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2022年10月22日 06:15 更新

HSPは「人嫌い」から抜け出せる?5つの解決のヒント「人嫌いな相手への接し方」も解説【心理カウンセラー解説】

生まれつき恥ずかしがり屋で内向的、引っ込み思案、物事を始めるのに時間がかかる、敏感で怖がりなどの特徴を持つ人は世の中に一定数存在します。中でも、敏感すぎて疲れやすく、時には生きにくい気質を持つHSPが、どうしたら少し楽になるのか、また人嫌いのHSPの人にはどう関わったらよいのかについて解説します。

HSP(Highly Sensitive Person)とは

引っ込み思案や、敏感で怖がりなどの特徴を持つ人について、最近では、それらの性質の背景にある「感覚処理過敏性(sensory processing sensitivity)」に着目したHSPという概念が提唱され、よく知られるようになりました。

HSPは、エレイン・N・アーロン博士が1996年に提唱した概念で、環境や性格などの後天的なものではなく、先天的な気質で、疾病や障害ではないとされています。そしてHSPはどの国でも人々の15~20%程度の割合で存在するとされています。

HSPの4つの特徴

アーロン博士による定義では、以下の4つの特徴のうち、一つでも当てはまらない場合はHSPではないとされています。

1 考え方が複雑で、深く考えてから行動する
(Depth of processing)
2 刺激に敏感で疲れやすい
(Overstimulation)
3 人の気持ちに振り回されやすく、共感しやすい
(Emotional reactivity and high empathy)
4 些細なことにも気付く
(Sensitivity to subtleties)

HSPと発達障害との違い

HSPと混同されがちなものに「発達障害(神経発達障害)」があり、特徴が似ています。

発達障害とは、ADHD(注意欠陥・多動症)ASD(自閉スペクトラム症)など、生まれつきの脳機能の違いにより、日常生活で様々な困難を抱えやすくなる障害の総称です。

ASDを抱える方は、特に幼少期から感覚が過敏である場合が多く、HSPと混同されやすくなります。ASDは、対人関係が苦手で、強いこだわりを持つことが特徴ですが、HSPは他人の気持ちを察することが得意で、より共感性をもっているといわれる点で異なります。

なお、発達障害(神経発達障害)は医学上の正式な分類ですが、HSPは気質を表す一般的な概念となっています。

HSPかを判断する「26のチェックリスト」

【1】 いつも自分を責めたり、否定したりしてしまう
【2】 小さな音や雑音が気になることがある
【3】 いつもビクビクしていて、すぐに焦ってしまう
【4】 一度、悩みを抱えると抜け出せなくなる
【5】 部屋をきれいに片付けることができない
【6】 怒りを上手くコントロールできない
【7】 自分で決めるより他人に決めてもらうことが多い
【8】 昔の辛い出来事を急に思い出すことがある
【9】 誰かに監視されたり、悪口を言われたりしていると感じる
【10】他の人には見えないが、自分だけが見えるものがある
【11】人に本音を語れず、友達も少ない
【12】大人数の集まりや飲み会が苦手
【13】他人が望むとおりにしようとして疲れる
【14】相手の感情に自分の気持ちが左右されることが多い
【15】すぐ人を好きになったり、恋人に依存したりしてしまう
【16】子どもの頃から親に支配されていると感じる
【17】複数の仕事や業務を同時進行することができない
【18】急な予定変更があると混乱してしまう
【19】突然名前を呼ばれると、びっくり仰天してしまう
【20】小さな失敗でも激しく動揺してしまう
【21】怒っている人やトラブルを見ると落ち込む
【22】たわいもない会話や雑談が苦手
【23】仕事で注意されると自分を全否定されたように感じる
【24】電磁波や化学調味料がとても気になる
【25】寝付きが悪く、ぐっすりと眠ることができない
【26】芸術や音楽に深く心をひかれる

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チェックした項目の数が多いほど、HSP的な気質を持つ可能性があります。例え一つの項目しか該当しなくても、それが極端に強い場合には、HSP的かもしれません。
(参考:「敏感すぎて生きづらい人の明日からラクになれる本」長沼睦雄 著)

※HSPは医学的根拠や診断基準のある概念ではありません。HSPと自己判断してしまうことは、類似性があるほかの精神疾患や障害などへの対応を見過ごしてしまうリスクがありますので、日常生活に問題を抱えている方は、医療機関の受診も検討することをおすすめします。

なぜHSPは「人嫌い」になりやすいのか 3つの理由

HSPは、繊細すぎるといった特性から、人嫌いになってしまう方も多いです。この章では、人嫌いになってしまうHSPの特徴と、場面別にどのようにそれらの特徴が現れるのかをまとめています。

理由① 人付き合いで疲れやすい

純粋で直観に優れていますが、自他を区別して自分を守る境界線(自我)が弱いため、人付き合いに疲れやすいといった特徴があります。
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■学校や職場関係
 ・人の輪に上手に入っていくことが出来ない
 ・頼まれると嫌と言えない
■恋人や夫婦関係
 ・相手が望むとおりにしようとして疲れてしまう
 ・相手の感情に左右されてしまう
■親子関係
 ・親の理想に合わせられなくて、申し訳ないと思う
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理由② 周囲の負のエネルギーに影響されてしまう

刺激に敏感すぎる傾向があるため、周りの負のエネルギーに大きく影響を受けたり、エネルギーを吸い取られてしまうことがあります。
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■学校や職場
 ・怒っている人やトラブルを見ると落ち込む
■恋人や夫婦関係
 ・自分で決められず、他人に意思を委ねてしまう
■親子関係
 ・親に「支配されている」と感じる
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理由③ 自己否定をしてしまう

物事を深く考えるため、自己否定が強くなる傾向があります。
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■学校や職場
 ・自分のせいで職場に迷惑をかけていると悩む
■恋人や夫婦関係
 ・ちょっとしたことで落ち込み、心のシャッターを下ろしてしまう
■親子関係
 ・両親や家族に愛されて育った記憶や自覚がない
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人間関係の苦しみから抜け出すには? 5つのポイント

HSPで人間関係に悩んでいる場合、どのような対処法があるのでしょうか。場面・お悩み別に、考えられる対処法をご紹介しますので、参考にしてみてください。

✅ 「小さな音が気になって勉強や仕事に集中できず、人と一緒にいることがつらい」場合

HSPは音の刺激をより強く受け止めてしまいます。ノイズキャンセリング機能付きイヤホンを使うなどして、雑音やノイズなどを遮断できる方法を検討してみましょう。

✅ 「こころの底から話せる友達がいない、たわいもないおしゃべりが苦手」な場合

学校や職場以外の場所で、同じ興味・趣味を持つ人とつながることで、気兼ねなく話せる友人が見つかるかもしれません。

✅ 「パートナーに依存したり、支配されてしまうことがある」場合

相手に依存しないように、恋人や夫婦以外に楽しめる趣味などを持つと良いでしょう。自分を客観的に把握できるよう、人に話を聴いてもらうことも大切です。

✅ 「親に支配されていると感じる」場合

親に支配されていると感じている場合、親との関係をもう一度見つめ直すことが必要です。自分を肯定し、誰からも支配されない存在としての自信をもてると良いでしょう。なお、親との関係性は、自分一人で見つめ直すことは難しいため、カウンセリングなどを利用することもお勧めです。
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関連記事
▶︎ヘリコプターペアレントとはどんな親?子への過干渉リスクをチェックリストで診断【心理カウンセラー監修】

✅ 「両親や家族に愛されて育ったと思えず自分を否定してしまう」場合

自己犠牲をしがちな自分を認めて「いい子」から卒業する必要があります。育った家庭環境を信頼できる人やカウンセラーに話し、自分は存在しているだけで価値があることを認識できると良いでしょう。
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関連記事
▶︎愛情不足の子供の3大特徴と将来のリスクとは?愛着形成のためにできること【心理カウンセラー解説】

子供やパートナーが「HSPで人嫌い」の場合、どう対応したらいい?

自身の子どもやパートナーがHSC/HSPの特性を持ち、人付き合いが苦手な場合、どのように接してあげれば良いのでしょうか。ここでは、3つの対応方法をご紹介します。
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※HSC:HSPの特性を持つ子どものこと
関連記事▶︎HSCは繊細な子供のこと?4つの特徴と23のチェックリスト

【1】程よい距離で関わる

心の境界線が薄く、刺激に敏感で疲れやすい特性があることを認めましょう。一人の時間を大切にするHSC/HSPには、程よい距離で関わるように心がけ、不要なストレスを与えないようにするとよいでしょう。

【2】本人の立場に立ち、受け入れる

些細なことが気になったり、自信を無くしていることには理由があります。「気にし過ぎ」「考え過ぎ」と決めつけないで、まず本人の思いを受け止めましょう。

また、頑張ることや我慢をしなくてもよい時もあることを認めて、必要な時に休息をとる本人のペースを尊重し、そのままで良いと受け入れましょう

【3】気持ちを抑え込まないコミュニケーションをとる

HSC/HSPは、自分の気持ちを上手く他者に伝えることが苦手です。また、相手の反応に対する不安から、否定的な感情を心の中にためてしまうことも多いです。
必要以上に気を遣い過ぎずに、HSC/HSPが否定的な気持ちを抑え込まずに伝えられるコミュニケーションを普段から心がけましょう。

まとめ

HSC/HSPは、もともと繊細で優しい心の持ち主です。特性や感じ方や反応の違いを理解して、周囲が適切に支援することで、HSC/HSPは安全感を持つことが出来て、初めて長所を発揮することが出来ます。もし関わりの方法について困ることがあれば、迷わず身近な人にサポートを求めてくださいね。
なお、HSPは医学的根拠や診断基準のある概念ではありません。HSPと自己判断してしまうことは、類似性があるほかの精神疾患や障害などへの対応を見過ごしてしまうリスクがありますので、日常生活に問題を抱えている方は、医療機関の受診も検討することをおすすめします。

(文:うららか相談室 梅村かおり/構成:マイナビ子育て編集部)

※写真はイメージです

心理カウンセラーが解説「親子の心理学」シリーズの記事はこちら>>>
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参考文献
「敏感すぎて生きづらい人の明日からラクになれる本」I(長沼睦雄 永岡書店2020) 「「傷つきやすいのに刺激を求める人たち」(トレイシー・クーパー フォレスト出版2022)
「「繊細さん」の4つの才能」(コートニー・マルケサーニ SBクリエイティブ 2021)

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、専門家の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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