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2021年01月21日 10:35 更新

【医師監修】赤ちゃんの血液型はいつわかる? 調べた方がいいの? 費用と時期も解説

赤ちゃんの血液型が気になることってありますよね。ところが、最近では輸血や手術が必要でない限り、調べない産院が多いようです。ここでは、そもそも赤ちゃんの血液型検査は必要なのかどうか、またもし検査を受けるならいつごろが良いのかや費用について紹介します。

血液型ってなに?

血液型をイメージしたオブジェ
Lazy dummy

初めに、「血液型とはなに?」という話から始めます。

血液型にはいろいろな分類法がある

血液型というと、A型、B型、AB型、O型の4種類に分類する「ABO血液型」を思い浮かべる人が多いでしょう。

これは1901年に初めて発見された血液の分類方法で、他人同士の血液を混ぜると血球が寄り集まる「凝集反応」が起こる場合と起こらない場合があることに着目し見出されました。そして、 輸血の際にはこの血液型を一致させる必要があることがわかりました。発見者のカール・ランドシュタイナーという医学者は、後にノーベル賞を受賞しています。

この発見以降、「ABO血液型」以外にもたくさんの分類法が発見されてきました。例えば「Rhプラス」や「Rhマイナス」に分ける「Rh血液型」もその1つ。これ以外に、最近でも2019年に日本から報告された「KANNO(カノ)」という血液型が国際的に認められました。現在、血液については37種類の分類法が発見されています 。

輸血の際に大切なのはABOとRhの適合

これらの分類法の多くは、血液の中の赤血球という成分の表面にある抗原によって型が決まります。一方、白血球に固有の血液型である「HLA」や血小板固有の「HPA」という血液型もあります。

これらのうち輸血の際の適合が最も大切なのは、ABOとRhの2つの血液型です。とくにABOがあっていないと赤血球の破壊が始まり、ときに命が失われてしまうことがあります。白血病などの血液疾患の治療で骨髄移植を行うときは、白血球の血液型であるHLAの適合が重要になります。

ABO式ではどんな違いで判定するの?

ここからは輸血などの医療行為において最も重要で、一般的にも馴染みがあるABO式血液型を中心に話を進めます。

ABO血液型では、さきほど説明したとおり、生まれつき赤血球上にある抗原が異なることがA型、B型、AB型、O型の違いを生み出します。もう少し詳しく説明すると、赤血球の膜にA抗原があるとA型、B抗原があるとB型、AとB両方あるのがAB型、AもBもないのがO型です。

この赤血球上の抗原を調べる検査を「オモテ検査」と言いますが、ABO式では、このオモテ検査のほかに、血清中の抗体を調べる「ウラ検査」も必ず行います。なぜならこの2つの検査の結果が一致することが重要だからです。

もし、片方の検査だけ行い、結果が間違っているのにそれをもとに輸血した場合、抗原抗体反応(自分の体に適していないものを排除しようとする働き)が起きてしまい、先ほど書いたように、ときに命の危険が生じます。

なお、ウラ検査では血清中に抗B抗体があるとA型、抗A抗体があるとB型、両方持っている場合はO型、両方ともない場合はAB型です。

オモテ検査とウラ検査が一致しない場合には、検体の取り違えや汚染などの技術的な誤りのほか、赤血球や血清が病気などにより異常な状態であることが原因のこともあり、理由をくわしく調べることになります。

日本人はA型が多い

人口に占める各血液型の割合は人種によって異なります。日本人のABO血液型の割合は、おおよそA型40%、O型30%、B型20%、AB型10%と言われています[*1]。

Rh式血液型について

Rh式血液型についても簡単に触れておきます。Rh式は赤血球上のD抗原の有無などによって識別される血液型です。D抗原がある人はRhプラス、ない人はRhマイナスです。 日本人にはRhマイナスの人は非常に少なく0.5%、つまり200人に1人程度。白人における15%という頻度に比べてかなり少ないです[*1]。

Rhマイナスの血液にRhプラスの血液が混ざると抗D抗体が作られてしまう確率が非常に高いため、Rhマイナスの人にはRhマイナスの血液しか輸血できません。抗D抗体は、赤血球を破壊するなどして、命に危険の及ぶ可能性のある事態を引き起こすことがあります。一方、Rhプラスの人にRhマイナスの血液を輸血することには問題ありません。

産院で血液型を教えてくれなかったけど、調べたほうがいい?

口をあけてにこやかにしている赤ちゃん
Lazy dummy

起きてほしくないことですが、万一お子さんに輸血が必要な事態が起きた時のため、血液型を知っておきたいと思うママ・パパもいるかもしれません。ところが、昔は多くの産院が生まれた赤ちゃんの血液型を調べていたのに、今はあまり行われていません。

事前に調べておく必要はない

結論から言うと、輸血などに備えて赤ちゃんの血液型を事前に調べておく必要はありません。輸血や手術などの医療処置が必要になった場合は、保護者の記憶などに頼るのではなく必ず事前に血液型検査をするからです。

赤ちゃんのときの血液型検査が勧められないもう1つの理由に、ABO血液型検査を赤ちゃんの時に行うと、正しく判定できないことがあるということもあります。

生まれたばかりの赤ちゃんの血液では、まだ抗体が作られておらず、また血液にお母さん由来の抗体が混じっていることがあるので、抗原の有無を調べる「オモテ検査」だけを行いますが、新生児ではA抗原、B抗原とも反応の強さが成人の3分の1程度と弱いのです。そのため、実際はA型やB型の赤ちゃんがO型と間違って判定されてしまうことがあります[*2]。


かつて産院がサービスの一環で赤ちゃんの血液型を調べていたころは、後から血液型の判定が変わってトラブルになることもあったようです。

赤ちゃんの血液型がどうしても知りたいときはどうすればいいの?

赤ちゃんの血液型検査がお勧めできない理由は説明しましたが、それでも「やっぱり赤ちゃんの血液型を知っておきたい」と願うママやパパもいるかもしれません。その場合は、どうすればよいのでしょうか?

全額自費になるが、調べてもらうこともできる

赤ちゃんの血液型を知りたいという場合、かかりつけの医療機関などで調べてもらうことは可能です。ただし、赤ちゃんの血管は見えづらく、何度も針を刺すことになる可能性もあります。

また、治療を前提とした検査ではなく医学的な必要性がないことから保険はきかず、費用は全額自己負担です。医療機関により異なりますが、数千円程度のことが多いようです。

血液型検査を行う適切な時期は?

先ほど解説した抗原を調べる「オモテ検査」は、2~4歳くらいになると反応が成人と同程度の強さになると言われています。

一方、「ウラ検査」で調べる抗体も、生後すぐは胎盤を通じて移行してきた母親由来の抗体が混じる可能性があり正確な検査ができません。生後6ヶ月ごろにようやく赤ちゃん自身が産生し始めるようになり、およそ1歳になるとすべての子で産生されるようになります。

よって正確に判定してもらうには、少なくとも4歳以上になってからがよく、できれば小学生になるころに再検査を受けるとより確実です[*2]。なお、幼稚園や保育園の入園または小学校への入学時の提出種類に血液型を記入する欄があったとしても、「不明」と書いておいてなんの問題もありません。

大人になってから変わることもあるって本当?

ところで、「血液型が変わった」という話を耳にすることがありますが、本当でしょうか?

結論を言ってしまえば、血液の病気で骨髄移植をした場合などを除いて、血液型が変わることはあり得ません。骨髄移植を受けたわけではないのに「子どものころの血液型と今の血液型が違う」という人は実際にいますが、それは先ほど解説したように、以前に受けた血液型検査の判定が、正しくなかったことがその理由と考えられます。

まとめ

心音器のイメージ画像
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赤ちゃんのころは、医療上の必要がなければ、血液型検査は行わないことが、今では一般的です。実際、血液型がわからなくて困ることはありませんし、輸血などの医療上の必要性が発生した場合は必ずその都度検査が行われます。ですから、あえて血液型検査だけを受けることはおすすめしません。どうしても知りたい場合であっても、赤ちゃんの苦痛や全額実費という負担も踏まえて、少なくとも正確な判定ができる時期まで検査を待つほうが賢明です。

(文:久保秀実/監修:梁尚弘先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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