【医師監修】夜泣きはいつまで続く? 夜驚症との違いと長引く夜泣きの対策3つ
夜泣きをする赤ちゃんは多いもの。一時期でおさまるとはいえ、何をしても泣き止まない夜が続けば、ママ・パパは睡眠不足でつらくなりますね。そこで今回は、赤ちゃんの夜泣きはいつまで続くのか、長引く場合の対策なども含めて説明します。
夜泣きとは? いつから始まりいつごろまで続くの?
赤ちゃんの“夜泣き”はよく知られている言葉ですが、実際にどんな状況のことを指し、いつごろ起こることが多いのかをまずは知っておきましょう。
夜泣きとは?
「夜泣き」には、実ははっきりした定義があるわけではありません。一般的には、「乳幼児が夜に泣き出したり眠ったりを繰り返すこと」と考えられています。
夜泣きは病気ではなく、原因もよくわかっていませんが、成長過程で睡眠リズムが変化することに伴い起こるといわれています。 夜泣きの程度や時間帯などは非常に個人差が大きく、赤ちゃんによってまちまちですし、中にはまったく夜泣きをしない子もいます。
夜泣きが始まるのはいつごろ?
生まれてしばらくは、赤ちゃんは昼夜関係なく、数時間ごとに眠ったり起きたりをくり返します。夜中も数時間おきに空腹や不快感で泣きますが、これはその後に始まる夜泣きとは別のもの。
よく言われる夜泣きとは、夜にある程度まとまって眠るようになってからのものを言い、早い場合には生後3ヶ月ごろから、多くは6~11ヶ月ごろに起こります。
赤ちゃんにはよくあることで、生後3~12ヶ月で1週間に3日以上夜泣きをする子は、約20%いるともいわれています。1歳までの赤ちゃんの5人に1人が、程度の差こそあれ夜泣きをしているのですね[*1]。
夜泣きはいつごろおさまるの?
夜泣きがおさまる時期も、始まる時期と同じように個人差があります。たいていは0歳代に始まり1歳を過ぎると夜泣きをする子は急激に少なくなってきて、3歳過ぎにはほとんどいなくなります。
一度おさまった夜泣きが、再度始まることもあるの?
ときには一度おさまった夜泣きが再び始まることもあります。心身の成長がいったん落ち着いたタイミングや生活環境・リズムの工夫などにより一度おさまったけれど、なんらかのきっかけで再発するというパターンです。こういった子の場合は、もともと夜泣きをしやすいタイプであることも考えられます。
また、2歳ごろから始まる夜泣きは、一般的な夜泣きではなく、たとえば「夜驚症」などの睡眠障害のこともあります。夜驚症についてはのちほどくわしく紹介します。
3歳でも夜泣きってするの?
さきほど、通常の夜泣きは3歳過ぎにはほとんどなくなると紹介しましたが、実際は幼児になっても「これ夜泣き?」というような行動を示す子はいます。
3歳でも夜泣きすることはある
一般には、夜泣きは3歳ごろまでにおさまると言われていますが、中には3歳になっても夜泣きが続いていたり、3歳過ぎてから夜泣きが始まる子もいるようです。
一般的な夜泣きに明確な定義はなく、はっきりした原因もわかっていないが、成長過程で睡眠リズムが変化することに伴い起こると前述しました。3歳過ぎで起こる夜泣きも、はっきりした原因はわかりませんが、このころになってもまだ、睡眠の発達が大人に比べて未熟であることが影響している可能性はあります。
新生児期は、昼夜関係なく1~4時間眠って1~2時間起きているという生活サイクルをくり返します。このころは浅い眠りの「レム睡眠」が睡眠の半分を占めており、睡眠が細切れになるのですね。レム睡眠の割合は成長とともに減少していきます。
生後6ヶ月ごろになると昼夜の区別がはっきりしてきて、1歳ごろになると夜にまとめて眠るようになってきます[*1, 2]。
大人の場合は、入眠からノンレム睡眠(90分)とレム睡眠(90分)のサイクルをだいたい4回ほど繰り返してから自然に目覚めることが多いといわれています。一方、子供は、2歳以上になってようやく深い眠りのノンレム睡眠と浅い眠りのレム睡眠の区別がはっきりとしてきて、睡眠のサイクルが整ってきます。
とはいえ、3~4歳まではこのサイクルが大人より短く、1回40~60分です。5~10歳ごろになるとだんだん長くなり、90分周期になるといわれています。つまり、3歳ごろではまだまだ睡眠のリズムは発達の途中にあり、大人と違って不安定なのですね。
幼児期に始まる夜泣きは、「夜驚症」の可能性も
ぐっすり眠っていた子が夜中に突然目を覚まし、何かを怖がったりおびえたりしているような様子を見せて泣き叫ぶのが「夜驚症」です。夜驚症は、子供によくみられる睡眠障害の一つで、子供の1~6.5%程度[*3]に起こると言われています。
夜驚症の症状が起こると数分~20分程度続きますが、しばらくするとまた眠り、目を覚ましたときには子ども自身はほとんど覚えていません。起こりやすい年齢についてはいくつか説がありますが、2歳ごろから多くなって3~8歳くらいの子どもに多いといわれ、成長とともに自然におさまっていきます[*4, 5]。
夜泣きが夜驚症であっても、特別な対応が必要というわけではありません。子供が動きまわったり暴れたりしても無理に止める必要はなく、ケガをしないように室内の危ないものを片付けるなどしたうえで、おさまるまでやさしく見守ってあげましょう。
また、夜驚症も、通常、治療の必要はありません。ただ、夜間何度も起きたり、毎日起きてしまう場合は、一度かかりつけの小児科に相談してみると良いでしょう。たとえば扁桃腺の腫大など、子供の眠りを邪魔する要素がないかや、てんかんが隠れていないかなどのチェックが必要な場合もあります。
3歳過ぎの夜泣き対策3つ
子どもが成長するにつれ、いずれはおさまる夜泣き。とはいえ、渦中にあるママ・パパの負担は大きく、できるだけ早く解放されたいですよね。
これをすればかならず夜泣きが改善するという対策があるわけではありませんが、まずは以下の3つの方法を試してみまるとよいでしょう。
1.生活リズムを整える
規則正しい生活リズムで過ごすことが、夜泣きの改善に役立つ場合もあります。生活リズムを整えるためには、朝起きる時間と夜寝る時間をだいたい決めて、就寝と起床が毎日決まった時間になるようにすることがポイントです。昼寝をする場合は夜の就寝時間に影響しないよう、午後早めにすませて、夕方までずれこまないようにしましょう。
スムーズに眠りにつくためには、寝る前に子どもにテレビ、スマホやタブレット、パソコンなどを見せないことも大切です。私たちは、暗くなると脳からメラトニンというホルモンが分泌され、体の状態が覚醒から睡眠へと切り替えられて体温が下がり、眠くなってきます。このメラトニンの分泌が、LEDディスプレーなどからのブルーライトを見ていると抑制されてしまうのです。
さらにテレビは、画面が明るくてまぶしいうえ、ボリュームもいつも通りにしているとにぎやかなため、寝る前の子どもが見ていると脳が興奮した状態になってしまいます。
そこで、寝る前には子どもが安心して眠りに入れる雰囲気作りをしましょう。絵本の読み聞かせをしたり、親子でたっぷりスキンシップをとるなど、静かでゆっくりした時間を過ごすといいですね。
2.環境の変化に注意する
環境の変化というと、引っ越しや旅行、保育園入園など大きな出来事を思いがちですが、子どもにとっては、にぎやかな場所に行ったり大勢の人と会ったなど、いつもと違う経験をすることも刺激になります。
睡眠リズムをはじめ、心身ともに急速に成長する過程にあって不安定な時期ですから、環境の変化を経験した日には、寝る前にやさしく抱っこして安心させてあげてください。
ただ、ママが一人で頑張りすぎないでください。日頃からパパにも協力してもらい、夜泣きのときは交代であやせるといいですね。睡眠不足で体がつらいときには、日中、信頼できる人や自治体などの運営する一時預かり所などに子どもを預けて、できるだけ体を休めるようにしましょう。
3.睡眠中の室温を快適に
夜泣きは、睡眠中に暑い・寒いなどの不快を感じることが原因で起こることもあるので、寝室の室温は快適な温度を保つことが大切です。子どもが快適に眠れているかを確認するため、時々子どもの背中に手を入れたり手足を触ったりしてみましょう。
一般には、子どもは大人よりも体温が高く暑がりです。寒い時期でも、寝冷えを心配するあまりたくさん着せたり寝具をかけ過ぎたりすると、子供にとっては暑すぎて寝苦しいことも。背中に手を入れて汗をかいている場合は、冬でも暑いということですから、かけるものを1枚減らすなど調節しましょう。
暑い時期は、寝苦しくないようにエアコンを上手に使うといいですね。ただ、冷房した室内で眠っていて手足が冷たくなっている場合は、エアコンの設定温度を上げるかかけるものを1枚増やすなどして、体が冷えすぎないよう注意してあげましょう。
まとめ
夜泣きの有無や、始まる時期と終わる時期、程度などには、個人差がとても大きいものです。中には、2~3歳以降まで夜泣きが続いたり、そのころから夜泣きが始まってしまうケースもあるでしょう。どのような場合も、まずは考えられる要因を確かめて、できる対策をしてみましょう。
(文:村田弥生/監修:大越陽一 先生)
※画像はイメージです
[*1]厚生労働省:子どもの心の健康問題 ハンドブック, 124p
[*2]日本睡眠学会:6.睡眠の発達
[*3]厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針 2014」, p61
[*4]徳島県医師会
[*5]MSDマニュアル:睡眠の問題
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます