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2023年01月31日 10:42 更新

【医師監修】産み分けはできる?男女の産み分け方法の真実

「生まれてくる赤ちゃんの性別をコントロールしたい」という考えは根強く、ちまたには男女の産み分けに関するさまざまなうわさがあふれています。生殖医療技術が進化した今、はたして性別の産み分けは可能なのでしょうか?

男女の産み分けは可能か

産み分けゼリーを使っても確実に男女の産み分けは難しい
Lazy dummy

そもそも赤ちゃんの性別はいつ、どうやって決まる?

そもそも性別はどのタイミングで、何によって決まるのでしょうか。

ヒトの性別(遺伝的性)は性染色体という、性別を決める遺伝子を含んだ染色体の組み合わせによって決まります。ヒトの性染色体にはXとYがあり、女性はX染色体を2本(XX)、男性はX染色体とY染色体を1本ずつ持っています(XY)。

こうした性染色体の組み合わせは卵子と精子が出会う、受精の時に決まります。女性の卵巣で育まれる卵子は、どれもX染色体を1本だけ持っています。男性の精巣で作られる精子は、XまたはY染色体をやはり1本だけ持っています。つまり、この卵子(X)と精子(XまたはY)の組み合わせがXXとなるか、XYとなるかで赤ちゃんの性別は決定するのです。

確実に産み分け可能なのは“着床前診断”による限られた場合のみ

ちまたには「排卵日当日だと男の子、排卵日の2、3日前は女の子」と、受精のタイミングで性別が産み分けできるかのようなうわさがあります。しかし、この方法に医学的な根拠はありません。

また、男女の産み分けで調べると「パーコール法」と呼ばれる方法を目にすることもあるでしょう。人工授精や体外受精で精子を洗浄・濃縮する際に使用するパーコール液に精子を入れて遠心分離機にかけ、底に沈んだ精子を使うと女の子が生まれる確率が高まるという方法です。しかしこれも確実な産み分け方法とは言えません。

男女を産み分けるもっとも確実な方法は、体外受精でできた受精卵から細胞を少し採取し、染色体や遺伝子の検査を行う「着床前診断」を行うことです。ただし、この方法は基本的に男女の産み分けを目的として行うものではなく、また実際受けるにはいろいろと制約があります。

着床前診断

「着床前診断」には、「着床前遺伝子診断(PGT)」と「着床前胚スクリーニング(PGS)」があります。

PGTは、「遺伝する重い病気があるとわかっている場合」や「染色体異常が原因と考えられる習慣流産の場合」にのみ行われるもので、体外受精させた胚の染色体や遺伝子を調べ、病気を持たない可能性の高い胚だけを選択して、子宮に戻す方法です。ただし、病気の発病と性別が密接に関係する場合を除いて、性別は調べないことになっています。

一方、PGSは、受精卵の染色体数を調べ、異常のある胚を取り除いて子宮に戻し、妊娠・出産の確率を高めることを目指すものです。「命の選別」につながるため、日本では、まだ臨床研究段階であり実用化されていません。なお、欧米では以前から行われており、日本在住であっても海外のPGSを利用して、男女の産み分けを試みる人もいるそうです。

産み分けゼリーとは?

男女の産み分けについては、産み分けゼリーという商品も市販されています。どんな製品なのでしょうか。

腟内に注入して使う潤滑剤のような製品

日本で販売されている一般的な産み分けゼリーは、セックスの前に腟内に注入して使う潤滑剤にも似た製品です。欲しい性別によって専用のゼリーを使い分けると産み分けができるといわれています。

インターネットで手軽に購入できるので、試したことのある人もいるかもしれません。

産み分けゼリーに医学的な根拠はあるの?

産み分けゼリーは、腟内の酸性度をコントロールすることで男女を産み分けるとうたっています。しかしその仕組みを医学的に証明するのは難しいようです。

性別にこだわるより、子供の個性を大切に

昔ながらの考えで家族のなかに「どうしても男の子を」という雰囲気がある場合や、育てやすそうなどのイメージから女の子を希望している場合、兄弟と同じ/別の性別を望んでいる場合もあるでしょう。男女の産み分けには、その家庭ごとに異なるさまざまな背景、事情があります。

ただ、運よく希望通りの性別の赤ちゃんが生まれたとしても、「こんな女の子/男の子になってほしい」という親の思惑通りに育ってくれるとは限りません。何事も親の思う通りにはいかないのが子育て。男の子が必ず後継ぎになってくれるとは限りませんし、子供の個性は性別の枠を超え、おとなしい男の子、活発な女の子など、まったく珍しくないのはみなさんよくおわかりのことだと思います。

「男らしさ」「女らしさ」といった考え方は今や古い価値観になりつつあり、国際的にも幅広いジェンダーが認められつつある現代。生まれた時の性別よりもその子の個性を大切にする――そんな子育てが、今後より求められるのではないでしょうか。

まとめ

いくら生殖医療の技術が進んだといっても現状、“簡単に”男女を100%の確率で産み分けることはできないようです。もしもそんな方法があれば、今の世の中、男女比はもっと偏っているかもしれません。赤ちゃんは生まれてきてくれるだけで奇跡のような存在です。性別については神様に任せて、「どちらの性別でもいいけれど、女の子(男の子)だったら、なおうれしい」くらいにおおらかに考えてみてはいかがでしょうか。そして、出産後は生まれてきた子を性別にかかわらず愛してあげたいですね。

(文:山本尚恵/監修:太田寛先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]メディックメディア「病気がみえる vol.9 婦人科・乳腺外科 第4版」P.62

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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