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2023年02月06日 08:06 更新

子供が新型コロナウイルスに感染したときに気をつけたい、合併症・後遺症などのリスク

様々な自治体で医療機関が逼迫するほど、新型コロナウイルス感染症の患者数が増えています。ワクチン接種率の低い子供も他人事ではありません。そこで、子供の場合に気をつけたいこと、合併症や後遺症などのリスクについて森戸先生に聞きました。

「うちの子は一度かかったから大丈夫」は間違い

(※画像はイメージです/PhotoAC)

昨年末から再び新型コロナウイルス感染症にかかる人が増えています。もちろん、子供も例外ではなく、感染しているんです。私のクリニックにおいては、第7波の時と同様に陽性率が6〜7割と高くなっているのが実情です。

昨年末には、生後1カ月、2カ月にして新型コロナに感染したお子さんが受診されました。生後1カ月のお子さんは、哺乳不良のためにすぐ入院になりました。意外と知られていないのですが、生後3カ月より小さいと、あらゆる薬が使えません。解熱剤も使用不可です。そして子供は小さいほど感染症にかかった際のリスクが大きいので心配しました。なお、それ以上の年齢であっても、およそ12歳以下は薬の選択肢が多くありません。

新型コロナに感染した場合、お子さんも高熱や熱性けいれん、頭痛、激しい咳や喉の痛み、下痢、嘔吐などの様々な症状に苦しみます。そして新型コロナが流行し始めてからの数年間に、すでに2〜4回も繰り返し感染しているお子さんもいるのです。

「うちの子は新型コロナにかかったことがあるし、もう大丈夫だと思ってワクチンを接種しませんでした」という親御さんがいらっしゃいますが、新型コロナには何度でも感染します。また最初の感染で、それほどひどい症状が出なかったとしても、何度目かで重症化するリスクは否定できません。

実際、昨年1月1日から9月30日までの間に、新型コロナによって亡くなった20歳未満は50人もいます(※1)。しかも、その半数以上の29人(58%)が基礎疾患がないこともわかっているのです。

陽性となっているお子さんの多くは、新型コロナワクチンを接種していません。また、新型コロナワクチンの小児の1回以上接種率は約2割と低いままです(2023年1月10日現在 ※2)。ぜひ、お子さんの安全を守るためにも、感染を広めないためにも、今からでもワクチンの接種をお願いします。

もっとも心配な「MIS-C(小児多系統炎症性症候群)」

こうして新型コロナワクチンの接種をおすすめする理由は、感染によってお子さん本人が様々な症状に苦しんだり時に命を失ったり、また周囲の人を感染させて苦しませたり命を失ったりする危険性を少しでも下げられるようにというのが第一です。

さらに、それだけでなく新型コロナ感染による合併症や後遺症がよくわかっていないからでもあります。ときに「新型コロナワクチンの副反応による短期・長期的な影響が心配」と言う方がいますが、むしろ新型コロナウイルスに感染した場合の短期・長期的な予後のほうがずっと心配です。

もっとも心配なのは、新型コロナ感染後の子供にまれにみられる合併症「MIS-C(ミスシー)」でしょう。MIS-Cは「小児多系統炎症性症候群」とも呼ばれ、心臓や肺、脳、消化器などの複数の臓器に炎症が起こり、場合によっては心不全になることもある恐ろしい病気です。目に見える症状としては、嘔吐や腹痛、発熱、目の充血、手足のむくみなどが挙げられます。「川崎病」に似ていますね。

MIS-Cは、新型コロナ感染後2〜6週間後に発症し、場合によっては死亡するケースもあります。アメリカ疾病対策予防センター(CDC)によると、アメリカでは実際にこれまで約9千人の子供がMIS-Cを発症し、そのうちの70人以上が亡くなっているとのこと。

自治医科大学付属病院などの調査によると、日本ではまだ死亡例はないものの、少なくとも64人がMIS-Cを発症したとのことです。MIS-Cになった場合は医療機関に入院し、治療を受ける必要があります。気になる症状がある場合は、必ず早めに受診してください。

味覚異常だけじゃない新型コロナの後遺症

このほかにも新型コロナに感染した場合、子供も大人と同じように「ロングコビッド」と呼ばれる様々な後遺症が残る場合があります。

新型コロナ後の後遺症としてよく知られるのは、味覚障害、疲労感、頭痛、動悸、せき、筋肉痛、発熱、めまいなど。また「ブレインフォグ」といって、頭に霧がかかったようになってぼーっとする症状に悩まされる子供もいます。勉強や運動などにも支障が出てしまうので、困りますね。

アメリカのコロラド大学医学部の調査によると、子供の後遺症の発症率は大人に比べると少なかったものの、急性期に重症だった場合や低年齢の場合、慢性疾患がある場合はリスクが高いことがわかっています。また子供の場合、味覚・嗅覚の変化、胸痛、疲労・倦怠感、心肺の徴候や症状、発熱・悪寒など以外にも、肝酵素値異常、脱毛、発疹、下痢などが多く、心筋炎にも注意が必要だとのこと(※3)。

また、日本の『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き』の小児へのアプローチには、必ずしもコロナの後遺症ではないものの、発症後にメンタルヘルスに関わる様々な症状(悲しみ、うつ、睡眠障害、気分変動など)が起こることがあるとも書かれています(※4)。どんな症状であっても、日常生活に支障をきたす場合は、ぜひ医療機関で相談してください。

以上のように、新型コロナに感染した場合には様々なリスクがあります。特に小さな子供の場合は、もしも味覚障害などの後遺症があっても言葉で表現できないことも考えられます。ですから、新型コロナワクチンをきちんと接種し、手洗いやマスク着用を適切に行い、三密を回避するなどして、感染予防に努めるようにしましょう。

参考文献
※1 国立感染症研究所「新型コロナウイルス感染後の20歳未満の死亡例に関する積極的疫学調査(第二報)」
※2 首相官邸「年齢階級別接種実績」(1月10日公表時点)
※3 JAMA pediatrics. 2022 10 01;176(10);1000-1009. doi: 10.1001/jamapediatrics.2022.2800.
※4 新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 別冊罹患後症状のマネジメント 第2.0版

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