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2021年01月29日 16:23 更新

【医師監修】子どもの赤ちゃん返りって何? どうすればいいの?

子どもが赤ちゃんのような行動をする「赤ちゃん返り」。子育てで忙しくしている親からしてみれば、「これ以上やることを増やさないで……!」と疲れが倍増してしまいますよね。「赤ちゃん返り」の原因や適切な対処法についても説明します。

赤ちゃん返りって何?

赤ちゃん返りで寝そべって怒る子ども
Lazy dummy

今まではひとりで着替えができたのに急に親に服を着せてもらおうとしたり、親がトイレに入ろうとすると泣いてすがってきたりと、幼児期の子どもが「まるで赤ちゃんのような」行動をするようになることをいいます。このような行動は、一般的に、母親が下の子を妊娠・出産するときに起きやすいのですが、兄弟が増えることだけでなく、母親が入院したり、引っ越したり、幼稚園に入ったりするなど、環境に大きな変化があったときに起こることもあります。

なぜ、赤ちゃん返りがおきてしまうのでしょうか。たとえば下の子が生まれると、上の子は「自分に対する両親の愛情が減ったのではないか」と不安になります。入園などの環境の大きな変化でも不安を感じます。すると、「もっと自分のことを見てほしい」「構ってほしい」という気持ちが強くなり、赤ちゃんのようにふるまって両親の愛情を確かめたり、甘えたりしようとするのです。

どんな変化がみられる?

赤ちゃん返りとして出てくる変化はさまざまです。「今まで自分でできていたことを親にやってもらおうとする」「オムツがはずれていたのに漏らすようになった」などに挙げられるような文字通り赤ちゃんに戻ったかのような変化だけでなく、イライラしたり、下の子をいじめたり、反抗的になったりすることもあります。

下記に示すような変化は赤ちゃん返りに典型的なものですが、すべて当てはまるとは限りませんし、これ以外の変化もあります。子どもによって赤ちゃん返りのパターンはいろいろです。

・母親を独占しようとする
・母親以外に甘えるようになる
・甘えん坊になる
・今までより甘えた言葉遣いになった
・自分でできていたことを他人に頼む
・よく泣くようになる
・落ち着きがなくいらいらするようになる
・今までより言うことをきかなくなった
・今までコップで飲んでいたのに、哺乳瓶に入れないとミルクを飲まなくなった
・自分にも母乳をのませてほしいという
・赤ちゃんをいじめたりおもちゃを取り上げたりする
・弱いものいじめをするようになる
・物にあたるようになる
・今までより食べなくなった
・おむつがとれていたのにおもらしするようになる
・おねしょがひどくなった
・よく吐く

一見、親にとって望ましく感じる変化が起こることも

下の子の妊娠や出産、進級・入園・入学という環境の変化は、親だって慣れるまでは大変です。そんなときに、子どもが赤ちゃん返りを起こすと「よりによってこんな大変な時に……!」とイライラしてしまいますよね。しかし、子どもの赤ちゃん返りは必ずしも上に挙げたような問題行動が出るとは限りません。ときには親としては助かる変化が起きることもあります。たとえば、下の子をかわいがったり、世話をしたがったり、急に聞き分けが良くなったりするなどの変化です。

これは、よい行動をすることで親の期待にこたえたいという気持ちのあらわれです。しかし、このような場合、子どもは頑張ってよい子にふるまいつつも、下の子に対する嫉妬心や「愛情を奪われるのではないか」という不安感を抱えています。そして、時折その不安感を抑えきれずに「赤ちゃんなんかいらない」ということもあります。一見矛盾した行動のように思えますが、子供の心の底にある不安感がこのような行動をとらせると考えれば理解できるのではないでしょうか。

赤ちゃん返りはどれくらい激しいものなの? 赤ちゃんとの年齢差で違いはある?

弟の影響で赤ちゃん返りを起こす子ども
Lazy dummy

赤ちゃん返りの激しさは、子どもの性格によってさまざまです。ただし、女の子の場合は、下の子の面倒を見たがったり、聞き分けが良くなったりと「よい子」に思われるようにふるまう傾向が強いという報告もあります[*1]。

ちなみに、一般的にはきょうだいの年齢が近い方が上の子の赤ちゃん返りが激しくなりやすいといわれていますが[*2]、きょうだいの年齢差によって赤ちゃん返りの激しさが変わることはなかったという研究結果もあります[*1]。

赤ちゃん返りしたらどうすればいい?

赤ちゃん返りをして部屋で大暴れする子ども
Lazy dummy

赤ちゃん返りがおきる原因として多いのは下の子の妊娠・出産でしょう。しかし、赤ちゃんのことで大変なうえに、上の子も今以上にケアをしなければいけないとなると途方に暮れてしまいますよね。それでも、ここが踏ん張りどきです。次項から、具体的な対策を紹介します。

基本は上の子優先

下の子が生まれると、授乳やおむつ替えなどでどうしても下の子のケアに手間を取られて上の子をほったらかしにしてしまいがちです。しかし、ここで上の子との信頼関係をしっかり築くことを忘れないようにしましょう。赤ちゃんよりも上の子をかわいがるくらいの心構えで接してあげると良いかもしれません。時間があれば意識して上の子を抱きしめたり、「大好きだよ」と温かい声をかけてあげたりすることが大切です。

ときには上の子とふたりの時間を作る

ときには、上の子とふたりの時間を持つように意識してみてください。下の子はパートナーや祖父母などに任せて、上の子とお出かけするのもいいでしょう。

ちょっとした赤ちゃんのお世話を頼む

上の子を下の子の育児に巻き込んでしまうのもひとつの方法です。たとえば、下の子のオムツをかえるときに、上の子に「ちょっとお願いがあるんだけど、オムツをとってきてくれないかな」といって、簡単なお手伝いをお願いしてみるのです。

このときのポイントは、決して強制しないこと。もし、やってくれたら「さすがお兄ちゃん/お姉ちゃんだね」「ありがとう」とたっぷりほめてあげましょう。すると、上の子は「自分は赤ちゃんじゃないんだ」「赤ちゃんは自分のライバルではないんだ」という気持ちをはぐくむことができます。

赤ちゃん返りで大変なときは積極的にサポートを頼もう

なお、出産による体のダメージに加えて、上の子にプラス赤ちゃんのお世話と、ただでさえ大変な産後はとくに、くれぐれもママがひとりで抱え込まないようにして。パートナーにできるだけ育児参加してもらい、可能なら祖父母に、無理であればファミリーサポートなど地域のサービスも積極的に利用しましょう。また、上の子への対応は、幼稚園や保育園の先生などにも協力してもらいながらなんとか乗り切っていきましょう。

育休中などで平日の日中に時間があるのであれば、各地域の子育て支援センターも積極的に利用しましょう。育児の不安について相談ができたり、ほかの子育て家庭と交流できるイベントなども開催しています。子育て支援センターは、住まいのある市町村ごとに開設されているので、場所や活動内容を調べてみましょう。

赤ちゃん返りに対応するときの注意点は?

赤ちゃん返りでぐずる子ども
Lazy dummy

ここまでで紹介したように、赤ちゃん返りの背景には不安感が隠れているので、「お姉ちゃん/お兄ちゃんなんだからもっとしっかりしなさい」「それくらい自分でやってよ。〇歳でしょ」などと突き放すのは逆効果でしょう。また、上の子に下の子のお世話を手伝ってもらうことは赤ちゃんに親近感を覚えさせる面では有効かもしれませんが、「もうお姉ちゃん/お兄ちゃんなんだから赤ちゃんのお世話を手伝ってよね」という姿勢では、余計に赤ちゃん返りを悪化させるかもしれません。

これまで受けていた両親の愛情がなくなってしまうかもしれないという不安感、新しく兄弟ができたことや環境の変化をうまく受け入れられない気持ちを、子供なりに精一杯表した行動なのだということをまず理解してあげることが大切です。

また、赤ちゃん返りでは、いい子になろうとする一見ポジティブな変化も現れることがあると紹介しました、ポジティブな変化のように見えても、子どもは内心葛藤を抱えています。この場合も、やはり赤ちゃんばかりに気を取られることがないよう、上の子の不安感にも寄り添ってあげましょう。

赤ちゃん返りの対応を間違えてしまうと、せっかく築いた親子の信頼関係を壊しかねません。また、上の子に下の子への敵対心や嫉妬心を抱かせてしまうと、きょうだい関係にも悪影響を及ぼします。両親が子供の心にできるだけ寄り添い、気持ちを安定させてあげることで上の子も成長していき、状況に慣れたり、葛藤が薄まるとともに赤ちゃん返りも自然と消えていくでしょう。パートナーとともに子供の心の成長を促し、周囲の助けも借りながら、乗り越えていきましょう。

まとめ

赤ちゃん返りは子どもにとっても親にとっても悩ましい試練です。兄弟のいる家庭では、程度の差はあれ、避けて通れないものではないでしょうか。とくに下の子の妊娠中や産後は自身の体調不良や赤ちゃんのお世話にかかりきりで、ついつい上の子をほったらかしにしてしまいがち。でも、そんなときこそできるだけ上の子の不安感に寄り添ってあげることで、心の成長を促すことができます。ひとりで対応するのは大変なので、周囲を上手に巻き込みながら乗り切っていきましょう。

(文:今井明子/監修:梁尚弘先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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