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2022年11月25日 06:05 更新

空港でキャリーバッグに座った3歳児が転落。急性硬膜外血腫・頭骨骨折の怪我を負う【親が知りたい子供の危険⑦】

身近なものが子供の安全を脅かすことがあります。しかし、前もって知っておくだけで防げる事故もあります。今回は「キャスター付きキャリーバッグ」で起こった事故事例をお伝えします。歩き疲れた子供を休ませるためか、キャリーバッグに腰掛ける姿を見かけることがあります。乗っている子供は楽しそうですが、そこには大きな危険が…

週末の夜、旅行先の空港で起きた「キャスター付きキャリーバッグ」の事故

※写真はイメージです

世の中がコロナ禍に突入する前の2019年4月のある金曜日。Aちゃん(3歳5ヶ月)は両親とともに日本を訪れます。そして事件は午後8時過ぎの空港内で起きました。

座っていたキャリーバッグから後ろに転落

Aちゃんは高さ60cmほどのキャスター付きのキャリーバッグに腰掛けていたと言います。その後、後ろに転落。頭を空港のターミナル内の床に打ち付けてしまいます。

その事故からおよそ45分後、嘔吐し始めるAちゃん。両親が付き添い様子を見ていましたが、事故から3時間半後に救急要請をしました。

※写真はイメージです

CTの結果、右側頭骨骨折と急性硬膜外血腫と判明

病院に到着したAちゃんは、呼吸数・脈拍・血圧などには問題がなく、意識もはっきりとしており、手足の運動障害もありませんでした。また、頭の右側に打撲のあとがあった以外には、傷なども見当たりません。

しかし、CT撮影を行ったところ、右側頭骨骨折と右急性硬膜外血腫が判明します。

小児集中治療室に収容して経過観察を行い、その後の一般病棟も含め、6日間の入院となりました。

子供の転落事故は「建物から」だけじゃない

つい最近もマンションから子供が転落死する痛ましい事故が相次ぎました。しかし、子供の転落事故は建物から落ちるものだけではありません。

まず、大前提としてキャスター付きキャリーバッグといった子供を乗せるように設計されていないものについては、安定しているように見えようが、高さがちょうどよく感じようが、たとえ大人が近くにいたとしても座らせてはいけません。落ちる!と思った次の瞬間には子供は地面に落ちてしまっています。危なくなったら助ける、というのは不可能だと思っておいた方がいいでしょう。

また、比較的低い位置からであっても、転落の事故は頭の骨折や頭蓋内損傷といった重大な怪我を引き起こすことが珍しくないのです。

そのほかにも、こんな身近な乗り物で子供の事故は起こっています。

3歳以下の自転車転倒・転落事故は「停車中」の方が多い

※写真はイメージです

冒頭でお伝えした事故は、60cmのキャリーバッグに座って起こりました。このように不安定なものに子供を乗せたままして転落する例としては幼児用座席付自転車(以下、自転車)の事故があります。

自転車から落ちるというと、走行中を想像するかもしれません。しかし、自転車からの転倒・転落事故の中でも0〜3歳は停車中の方が発生件数が多いのです(停車中249件、走行中234件、2010〜2016年)[*2]。

例えば、以下のような事故の例があります[*3]。
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■<1歳児>自宅前に自転車を停めて、子供のヘルメットとシートベルトを外す。前の座席に座らせたまま玄関の鍵を開けるため、自転車から離れた時に自転車が倒れる。子供はアスファルトに額をぶつけて怪我。

■<2歳児>前の座席に下の子を乗せ、シートベルトを装着。後ろの座席に上の子が乗る時に自転車が倒れる。下の子はアスファルトに頭をぶつけ(ヘルメット未装着)頭部打撲と脳震とうで入院。
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子供を自転車の乗せる時は、ヘルメットをかぶらせてすぐにシートベルトを着けましょう。そして、子供を乗せたまま自転車を離れたり、目を離したりしてはいけません。

ベビーカー転倒・転落の原因、最多は「掛けた荷物」

※写真はイメージです

本来安全であるはずのベビーカーも使い方次第では転倒・転落のリスクがあります。

これから迎えるクリスマスや年末年始は特に買い物が増える時期ですね。そうするとついついベビーカーのハンドルや自分で取り付けたフックに、荷物を引っ掛けて運ぶこともあるかもしれません。

国民生活センターが行ったアンケートでは、ベビーカーによる転倒・転落の経験がある人が約3割にのぼりました。そして、その原因の最も多かったものが「ハンドルや後付けした荷提げフックの荷物」だったのです。実際に、ハンドルに荷物を掛けることで少しの傾斜でも転倒しやすくなるというテスト結果も出ています[*4]。

ハンドルなどに荷物を掛けると転倒しやすくなるということを認識してください。そして、子供を乗せたら面倒がらずに毎回シートベルトを着けましょう。

ベッド、椅子、抱っこ紐……子供の転落リスクは身近にある

今回は、キャリーバッグに乗ることで起きた事故とともに、子供を乗せる機会が多い自転車とベビーカーの転倒・転落事故についてお伝えしました。そのほか、家庭内での転落・転倒事故は以下のような状況で起こります。

柵を上げていないベビーベッドに寝かせ、目を離した隙に転落
ベルトを閉めずにハイチェアを使い、立ち上がって転落
階段の転落防止柵が閉め忘れてあり、ハイハイで近づき、そのまま転落
ベルトを緩めた抱っこ紐使用中に、目の前のものを拾おうとして前かがみになり、子供が滑り出して転落
ショッピングカートの座席ではない場所に乗せ、立ち上がって転落

まず第一に、座席ではない場所に座らせないこと。そして、子供用のツールであってもベルトや柵があるものは必ず正しく使用することが大切なのです。

(文・構成:マイナビ子育て編集部/医師監修:メディコレ

この記事は、日本小児科学会の「Injury Alert(傷害速報)」を元に作成しています。

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