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2023年03月26日 10:07 更新

自分で虐待の相談をできた人は3割以下、子どもが発する虐待の「サイン」にはどんなものがあるのか

虐待のニュースを目にし、「なぜ周囲の大人が気づけなかったのか?」と悔しい気持ちになる人も少なくないでしょう。では、どうしたら虐待にいち早く気付くことができるのでしょうか? 我が子のクラスメイトの中に、虐待を受けている子がいる可能性もゼロではありません。親として、大人として、考えておきたい問題です。

外から見えにくい、虐待の実態とは

子どもの頃に虐待を受けた経験を持つ人を対象に行なわれた、「虐待を受けた児童・生徒のSOS発信に関するアンケート調査」(ACHAプロジェクト)があります。本記事では、この調査結果をもとに虐待の現状をお伝えします。

回答者の内訳

この調査では、子どもの頃に虐待を受けた経験を持つ男女1,005人から回答を得ており、その内訳としては、10~30代の若い世代が全体の約8割を占めています。最も多かった年代は「20代」で351人(全体の34.9%)、次いで「10代」が263人(全体の 26.2%)でした。これには、調査方法がSNSを利用したインターネット調査だったことが影響していると考えられます。また、性別では女性の回答者が圧倒的に多くなっています。

回答者の年代と性別
ACHAプロジェクト「虐待を受けた児童・生徒の SOS の発信に関するアンケート」より

男性は身体的虐待、女性は心理的虐待が多い傾向

虐待の種類について聞いたところ、男性では「身体的虐待」が最も多く(74.4%)、次に多いのは「心理的虐待」(68.6%)でした。

一方、女性は「心理的虐待」が「身体的虐待」よりも多く、ぞれぞれ、80.2%、69.0%でした。女性の場合は「性的虐待」の割合が男性と比べて多いことも特徴といえます。

「ネグレクト(育児放棄)」に関しては、男女ともにおよそ4割でした。

虐待の種類(重複回答あり)
ACHAプロジェクト「虐待を受けた児童・生徒の SOS の発信に関するアンケート」より

4割近くが2種類の虐待を経験

この調査の中では受けた虐待の種類の数についても尋ねており、「2種類」という回答が4割弱と、最も多くなりました。1種類でもつらいことですが、身体的虐待と心理的虐待など、2種類の虐待を受けた経験のある人が少なくないことがわかります。

受けた虐待の種類の数
ACHAプロジェクト「虐待を受けた児童・生徒の SOS の発信に関するアンケート」より

両親からの虐待が多い

虐待者の属性、つまり誰が虐待を行っていたかという設問に対しては、男性では「父親」と「母親」がほぼ同数となりました。一方、女性の場合は「母親」の方が「父親」よりも多い傾向が見られました。いずれにしても、両親のいずれか、あるいは両方から虐待を受けるケースが大半を占めることがわかります。

やはり虐待は、その多くが家庭の中で起きているといえるでしょう。

なお、「その他」には、教師などの学校関係者や塾、習い事の先生などが含まれました。

虐待者の属性(重複回答あり)
ACHAプロジェクト「虐待を受けた児童・生徒の SOS の発信に関するアンケート」より

学校に相談しなかった人が7割以上

そのほとんどが、外からは見えない家庭の中で起きているという虐待。では、虐待を受けているとき、そのことを学校に相談できた人はどのくらいでしょうか?

学校で先生などに相談できたかどうかを聞くと、男性も女性も「相談しなかった」という回答が7割以上を占めました。虐待を受けていることを、自分から誰かに相談することは難しいということが読み取れます。

学校への相談の有無
ACHAプロジェクト「虐待を受けた児童・生徒の SOS の発信に関するアンケート」より

では、本人からの相談はないが、周囲の人間が虐待に気づくというケースはどうでしょうか?

学校に相談しなかったという人に、誰かに虐待に気づいてもらえた人は、男性で16.5%、女性では18.3%にとどまることがわかりました。8割以上の人は気付いてもらうことができなかったということになります。

子どもからのSOSがなかった場合には、虐待が発覚しない可能性が高いと言わざるを得ません。虐待の事実を子どもの方から訴えることも難しい点を踏まえると、相談がなくても、どうやって虐待に気付いてあげられるかが問題になってくるでしょう。

虐待に気付かれたか
ACHAプロジェクト「虐待を受けた児童・生徒の SOS の発信に関するアンケート」より

学校で相談した相手は「担任」がトップ

学校で相談することができた人にその相談相手を聞いてみたところ、男女ともに「担任の先生」が最も多くを占めました。女性は「保健室の先生」も多いですが、体のことがあったり、担任が男性だったりする場合に、女性であることが多い保健室の先生の方が相談しやすいのかもしれません。また、女性は「友達」の割合も比較的高いですが、大人には言えないことを、同じ年の友達同士なら話せるということがあるのでしょう。

学校で相談した相手(重複回答あり)
ACHAプロジェクト「虐待を受けた児童・生徒の SOS の発信に関するアンケート」より

「相談」以外での「虐待のサイン」は?

最後に、どんな虐待のサインを発していたかを尋ねた結果も見てみましょう。

相談以外のサインとしては、「虐待された跡」などが見えるような服装で登校する、自傷行為を行う、不登校や無断欠席をする、暴言・暴力などの問題行動をとる、家出をするなどが挙げられました。担任や友達などから注目を集められるような行為をすることで、苦しみを抱えているサインを発していたことがうかがえます。

虐待のサイン
ACHAプロジェクト「虐待を受けた児童・生徒の SOS の発信に関するアンケート」より一部抜粋

まとめ

今回の調査結果から、やはり虐待は家庭内で起きているケースが大半であること、また、なかなか本人が相談することは難しく、そのまま気づかれない場合も多いことがわかりました。

これらのことから、相談できていない子どもたちのサインを見逃さないことが大切だといえます。それは外傷などのわかりやすい形であるとは限らず、教室内で暴れるなどの問題行動や家出が、虐待のサインになっている可能性もあることがわかりました。

周囲の子どもにこのようなサインを発している子がいたり、あるいは、自分の子が友達として相談を受けたりすることもあるかもしれません。そういう場合にはどのような対応をするのがいいのか、親子でしっかり話をしておくことは、子どもの教育にとっても意味があるでしょう。

(マイナビ子育て編集部)

※画像はイメージです

調査概要

■ACHAプロジェクト「虐待を受けた児童・生徒の SOS の発信に関するアンケート」
調査対象:全国の子どもの頃に虐待を受けた経験を持つ男女(有効回収数1,005人)
調査時期:令和3年6月5日から7月7日
調査方法:Webフォームを活用したインターネットアンケート

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