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2021年06月03日 11:47 更新

【医師監修】着床出血とは? 生理の症状との違いと妊娠の可能性

妊娠を心待ちにしている人は、着床したかどうか毎月気になることでしょう。もしかしたら、着床した時に出血が見られる「着床出血」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これはどんなものなのでしょうか? 生理との違いや妊娠しているかどうかの見分け方についてお話します。

妊娠成立って?

カレンダーに生理の日程を書き込む様子
Lazy dummy

妊娠成立とは、つまり「受精卵が子宮内膜に“着床”すること」です。

気になる「着床出血」について解説する前に、ここでまずは生理から着床までに起こることについて解説します。

生理から排卵、着床までの大まかな流れ

着床までのながれの図

着床までは、次のような過程をたどります。

【1】卵巣から卵子が「排卵」される

【2】卵子と精子が卵管の中で出会い「受精」する

【3】受精卵は胚に成長しながら子宮に向かって移動

【4】子宮についた胚が子宮内膜に「着床」


【1】~【4】で起こることについて、それぞれくわしくみていきましょう。

排卵って?

最初に起こる「排卵」とはどういうできごとなのでしょうか?生理周期が28日の人の場合は、生理が始まってから14日目くらいに、卵巣から卵子が通常1つだけ排出されます。これが「排卵」です。

排卵される前の卵子は、卵巣の中の卵胞という袋の中にいます。
脳下垂体から分泌されたホルモンの刺激で、いくつかの卵胞が成熟し、そのうちの1つの卵胞だけが成熟します。
排卵は、成熟した卵胞から卵子が排出されて起こります。

排卵された卵子は、約24時間しか生きることができません。精子と出会って受精するまでのタイムリミットはたった1日しかないのです[*1]。

受精って?

排卵の次のステップ、「受精」を見ていきましょう。
セックスをして男性が射精すると、女性の体の中に精子が入ります。この精子と排卵された卵子が出会い、融合して受精卵という1つの細胞になるのが「受精」です。

腟の中に精子が射精されると、精子は子宮の中を通って卵管に入り、卵管膨大部で卵子と出会います。

精子が女性の体内で生きられるのは72時間と言われています [*1]。
排卵されて24時間以内の卵子が、射精されて72時間以内の精子と出会わなければ、受精は成り立たないのです。受精は精子と卵子のタイミングが合わないとできない、とても貴重なできごとと言えます。

着床って?

精子と卵子が出会うと、融合して受精卵という1つの細胞になります。

受精卵は2個、4個、8個、16個と細胞分裂を繰り返して胚として育っていきます。それとともに卵管の中を子宮に向かって移動していきます。

受精後数日で胚は子宮の中に到着します。着床直前の胚は胚盤胞になります。
受精後5、6日目には、胚盤胞は子宮内膜にくっついて潜り込み、根を張っていきます。これが「着床」で、これをもって妊娠が成立したことになります。

着床出血と生理はどう見分けるの?

生理の出血のイメージ画像
Lazy dummy

着床すると「着床出血」という出血が起こることがあります。着床出血とは具体的にはどんなものなのでしょうか?

着床出血はなぜ起こる?

着床すると、胚盤胞は子宮内膜にくっつき、中に潜り込んでいきます。このときに、胚盤胞が潜り込んだ箇所から少し出血をすることがあります。これが「着床出血」です。

着床出血の症状って?

着床出血をした時には、どんな症状が見られるかチェックしておきましょう。

出血の量や日数

着床出血は、普段生理が始まるくらいの時期かその少し前に起こります。生理よりも量が少なくて3日程度で終わるので、ほとんどの人はいつもの生理と違うことに気づくことでしょう。
ただし、もともと生理の量や日数が少ない場合は、あまり違和感がないこともあるかもしれません。

腹痛・頭痛などの症状はある?

着床は、子宮の中のごく小さな箇所で起こるできごとです。そのため、「胚盤胞が子宮に潜り込んでいく痛み」を感じることはないでしょう

ただし、着床出血が起こるころには、下腹部の痛みや頭痛、吐き気などの症状を感じる人もいると言われています。これらは、生理前にイライラや下腹部痛、頭痛などを女性に起こす月経前症候群(PMS)の症状によく似ています。

PMSの原因はよくわかっていませんが、黄体ホルモン(プロゲステロン)がかかわっていることは間違いないだろうとされています。着床出血が起こるころも、妊娠のために黄体ホルモンが減少せず増えていく最初の時期です。

着床出血が起こるころの腹痛や頭痛には、もしかしたらPMSに似た理由があるのかもしれません。

その他

着床出血が見られるのは、すべての妊娠の8~25%と言われています。つまり、着床しても着床出血が見られない人の方が多く、着床出血がないから妊娠していないとは言えません [*1]。

妊娠した可能性があるとき、まず何をすればいい?

〜妊娠の可能性があれば検査薬でチェックし、受診しよう〜

妊娠を心待ちにしている人の中には、性器からの少量の出血イコール「着床出血かも!」と思ってしまう人もいるかもしれません。

でも残念ですが、少量の出血をしただけでは妊娠したかどうかはわかりません。
着床出血かどうか気になったら、次の方法で確認し、妊娠の可能性があれば産婦人科で診てもらいましょう。

妊娠検査薬によるチェック

市販の妊娠診断補助試薬(妊娠判定キット)で、妊娠しているかどうかを調べてみましょう。妊娠判定キットには、生理予定日の当日から検査できるもの(早期妊娠検査薬)と、生理予定日の約1 週間後から検査ができるものの2種類があります。

いずれも中に入っている説明書をよく読んで、正しい使い方で検査してみましょう。 また、陽性反応だったら、子宮内膜に着床しているかどうか確認してもらうために、かならず医療機関を受診しましょう。

基礎体温によるチェック

妊娠検査薬のイメージ画像
Lazy dummy

毎日基礎体温を測っているのであれば、体温の変化から妊娠した可能性があるかどうか、ある程度、把握できます。

基礎体温の測定では、朝起きてすぐ、横になったままで婦人体温計で体温を測り、高温期が17 日以上続いていたら妊娠の可能性があります[*2]。

ただし妊娠していなくても、熱が出るような病気にかかっていたり、ホルモン剤を投与されていると、高い体温が続くこともあります。

なお、妊娠したかどうかの確認にはなりませんが、つわりのような症状が妊娠に気付くきっかけとなる可能性はあります。

つわりは妊娠5~6週ごろから起こることが多く、吐き気やおう吐、食欲不振などが起こります。

さきほど紹介したとおり、着床しても着床出血をしない人も多いですし、着床出血以外の原因で性器から出血することもあります。また、なんらかの異常で生理の出血量が少なくなることもあります。生理の様子がいつもと違うと感じた時も、医療機関で診察を受けておきたいですね。

まとめ

着床出血は、受精卵が子宮に着床することで起こる出血です。全妊娠の8~25%に見られるとされ、妊娠しても起こらないことも普通です。

着床出血は生理予定日ごろに起こりますが、いつもの生理よりも量が少ないため、「いつもの生理とは違う」と気づきやすいかもしれません。ただし、もともと生理の出血量が少なかったり、生理の日数が短い場合は違いに気づかない可能性もあります。

妊娠していれば基礎体温が17日以上高くなりますし、市販の妊娠判定キットを正しく使用することで妊娠したかどうかを確認することもできます。とはいえ、どちらにしても正常妊娠かどうかは産婦人科で診てもらわなくてはわかりません。

妊娠する可能性があって、少量の出血があった場合は、妊娠検査薬を使用したうえで、産婦人科を受診するようにしましょう。

(文:大崎典子/監修:直林奈月先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]『NEWエッセンシャル 産科学・婦人科学 第3版』医歯薬出版株式会社
[*2]『HUMANプラス 第二版』P47

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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