【医師監修】妊婦のカフェイン過剰摂取の影響とリスクとは?

【医師監修】妊婦のカフェイン過剰摂取の影響とリスクとは?

「妊娠中にはカフェインを摂りすぎてはいけない」と言われます。それは、妊娠中のママがカフェインを多量に摂取すると、お腹の赤ちゃんに影響が及ぶ可能性があるから。では、赤ちゃんに影響が及ぶ量とはどのくらいなのでしょうか。カフェイン摂取の利点にも触れながら、問題点を整理してみます。


この記事の監修ドクター
直林奈月先生
赤心堂病院産婦人科勤務(埼玉県川越市)
高知医科大学卒業後、太田⻄ノ内病院、高知大学医学部附属病院、船橋二和病院を経て現職。 産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科内視鏡学会腹腔鏡技術認定医、母体保護法指定医師、女性ヘルスケアアドバイザー

カフェインって何?

Getty logo

カフェインと聞くとコーヒーが思い浮かびますが、チョコレートの原料であるカカオや、紅茶・緑茶にも多く含まれています。化学物質としてのカフェインが見つかったのは19世紀に入ってからのこと。しかしそれよりもずっと前、紀元前2000年ごろからコーヒーや緑茶、紅茶が飲用されていたと言われます。現在ではコーヒー、お茶以外にも、その作用を利用して、エナジードリンクや眠気覚まし用の食品や医薬品に添加されていることもあります。

カフェインの好ましい作用と注意点~妊娠していない時の一般的な話

妊娠中のカフェイン摂取についてお話しする前に、カフェインの特徴についてまず一般的な解説をします。

カフェインによる好ましい作用

カフェインによる好ましい作用には、主に次のようなものが挙げられます。

・眠気がとれる
カフェインを適量摂取すると、頭がすっきりして眠気が覚めます。仕事が立て込んで睡眠時間を削らなくてはいけない時にコーヒーを飲んで頑張る人も少なくないことでしょう。

・リラックス効果
カフェインの適量摂取にはリラックス効果も期待できます。何かの作業の合間にコーヒーやお茶を飲むと、ホッとして一息つけることを多くの方が実感されていると思います。

・呼吸を楽にする作用も
カフェインには、気道を拡げて呼吸を楽にする作用があり、かぜや喘息の症状を緩和する可能性があります。カフェインの類縁体(物質としての構造が似ているもの)であるテオフィリンは、肺の気道を拡げるために摂取される気管支拡張剤で、ぜん息や気管支炎の薬として用いられています。

カフェインによる好ましくない作用

続いてカフェインによる好ましくない作用です。

・眠れなくなる
先ほど挙げたカフェインの良い点として「眠気がとれる」の反対、言わば副作用のようなもので、眠るべき時間になっても眠れなくなることがあります。夜、眠りたいのに眠られないといったことにならないように、夕方以降はカフェインを避けた方がよいでしょう。

・神経や胃腸を過剰に刺激する
カフェインを多量摂取すると中枢神経系が過剰に刺激されます。それによる症状として、めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠、そして消化管系が刺激されることによって、下痢、吐き気などが起こり得ます。

カフェインの過剰摂取が妊婦さんに及ぼす影響

Getty logo

さて、それでは妊婦さんにとってのカフェインとはという話を進めましょう。前述のメリット、デメリットに加えて、妊婦さんの場合は以下のような注意点が加わります。

母親への影響

・流産が増える可能性
妊娠中にカフェインをとりすぎると、流産のリスクが高くなる可能性があります。

赤ちゃんへの影響

・発育が遅くなるかも
カフェインのとりすぎは、お腹の赤ちゃんの発育不良につながる可能性が指摘されています。その結果として、低体重児出産のリスクが高くなり、将来の健康に影響を及ぼすことが考えられます 。

どのくらい飲んで良いの?

妊娠していない健康な成人の場合、カナダ保健省(HC)は、1日あたりのカフェイン摂取量として、400 mg(コーヒーをマグカップで約3杯)までにすることを勧めています[*1]。

カフェインによる影響には個人差が大きく、国際的に示されている摂取上限の推奨目安量には多少ばらつきがありますが、健康な成人ではおおよそこのくらいの量までであれば問題ないとされていることが多いようです[*2]。

なお、カフェインを含む眠気覚ましをうたったエナジードリンクで、国内でも死亡事故が報告されています。エナジードリンクにはコーヒー1杯を上回る量のカフェインが含まれていることを忘れずに、飲みすぎにはくれぐれも注意しましょう。

妊娠中のカフェイン摂取量の上限は?

では、妊婦さんの場合、カフェインはどのくらい摂ってよいのでしょうか。
妊婦さんのカフェイン摂取量に関しては、いくつかの医学関連団体などから基準が公表されていますので、代表的な見解を紹介します。

・アメリカ産科婦人科学会の推奨
アメリカ産科婦人科学会では、妊婦さんのカフェイン摂取量として「1日200mg未満に抑えること」を推奨しています。ちなみにコーヒー100mLには60mgのカフェインが含まれています[*3]。

・カナダ保健省の推奨
カナダ保健省では、妊娠可能女性の1日あたりカフェイン最大摂取量を300mgとしています。なお、これは237mLのコーヒーカップ約2杯分に相当します[*2]。

・世界保健機関(WHO)の推奨
世界保健機関(WHO)は、1日のカフェイン摂取量が300mgを超える妊婦に対しては、流産や新生児の低体重リスクを低減するために、妊娠中はカフェイン摂取量を制限するように注意喚起しています[*2]。

・厚生労働省の推奨
日本の厚生労働省は、ホームページ内に「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A」という情報を公開し、上記のような世界各国・機関の推奨事項をとりまとめて紹介しています。

カフェインが多い飲み物・食べ物

最後に、カフェインがどのような飲み物にどのくらい含まれているのかをまとめておきましょう。

カフェインを含んでいる飲み物はコーヒーだけではありません。緑茶や紅茶にもカフェインが意外に多く含まれています。例えば玉露は100mLあたり160mgで、コーヒーのなんと3倍近くのカフェインを含んでいます。煎茶やウーロン茶は20mg、紅茶は30mg、コーラは10~13mgです[*4]。

また、さきほども紹介したように、エナジードリンクはカフェイン含有量が高いものが少なくありません。疲れを感じた時に元気になるために飲むのがエナジードリンクですから、カフェインが多いのは当然かもしれませんね。
ただし、たとえばつわりがひどくて食べられない時に「せめてエナジードリンクでも」と飲む妊婦さんは、少し注意が必要です。飲む前にぜひラベルを見て、カフェイン含有量を確認してください。

なお、飲み物以外に、カフェインを含む食べ物としてチョコレートが挙げられます。ただしそのカフェイン含有量は原材料に占めるカカオの量にもよりますが、板チョコ一枚(50g)でコーヒー1杯の数分の一程度(一部、高カカオ含有をうたった製品では、コーヒー同様の濃度でカフェインを含むものもあります[*5])。

ですからチョコレートだけを適度に食べるのならあまり気にする必要はないでしょう。しかしコーヒーなどのカフェインを含む飲み物と一緒に食べるのであれば、含有量を計算に入れてください。また、糖分や脂質が多い点からも食べすぎには注意が必要です。

まとめ

日本人は1週間に平均10杯強、コーヒーを飲んでいるというデータがあります[*6]。1日あたり1~2杯程度といったところです。既に解説したことから考えると、このくらいであれば妊娠中でも問題はないと言えそうです。ただしそれはカフェインをコーヒーだけから摂取している場合の話。コーヒー以外にも緑茶などのお茶類を飲んだりチョコレートを多めに食べたりする習慣があるのであれば、少し注意が必要かもしれませんね。カフェインは過剰に避けるのではなく、適度な範囲になるよう少し気を付けながら、妊娠中も好きな飲み物を楽しみましょう。

(文:久保秀実/監修:直林奈月先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]厚生労働省: 食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170477.html
[*2]食品安全委員会:食品中のカフェイン
https://www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/caffeine.pdf
[*3]The American College of Obstetricians and Gynecologists, Nutrition During Pregnancy
https://www.acog.org/Patients/FAQs/Nutrition-During-Pregnancy?IsMobileSet=false#diet
[*4]文部科学省/食品成分表
http://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365419.htm
[*5]国民生活センター:高カカオをうたったチョコレート http://www.kokusen.go.jp/test/data/s_test/n-20080206_2.html
[*6]全日本コーヒー協会/統計資料
http://coffee.ajca.or.jp/wp-content/uploads/2019/06/data04_2019-06b.pdf

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。
※新型コロナウイルス感染症についての最新情報は、[内閣官房][厚生労働省]妊婦に関する情報[日本小児科学会]幼児に関する情報など公的機関等で発表されている情報をご確認ください。

関連する投稿


妊娠中のお悩み肌&赤ちゃんにも使える「薬用モイストホワイトニングクリーム」が登場

妊娠中のお悩み肌&赤ちゃんにも使える「薬用モイストホワイトニングクリーム」が登場

0歳からの赤ちゃんとママが一緒に使えるスキンケアブランド『MEDIBABY(メディベビー) 』から、「薬用モイストホワイトニングクリーム」、「薬用保湿ローション」、「薬用保湿ミルクジェル大容量」が、6月29日より発売されます。 


【新型コロナウイルス】妊婦さんにはどんな変化があった? 今抱える悩みや不安とは

【新型コロナウイルス】妊婦さんにはどんな変化があった? 今抱える悩みや不安とは

ビーボは、現在妊娠中の女性を対象に「妊娠初期の悩みや不安」に関する調査を実施しました。


「ミューズ 薬用 消毒ハンドジェル」が登場。素早く洗浄・消毒で、清潔に

「ミューズ 薬用 消毒ハンドジェル」が登場。素早く洗浄・消毒で、清潔に

「ミューズ 薬用 消毒ハンドジェル」が、5月18日より発売されます。


コンビ×「Cake.jp」のベビーシャワーケーキがかわいい! 妊婦も食べられる安心素材

コンビ×「Cake.jp」のベビーシャワーケーキがかわいい! 妊婦も食べられる安心素材

コンビと通販サービス「Cake.jp(ケーキジェーピー)」は、『マタニティさんをお祝いするベビーシャワーケーキ』の販売を開始しています。


クラランス、妊娠中の肌にうるおい&しなやかに整える“ボディクリーム”が登場

クラランス、妊娠中の肌にうるおい&しなやかに整える“ボディクリーム”が登場

クラランスから、妊娠中にダメージを受けやすい肌を、よりやわらかくしなやかに整えるボディ用マッサージクリーム「ボディパートナー」が、4月中旬より発売されています。


最新の投稿


【助産師解説】新生児からOK! 縦抱き授乳のやり方 メリットって?

【助産師解説】新生児からOK! 縦抱き授乳のやり方 メリットって?

授乳というと横抱きのイメージですが、縦抱きでも授乳はできます。でも、生まれたばかりの赤ちゃんはとても小さくて柔らか。首も腰も据わらずふにゃふにゃしているので、抱っこをするのにもドキドキしてしまいますね。そんな月齢が低い赤ちゃんでも縦抱きで授乳しても大丈夫なのか、どんな場合に向いているかなどを解説します。


【助産師解説】胎動が激しいのはおかしい?赤ちゃんの変化と受診のポイント

【助産師解説】胎動が激しいのはおかしい?赤ちゃんの変化と受診のポイント

胎動の激しさと赤ちゃんの発達・発育には関係があるのでしょうか?赤ちゃんの動きが激しいことで悩むママに向けて、助産師が詳しく解説します。胎動に関する注意点や、赤ちゃんの変化にいち早く気づく方法についてもチェック!


【助産師解説】新生児のゆるゆるうんちは下痢?回数・色・状態は?

【助産師解説】新生児のゆるゆるうんちは下痢?回数・色・状態は?

新生児のうんちは、大人とはかなり違うんです。少々緑がかっていても、下痢かと思うほどゆるゆるでも、多くの場合は心配なし! ではどんなときが心配? 健康のバロメーターでもある赤ちゃんのうんち、どこをチェックすればよいか、助産師さんが解説します。


【助産師解説】胎動が痛い! 赤ちゃんの動きが激しい時の対処法

【助産師解説】胎動が痛い! 赤ちゃんの動きが激しい時の対処法

胎動による痛みが強いときの対処法や生活の工夫について、助産師が解説します。胎動が激しくて痛すぎる!というママはぜひチェックを。痛いくらい激しいのは問題あり?という疑問にもお答えします。


【助産師解説】産後の生理っていつから?授乳中は生理が来ない?

【助産師解説】産後の生理っていつから?授乳中は生理が来ない?

産後のママの体の変化のひとつが「生理(月経)の再開」です。妊娠を機におよそ40週の間ストップしていた生理は、産後しばらくしてまたスタートします。今回は「産後の生理はいつ再開するの?」「授乳中はずっと生理がこないの?」などの疑問に答えるほか、産後の性生活に関するアドバイスや注意もお伝えします。