出産・産後 出産・産後
2021年01月23日 11:09 更新

【医師監修】腱鞘(けんしょう)炎、肩こり…その抱き方はNG? 赤ちゃんにいい抱っこ方法は?

ママと赤ちゃんにとって、大事なスキンシップでもある抱っこ。慣れてしまえば当たり前にできることですが、初めての出産だったり、生後間もない赤ちゃんだったりする場合は、恐る恐る抱っこしているママも多いのでは。今回は赤ちゃんを抱っこする基本から、慣れてきたときにこそ再確認したい抱っこの注意事項などについてまとめました。

基本的な赤ちゃんの抱っこ法

首がすわれば抱きやすくなる赤ちゃんですが、首すわり前はどのようにして抱っこすれば良いのでしょう。首がすわる前と後に分けて、抱っこのポイントをご紹介します。

首がすわっていないときの抱っこ

赤ちゃんを抱っこするママ
Lazy dummy

一般に生後3~4ヶ月になって「首がすわる」まで、赤ちゃんの首は不安定。赤ちゃんは自分で頭を支えることができません。そのため首がすわるまでは、頭からお尻のあたりまで全身を包み込むように「横抱っこ」をするのが基本。片方の手で頭をしっかり支え、次にもう片方の手を股(また)の間から入れてお尻を支えるように抱き上げると安定します。抱き上げたらママの胸に近づけ、ひじのあたりで赤ちゃんの頭を支えましょう。

げっぷをさせたいときなどに「縦抱っこ」をすることもありますが、必ず頭と首はしっかり支え、赤ちゃんの体がママに寄り掛かるようにしてあげましょう。

首がすわってからの抱っこ

赤ちゃんを抱っこするママ
Lazy dummy

個人差はありますが、厚生労働省が公表している「平成22年 乳幼児身体発育調査報告」によると、多くの赤ちゃんで「首すわり」は4~5ヶ月ごろ、「ひとりすわり」は9~10ヶ月ごろにできるようになっていたと報告されています[*1]。

体がしっかりしてくるにつれて、抱っこのバリエーションも増え、新生児のころとは違って「横抱っこ」より「縦抱っこ」をする機会が増えるでしょう。使える抱っこひもも増えてきますが、赤ちゃんの体重は日に日に重くなり、だんだん抱っこするのも大変になってきます。

よくある産後トラブル?抱っこで手や腰が痛んだり、肩こりにも

赤ちゃんの体が大きくなるにつれ、抱っこするママの体には負担がかかるようになります。抱っこでママの体にかかりやすい負担、トラブルについて見ていきましょう。

育児中は腱鞘(けんしょう)炎になりやすい

赤ちゃんの抱っこで腱鞘炎になったママ
Lazy dummy

小さな赤ちゃんとはいえ、1日に何度も抱っこや抱きおろしを繰り返しているとママの手には負担がかかります。代表的なマイナートラブルの一つが親指から手首にかけて痛みが起きる「腱鞘(けんしょう)炎」です。ホルモンの影響もあると言われていますが、手に余計な力が入っていたり、酷使したりしていることが大きな要因と考えられています。

腰痛や肩こりも多い

赤ちゃんの抱っこで慣れない姿勢を続けていると、肩や腰にも負担がかかります。赤ちゃんが成長し、体重が重くなるのに従って、ますます腰痛や肩こりに悩まされるようになるママもいるでしょう。

抱っこひもは正しく使えば抱っこしやすくなりますが、不適切に使用すると、かえって肩や腰に負担をかけるときがあります。購入前によく商品について調べ、正しい装着方法を知ったうえで使うようにしましょう。

楽な抱っこの仕方とは

毎日のように続く赤ちゃんの抱っこ。できるだけ楽に抱っこして、体の負担を減らしたいですよね。どうすれば楽に抱っこできるのか、コツなどについてまとめました。

手や指だけではなく、体全体を使って寄り添うように

手や指だけで抱っこしようとすると、どうしてもそこに負担がかかってしまいます。横抱っこのときも、縦抱っこのときも、赤ちゃんに体を密着させ、寄り添うように抱き上げるのがおすすめ。抱っこ中は手と腕を使って赤ちゃんの腰やお尻をしっかり支え、全身で赤ちゃんの重みを受け止めるようなイメージでやってみましょう。

抱き起こすときは腰に注意

畳や床に寝かせている赤ちゃんを抱いたり、おろしたりする動作は腰に負担をかけます。低い位置から赤ちゃんを抱き上げるときは、できるだけ体を近づけ、腰に負担がかかりにくい姿勢を意識しましょう。

ベビーベッドなど高さのあるものに赤ちゃんを寝かせると抱き上げるのが楽になりますが、ソファや大人用ベッドからは転落の危険があります。ベッドガードなどで転落防止の対策を忘れずに。

その抱き方で大丈夫? 抱っこの注意

慣れてくると何気なく抱っこすることも増えてきますが、抱っこの仕方によっては赤ちゃんに危険が及ぶこともあります。注意したい抱っこについてまとめました。

「先天性股関節脱臼」を防ごう

赤ちゃんをうまく抱っこしない足を脱臼することも
Lazy dummy

「先天性股関節脱臼」(発育性股関節形成不全) は足の付け根の関節が外れる病気です。赤ちゃんは骨格や関節が柔らかく、股関節の形成も完全ではないため、おむつの付け方や抱っこの仕方が不適切だと股関節を脱臼することがあります。

もともと赤ちゃんの脚は、カエルのようにM字型に開いているのが自然な状態です。そのため、足がM字に開いたままママの体にしがみつくような「コアラ抱っこ」がおススメです。

正面抱き用の抱っこひもでは、赤ちゃんは両膝と股関節がM字型になるため問題ありませんが、おくるみやスリングを使っているときなどは赤ちゃんは開脚できず 、足が伸ばされた状態になりやすいので注意しましょう。

窒息に注意

気管が細い赤ちゃんは、首が極端に前方に曲がった状態になると窒息してしまう恐れがあります。また、ママの体や抱っこひもなどが赤ちゃんの鼻や口もとを覆う抱き方も、窒息の危険があります。

実際、CPSC(米国消費者製品安全委員会)は、スリングを使う場合の窒息の危険性について警告情報を発信しています。そこでは、「赤ちゃんの顔がスリングで覆われていないことと、抱っこしている人が常に赤ちゃんの顔を見えるような位置にすること」「スリングのなかで授乳したら、授乳後は赤ちゃんの頭が上を向くように体勢を変え、またスリングや母親の体から赤ちゃんの頭を離しておくこと」「赤ちゃんの鼻や口を塞いでいるものがないこと、赤ちゃんのあごが赤ちゃん自身の胸から離れていることを常に確認すること」に常時気を付けることが大切としています。

スリングや抱っこひもを使用する際は、説明書をよく読んだうえで、上記のような点に注意しながら使用するようにしましょう。

転落にも注意

メーカーや輸入代理店でつくる「抱っこひも安全協議会」が2018年度に行った調査[*2]によると、抱っこひもの使用中にひやりとした体験で圧倒的に多かったのが「落下」です。中でも、抱っこひもに赤ちゃんを乗せるときや、かがんだときに落下しそうになった、という回答が多く寄せられました。

抱っこひもに慣れるまでは、ベッドなどの柔らかい場所の上や低い位置で赤ちゃんを乗せ、万が一のときでも赤ちゃんにケガがないようにしましょう。  

安全な抱っこひもの使い方

さまざまな種類がある抱っこひもですが、安全に使用できるのが第一。どのようなポイントで抱っこひもを選び、使えば良いのかをまとめました。

抱っこひもの選び方

購入する際は、実際に店頭で試着して装着方法や注意事項を聞いたり、(財)製品安全協会(SG)により認定された商品を選んだりして、適切な抱っこひもを選びましょう。首がすわるまでは縦抱きでは首が安定しないため、その点に配慮された製品を選ぶと安心です。首がすわって縦抱っこをするときも、まだまだ赤ちゃんの体は未熟なので背あて、頭あてのある抱っこひもでしっかりと支えましょう。

股関節脱臼を防ぐため、赤ちゃんの足がM字型に開いた状態で抱っこできるかどうかも意識しておきたいポイントです。

抱っこひもの付け方のポイント

まずは、危険のない場所で、赤ちゃんが抱っこひもから滑り落ちないかどうかの確認をします。スリングは、ママの胸の位置より低い場所に赤ちゃんがくると落下しやすくなります。各製品の説明書に沿ってきちんと位置調整をしたうえで使うようにしましょう。

また窒息や股関節脱臼が起こらないかの確認も必ずします。さまざまな抱っこひもが販売される中、ブランド名や口コミで判断して購入するケースも増えていますが、ママや赤ちゃんの体格によっても最適な商品は変わってきます。購入の際はできるだけ試着をするなどして、安全に抱っこできる商品を選びましょう。

まとめ

産後すぐに始まる赤ちゃんの抱っこですが、産褥(さんじょく)期でまだ体がもとに戻っていない時期、またホルモンバランスも不安定な時期に無理な姿勢で抱っこをしていると、手や指、腰や肩に痛みが生じがちです。できるだけ負担なく、楽に抱っこできる方法を身に付けて、抱っこがおっくうにならないようにしたいものですね。

また抱っこ中は落下、窒息、股関節脱臼といった危険があります。さまざまな抱っこひもが販売されていますが、おしゃれかどうかやブランド名だけにこだわらず、赤ちゃんにとって安全に使用できるもの、そしてママの負担を軽減してくれるものを選ぶようにしましょう。

(文:剣崎友里恵/監修:梁尚弘先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]厚生労働省平成22年乳幼児身体発育調査報告 9p
[*2]抱っこひも安全協議会 レポート:2018年度抱っこひもの安全な使用に関する調査(2019-7-23)
[*3]佐賀大学医学部看護学科 母性看護・助産学領域「あかちゃんの抱っこと寝かしつけ」(2019-7-23)
[*4]佐賀大学医学部看護学科 母性看護・助産学領域「産後腱鞘炎予防ハンドブック~支援者用~」P2(2019-7-23)
[*5]国民生活センター:スリングや抱っこひもなど赤ちゃん用子守帯に注意-窒息、転落、股関節脱臼の危険性も-(2019-7-23)
[*6]日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 Injury Alert(傷害速報)No. 41 抱っこひもからの転落による頭部外傷(2019-7-23)

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

PICK UP -PR-

関連記事 RELATED ARTICLE

新着記事 LATEST ARTICLE

PICK UP -PR-