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2021年08月20日 09:04 更新

【助産師解説】赤ちゃんの乳頭混乱!予防法は?克服はできる?

乳頭混乱の予防と克服方法について助産師が解説します。赤ちゃんが乳頭混乱で母乳を飲んでくれずに困っている、哺乳瓶を使いたいけど乳頭混乱が心配…というママ必見です!

乳頭混乱とはどんな状態のこと?

まずは乳頭混乱とはどんな状態を言うのかを解説しましょう。

哺乳瓶のあと、ママのおっぱいを嫌がる

哺乳瓶を使った後、赤ちゃんがおっぱいで飲むのを嫌がり始めることがあります。これを乳頭混乱と言います。人工乳首で補足をしていた母親が母乳育児を断念した1番の理由は、赤ちゃんが哺乳瓶の方を好んだからであった、という報告があります[*1]。

ただし、哺乳瓶を使用すると赤ちゃんがみんな乳頭混乱を起こすというわけではありません。哺乳瓶を使ってもおっぱいを嫌がらない赤ちゃんもいるため、乳頭混乱の有無は個人によるものと考えられます。

おっぱいを拒否される! ~乳頭混乱ママ体験談~

乳頭混乱の原因は「うまく飲めないから」説も

では、具体的に乳頭混乱はどのような理由で起こり、混乱する赤ちゃんとそうでない赤ちゃんがいるのはなぜなのでしょうか?

多くの哺乳瓶は、ミルクが自然に出るよう作られた人工乳首が用いられています。そのため、これに慣れてしまうと、乳房から直接母乳を飲むために必要な正しい吸い付き方や吸啜パターンを行うことが難しくなり、うまく飲めないことからおっぱいでの授乳を嫌がるのではないかとの説があります。

ただし、これはあくまでも一つの仮定であって、今のところ乳頭混乱の発生頻度やメカニズム、発生因子について科学的な根拠はなく、正式な定義はありません。つまり、乳頭混乱を起こす赤ちゃんとそうでない赤ちゃんの差は特にわからず、個人によるものと考える他ないと言わざるを得ません。

乳頭混乱になってしまったら?

乳頭混乱になりおっぱいを嫌がって泣く赤ちゃん
Lazy dummy

では、乳頭混乱になってしまったらどうすればいいのでしょうか?
適切な対応を試みれば、混乱を克服して母乳育児を続けることも可能かもしれません。以下の方法をためしながら、赤ちゃんが上手に母乳を飲めるようになるまで根気よく待ってあげましょう。

飲んでくれないときは搾乳を

おっぱいより哺乳瓶を好む理由が飲みやすさであれば、母乳の分泌が良くないと赤ちゃんはいっそうおっぱいでの授乳を嫌がると考えられます。現に、母乳分泌が良い状態に保たれていないと、赤ちゃんは直接哺乳よりも乳汁がすぐに得られる人工乳首を好むようになるのかもしれないという見解が示されています[*2][*3]。

母乳分泌を止めず、かつ良くするためにも、授乳と授乳の間には搾乳を行いましょう。排出量が多いほど、母乳の産生が促されます。また、赤ちゃんが母乳を飲みとれなかったときも、しっかり搾乳して母乳が作られ続けるよう対処しましょう。

人工乳首やおしゃぶりを避ける

乳頭混乱が起こったら、人工乳首の使用は避けましょう。どうしても直接哺乳が困難な場合は、哺乳瓶ではなく他のもの(スプーンやカップ、スポイトなど)を使用してください。
また、おしゃぶりの使用も避けた方がよいでしょう。おしゃぶりは乳頭混乱を起こす可能性があるだけでなく、母乳育児期間を短くするなど、母乳育児の障害となるリスクが指摘されています[*4]。

哺乳ビン以外のデバイスで与える

赤ちゃんに母乳やミルクを与える哺乳瓶以外のデバイスには、主に以下のものがあります。メリット・デメリットを見て、ご家庭や赤ちゃんの状況に合ったものを選んでください[*2]。

<カップ・スプーン>
スプーンや浅めのカップでの授乳方法です。哺乳瓶以外のデバイスとしては、もっとも手軽な方法と言えるでしょう。

メリット
・人工乳首に慣れることがないので、母乳育児に戻りやすい。
・慣れれば比較的簡単に飲ませることができる。

デメリット
・慣れるまではこぼれやすい。
・飲ませ終わるまでに時間がかかる。

<シリンジ・スポイト>
シリンジやスポイトを使って飲ませるという方法もあります。シロップ状の薬を飲ませる際に使ったことがあるママもいるでしょう。
メリット
・スプーンやカップよりこぼれにくく、飲みやすい。

デメリット
・飲み終わるまでに時間がかかる。
・洗浄しにくいので、衛生的に保つのが難しい。

<ナーシングサプリメンター>
ナーシングサプリメンターとは、赤ちゃんへの補助栄養の投与を助けるグッズです。乳房に直に付けて使うので、補足が必要なときの栄養サポートとして用いられることが多いです。

メリット
・母乳をしっかり飲めなくても、補助的な栄養分を同時に摂取できる。
・胸元での授乳が可能なので、基本的な授乳の練習になる。
・補足しながら、直接乳房を吸啜することで、母乳の分泌が良くなっていくことが期待できる
・赤ちゃんが吸う力を養ったり、吸啜のトレーニングができる。

デメリット
・慣れるまでは、乳房とチューブを一緒に含ませることが難しい可能性がある。
・使用後の洗浄に時間がかかる。
・価格が高い。

まとめ

乳頭混乱が治って静かに授乳する赤ちゃん
Lazy dummy

乳頭混乱を起こす明確な原因などはわかっていませんが、哺乳瓶の飲みやすさやおしゃぶりの使用などが一つの要因と考えられています。乳頭混乱を起こしても、母乳育児を完全にあきらめなくてはいけないわけではありません。母乳育児を継続したい場合は搾乳や哺乳瓶以外での授乳をためしながら、根気よく「おっぱいを飲む練習」を続けましょう。

(文・構成:マイナビ子育て編集部、監修・解説:坂田陽子先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]Herrera,A.Supplemented versus unsupplemented breast-feeding.Perinatol.Neonatol.8(3),1984,70-1
[*2] PERINATAL CARE(メディカ出版)2011年10月号vol30 P51
[*3] 水野克己他「よくわかる母乳育児」へるす出版(2007)p74-83
[*4] WHO/CHD Evidence for Ten Steps to Successful Breastfeeding WHO

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、助産師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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