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2022年12月02日 11:19 更新

【眼科医監修】新生児期の寄り目の原因は? 赤ちゃんの斜視チェックの方法

新生児期の赤ちゃんはつぶらな瞳がかわいいのですが、寄り目に見えることがあります。この場合、中には、斜視など、早期の治療が必要なものがありますが、寄り目に見えるだけの「偽斜視」というものもあります。赤ちゃんが寄り目になる原因と対応策について説明します。

新生児が寄り目っぽい……どうして起こる?

赤ちゃんが寄り目になるのには、どんな原因があるのでしょうか? そもそも、寄り目とはどういう状態をさすのかも含めて、見ていきましょう。

状態|眼の位置がずれている

通常、人の目は正面を向いたときに、左右の黒目(瞳)が「目の中央」に来ます。

片目は正面を向いているが、もう一方の黒目が真ん中からずれている状態を「斜視」といい、寄り目は一方の黒目が内側にずれているもので、医学的には「内斜視」といいます。

ちなみに、一方が外側にずれているものは「外斜視」、上や下に斜めにずれている「上斜視」「下斜視」という状態もあります。

原因|新生児の寄り目は「偽斜視」も多い

新生児の目

赤ちゃんは鼻の根元が低くて広く、目頭の皮膚で内側の白目が隠れてしまい、あたかも内斜視のように見えることがあります。

これは見かけ上のものであり、本当に斜視になっているわけではないので、「偽斜視」または、「仮性内斜視」といいます。これが原因の偽斜視は、成長に伴い、顔立ちがはっきりしてくると自然と目立たなくなります。

ただし、本当の斜視と偽斜視の判別は、眼科医でも難しいとされています。本当に斜視である場合は早期の治療が重要なので、「赤ちゃんの目つきがおかしい」と感じたときは、自己判断せずに、眼科を受診するようにしましょう。

本当の斜視の場合は注意が必要

寄り目が本当の斜視による場合は、原因を調べて治療する必要があります。放置すると弱視を引き起こすことになるので、注意しましょう。

斜視が「弱視」を引き起こすことも

目を開けている赤ちゃん

生まれたばかりの赤ちゃんは、明るいものをぼんやりと認識するくらいの視力しかありません。

また、目を動かす筋肉も未発達で、眼球が安定していないのが普通です。生後2ヶ月くらいになると、ママの顔をじっと見つめたり、動く物を目で追うようになります。これは瞳の位置が安定することで可能になる動作で、ピント合わせなどにより目を使うことで視力が発達していきます[*1]。

また、一つのものを両目で見ることで、立体感や遠近感がわかるようになる「両眼視機能」も発達していきます。赤ちゃんがおもちゃなどに触れようとして手を伸ばす動作をするようになるのも、この機能の発達を示しています。

ところが、「斜視」があると、ものが二重に見えたり、ずれている方の目で見ると、ものがぼやけたりするため、無意識のうちに正常な目だけを使うようになります。すると、ずれた方の目の視力の発達が妨げられ「弱視」になることがあります。

弱視とは眼鏡などで矯正しても視力が上がらない状態のことです。こうなると片方の視力の発達が妨げられるので、両眼視機能の発達も妨げられます

斜視の原因には、
・目を動かす筋肉や視力が左右アンバランス
・神経に異常がある
・遠視がある
・目の病気
・脳の病気
・全身の病気に伴うもの

などがあります。

斜視の場合は早めの治療が重要

斜視は外見だけでなく、視力の発達にもかかわるため、早期発見と早期治療が大切です。

治療法は斜視の種類や年齢により異なりますが、治療目的は3段階に大きく分けることができます。第1段階は「両目の視力を良くする」こと。斜視では、ずれている方の目が弱視になることがあり、この目の視力を改善する必要があります。

次に、「目の位置をまっすぐにする」ことです。眼鏡を使用するだけで視力を改善でき、目のずれが直ることもありますが、手術が必要なときもあります。斜視の種類によって、手術が必要かどうか、何歳のときにどのような手術を行うかなどを慎重に検討する必要があります。

最後の目標は、両方の目でものを見る力、「両眼視機能を獲得する」ことです。両眼視ができるようになることで、ものが立体的に見えるようになります。

斜視のうち、目の焦点を合わせる機能に異常があるものを「調節性斜視」と言います。この場合、眼鏡で遠視を矯正すると斜視も治ることがあります。

調節性斜視以外のうち、常に外斜視となっている「恒常性外斜視」は早期の手術が必要です。疲れている時や眠い時などにときどき斜視となる「間欠性外斜視」の場合は、視能訓練、プリズム眼鏡などにより訓練を行う場合もあります。またこの場合、進行の早さや症状などにより手術時期は人によってさまざまです。

偽斜視と斜視はどうやって見分けるの?

受診する赤ちゃんのイメージ

治療の必要な内斜視と、治療の必要のない偽斜視の見分け方は、眼科医でも難しい場合があります。おかしいなと思ったら、素人判断しないで、早めに眼科を受診しましょう。

おかしいなと思ったら早めに眼科を受診しましょう

偽斜視ならば、成長につれ自然に目立たなくなりますが、本当の斜視は治療しないで放っておいても治りません。

とくに、生後2ヶ月以降に大角度の内斜視がある場合には自然軽快はほとんどないといわれています。また、生後6ヶ月以内に発症した内斜視を「乳児内斜視」といいますが、これを未治療のまま3ヶ月以上放置すると、弱視をきたし立体視の獲得が困難になります[*2]。

何となくおかしいな、と感じたら、迷わず眼科を受診してください。

眼科では、視力検査や目の位置の検査、両眼視の機能を調べる検査などを行います。また、斜視の原因を探るために、全身検査を行ったりMRIなどの検査を行ったりすることもあります。

家庭でチェックする方法はある?

家庭で簡易的にチェックする方法では、「赤ちゃんの目頭を親指と人さし指ではさむようにして押さえたとき、左右の黒目がまっすぐ前を向いているかどうか」を観察します。

また、赤ちゃんの顔が正面を向いた状態をフラッシュカメラで撮影し (※)、光が目の黒目部分に反射しているかどうかを見ます[*1]。

※視力の低下などの障害を起こす原因となる可能性があるため、顔に向けて至近距離で撮影しないでください。特に、乳幼児の撮影では1m以上離れましょう[*3]。

くわしくは、公益社団法人 日本視能訓練士協会のパンフレット『乳幼児版 目の健康「チェックシート」』を使って確認してみましょう。

これらは、3~4ヶ月の赤ちゃんを対象とした斜視のチェック法ですが、あくまでも目安として行うものです。少しでも斜視の心配がある場合は、自己判断しないで、眼科を受診することが大切です。

わざわざ眼前まで行って撮る必要はなく、むしろ角膜の反射などが映ったスナップ写真を、複数枚お持ちいただければ大丈夫です。

家の中でお母様が、子供のために撮るスナップ程度で問題ありません。

その他の赤ちゃんの目のチェック方法[*2]

斜視以外の異常も含めたチェック方法です。ふだんから、赤ちゃんの目の動きを観察し、おかしいなと感じたら眼科を受診しましょう 。

生後2~3ヶ月までに開始 (はい いいえ)


・瞳が白く見えたり、光って見えたりしていないか

・目の大きさや形がおかしくないか

・視線が合うか

・動くものを目で追いかけるか

・目が小刻みに揺れていないか

・目つきや目の動きがおかしくないか

・極端にまぶしがったりしないか

・片目を隠すと嫌がらないか

上記以外に、斜視によって「頭をかしげている「顔を曲げている」「顎を上げている」等の頭の位置の異常や、「片目つぶり」が目立つこともあります。

繰り返しになりますが、気になる症状があるときは、早めに眼科を受診してください。

まとめ

指を吸う低月齢の赤ちゃん

新生児は鼻の根元が広く平たいため、寄り目に見えることがあっても、じつは「偽斜視」で、成長につれ自然に目立たなくなることが多いでしょう。また、新生児は目の神経や筋肉が未発達で眼球の位置が安定していないため、寄り目になっていることがあります。

しかし、本当の斜視が原因で寄り目になっている場合は、できるだけ早くからの治療が必要です。赤ちゃんの目つきがおかしいなと感じたら、必ず眼科を受診しましょう。

(文:山崎ひろみ/監修:妹尾正 先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

この記事は、医療健康情報を含むコンテンツを公開前の段階で専門医がオンライン上で確認する「メディコレWEB」の認証を受けています

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