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2021年01月25日 12:26 更新

【医師監修】妊娠初期の頭痛はなぜ起こる?考えられる原因と対処法、注意すべき症状

妊娠が成立すると体にさまざまな変化が起き始めて、時に不快な症状が現れます。頭痛もその1つ。頭痛もちの人の症状がひどくなったり、頭痛もちでないのに頭痛がするようになったり。ここでは妊娠初期の頭痛を中心に解説します。

【頭痛は妊娠初期症状の1つ?】

頭痛がひどく手で頭を押さえる女性
Lazy dummy

実は、頭痛に悩む妊婦さんは少なくありません。その多くは、片頭痛や緊張型頭痛というタイプの頭痛です (頭痛のタイプについては後で詳しく解説します)。とくに妊娠初期の場合、つわりの症状の1つとして頭痛が現れることもあります。 また、妊娠していない時と同様に、妊娠中もかぜなどで体調を崩した時には頭痛が起きます 。

ほとんどは「よくある頭痛」だが、命にかかわる頭痛も

頭痛はありふれた症状で、大半は自然におさまります。しかし、中にはまれではあるものの、命にかかわる頭痛もあるということを知っておいてください。この点についても後で改めて解説します。

妊娠初期の頭痛のタイプ

妊娠初期に起きる頭痛には、「妊娠したことが関係して起きるもの」と、「妊娠する前からあった頭痛が妊娠中にも引き続いているもの」の2通りあります。

妊娠が関係している頭痛

寝込んでいる女性
Lazy dummy

・ホルモンバランスの変化
妊娠初期に起きる頭痛の原因としてまず考えられることは、急激なホルモンバランスの変化の影響です。

・不安やストレス
精神的な不安や緊張、ストレス、不眠が症状をより強くしている可能性も考えられます。

・つわり
つわりとの関係もあります。一般的につわりは妊娠初期の消化器症状を指すことが多いのですが、頭痛がより強く現れる人もいます。また、つわりのために食べ物を十分食べられず血糖値が低くなって、それが頭痛に関係していることも考えられます。

・体つきの変化
妊娠初期から少し進んで乳房やお腹が大きくなってくると、首・肩の負担が増えたり、姿勢が変わったりすることも頭痛に関与します。

・その他
妊娠によって起きる体の変化、例えば鼻づまりになりやすくなること、脱水傾向になることなども頭痛を起きやすくすると考えられます。また、妊娠前にカフェインをよく飲んでいた人が妊娠したことで摂取を控えると、それも頭痛の起きやすさに関係することがあります。

妊娠中に限らず起こる頭痛

何らかの病気の症状の1つとして現れる頭痛を「二次性頭痛」といいますが、それに対して片頭痛、緊張型頭痛などは頭痛そのものが病気の本態であり「一次性頭痛」と呼ばれます。

一般的な一次性頭痛である片頭痛や緊張型頭痛などは、妊娠中にもよくみられます。これらは明らかな原因がまだよくわかっていません。


◆片頭痛

脈に合わせて頭の一部がズキンズキンとした痛みが発作的に起きる病気です。頭痛の前に、ギザギザした光が目の前にちらつくなどの前兆症状が現れるという人も少なくありません。

・20~40代の女性に多い片頭痛
日本人の8.4%が片頭痛を持っていて、とくに女性は男性の3倍の頻度。さらに20~40代に多い[*1,2]ので、妊娠する前からすでに片頭痛を繰り返すようになっていることが少なくなく、妊娠中に片頭痛を初めて発症する例も1.9%あるという報告もあります[*2]。なお、患者さんの半数程度に家族歴がある、つまり血縁者に片頭痛の人がいることが多いことがわかっていて、一部の片頭痛では原因遺伝子も見つかっています。

・妊娠すると片頭痛は軽くなる?
さて、この片頭痛、女性では初潮の前後に起こり始めることから、女性ホルモンが原因の1つと考えられています。 そして実は、妊娠すると症状が改善する人が多いことも知られています。 ただし出産後には再発することも多く 、また妊娠によってむしろ症状が悪化する人も若干います 。
片頭痛のある妊婦さんは、妊娠高血圧症候群の発症率が高く、低出生体重児や早産のリスクが高いとする報告や、 また妊娠中の脳卒中や心筋梗塞などのリスクが高いという報告もみられます[*2]。

◆緊張型頭痛

頭を締め付けられるような、脈拍(みゃくはく)とは関係のない(非拍動性) 頭痛です。

・頭痛の中で最も多い緊張型頭痛
緊張型頭痛の頻度は片頭痛に比べると正確なデータが少なく、報告によってまちまちです。 日本人では22%という報告もみられ 、頭痛の中で最も多いタイプと言えるでしょう[*3]。
原因の1つにストレスの関連があると言われていて、妊娠初期においては情緒が不安定になりやすいこと、妊娠末期においては分娩への恐怖などが原因になり得ます。
緊張型頭痛の患者さんが妊娠した場合、その症状は67%が不変、28%は改善、5%は悪化するという報告があります[*2]。

なお、一次頭痛の種類としては片頭痛、緊張型頭痛以外に群発頭痛がありますが、かなりまれなもので、30~40代の男性がほとんどです。

◆その他

その他に、視力がよくないときなどに起きる眼精疲労での頭痛、副鼻腔炎に伴う顔面痛や頭痛などもよく見られます。

また、先ほど少し触れましたが、何かの病気があり、その症状の1つとして起きる頭痛「二次性頭痛」という頭痛があり、この頭痛が妊娠中に発生する可能性もあります。これについて、次項で少し詳しく解説します。

まれに起こる「気をつけなければいけない頭痛」とは?

繰り返しになりますが、「二次性頭痛」とは、何かの病気が起きて、その時の症状の1つとして現れる頭痛のことです。その原因として、頻度としては高くないですが、次に挙げるような重大な病気があることは知っておいてください。

妊娠期に頭痛を起こす疾患 妊娠高血圧症候群

この記事で解説している「妊娠初期の頭痛」には該当しませんが、妊娠20週(妊娠6ヶ月)以降になると、妊娠高血圧症候群が起きる可能性があり、その時の症状のひとつとして頭痛が現れることがあります。

妊娠高血圧症候群は、全妊婦の1割に起こるもので、安静や食事療法、薬による治療などを行います。

危険な頭痛を見分けるポイント

妊娠高血圧症候群など以外にも、妊娠を問わず起こる頭痛症状がある疾患があります。

中には、くも膜下出血など緊急を要する重大な二次性頭痛もあり、その場合は直ちに治療を始めないと、障害が残ったり、時に命にかかわることがあります。

危険な頭痛の可能性があるのは、以下のような時です。これらが該当する場合、救急車を呼ぶことをためらうべきではありません。

・突然頭を殴られたような激烈な頭痛
・いつもと様子が違う、今まで経験したことがない頭痛
・どんどん頻繁に・強くなっていく(頻度と程度が増す)頭痛
・吐き気や嘔吐を伴う
・片方の手足に力が上手く入らずうまく動かせない、またはしびれなどがある
・突然言葉が上手く出てこなくなった
・けいれん発作を伴う
・片方の目が見えない、物が二重に見える、視野が欠ける
・意識を失う

妊娠中の頭痛への対処法

妊娠中の頭痛薬

頭痛の治療薬の中には、妊娠に対してリスクがあるものもあります。

比較的安全に使えるのはアセトアミノフェンで、市販もされています。なお、市販薬の鎮痛薬に多い非ステロイド性鎮痛薬(NSAIDs)は、妊娠後期に内服すると胎児の動脈管早期閉鎖などのリスクがあります。

市販薬を使用する場合は、事前に医師や薬剤師、登録販売者などに妊娠中であることを伝えた上で相談しましょう。

薬を飲まない対処法

リラックスしている女性
Lazy dummy

妊娠中は片頭痛が減るため、妊婦さんの頭痛の大半を緊張型頭痛が占めることになり、これは心理的緊張、つまりストレスが原因と考えられることが多い頭痛です。

・脳と目を休める
妊娠中は不安等によってストレスフルになるものです。心理的緊張を解消して、必要以上に不安がらず、筋肉の緊張を和らげましょう。
十分な睡眠をとるために、寝る数時間前からパソコンやスマホは見ないで脳と目を休めましょう 。また、適度な運動もお勧めです。

・姿勢をチェック
妊娠に伴い、知らず知らずのうちに姿勢が変化していて、それが頭痛の一因となることもあります。一度、姿勢をチェックしてみるのも良いでしょう。

・低血糖には分割食で対応。水分も十分に
つわりの影響で起きる低血糖が頭痛に関連していると考えられる場合、少しずつ回数を多く食べる「分割食」という方法で対処しましょう。 また、頭痛の一因と考えられる脱水の予防のため、水分を十分にとりましょう 。

・カフェインは控えめに
カフェインをとると頭痛が緩和されるという人もいます。ただし妊娠中のカフェイン過剰摂取は、胎児への影響も考えられるので、控えるようにしてください。 1日にコーヒーを1~2杯程度飲むのは問題ありません。

まとめ

妊娠初期はホルモンバランスの変化で頭痛の症状が起こる場合があります。また、つわりの症状として頭痛が現れることも。頭痛のほとんどは心配いりません。それでも頭痛が頻繁なとき、生活に支障があるときは医師に相談して薬を処方してもらいましょう。妊娠中には避けるべき薬もあるので、自己判断で市販薬を使用することのないように。また、頻度はごくまれながら、命に関わる頭痛も起こることがあります。痛みが激しい場合には、緊急事態として対応してください。

(文:久保秀実/監修:太田寛先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]慢性頭痛の診療ガイドライン2013
[*2]日本臨床75(6),p938,2017
[*3]産婦人科の実際60(11),p1565,2011

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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