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2023年03月10日 07:03 更新

あがり症は克服できる!子供や大人が人前で緊張しなくなる7つの方法【臨床心理士解説】

人前に立つと緊張してしまう人は少なくありません。それは大人でも子供でも一緒。ちょっと緊張しながらも何とかこなせるなら問題ありませんが、いわゆる「あがり症」となると苦痛度が増してしまいます。 今回は、お子さんや親御さんご自身のあがり症を改善する方法をご紹介していきます。

(解説:臨床心理士・公認心理師 たかだちかこ/うららか相談室)

あがり症の人にありがちな「4つの心理状態」

あがり症の子の心理状態はどんな感じなのでしょう?

実際に人前に立って緊張してしまっているときは、心臓のドキドキや手の発汗など身体症状に意識が行くことも多いですが、それに至る心理としてよくあるものとしては、以下の4つが挙げられます。

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① 失敗するのが怖い
② 恥をかきたくない
③ 人の視線を意識してしまう
④ 良く思われたい
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人前で何かするとき、失敗してしまうことを想像してあがってしまうというパターンは非常に多いです。順番が近づくにつれて失敗するイメージが頭を離れなくなり、どんどん緊張や不安が強まってしまいます。

また、あがり症の子は、失敗する=恥をかくと捉えている人がとても多いです。失敗が怖いのは、恥をかくのが怖いとも言い替えられます。本人にとっては、みんなの前で恥をかくことは「この世の終わり」くらいの重大事項に思えてしまいがちです。

そして、過剰に人の視線を意識したり、「見られている」と感じたりするのも、あがり症の子によくある心理状態です。人前に立つことは確かに「見られている」場面ではありますが、現実以上の注目を浴びていると思い込んでしまい、その意識もあがってしまうことに繋がります。

上記の心理は総じて、あがり症の子は人から良く思われたいという気持ちが強く出てしまうからとも言えます。
誰からも常に良く思われるのはどんな人にも難しいですが、あがり症の子は「それでもいいから精一杯やろう」とはなかなか思えず、「良く思われないなら逃げてしまいたい」という方向に気持ちが向くのも特徴です。

「あがり症」で受診は必要?

対人場面全般で緊張しやすい人もいますが、今回は人前に立った時、注目を浴びる場面で特に緊張してしまう「あがり症」についてお話します。

まずは、あがり症とはどのような特徴や症状があるのか見ていきましょう。

あがり症の代表的な5つの症状

人前で緊張するのは多くの人に経験のあることで、それ自体はおかしなことではありません。あがり症とは、人前に立つと一般的な緊張以上のレベルで、心身が普段とは大きく違う状態になり、

強い緊張感や不安感
動悸、息切れ
手や脇、顔などに汗をかく
身体や声の震え
赤面

などの症状が出るものです。

人によって症状の種類や強さは様々です。明確な定義があるわけではないですが、本人が強い苦痛を感じるならば「あがり症」と言えるでしょう。

起きやすいのは小学校〜中・高校ごろ

あがり症や社交不安症(後述)は、他者からの評価を気にしてしまうことが前提となるので、他者にも自分とは別の考えや感情があることがよく分からない乳幼児には発生しません。

人前で何かをする機会が増え、特定の人間関係の中で評価が固定しやすい環境があがり症を誘発しやすくなるため、小学校入学前後から10代後半頃までの人によく見られます。

「1割以上が社会不安症を発症」とのデータも

緊張してしまう人でも、どうにかその場面を乗り越えられるなら、一般的な「あがり症」の範疇と言えます。

しかし、不安過ぎてその場面を回避する、他の人から悪く思われたり恥をかいたりすることへの強い恐怖等によって日常生活に支障が出ているなど場合、「社交不安症(社会不安障害)」の可能性もあります。

米国では成人の12%が生涯のある時点で社交不安症を発症することがあるとされており[*1]、また、日本でも12ヶ月有病率は0.8%という報告もあり[*2]、社交不安症は決して珍しいものではありません

いろいろな対策を試みても一向に気持ちが楽にならず、緊張する場面を回避してしまうような状態が6カ月以上続いていて、とても辛く感じる場合は、心療内科などを受診するのも一つの方法です。認知行動療法を中心とした心理療法や薬物治療など、より専門的な対策による改善が期待できます。

資質、経験、環境……あがり症に原因はある?

あがり症になる原因は、過去の経験や生まれ持った性格、さらに家庭や園・学校の環境など様々です。主な原因を見てみましょう。

<原因1>刺激に敏感で不安になりがちな資質

元々の性格や資質として敏感なタイプは、人前に立つときのいつもとは違う雰囲気を強く感じ取り、身体がストレスを受けて自律神経が乱れ、緊張やドキドキ、発汗などの症状を起こします。

それらの症状にも敏感に気付き、緊張を自覚することで余計に緊張感が高まり、ますますあがってしまいます。

<原因2>上手くいかなかった過去の経験

以前、人前で失敗した経験が「また失敗してしまうかもしれない」という恐怖や不安を引き起こし、それがあがる原因になることも少なくありません。

周囲にとっては大したことないような、失敗とも言えないようなことでも、本人が失敗と捉えてしまう場合、逆に、本人は失敗とは思っていなくても、からかわれたりダメ出しをされたりした場合も、やはり、あがり症の原因になり得ます。

<原因3>否定的な関わりや叱責をされる環境

人前に立つ場面に限らず、日頃から家庭や学校・園などで言動を否定されるような関わり方をされている子は、どうしても自分に自信を持ちにくくなります。

そのように低い自己評価の子が人前に立つ場面になれば、「自分には何もできない」「うまくできないとまた責められる」という気分に支配されてしまい、あがってしまう要因となります。

あがり症改善のためにできる5つのこと

いつ注目を浴びる瞬間が来るかと、毎日緊張しながら生活しているあがり症の子も多いと思います。それはとても苦しいことですから、少しでも楽になれる方法を身に付けられるといいですね。

そのための具体的な方法をご紹介します。

① 納得いくまで準備や練習をする

授業内の発表や劇のセリフなど内容が決まっているものは、自信を持てるようになるまで準備や練習をすると良いでしょう。

「あれだけ練習したんだから大丈夫、その時の自分なりに精一杯やれればそれでいい」と思えるくらい準備ができれば、不安な場面にも挑戦しやすくなります。

② とにかくやってみて、できた部分を認める

あがり症の子は、緊張する場面から逃げたいと考えがちです。その場面を回避すると一時的に不安や緊張感は減りますが、回避すればするほど、次にあがりそうな場面が来たときの不安は大きくなっていってしまいます。

あがり症を改善するには、この回避を止めることがとても大切です。いくら練習をしても不安を完全になくすことは難しいですが、「不安を抱えたままやってみる」のが重要なポイントです。

そして、できた部分を意識して評価してあげましょう。少なくとも「逃げずに立ち向かった」という点は思いきり自分を褒めてあげたいですね。

③ 失敗しても終わりではないことを理解する

思うようにできなかったり、失敗したと思えたりしたとき、あがり症の子は
「みんなに笑われているに違いない」
「もう恥ずかしくて生きていけない」

というように、極端に低い自己認識に陥りやすいです。しかし、この認識は客観的に正しいわけではありません。

失敗してもいいこと、どんな大失敗をしようと世界が終わるわけではないことを理解できると、あがりにくくなります。

子どもの年齢や性格に応じて、可能ならば、失敗したと思えた後の周囲の反応を箇条書きにしてみて、
「思っていたほど笑われてはいなかった」
「皆の対応も特に変わらなかった」
ということを客観的に意識するのも効果的です。

④ 腹式呼吸などで身体の緊張感をほぐす

一度あがってしまうと、動悸や発汗など身体変化に意識がいってしまい、それでますます緊張が高まる悪循環になってしまいます。そこで、下記のように身体をリラックスさせるのも良い手段です。

【腹式呼吸】
① お腹をへこませながら口から息を3秒吐く
② お腹を膨らませながら鼻から3秒吸う


【筋弛緩法】
① 両手をギュッと握って5秒キープ
② 一気に力を抜いて両手を開く


状況が許せば、身体の様々な部位を順番にリラックスさせていく方法もありますので、場面や自分に合ったほぐし方を探してみましょう。

⑤ 意識を自分自身からそらす

人前に立つ時、その目的や内容よりも自分自身に注意が向いてしまうのも、あがり症の特徴です。

自分のあがり具合を感じると更にあがってしまいやすいので、今何のためにここに立っているかを再認識し、話している内容をはっきり伝えることに意識を向けるなど、自分から注意を逸らすと落ち着けることがあります。

聞いている人たちの服や姿勢、教室の後ろの掲示物などを見て、視線を自分から引き離すのもいいですよ。

あがり症な人へ、周囲ができるサポートは?

親御さんにはとても心配なことと思いますが、子どもがあがってしまうことに関して責めたり叱ったりせず、また、本人の性格や努力不足のせいにはせず、温かく見守ることが大切です。

できた部分を褒めてあげよう

上記で紹介した5つの対策のうち、子どもだけでは難しい部分はサポートしながら一緒にやったり、「ここは出来たね」と具体的な部分を挙げて褒める、「あがってしまっても、上手くできなくても、あなたの価値は何も変わらないよ」「頑張ってやってみたことがすごいよ」とお子さんに伝えてあげるのも有効です。

学校や園に要望を伝えるのも一手段

いつ人前に立つことになるか分からないことが不安要素になっている場合、事前に予定を教えてもらうよう園や学校にお願いすることで、子どもの不安が減らせるなら、それも親ができる大切な対策です。

あがり症の子が少しでも安心できる対応について何か要望や相談があれば、伝えてみると良いでしょう。

まとめ

あがり症は本人の苦痛度が高く、不安や緊張でいっぱいの日々になりかねないので、困っている子がいたら周囲の大人がサポートしてあげたいですね。

克服には不安なままでもいいからやってみることが不可欠で、その一歩を踏み出しやすくなるような手助けが大切です。あがってしまうことや子ども自身を否定せず、安心感を与えられるような声かけや環境調整をしていけるといいですね。

(文:うららか相談室 たかだちかこ/構成:マイナビ子育て編集部)

※画像はイメージです

心理カウンセラーが解説「親子の心理学」シリーズの記事はこちら>>>

参考文献
[*1]Social anxiety disorder: recognition, assessment and treatment
[*2]日本不安症学会,日本神経精神薬理学会「社交不安症の診療ガイドライン」
DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル アメリカ精神医学会
Clinical guideline [CG159] National Institute for Health and Care Excellence 2013年 https://www.nice.org.uk/guidance/cg159/chapter/Introduction

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、専門家の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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