わしい、蚊による虫刺され。赤ちゃんが刺されると、搔き壊さないか、感染症の危険はないのか心配になりますね。赤ちゃんの虫刺されは、きちんとケアをして悪化を防ぎたいもの。そこで正しい対処法と注意点を紹介します。

赤ちゃんが虫に刺されたらどうなる?

虫刺され
Lazy dummy

赤ちゃんや小さな子供が蚊に刺された時は、ただの虫刺されと放置せずに、適切に対処しましょう。刺された部分を掻き壊すと、細菌の感染を起こしたり、跡が残ってしまったりする可能性があります。まずは家でできるケアを行いつつ様子を見て、必要な場合は小児科や皮膚科を受診しましょう。

大人と反応が異なる赤ちゃん・子供の虫刺され

赤ちゃんや子供が蚊に刺されると、大人よりも大きく腫れてしまうことがあります。その理由は、体の大きさや皮膚の弱さの差ではなく、「蚊に刺されることの経験値の違い」です。

蚊にさされてかゆくなる、赤くなるという症状は、蚊の唾液に対するアレルギー反応。蚊に刺されることを繰り返すうちに次第に体が慣れるため、大人になると反応は軽くなっていきます。

 ・すぐに出る反応、後から出る反応

蚊に刺された時の皮膚に出る反応には2種類あって、
①刺されてすぐに出る赤みやかゆみ(即時型反応:そくじがたはんのう)
②刺されて1~2日で出る赤みやかゆみ(遅延型反応:ちえんがたはんのう)
があります。

どちらが出るかは、その人の年齢によって変わってきます。
個人差はありますが、一般的には、乳幼児は②のみ、幼児~青年は①と②の両方、青年~壮年で①のみ、老年になると反応が出ないとされています[*1]。

 ・新生児は虫刺されの症状が出ない!?

寝ている赤ちゃん
Lazy dummy

赤ちゃんの場合、生まれて初めて刺された時は反応が起こりません。これが数回刺されると、遅延型反応が見られるようになります。

最初は刺されてしばらく(半日~1日ほど)してから赤い点が現れ、1日くらいで消えてしまう程度。そこから虫刺されの回数を重ねると、刺された部分が腫れてしこりができたり、強いかゆみを伴うほか、水ぶくれができることもあります。

1~3歳頃では刺されてから1~2日後に大人より強く腫れ、5~7日ほど続きます[*2]。この時、かゆくて掻き壊してしまうと、とびひなどの細菌の感染を起こしたり、痒疹(茶色いしこり)になってしまうことがあります。

このように、赤ちゃんや子供の虫刺されは大人より症状が重く、かゆみをがまんできずに掻いてしまい悪化させやすいので、注意が必要です。

蚊に刺された時のケアと治療法

蚊による虫刺されに気づいたら、まずは下記のようにケアをして悪化を防ぎましょう。その後、必要に応じて小児科や皮膚科で受診してください。

 1.かゆみや腫れがある場合は冷たいタオルなどで冷やす

かゆがっている時、腫れがある時は清潔な冷たいタオルなどでよく冷やしてあげると、落ち着くことがあります。

 2.かゆみ止めの薬を塗る

かゆみ止めの薬を子供に塗るママ
Lazy dummy

かゆみを抑えるため、虫刺れの薬を塗ります。市販薬の場合、使用開始目安年齢を確認し、月齢に合ったものを選ぶといいでしょう。生後6ヶ月以降であれば、大半の虫刺されの市販薬を使うことができますが、念のため使う前に薬の説明書で確認を。

 3.水ぶくれがある場合は壊さないようガーゼで保護

水ぶくれがあると、破れた時に細菌に感染し、それが広がる「とびひ」になることも。できるだけ潰れないように、ガーゼで保護を。

 4.経過を観察する

1〜3の方法で様子を見てもよくならない、水ぶくれが破れた時は迷わず受診を。治りが悪いまま自宅でのケアを続けていると、症状が長引いたり跡が残ったりする原因になります。蚊アレルギー(蚊刺過敏症)もあるので、経過をよく観察して、38度以上の熱が出る、リンパの腫れ、刺された部分に潰瘍が見られるといった症状が出たら病院で検査を受けましょう。

また、汗をかいた時はこまめに拭いたり、シャワーを浴びたりするよう、清潔にしましょう。赤ちゃんが掻き壊さないよう爪を切っておくことも忘れずに。

病院での治療法

症状にもよりますが、主に市販薬よりも強いステロイド外用薬が処方されます。かゆみがひどいなど症状が強い場合は、抗ヒスタミン薬やストロイドの内服薬が処方され、腫れがひどい場合には冷湿布をすることもあります。出血や分泌物がある時は、抗生物質の塗り薬が処方されます[*1]。

虫刺されを予防するには

虫刺されクリームを赤ちゃんの頬に塗る様子
Lazy dummy

赤ちゃんが蚊に刺されると大きく腫れてしまい、悪化の可能性があるほか、感染症にも気をつけたいもの。赤ちゃんは自分で虫を避けることができないので、刺されないように注意してあげることが大切です。

赤ちゃんのための虫除け対策

赤ちゃんのために実践できる虫除け対策を紹介します。

 ・部屋に虫が入らないようにする

セミなどの虫の侵入を防ぐ網戸
Lazy dummy

赤ちゃんは家で過ごすことが多いので、部屋に虫が入らないようにすることが一番大切な予防になります。窓やドアを開けたままにしない、網戸を使用するなどして、虫の侵入を防ぎましょう。蚊取り線香を使用する場合は、狭い部屋や締め切った部屋で使うのは避け、換気のよい状況で使用しましょう[*3]。

 ・蚊帳(かや)を使う

ベビーベッド、クーハンなど赤ちゃんが夜や日中に寝て過ごす場所に蚊帳を張ることで蚊の侵入を防げます。ベビー用のサイズやワンタッチで簡単に設置できるテント型もあるので、必要に応じて活用しましょう。

 ・虫がいそうなところへ行く時は露出を少なくする

理出をおさえた子供
Lazy dummy

公園など蚊が多い場所へ外出する時は、薄手の長袖、長ズボン、防虫対策ウエア、帽子を身につけるなどして露出を少なくする工夫を。蚊は黒を好み、白を嫌うので黒い色の服は避け、白っぽい色の服を着るのもいいでしょう。

 ・虫除けスプレー、ジェルを使う(イカリジン、ディート)

乳幼児のうちは、虫除け剤は日常的には使用せず、必要なシーンに絞って使用してください。使用する際は下の注意点も参考に、虫除け剤を選ぶ時は赤ちゃんも使える商品を選ぶことはもちろん、虫除けの成分にも注目しましょう。

虫除け剤に関しての注意点

赤ちゃんや小さな子供に虫除け剤を使用する際は、いくつか注意したいことがあります。

 ・塗る場所・塗り方

まず、顔や手には塗らないようにしましょう。エアゾールタイプは吸入の心配があるので、一旦親の手に出してから塗るようにします。虫除けの他に日焼け止めや薬などを塗る場合は、まず日焼け止めや薬を塗ってから、その上に虫除けを塗りましょう。

 ・選び方

次に、虫除け剤を選ぶ際は、含まれる成分も確認しておきましょう。

<ディート>
主要な忌避成分に「ディート(ジエチルトルアミド)」を使用している虫除け剤は、6ヶ月未満の乳児には使用できません。6ヶ月以上でも12歳未満の子供に使用する場合は、以下の回数を目安にしましょう[*4]。
 ・6ヶ月未満の乳児には使用してはいけません
 ・6ヶ月以上2歳未満は、1日1回
 ・2歳以上12歳未満は、1日1~3回
ディートは日本では50年以上使用されており、虫除け効果が高いといわれています。毒性は低いとされていますが、医薬部外品のディートの濃度は銘柄による差があり、医薬品に近いものもあるので、医薬部外品でも使用量などの取扱いに注意しましょう[*5] 。

<イカリジン>
その他に赤ちゃん・子供向けの虫除けに使われる忌避成分に「イカリジン」があります。こちらはドイツで開発され、日本でも2015年に使用が認められた成分。ディートと同等の虫除け効果があり、年齢による制限や使う回数に制限はありません。繊維を傷めないので衣服など布にかけて使用することもできます。

日本脳炎ワクチン接種を

蚊による虫刺されで心配なことのひとつに、感染症があります。デング熱、ジカ熱、マラリアなど蚊が媒介して感染する病気はいくつかあります。これらの感染症が発生しているのは主に熱帯や亜熱帯地域ですが、2014年に国内でデング熱が発生したこともあり、油断せずにできるだけ蚊に刺されないよう注意したいものです。

また、蚊が媒介する感染症には日本脳炎があります。日本脳炎はブタなどの体内で増えて血中に出てきたウイルスを蚊が吸血し、その蚊が人を刺すと感染する病気で、死亡率が高く(約20~40%[*6])後遺症を残すことも多くあります。

ワクチンは定期予防接種になっており、1期接種を3〜4歳の期間に2回、約1年後に追加接種、2期接種を9〜10歳に1回受けることを標準的な接種時期としています[*7]。日本小児科学会では、リスクが高い場合(日本脳炎の流行地域に渡航・滞在する場合、最近日本脳炎が発生した地域やブタの抗体保有率が高い地域に住んでいる場合)は生後6ヶ月からの接種を推奨しています。住んでいる地域で推奨される時期になったら速やかに受けるようにしましょう[*8]。

まとめ

赤ちゃんに虫刺されクリームを塗る様子
Lazy dummy

赤ちゃんが蚊に刺されると、刺された部位が悪化しやすいだけでなく、蚊によるアレルギーや感染症のリスクも。虫が多くなるシーズンには特に注意して刺されないように守ってあげましょう。虫除け剤を使う場合は、成分にも注意して用量や回数を守ってください。そして、もし虫刺されを発見したら決して放置せず、適切に処置してあげましょう。

(文:佐藤華奈子/監修:梁尚弘先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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