【助産師解説】母乳が出ないときは?考えられる原因と7つの対策

【助産師解説】母乳が出ないときは?考えられる原因と7つの対策

母乳の分泌量がなかなか増えない、量が足りない……という場合は何が問題なのでしょうか? 母乳が出ないときの考えられる原因と主な対策について、助産師が解説します。母乳の分泌をよくするコツもチェックしてください。


母乳が出る仕組みとは?

母乳が出ない原因について見ていく前に、まずは母乳が作られる過程について知っておきましょう。分泌を抑制している原因が、よりわかりやすくなるはずです。母乳産生と分泌のメカニズムについて解説します。

母乳は血液から作られる

母乳は、乳腺にある「乳腺葉(にゅうせんよう)」 という母乳の製造工場とも言える場所で作られます。ここに運ばれた血液を材料に母乳は産生されるのです。つまり、母乳は血液から作られているんですね。

産生された母乳は乳管を通って乳頭に流れます。これを赤ちゃんが吸うことで乳頭にある乳管開口部から飲みとられる仕組みとなっています。

繰り返し吸われることで分泌が促される

母乳は、プロラクチンとオキシトシンというホルモンによって分泌が促され、母乳分泌の確立に必須のホルモンです。この2つのホルモンには、主に以下のような役割があります。

・プロラクチン…母乳を作る
・オキシトシン…作られた母乳を出す


これらのホルモンは、赤ちゃんが乳首を吸う刺激によって分泌が促されるため、母乳の出を良くするには赤ちゃんに頻回に吸ってもらうことが重要となります。

赤ちゃんが生まれたら自然に母乳が作られ、十分な量が分泌されると思っている方もいるかもしれませんが、最初から多くの量が出るわけではありません。その後の分泌量は赤ちゃんにどれだけ吸ってもらうかによって変わってくると言っても過言ではないので、出産後はできるだけ頻回におっぱいを吸ってもらうようにしましょう。

また、ママも赤ちゃんも授乳に不慣れで、思ったようにうまくいかないこともあります。哺乳を繰り返すことで吸う練習をし、コツをつかんでいきます。赤ちゃんが上手に飲めるようになれば吸われる量が増え、結果的に分泌量の安定にもつながります

母乳が出ないのはなぜ?主な2つの原因

では、母乳の出が悪かったり、なかなか分泌量が増えないのにはどのような理由があるのでしょうか?原因には、主に以下の2つが考えられます。

(1)不適切な授乳方法による母乳分泌不全

母乳の出が悪くなるもっとも多い理由のひとつに、不適切な授乳方法があります。不適切な授乳方法には、主に以下のことがあげられます。

・正しい授乳姿勢と吸着で授乳ができていない
・乳頭に傷や痛みがある
・授乳回数が少ない
・授乳時間の制限などにより赤ちゃんが十分な量を飲み切れず、飲み残しがある
・必要以上にミルクを足すことで授乳間隔が開きすぎる


このような理由で母乳が適切に排出されずにいると、結果的に母乳の分泌をストップさせる乳汁産生抑制因子が働いて母乳分泌不全が起こります。

母乳分泌不全とは、母親が産生する母乳量そのものが児の必要量に満たない状態を指します。

(2)ママの体質や病気などの医学的な理由

授乳の回数や方法とは関係なく、ママの体質や病気などの医学的な理由が潜んでいる場合もあります。母乳の分泌が抑制される医学的な理由には、主に以下のことがあげられます。

・出産時の過度な出血や貧血
・胎盤の一部が子宮内に残ってしまったことによる乳汁来潮の遅れ
・乳腺の発育不全
・多嚢胞性卵巣症候群、糖尿病、甲状腺やその他のホルモン障害の既往歴がある
・過去に乳房の手術(豊胸手術や乳房縮小術など)や乳房損傷を経験したことがある場合(乳腺や授乳に関する神経の損傷)


上記のいずれかに当てはまる場合は、それが母乳分泌不全の原因になっている可能性があります。

どうすれば母乳が出るようになる?出ないときの7つの対策

医学的な理由による場合は専門家に任せなければなりませんが、それ以外のことが原因になっている可能性があるときは、以下のような対策をほどこすことで分泌を促せるかもしれません。授乳姿勢や授乳間隔、回数など、思い当たることがある場合は、それに合った対応を試みてください。家庭でできる主な7つの対策をご紹介します。

正しい授乳姿勢と吸着を心がける

正しい姿勢とラッチオン(吸着)で授乳できていないと、赤ちゃんが上手に飲むことができず、母乳がうまく排出されなくなってしまいます。飲み残しが多くなると乳汁産生抑制因子によって分泌がストップされてしまうので、十分な量がつくられにくくなります。

授乳の際は赤ちゃんをママにぴったりくっつくように抱っこし、おっぱいを深くしっかりくわえさせましょう。吸うときに唇を巻き込んでいたり、舌打ちするような音がするときはラッチオンがうまくいっていないサインです。授乳姿勢が悪いとラッチオンがうまくいかなくなるので、姿勢と吸着の両方をきちんと確認しましょう。

【助産師解説】写真で学ぶ授乳姿勢!パターン別授乳姿勢と4つのポイント

https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/3509

授乳姿勢が正しくないと赤ちゃんがうまく飲めないだけでなく、乳腺炎などのリスクも高くなります。主な6つのポジショニングとNGパターン、正しい姿勢をとれているかを確認できる4つのチェックポイントをお伝えします。

授乳時間や回数を制限しない

育児書や産院のパンフレットなどで、目安となる授乳回数を目にすることがあると思いますが、それにとらわれてしまうと赤ちゃんのペースに合わず、間隔が開きすぎて母乳の分泌を抑制してしまう可能性があります。目安はあくまでも目安なのであまり神経質にならないようにし、赤ちゃんがほしがるだけあげることを基本としましょう。

授乳時間も左右それぞれ何分ずつと制限せず、赤ちゃんが飲みたいだけ飲ませ、それぞれの乳房から後乳(こうにゅう:授乳する際、最初の方ではなく終わりの方に出てくる母乳)まで飲めるようにしましょう。十分に飲み切れないまま終わってしまうと、飲み残しができて母乳分泌不全の可能性を高めてしまいます。

ミルクの補足は必要に応じて

不必要なミルクの補足は母乳の哺乳量を少なくし、結果的に母乳の分泌が抑制されてしまいます。また、赤ちゃんが人工乳首に慣れてしまうと、おっぱいから直接母乳を飲むことを嫌がるようになることもあります。これを「乳頭混乱」と呼びます。これが母乳分泌不全につながる可能性があるので注意が必要です。

多くの哺乳瓶は、人工乳首からミルクが無理なく出てくるよう作られているため、自分で吸い付かないと出てこないおっぱいは苦手になるのでは?と考えられています。ただし、乳頭混乱の発生頻度やメカニズム、発生因子について科学的な根拠はないので、あくまでも仮説となります。

おしゃぶりの使用は避ける

おしゃぶりも人工乳首同様、乳頭混乱を起こす可能性があります。また、母乳育児期間を短くするなど、母乳育児の障害となるリスクも指摘されているので、母乳栄養での育児を望んでいる場合はおしゃぶりの使用を避けることをおすすめします。

母乳の排出を助ける

授乳中に乳房をやさしく圧したりして母乳の流れを助けると、射乳を効果的に促すことができます。ただし、刺激が強すぎると乳腺を傷つける可能性があるので、行う際はやさしくすることを心がけましょう。

上手に搾乳する

授乳と授乳の間が開いてしまったり、赤ちゃんが飲みきれなかったときは、適度に搾乳して分泌を抑制しないよう努めましょう。自分で搾る方法もありますが、搾乳が頻回であったり、手ではうまく搾れないときは搾乳機を使うという方法もあります。さまざまなタイプが市販されているので、助産師さんなどに相談して適切なものを選ぶといいでしょう。

【助産師監修】これはNG? 母乳の搾乳&保存方法と気をつけたい注意点4つ

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赤ちゃんが入院しなければいけないときや、外出などで赤ちゃんと離れなければいけないとき、しぼっておいた母乳をあげられるといいですよね。しかし、母乳はどのように保存すればいいのでしょうか? どのくらいの期間保存できるのかも気になるところです。そこで、搾乳の仕方や母乳の保存方法、保存・使用するときの注意点をまとめました。

何をしてもダメなときはプロに相談を

どのような対策を試みても改善の余地が見えないときは、かかりつけの産婦人科や母乳外来、地域の保健師さんなどに相談してみてください。先天的な問題の可能性もあります。ママの負担を少しでも軽くするため、家族にも相談し、地域の資源の活用など今後の対策について検討することも大切です。

まとめ

母乳が出ない原因には不適切な授乳方法など後天的な理由がほとんどですが、まれにママの体質や病気など、医学的な問題が原因となっている場合もあります。正しい授乳姿勢と吸着、赤ちゃんのペースに合った授乳時間や回数などで母乳の分泌を促し、それでも分泌量がなかなか増えないときは、かかりつけの産婦人科や母乳外来を受診しましょう。

この記事を解説してくれた先生
坂田 陽子先生
看護師、助産師、国際認定ラクテーションコンサルタント。 葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院のNICU・産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。その後、都内の産婦人科病院で師長を経験。現在は東京で「すみれ出張助産院」を開業している。
HP:https://sumire-josanin.com/

(文・構成:マイナビ子育て編集部、監修・解説:坂田陽子先生)

※画像はイメージです

参考文献
「母乳育児スタンダード」(医学書院)

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、助産師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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