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2022年12月06日 10:15 更新

【医師監修】臨月の運動は陣痛を促す?やってはいけないこととおすすめ運動7つ

臨月になると「まだ赤ちゃんが降りてこないの? じゃあ運動しないとね!」と声をかけられることがあります。臨月の運動には、本当に出産を早めたり、陣痛を促す効果があるのでしょうか? おすすめの運動や運動にあたっての注意点なども説明します。

臨月に運動すると陣痛がくる?

お腹を抱える妊婦
Lazy dummy

臨月になってもなかなか陣痛が来る気配がないと、周囲から「運動したら?」といわれることがあります。約500名の産後女性に行った調査では、実際に、陣痛を促す目的で、出産前にウォーキングをした妊婦さんが6割程度、スクワットをした妊婦さんは4割程度いたとする報告もあり[*1] 、臨月に運動を行うことは決して珍しくないことがわかります。

では、本当に臨月の運動は陣痛を促すのでしょうか。

運動が分娩に影響する可能性はある

まず、さきほどと同じ調査では、持病がなく妊娠中もとくに異常のない初産婦の場合、ウォーキングを中等度(「楽である」「ややきつい」程度)の運動強度で1日最低50分以上7日間、合計300 分以上実施したグループでは、陣痛促進剤を使うなどして分娩を誘発することが明らかに少なかったと報告しています 。

ただし、同じ調査では 中等度の運動強度で1日最低60分以上7日間、合計420分以上ウォーキングを実施すると、赤ちゃんがNICUへ入院することが明らかに多かったとも報告しています[*1]。

ほかに、陣痛が始まってから子宮口が10cmに全開するまでを「分娩第一期」と呼びますが、この間には、寝たきりで過ごすより、立ったり歩いたりすると、全開までの時間が短くなる可能性も報告されています[*2] 。

陣痛促進効果は明確になっていない

ただ、大規模な試験では、陣痛促進を目的とした運動の効果はいまだ確かめられておらず、さきほど紹介した結果をもって「臨月の運動によって陣痛が促される、お産が進みやすくなる」とまでは言い切れない状況です。

臨月の適度な運動はメリットが多い

とはいえ、以前から妊娠中に適度に運動することは、出産に向けた体力づくりや、必要以上の体重増加の防止、妊婦特有のマイナートラブルの緩和、ストレス解消などには効果があるとされています。

ほかに分娩時の呼吸法や骨盤周りのリラックス方法が身に付くことで、安産に役立つ可能性もあります 。単胎妊娠で体調に問題がなく、医師のOKが出ていれば臨月でも運動を続けるとよいでしょう。

臨月にもおすすめの運動 7選

臨月の妊婦におすすめの運動
(イラスト=いわたま)

妊娠中の適度な運動はおすすめではあるのですが、運動を行うにあたっては注意が必要です。どんな運動をしても良いというわけではなく、母体とお腹の赤ちゃんにとって安全であることが第一です。

一般的には有酸素運動かつ全身運動で、楽しく長続きする運動が妊娠中には勧められています。このあと、妊娠中にはどんな運動が向いているのか、具体的に紹介していきます。

おすすめの運動(1):ウォーキング

何も道具がいらず、気軽にできる有酸素運動です。景色を見ながら歩くのはストレス解消にもなります。楽に呼吸ができ、運動強度は「ややきつい」と感じるペースを上限に、自分のペースで歩きましょう。1回のウォーキング時間は60分以内にしましょう[*3]。

また、歩きやすい靴を履き、水分補給はこまめに行うようにしましょう。ウォーキングコースには段差が少なく、傾斜の少ない舗装された道を選びます。ぬれた路面は転びやすいので歩くのは控えるようにしてください。

なお、炎天下のウォーキングは妊婦さん自身やお腹の赤ちゃんの体温上昇を招くことがあります。体温上昇により、胎児に通常ある低酸素になると脳を守るために機能する体の機構がうまく働かなくなる可能性があるともいわれています[*3]。 炎天下でのウォーキングはできるだけ避けましょう

おすすめの運動(2):安産体操

産院などで指導される安産体操を行うのもよいでしょう。妊娠中にありがちな腰痛などのマイナートラブルをやわらげたり、股関節の柔軟性を高めたり、お産の際の呼吸法の練習などができたりします。

おすすめの運動(3):ストレッチ

ストレッチをすることで凝り固まった身体をほぐすことができます。部屋の中でテレビを見ながら、音楽を聴きながらでも気軽にできるのが魅力。入浴後に体が温まった状態で行うとより効果的です。

立ったまま行うと転倒の恐れがあるので、座りながらや横になって行うようにしましょう。

おすすめの運動(4):マタニティスイミング

単に泳ぐだけではなく、水中でのエアロビクスやウォーキングなどもマタニティスイミングに含まれるので、泳げない人でも行うことができます。水中で運動するので水の浮力によって下半身の関節に負担がかかりにくく、また、水の抵抗によって効率よく筋力UPがのぞめます。さらに、水圧によるマッサージ効果で、血行促進にもつながります。

ひとりで行うのではなく、必ずスイミングスクールや医療機関などで開催されている、専門のインストラクターのもとで行うレッスンを受講するようにしてください。

プールサイドは滑りやすいので、慎重に歩き、転倒しないように気をつけましょう。

おすすめの運動(5):マタニティヨガ

妊娠中のマイナートラブルを軽くしたり、安産に必要な筋肉の柔軟性を高めたり、出産に必要な呼吸法の習得に役立つというメリットがあります。特に必要な道具もなく、体力の消耗も少ないので、出産直前までできるのも魅力です。

マタニティヨガは、妊娠していないときに行うヨガと比べてできるポーズが限られているため、自己流ではなく、専門の指導者が教えるマタニティヨガのクラスに通うのがのぞましいです。
もし、自宅で行う場合はマタニティヨガの本やDVDを参考にして行うようにしましょう。

おすすめの運動(6):マタニティビクス

妊婦用に考案されたエアロビクスです。心拍数を目標まで徐々に高めて一定時間持続させることで、呼吸や循環機能を向上させて、末端への血液循環をよくします。

音楽に合わせて行うので、楽しく体を動かせます。心肺機能が上がるため、お産に必要な持久力の向上に役立ち、筋力も強化します。こちらも産院などで行われている教室に通い、専門の指導者と一緒に行いましょう。

おすすめの運動(7):家事

家事だけでも臨月の妊婦にとっては十分な運動になります。特に窓ふきや床の雑巾がけは意外といい運動になるので、意識してやってみてはいかがでしょうか。

重いものを持ったり、高いところのものを取ったりするのは危険ですので、家族にやってもらうようにしましょう。

妊娠中は避けたい運動、3つのポイント

お腹を抱える妊婦
Lazy dummy

妊娠前から行っているスポーツは基本的に中止する必要はありませんが、それにかかわらず妊娠中には向かない、やってはいけない運動があります。

激しい運動はしない
無酸素運動、お腹に圧迫が加わる運動、瞬発力が求められる運動、転倒の危険がある運動、人と接触する運動、人と競争する運動は向いていません。

たとえば、球技や格闘技、器械体操、乗馬、重量あげ、スキー、スケート、ダイビング、ハンググライダー、水上スキー、オフロードサイクリングなどが挙げられます。

ホットヨガは避ける
ヨガは妊婦にはおすすめですが、ホットヨガは体温が上がりすぎるため、おすすめできません。これらの運動は、たとえ妊娠前から続けていたとしても、妊娠したらいったんお休みするようにしましょう。

仰向けになる運動には注意
大きくなった子宮で背骨近くの静脈が圧迫されることにより低血圧を起こす「仰臥位低血圧症候群」にも注意が必要です。脈が速くなったり、気分が悪くなる、嘔吐、冷や汗、顔色が悪くなるなどの症状が出ます。こうなってしまったら、左側を下にして横たわると治りますが、これは妊娠末期になるほど起こりやすので、仰向けになる姿勢も避けましょう。

運動するにあたっての注意点

お腹を抱える妊婦
Lazy dummy
大前提として、運動は医師に相談をして、許可が出てから行うようにしてください。妊婦さんによっては運動は控えるべき状態の人もいます。また、先ほども述べた「避けたい運動」をしないことはもちろんですが、おすすめの運動でも運動強度は上げすぎないように注意しましょう。

体操やスイミング、ヨガなどはマタニティ向けのプログラムを受講し、専門の指導者のもとで安全に行うようにしてください。

▼運動を避けた方が良いケース

・妊娠の経過やお腹の赤ちゃんの発育になんらかの異常がある
・過去の妊娠で早産や何度も繰り返す流産があった
・双子などの多胎妊娠

こんな症状があったら、すぐに運動を中止!

妊娠中に運動すると体調が急変しやすくなります。もし、運動中に下記のような症状が現れた場合は、すぐに運動を中止して、必要があれば医師に連絡するようにしてください。

▼以下が現れたらすぐに運動を中止

・立ちくらみ
・頭痛
・胸痛
・呼吸困難
・筋肉疲労
・ふくらはぎやすねの痛み、腫れ
・お腹がかたく張ったり、下腹部が圧迫される感じ
・不規則または規則的にお腹が張る感じが続く
・性器からの出血
・胎動が減ったり消えたりする
・羊水が流出しているような感じがある

まとめ

臨月に運動すると陣痛を促すという説には、あまり強い医学的根拠はありません。ただ、それ以外にも妊娠中の運動には体力作りや維持、体重管理、ストレス発散、安産傾向になるなど、さまざまなメリットがあります。臨月だからと意気込んで運動する必要はありませんが、経過が順調で体調もよければ適度に体は動かしましょう。

なお、運動をする際は医師に相談のうえ、正しい方法で安全に注意することを忘れずに。また、万が一のことを避けるためにも決して無理しないことが大切です。スイミングやヨガなどは自己流で行うより、マタニティ向けのプログラムを専門家の指導のもとで行うほうが安心です。

(文:今井明子/監修:窪 麻由美先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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