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2023年03月07日 15:30 更新

子どもの金融教育、いつ・どんな形で始める? おこづかいのあげ方やお年玉の管理ってどうするの?

低金利時代が続き、銀行の預貯金だけではお金が増やせない今の時代、資産運用などお金を増やす手段を学び、多くの選択肢を知ることが大切です。その前段階として、子どものうちにお金の使い方や貯め方、やりくりについて学ばせたいですよね。でも金融教育ってちょっと難しそう? 家庭での始めどきはいつなのでしょうか。

2022年から高校・家庭科で金融教育が必修科目となりました。政府も「貯蓄から投資へ」の方針を取っており、18歳から始められるNISAも2024年から新制度へと移行し、恒久化が予定されています。同じく運用益が非課税となるiDeCo(個人型確定拠出年金)や会社の確定拠出年金は、社会に出てすぐ始める人も多いもの。こういった背景もあり、子どもへの金融教育の必要性が高まっています。

でも具体的には、いつ、どんな形で金融教育を始めればいいのでしょうか。実は、あまり難しく考えなくてもいいんです。ファイナンシャルプランナーの鈴木さや子さんに解説してもらいましょう。

「金融教育」は消費者教育のひとつ

(※画像はイメージです/PhotoAC)

――子どもへの金融教育について、どのように始めるべきか悩んでいる保護者は多いと思います。

鈴木FP 金融教育はとても大事な視点ですが、まず前提として抑えておきたいのは「金融教育=消費者教育のひとつ」ということ。つまり消費者として生活する上で知っておくべき大切な知識なのです。

――消費者教育、ですか?

鈴木FP 2022年から成人年齢が18歳に引き下げられました。成人になると、保護者の同意なしに契約などができるようになり、親があとから取り消せる未成年者取消権がなくなります。すなわち、18歳になったばかりの高校3年生でも消費者トラブルに巻き込まれる可能性が出てくるのです。消費者教育とは、こういったトラブルを回避したり、または適切に対処できることも含め、いち消費者として幸せに暮らしていくために必要な教育なのです。

――ですが、小さいうちから消費者教育が必要なのでしょうか?

鈴木FP そうなんです。というのも、お金や消費者契約への意識・リテラシーは、一朝一夕では身に付きません。小さい頃から、親が自身の生活上の失敗やお金のやりくり、使い方などについてオープンに話し、楽しく生活する姿を見せていくことが大事だと思います。

――具体的に何歳頃から、どんなことを学んでいくと良いのでしょう?

鈴木FP 子どもが理解できるタイミングで、理解できる内容から始めるというスタンスでかまいません。大まかな子どもの成長フェーズと内容を見ていきましょう!

(※画像はイメージです/PhotoAC)

【未就学児】
まずは、お金の存在や消費行動を認識するところから。たとえば、「今日のごはんはカレーライスにしよう」と決めて親子一緒にスーパーに買い物に行きます。そこで「じゃがいもは〇円、にんじんは〇円だね」と、必要な材料と金額を見せながらカゴに入れていきましょう。子どもと一緒のときのお会計は現金で払うようにすれば「お金を払うことで、モノを手に入れられる」ことや、お金を渡してお釣りをもらう「お金の動き」も見せられます。また、「今週の予算は5000円なのに、もう2000円も使っちゃった」などとさりげなく伝えてみると、やりくりを認識できるようになります。

【小学校低学年】
実際にお金を触ったり使ったりする機会を増やしていきましょう。硬貨と紙幣の違いを伝えたり、お金の偽造防止技術が施されている部分をクイズにしたりして、お金に興味を持ってもらうのもよいですね。また銀行に連れて行って、子どもに入出金をやらせてみるのも◎。お金は銀行に預けられること、必要によって引き出すことができ、通帳でお金の流れを管理できることと伝えられます。今は通帳の発行にもお金がかかりますが、子どもの口座はアプリではなく通帳を用意してあげた方がいいと思いますね。

【小学校高学年】
生活にはどのくらいお金がかかるかを伝えるフェーズです。水道や電気、食べ物、文房具……子どもにとっては身近すぎてお金がかかっていると認識していない場合が多いんです。それらにはお金がかかり、限りがあるお金の中でやりくりして生活していることも伝えましょう。高学年になると学校でも税理士が租税教室として特別授業をするケースがありますが、家庭でも消費税の話をすると良いですね。キャッシュレスの仕組みも高学年で伝えておくといいですね。

(※画像はイメージです/PhotoAC)

【中学生~高校生】
外出する機会が増え、使う金額が高くなる時期ですので、お金のやりくりをする経験値をあげるのにもってこい。おこづかいをあげているご家庭では、より子どもにやりくりを任せ、遊びにかけるお金については親が都度出さないようにすれば、限りあるおこづかいの中でどう捻出するか、自分で考えることにつながります。

また、中学生になったら、進学にかかるお金について親の考えを話していきましょう。「きょうだいが多いから大学院まで進学するには教育費が足りないかもしれない」または高校に行ったあとに「高校は公立に進学したから短期留学なら行かせられるお金はある」など、進学の話に絡めて家計の規模を見せていくのです。

どんな勉強を大学でしたいのか、また、そのためにはいくらかかるのか、足りない場合はどういう手段があるのか、親子で中学の頃から話しておくと、「よし、大学の給付型奨学金を狙うために高1から勉強しよう」とか「安く留学するためには英語に力を入れよう」など、勉強のモチベーションもあがります。「うちはお金がなさそうだから、大学はあきらめよう」など、子どもが勝手に思い込んで進路を決めてしまうことも防げますね。

高校3年生で成人を迎えますから、1年生のうちから詐欺などの消費者トラブルについて教えることも重要です。消費者庁の冊子を見せたり、親の失敗談を伝えたり、気を付けるべきポイントを子どもが認識できるようにしましょう。失敗を共有するというのが大事で、「失敗しない人はいないから、一緒に失敗して、一緒に成長しよう」というメッセージを伝えると、子どもがトラブルを抱えたときに親に相談しやすくなると思います。

一方で、思春期の子どもですし、親に言いにくいケースは当然あるものとして、「『188』に電話すれば消費者ホットラインにつながるからね」と、親以外の大人に相談させる環境を整備しておくことも必要です。

おこづかいも成長ごとにルールや仕組みを見直す

(※画像はイメージです/PhotoAC)

――子どもへのおこづかいは、欲しいものがあるときの「都度支給」ではなく、「おこづかい制」のほうがいいですか?

鈴木FP お子さんの性格にもよるのですが、なるべくなら「おこづかい制」のほうが親も楽で、子ども自身も「信頼してもらえている」と感じられるのではないでしょうか。

――なるほど。「おこづかい制」は何歳頃から始めるのがオススメですか。

鈴木FP スタートの時期はそれぞれですが、たとえば小学校低学年なら「習い事の帰りにアイスが食べたい」とか「スーパーで食玩がほしい」とか、定期的に欲しがるものができたときがひとつのチャンスです。食玩なら「買うのは月に〇個まで」と決め、それが買える金額のお小遣いにして「金額×個数+100円」といった枠組みを作ってみましょう。「もっと欲しいなら貯めてみたら?」と声をかければ、自然にやりくりを考えるようになっていきます。

――小学1年生から始めても良いんですね!

鈴木FP また、報酬制といってお手伝いの項目ごとにポイントを設定し、金額を決めるのもメリットは大きいです。たとえば1週間ごとに1ポイント=1円で清算し、毎週おこづかいをあげるんです。習い事や学童などでなかなかお手伝いできない子は、ミックス制(例えばポイント+基本おこづかい50円/週)といった手段も。

報酬制については、「お金のために動くようになるのでは」と懸念する人も少なくありません。もちろん、家族の一員として協力して家の仕事をするのは当たり前なことです。本人が大変だと感じるお手伝いはポイントを高くする、一方で項目にない「家事」も多くあり、それも家族全員でするものだとちゃんと言葉で伝えるのがコツ。「お金をくれないなら手伝わない」とは言わなくなると思います。

ただ報酬制は、子どもや親の性格によっては合わなくて続かないことも。いったんチャレンジしてみて、合わなければ定額制にしてもよいですね。

――ほかにも報酬制をやめるときってありますか?

鈴木FP 報酬制でしていても、進学塾に通う子も増え勉強が忙しくなる小学3年生以降に、定額制(「欲しいものの金額×個数+α」)に変えても良いでしょう。ただし、欲しいものや状況は常に変わるもの。一度決めたやり方や金額でずっといくのではなく、年に1回は子どもと相談しながら見直しましょう。

――貯金箱やおこづかい帳など、「お金の管理」についてはどうですか?

鈴木FP 理解できるタイミングで、理解できることを教える方針がいいと思います。
たとえば貯金箱。大人になると使わなくなる人が多いですが、小さい子どもには透明な箱を貯金箱として与えると、お金の増減が視覚的に理解できてとても良いですよ。小学校3年生ぐらいになったら今度は、貯金箱を「貯める用」「使う用」の2つ(もしできるのであれば、プレゼント費用などの「誰かのために使う用」を含めた3つ)を用意し、手持ちの金額を振り分けさせるといいでしょう。「使う用が空っぽになったので、貯める用から一時的に補填する」といったお金のやりくりを自然と体得するはずです。

――貯金箱の使い分け、面白そうですね。おこづかい帳はどうでしょう?

鈴木FP できる子はおこづかい帳をつける習慣があってもいいとは思いますが、小学校低学年で続けられる子は多くないと思います。つけさせるなら、最初は親が一緒につけてあげること、残高が合わなくても怒らないことが必須。記録を残すことが大事なのであって、そこに正確性は求めないのがよいでしょう。もしおこづい帳を嫌がるなら、無理強いさせなくて良いと思います。

「課金」など「見えないお金」との付き合い方

(※画像はイメージです/PhotoAC)

――キャッシュレス時代の親の悩みのひとつが、子どものゲームなどへの「課金」です。見えないだけに、欲望のままに課金を続け、のちに高額を請求されたという話をよく聞きますが、親としてはどう対応すればいいでしょうか?

鈴木FP スマートフォンやタブレットで課金できないように設定するのは必須。簡単に課金できるような状態で与えておきながら、「やっちゃダメ」というのは……大人でも難しい欲望のコントロールを子どもに強いるのはかわいそうです。

どうしても子どもがゲームなどに課金したいというのであれば、ペアレントコントロール機能を使って承認制にするか、親の端末に通知が来るように設定を。そして、通知が来るたびに、「親が承認するには、おこづかいからその金額を現金で渡すことが必要」というルールを作っておきましょう。そうして課金したお金の価値を「見える化」すると、子どももだんだんと「もったいないな」「これほどの金額を課金するんだったら、欲しかったものが買えたな」と感じ、優先順位が変わってくるはずです。

――子どもにとっての身近なキャッシュレスでいえば、交通系電子マネーもあります。上手な付き合い方のポイントはありますか?

鈴木FP こちらも交通費以外に使わないというルールを設定し、「何に使ったか、確認できるようになっているんだよ」と教えながら、一度駅に行って使用履歴を確認してみましょう。やはり見えないお金を「見える化」することが大事なのです。

また、子どもたちには使用するたびに残高を見る癖をつけさせると、「お金が足りなくて電車に乗れない!」といった突然のSOSを防止できます。お金と電子マネーを紐づけるため、オートチャージは設定せずに、入金自体も子どもにやらせてみる。その際に毎回上限を決めると、「この金額だと大体このぐらいの期間で使いきることになるんだな」と、子どもたちも電子マネーを管理しやすくなるはずです。

お年玉やお祝いの管理のポイント

(※画像はイメージです/PhotoAC)

――お年玉や、春の進学に合わせてもらうお祝いなど、比較的大きなお金の管理についてもオススメのやり方はありますか?

鈴木FP 各家庭によってやり方はあると思うのですが、うちではお年玉やお祝いをいただいたら、子ども自身がいくら入っているか確認し、電話でもいいので贈ってくれた人にお礼を言うというところまで必ずセットにしていました。そこから、「このお金で買いたいものはある? それは1年間楽しめる?」と聞いて、買いたいものがあれば自由に使わせました。買ったものを写真に撮って、贈ってくれた方に「いただいたお金でこういったものを買いました」と伝えると喜んでくれます。

お年玉などは子どもがもらったお金なので、子どもがほしいものを買う資金にしていいと思います。たとえ買ったおもちゃなどにすぐ飽きたとしても、「これを買ったからお年玉もこれだけ減ったね」と伝えることで、子どもなりにお金の使い方を学んでいくでしょう。

残ったお金は親子一緒に銀行に行って入金し、「ここにあなたのお金を預けているから、欲しいものがあったら言ってね」と伝えて、子ども名義の通帳を渡しました。子どもの口座に関しては「ママが貯金しておいてあげるから」という人が多いと思いますが、面倒でも一緒に行うと、自分のお金という認識が持てるはずです。

――お年玉を年俸制のおこづかいにしている家庭もありますよね。

鈴木FP やり方としてはアリですが、年俸制では子どもにとってはやりくりが難しそうだなと懸念しています。合計額を12で割って月額制にするなどの工夫をしてみてもいいかもしれません。

――確かに! いろいろなアイデアがありますね。

鈴木FP おこづかいやお金の管理の教え方は、お子さんの性格によるところが大きいので、いろいろ試して一番いい方法を見つけてみてください。合う・合わないは本当に人それぞれで、万能な方法はありません。定額制で月初めに400円をあげたらすぐに使い切って機嫌が悪くなってしまった場合は、1週間ごとに100円を渡すようにするなど、親側もいろいろとわが子に合うよう工夫してみましょう。

子どもがやりくりに失敗することは全然OK、というより大事な経験です。「予算をオーバーしたら、その原因を考えてみようね」と声掛けしていけば、いずれ予算内でやりくりできるようになります。保護者が「子どもの自活力、やりくり力を育てる」という本来の目標をしっかり持っていれば、どんなやり方でも間違いにはなりません。

(取材・構成 佐伯香織)

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