【医師監修】産後うつ病の症状は? どう対処する?

【医師監修】産後うつ病の症状は? どう対処する?

産後うつ病は出産後の女性なら誰でもなる可能性があるもので、多くの場合に適切な対処と治療でよくなるものです。赤ちゃんがかわいいと思えない、毎日不安でしょうがないなど、少しでもおかしいなと感じたら医療機関で診療を受けることが勧められます。産後うつ病で見られる代表的な症状と対処法についてお伝えします。


「産後うつ病」ってなに?

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「産後うつ病」は、その名のとおり出産後のママがうつ状態に陥ること。産褥(さんじょく)精神病と呼ばれる産後に発症する精神障害の1つです。症状の現れ方は妊娠・産後に関係なくみられる“うつ病”と同じ。その違いは出産がきっかけで発症することです。産後数ヶ月以内に発症し、多いのは産後4週以内です[*1]。

産後うつ病は産褥精神病の中でもっとも発症が多く、日本では産後のママのおよそ10~15%に見られるとのデータがあります[*1]。

「マタニティー・ブルーズ」と「産後うつ病」の違いは?

「マタニティー・ブルーズ」という言葉を耳にしたことがある方も多いと思います。これは産後3~10日以内に発症する一時的な情動不安定の状態で、産後うつ病などの産褥精神病とは区別されます。出産に伴うホルモン分泌の変化が原因と考えられていますが、はっきりしたことはわかっていません。

マタニティー・ブルーズは一時的なものなので、特に治療などの必要はなく、精神的なケアと育児の協力などで心身の調子が戻るのを待つのが一般的です。通常、症状は2週間ほどで消失します。ただ、発症者のうち5%が産後うつ病に移行したとの報告があることから[*2]、2週間を過ぎても症状が見られるときは産後うつ病などを発症している可能性もあるので、念のために医療機関で診てもらいましょう。

マタニティー・ブルーズで主に見られる症状には、涙もろさ、軽度の抑うつ気分、不安感、集中力の低下などがあります。このような精神症状とともに、頭痛、食欲不振、疲れやすさなどの身体的な症状が見られることもあります。マタニティー・ブルーズは産後うつ病より発症頻度が高く、日本ではおよそ30%とされています[*2]。

男も産後うつ病になるって本当?

産後うつ病はママだけがなるものと考えられがちですが、実は女性ほど多くないにしても父親の産後うつ病も世界的に確認されています。

父親の産後うつ病の原因ははっきりわかっていませんが、多くの研究結果によると、パートナーの女性が産後うつ病であることとの関連性がもっとも高いと指摘されています。この他のリスク因子としては、結婚生活の満足度や夫婦の関係性の低さ、就労状態、周囲のサポートの少なさ、精神疾患の既往歴などが挙げられています[*3]。

これってもしかして「産後うつ病」?

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うつ病になると自分の置かれている状況や自分自身について悪く考えてしまったり、悪い方向にとらえる傾向が強くなります。そのため、症状の現れ方には個人差がありますが、産後うつ病の場合は以下のような症状が見られやすくなるようです。

・疲労感、不眠
・不安、緊張、パニック
・イライラする
・希望を持てない
・集中力や記憶力が弱くなる
・気分が変化しやすい
・せかせかする
・興味に欠ける
・自分を責める
・自分を情けなく思う
・食欲がなくなる
・子供や夫に愛情を感じなかったり、持てない

赤ちゃんのお世話や発育に関する心配、育児に対する不安などは程度の差こそあれ誰しも抱えるものですし、不眠も産後の不調として比較的よく見られる症状といわれます。そのため、このような状態=産後うつ病と断定することはできません。ただ、育児の不安などに加えて無気力や疲労感、食欲低下、睡眠障害、焦り、赤ちゃんをかわいく思えないなどが2週間以上続くときは、うつ病が疑われるので医療機関で診てもらいましょう。

産後うつ病の原因は? なりやすい人の特徴はある?

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産後うつ病になってしまう原因は人それぞれで、「これが原因」と一概に言うことはできません。ただ、産後のうつを引き起こす要素としては、主に以下のようなものが指摘されています。

ホルモンバランスの変化によるストレス

妊娠・出産にかけて女性ホルモンのバランスは急激に変化します。このようなホルモンの大きな変化は、ストレスに対する脳の抵抗力を下げてしまいます。産後は出産の疲れや育児の不安など、何かとストレスを感じることが多い時期です。妊娠中からのマイナートラブルが続いている場合はなおさらでしょう。そのような時期にも関わらずストレスに対する脳の抵抗力は低下している状態なので、ストレスを処理しきれなくなると脳が機能不全を起こし、ものごとを悪くとらえる傾向になりやすいとされます。

サポートを得られない状況・環境

ストレスを多く抱えてしまってうまく対処できなくなる背景には、周囲のサポートがほとんどない状況があると考えられます。特に初めての出産や育児では何をどうすればいいのかわからないことも多いので、孤独な育児は大きなストレスとなります。また、出産直後は赤ちゃんの不規則な生活リズムに合わせて授乳などを行わなければならないため、十分な睡眠時間を得ることが難しいです。周囲のサポートを受けられない状況では慢性的な睡眠不足に陥りやすく、これがうつ病の発症因子となっている可能性もあります。

その他のリスク因子

上記の他、精神病の既往歴、望まない(または望まれない)妊娠、赤ちゃんに疾病があるなども産後うつ病のリスク因子として報告されています。また、妊娠期の不安症状やパートナーからの暴力などがリスク因子となっている症例もあるようです。

産後うつかも……。実際、そう思ったことのある女性はどれくらい?

https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/768

待望の赤ちゃんが生まれたものの、毎日家事や育児に追われていて、今までの生活と全く変わってしまって気分の落ち込みを感じる人がいます。産後うつかもしれないと思った経験があるかどうかを聞いてみました!

産後うつ病の対処法について

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身体的変化や不慣れな育児など、産後という時期が持つ特徴から、産後うつ病は誰しもなる可能性がある病気です。重症化すると自殺願望が芽生えたり、身体的虐待やネグレクトの危険もあるため、睡眠不足でつらい、食欲がない、育児が楽しいと思えない、何もやる気が起きないなど、少しでも心身の状態におかしい点を感じたら、すぐにかかりつけの産婦人科や地域の保健師等、精神科や心療内科に相談しましょう。産後うつ病が疑われたときは専門医による診察が行われます。産後うつ病と診断された場合は症状に合ったケアと治療を受けることができます。

ケアとしては、まずは環境調整などをしながら情緒的、身体的なサポートが行われます。主に周囲の協力体制の構築や、今やるべきこと・やらなくて良いことの選別などをしてもらえます。そして、自身の状態や症状の現れ方について調べた上で、症状に対する行動(どのような状態になったらどうする)など、具体的な対処法についてアドバイスを受けられるでしょう。場合によっては、育児から離れて休息を取ることを目的に、入院治療が提案されることもあります。

心身のケアやサポートと共に、抗うつ薬による薬物治療や認知行動療法・対人関係療法などの心理療法も受けることができます。授乳中の薬の服用に抵抗がある方もいると思いますが、薬の影響に関しては医師からしっかり説明を受けましょう。

産後うつ病は、早期に適切な対処をすることが重要でなので、まずは医療機関に相談することが必要です。自分ではよくわからないこともあるはずなので、パートナーなど、周りの言葉に耳を傾けることも大切です。最近様子がおかしい、受診してみない? などと指摘されることがあれば、先送りせずに専門家に相談してください。

まとめ

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産後うつ病は育児への不安や育児疲れとの区別が難しく、自分自身はもちろん、家族にも見逃されることがある病気です。「みんなが通る道だから」「いずれ良くなる」との考えで放置してしまうと、重症化して自殺や虐待に至ってしまう危険性もあります。なんだかよくわからないけど、とにかくつらい……と感じるのならば、迷わず心療内科などで医師に相談してください。産後うつ病は、状況によっては誰しもなり得るもので、自分が弱いわけでも、おかしいわけでもありません。適切なケアと治療で改善するものなので、赤ちゃんのためにも、早期に対処して本来の自分を取り戻してください。

この記事の監修ドクター
産婦人科専門医 中林稔 先生
日本医科大学卒業、虎の門病院医長を経て、現在三楽病院産婦人科部長。 診療のみならず、学会・各地講演をはじめとする医学の普及活動を行う傍ら、教育にも幅広く従事しており、2008年には中林助産師学院を共同設立。自ら講師を務め、6年間連続助産師国家試験合格率100%を達成中。医師+(いしぷらす)所属

参考文献
[*1]日本産婦人科医会「妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル」
http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2018/03/mentalhealth2907_L.pdf
[*2]「産婦人科診療ガイドライン 産科編2017」(日本産科婦人科学会)
http://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_sanka_2017.pdf
[*3]竹原健二ほか「父親の産後うつ」小児保健研究,71(3),2012 p.343-9
https://www.jschild.med-all.net/Contents/private/cx3child/2012/007103/001/0343-0349.pdf

※この記事は 医療校閲・医師の再監修を経た上で、マイナビウーマン子育て編集部が加筆・修正し掲載しました(2020.03.02)

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。
※新型コロナウイルス感染症についての最新情報は、[内閣官房][厚生労働省]妊婦に関する情報[日本小児科学会]幼児に関する情報など公的機関等で発表されている情報をご確認ください。

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