【医師解説】産後の頭痛は要注意! 生活習慣から注意した方が良い病気まで。原因と対策

【医師解説】産後の頭痛は要注意! 生活習慣から注意した方が良い病気まで。原因と対策

産後は妊娠中の様々な不調から解放されるかと思いきや、思わぬ体調不良に陥ることがあります。なかでも、頭痛は多くの産後ママたちを悩ます症状です。そこで今回は、産後に生じる頭痛の原因と対策、注意すべき症状を詳しく解説します。


この記事の執筆・監修ドクター
成田亜希子先生
一般内科医。国立大学卒業後、一般内科医として地域に根付いた診療を行っている。保健所勤務経験もあり、感染症や医療行政、母子保健、精神保健などに精通している。行政機関の一員として、妊婦さんや育児中のママからの相談にも乗ってきた。国立保健医療科学院、結核研究所などでも研修を積む。
日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会、日本健康教育学会所属。

産後は頭痛になりやすい?

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産後はホルモンバランスの急激な変化や慣れない育児による疲れなどから、思いもよらない体調不良を感じることも少なくありません。妊娠中からの不調が産後も続くママもいれば、妊娠中はなかった症状が産後になって現れるママもいるでしょう。

産後ママを悩ませる体調不良には様々なものが挙げられますが、頭痛はよく見られる症状です。
頭痛には、脳にはっきりとした異常が見られないタイプの「一次性頭痛」(緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛など)と、脳腫瘍、髄膜炎、脳炎、クモ膜下出血や脳卒中などといった脳の病気やケガが原因の「症候性頭痛」があります。

頭痛の大半は一次性頭痛で、特にママ世代に多いのは片頭痛です。片頭痛は脳の血管が拡張し、周囲の神経を刺激することで発症します。妊娠中に症状が軽減するのが特徴で、妊娠後期では60~80%のママで片頭痛発作が軽減すると言われています。しかし、産後1ヶ月以内で半数以上に発作が再発することが分かっています[*1]。

このほか、産後は様々な原因によって頭痛が引き起こされます。産後特有の生活習慣が原因のこともありますが、なかには産後の身体の変化や病気が原因で引き起こされるケースもあります。

頭痛は良く見られる症状のため、軽く考えられがちですが、ひどくなると生活に支障が出るようになることもあれば、命に関わるような重篤な病気が潜んでいることもあります。繰り返す頭痛に悩まされているママは、一度受診し症状にあった治療を受けるようにしましょう。ここでは、頭痛の原因として考えられるものと対策について紹介していきます。

産後に生じる頭痛の原因とは?

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産後の頭痛の原因にはどのようなものがあるのでしょうか? その原因は「病気」と「生活習慣」の2つに大きく分けられます。

<病気が原因の頭痛>

産後の頭痛は次に挙げた病気などが原因となって引き起こされることがあります。

妊娠高血圧症候群

産後の頭痛の原因として最も注意しなければならない病気です。

妊娠20週~産後12週までの間に140/90mmHg以上の血圧が続くもので、血圧が高くなることで、ママの肝臓や腎臓の機能低下、血液の凝固障害などが引き起こされるとともに、妊娠中に胎盤が通常より早くはがれてしまったり(早期剥離)、胎児の発育不全などが起こります。

妊娠中にこの病気と診断された場合は、安静や食事療法、薬による治療などが行われ、通常、出産後には良くなりますが、重症だった場合はお産の後も高血圧が続くことがあります。また、妊娠中に高血圧でなかったママが産後に突然発症することもあります。

なお、妊娠中に妊娠高血圧症候群であった人は、正常血圧であった人より、産後数年で高血圧になるリスクが高いと言われています。

高血圧になると頭痛が引き起こされることがあります。また、妊娠高血圧症候群であった場合は、高血圧の上に出血しやすい状態となるため脳出血が起こりやすくなるのが特徴で、脳出血が頭痛の原因となっている可能性も否定できません。実際、妊産婦の脳卒中(脳出血、くも膜下出血など)が起きた時期でもっとも多かったのは妊娠後期ですが、3分の1ほどは産後1~2ヶ月の間である産褥期に発症していたという報告もあります[*2]。

産後に起こる脳出血では、発症と同時に意識を失ってしまう場合が多いのですが、その症状として頭痛が現れたときは、片麻痺(顔の右か左半分や片方の手・足が突然に動かなくなる、または感覚が鈍くなる・しびれる)、言語障害、立てない・歩けない、視覚障害などを伴うのが特徴です。くも膜下出血では突然殴られたような激しい頭痛を感じ、意識障害や嘔吐を伴うこともあります。

妊娠高血圧症候群は、妊娠前から糖尿病や高血圧、肥満などがあったり、40歳以上、初めての妊娠、親兄弟に高血圧の人がいるママなどが発症しやすいと言われています。妊娠中、この病気であったママはとくに産後も引き続き血圧の変化に注意するようにしましょう。

産褥熱

出産後2~10日以内に38度以上の発熱が2日以上続く病気のことです。多くは子宮内の感染が原因であり、なかには重症化して敗血症を引き起こすケースもあります。

この場合は高熱が続くことで頭痛が引き起こされることも少なくありません。産後10日以内に発熱を伴う頭痛が見られた場合は、退院後であっても必ず出産した病院で検査や治療を受けましょう。

貧血

産後は出産時の出血や授乳によって鉄分が不足しがちになるため、貧血になりやすくなります。

貧血は、血液中のヘモグロビンが減少する病気です。ヘモグロビンは酸素を全身に運搬する働きがあるため、貧血になると全身に十分な酸素が行き渡らなくなります。その結果、脳の酸素不足によって頭痛やけだるさなどの症状が引き起こされることがあります。最近の研究では、産後の貧血は産後うつ病の発症にも関係していることがわかってきました。

貧血ではその他にも、動悸や息切れ、たちくらみなどの症状が生じます。これらの症状を伴う頭痛がある場合は貧血の可能性がありますので、医療機関に相談するようにしましょう。セルフチェックとしては、めくった下まぶたの粘膜に赤みがなく白っぽい状態の場合は貧血の可能性が高いことを覚えておくと良いでしょう。

緊張型頭痛

一次性頭痛の一つで、正確な原因はいまだ不明ですが、首や肩周りの筋肉のコリ、緊張などが影響しているとされています。中高年に多く発症しますが、授乳による長時間のうつむき姿勢や抱っこなどによって首や肩周りの筋肉がコリやすくなるため、産後にも発症しやすい頭痛の一つです。

後頭部から側頭部にかけて締め付けられるような痛みを生じるのが特徴で、ひどい場合には目の奥にまで疲れや痛みを感じることもあります。

緊張型頭痛は姿勢やストレスなどの生活習慣が関与していることが多く、その原因を改善しないと症状も良くなりません。思い当たる症状があるママは、姿勢を正す、長時間同じ姿勢を取り続けないようにする、適度な休息を確保するといった対策を行ってみましょう。血行を良くする運動や入浴を試してみるのも良いでしょう。こうしたセルフケアで改善されない場合は、医療機関を受診するようにしましょう。

片頭痛

最初に紹介したように、特にママ世代に多いのが片頭痛です。片頭痛は、20〜40代の女性に多く、その頻度は男性の3.6倍、女性で片頭痛の人がもっとも多いのは30代で、その世代の女性5〜6人に1人は片頭痛持ちともいわれています[*3]。

片頭痛では、月に1回〜数回、頭の片側にズキンズキンと脈打つようなかなり強い痛みが出るのが特徴です(頭の両側が痛くなる人もいます)。これは数時間から長い場合は2、3日続きます。吐き気や嘔吐を伴ったり、光や音に敏感になったり、動くと痛みが強くなるといった症状を伴うこともあります。また、頭痛の前に、目の前がチカチカするなどの前兆が現れる人もいます。

片頭痛は妊娠中に症状が軽減するという特徴があり、妊娠後期では60~80%のママで片頭痛発作が軽減すると言われていますが、産後1ヶ月以内で半数以上に発作が再発すると言われています[*1]。

片頭痛の治療では、症状の程度により鎮痛薬や片頭痛治療薬であるトリプタン、制吐薬などが処方されます。

産後うつ病

産後2、4週間以降に抑うつ気分や睡眠障害や食欲低下などの身体症状が現れる病気です。産後まもなくの頃も出産による急激なホルモンバランスの変化によって気分の揺れが生じやすくなりますが、これはマタニティブルーズと呼ばれ、短期間で自然に治まる正常な反応であり、産後うつ病とは区別されています。

産後うつ病は5~10%のママで起こるとされており[*4]、比較的頻度の高い病気です。気分の落ち込みや不安、焦燥感、不眠などが主な症状ですが、睡眠障害などとともに頭痛が現れることもあります。

産後うつ病は早期発見と早期に適切な治療を始めることが大切です。気分の変調などを伴う頭痛が2週間以上続く場合には、かかりつけ医師や、地域の保健センターなど行政の窓口に相談しましょう。

<生活習慣が原因の頭痛>

産後の頭痛は次のような生活習慣によっても引き起こされることがあります。

水分不足

普通の成人では、皮膚と呼気から1日に1リットル近くの水分が失われていると言われています。母乳はママの血液から生成されるため、母乳育児をしているママはさらに水分不足になりがちです。この水分不足の症状のひとつにも頭痛があるのです。

また、水分不足で血液がドロドロになると血行が悪くなりますが、これを補うため、より多くの血流を確保しようと自律神経が働いて血管は拡がります。こうして脳の血管が拡張すると周辺の神経を刺激して、頭痛を引き起こすことがあります。

ストレス

赤ちゃんはかわいいけれど、思い通りにならない慣れない育児にストレスを抱えるママも多いのではないでしょうか? 強いストレスが続くと、自律神経のバランスが乱れたり、筋肉の緊張を引き起こしたりすることで頭痛が生じやすくなります。

睡眠不足

産後は数時間おきに目覚める赤ちゃんの授乳やオムツ交換で、大半のママは睡眠不足になります。睡眠不足は慢性的なだるさや疲れを引き起こすだけでなく、片頭痛発作の引き金となることも少なくありません。

産後頭痛の改善法

産後の頭痛は様々な原因によって引き起こされることがおわかりいただけたと思います。では、頭痛を予防したり、症状を和らげるためにはどのような対策を行えばよいのでしょうか?

病院を受診する

産後の頭痛は思わぬ病気が背景にある可能性もありますので、改善しない場合は病院を受診して適切な検査や治療を受けましょう。アセトアミノフェンなど授乳中でも安全に服用できる鎮痛剤を処方してもらうことができます。授乳中に適した投薬に詳しい産婦人科で診てもらうのが安心ですが、内科などを受診する場合には授乳中である旨を必ず伝えるようにしましょう。

市販の鎮痛薬は手軽で便利ですが、月に10日以上、鎮痛薬を飲まないと耐えられないような人は薬を飲んでいることでかえって頭痛がひどくなる「薬物乱用頭痛」に注意が必要です。このような場合も早めに受診するようにしましょう。

ストレッチや入浴

授乳や抱っこによってこった首や肩周りの筋肉の血行を改善するため、産後一か月健診などで医師の許可が出たらストレッチや入浴を積極的に行うようにしましょう。
特に、肩や首回しなど座ってできる簡単なストレッチがおススメです。

以下に、片頭痛、緊張性頭痛の両方に有効とされる「頭痛体操」を紹介します。

<頭痛体操>

頭をなるべく動かさないように行います。頭痛のないときに継続して行うのがポイントです。

産後の頭痛体操説明イメージ

■腕を振る体操(1回2分)

正面を向き、体の軸を意識して始めます。頭は動かさず、両肩を大きく左右にまわします。まわす際は、体の軸を意識して肩を回転させ、頭と首を支えているインナーマッスルをストレッチするイメージで行います。

産後頭痛体操の椅子に座ったままで行う場合の説明画像

■腕を振る体操/椅子に座ったままで行う場合

椅子に座り、両足をそろえて、顔は正面に向けたまま、左右の肩を交互に前に突き出すように回します。

産後頭痛体操の肩を回す体操の説明画像.png

■肩を回す体操(6回繰り返す)

・前回し

・後ろ回し

ひじを軽く曲げ、肩を前後に回します。前に回すときはリュックサックを背負うような感覚で、後ろに回すときは洋服を脱ぐような感覚で肩を回します。

[イラスト・解説]出典:坂井文彦(埼玉国際頭痛センター)より許可を得て転載/「片頭痛」からの卒業(講談社現代新書)より

※片頭痛の発作中や激しい頭痛があるとき、熱があるときなどは控えましょう。また普段の頭痛では起こらない症状(吐き気、ろれつが回らない、物が2重に見える、めまい・痙攣など)を感じたら、すみやかに受診しましょう。

水分をこまめに摂る

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産後、授乳中はとくに水分不足になりやすいことに注意し、普段から喉が渇いてから飲むのではなく、早めにこまめに水分補給することを心がけるようにしましょう。

人間の体は約60%が水分とされており、1日に必要な水分の量は、その人の活動量にもよりますが、だいたい2.5Lくらいと言われています。そのうちの4割程度は食事から摂取されるので、水分としては1日1.2Lくらいを飲むよう勧められています[*5]。

ただし、水分も一度に大量に摂りすぎると水中毒という状態になって体によくありません。1日1.2Lを目安にこまめに飲むようにし、汗をかいて水分が不足しがちな、入浴後や起床時にはとくに意識して水分摂取するようにしましょう。

貧血予防のための食事

産後は貧血になりやすいため、鉄分や葉酸などのビタミンが含まれた食材を積極的に摂るようにしましょう。鉄分や葉酸は、魚介類やレバー、緑色野菜などに多く含まれています。

食事に注意しても改善しない重度な貧血の場合には、鉄剤などによる薬物療法が必要になるケースもあります。顔色が悪い、疲れやすい、めまい、息切れといった貧血の症状が続くときはまずは病院を受診しましょう。

たまには休息を

育児に追われる産後のママも、家族と協力してゆっくり休める時間を確保することが大切です。また、赤ちゃんが眠っている間は日中であっても、赤ちゃんと一緒に睡眠をとったり横になって休んだりすることで、なるべく疲れを溜めないような生活を心がけましょう。

こんな頭痛にはとくに注意しよう

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産後頭痛の多くは、好ましくない生活習慣やそれに起因する病気によって引き起こされるものです。しかし、なかには脳出血など命に関わる病気が生じている場合もあります。
とくに注意が必要なのは、次のような頭痛です。

・突然頭を殴られたような激烈な頭痛
・吐き気や嘔吐を伴う
・片方の手足に力が上手く入らずうまく動かせない、または痺れなどがある
・突然言葉が上手く出てこなくなった
・けいれん発作を伴う
・片方の目が見えない、物が二重に見える、視野が欠ける
・意識を失う

これらの症状を伴う頭痛が生じた場合は早急に病院を受診しましょう。

まとめ

産後頭痛の原因は様々ですが、生活習慣を改善することで発症や悪化を防ぐことができる頭痛もあります。一方で、「こんな頭痛にはとくに注意しましょう」で紹介したような症状を伴う頭痛の場合は、脳の異常により引き起こされていることが疑われるのでできるだけ早く病院を受診することが大切です。いずれにしても、「たかが頭痛」と甘くみず、しつこく繰り返す場合やいつもと違うと感じた場合は、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

(執筆・監修:成田亜希子)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]日本神経学会・日本頭痛学会: 慢性頭痛の診療ガイドライン, p139, 医学書院, 2013.
http://www.jhsnet.org/GUIDELINE/gl2013/gl2013_main.pdf
[*2]桂木真司ほか: 本邦における脳卒中による妊産婦死亡の現状と課題, 日本産科婦人科学会学術講演会, 第68回 一般演題47, 2016.
[*3]Sakai F, Igarashi H.: Prevalence of migraine in Japan: a nationwide survey, Cephalalgia. 1997 Feb;17(1):15-22.
[*4]産婦人科診療ガイドライン―産科編2017 241p/公益社団法人日本産科婦人科学会、公益社団法人日本産婦人科医会
[*5]厚生労働省「健康のため水を飲もう」推進運動
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou/index.html

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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