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2022年10月04日 06:39 更新

アメリカで“孤育て”していたママより。今、子育てがつらいあなたに伝えたい、魔法の言葉

日々わからないことだらけの子育て。頑張りすぎてしまった結果、自分で自分を追い詰めてしまいがちです。今回は、“子育て・キャリア構築”などをメインに日米でライフコーチとして活躍し、子育てに関する著書も多数あるボーク重子さんによる、頑張りすぎてしまうマイナビ子育て読者へ向けた特別コラムをお届けします。

完全な正解がないからこそ、尽きることのない子育ての悩み。特に初めての子育てとなると、右も左もわからない状態の中、「我が子を守り育てなければ」というプレッシャーに押しつぶされそうになるママやパパもめずらしくありません。

“子育て・キャリア構築”や、“ワーク・ライフ・バランス”について、アメリカや日本でコーチングと講演会を行うボーク重子さんも、かつて異国の地での“孤育て”に深く悩んだ一人。完璧主義によって自ら「ワンオペの罠にはまった」というボークさんが、“孤育て”から抜け出せたきっかけとは。

「孤育て」から「楽しい子育て」へ

(photo AC)

娘が生まれてから2歳ごろまで、かわいい我が子のはずなのに、「子育て=大変=つらい」という状態に陥っていました。

自分の時間はないし、子育ては間違えられないし、家事は完璧にしないといけないし、とにかく「つらい」という思いが強かったのです。そしてなんだか自分一人だけが頑張っているようで孤独でした。

けれど、考えてみれば誰も私に「子育ても家事も完璧にやりなさい」とは言いませんでした。ただ、それが母となり妻となった自分の「使命」のように思えたのです。

夫は協力的で家事も育児も積極的に参加しようとしてくれました。でも、そんな夫に私は「あなたには任せられない」「こういうふうにやってと言ったよね」「なんで言ったようにやってくれないの?」と否定することばかり言っていたのです。だから彼もだんだんと手伝うのが怖くなったり、億劫になっていったのでしょう。自分のやり方でやったら叱られちゃうのだから、当然の反応だったと思います。

まるで、自らワンオペの罠にハマっていったようなものです。

(photo AC)

それだけじゃありません。自分に自信がなく、完璧に子育てをしていないことが「バレたら困る」との思いから、誰かに相談することも、愚痴をこぼすことも、ましてやママ友を作ろうとなんてことも思えませんでした。だって上手に子育てと家事をやっている人や、仕事と両立しているママを見たりしたら、ますますつらくなってしまうから。

孤育て、という言葉がありますが、最初の2年ほど、私は自分で自分を孤育てに追い込んでいたような気がします。

そんな私を救ってくれたのはワシントンDCに移住してからできた近所の友人でした。独身で子どもがいない彼女がある日「しばらく姿を見ないから」と訪ねてきたのです。育児に追い詰められていた私は、「大変なの。スカイ(娘)がハイハイを覚えたのだけど、片足を引きずって後ろにしか進まないの。どうしよう。」と、半泣きで言いました。すると、彼女はこう答えたのです。

「でも、進んでるならいいんじゃないの、それで?」

その一言があまりにもシンプルで、なんだか笑えてきたのです。「そうだよね。完璧じゃないけどこの子なりに成長しているってことだよね」と。

(photo AC)

そこからです。私が自分の中の完璧主義に向き合い始めたのは。まずは自分に言い聞かせるように、こんなふうに言ってみました。

「一生哺乳瓶をくわえている人はいないし、おむつだっていつかは取れるし、トイレだってそのうち一人で行けるようになる。夜ちょっとくらい泣いたってすぐに駆けつけなくていいし、手作りなんてしなくていい。」

次に夫を信用することにしました。「下手かもしれない、私とは違うやり方かもしれない、でも愛に変わりはない」と自分に言い聞かせて、夫に子どもと家事を任せた時は一切文句を言わないようにしたのです。代わりに一言「ありがとう」を言うようにしました。

そしてもうひとつの大きな変化は、近所のママたちが集まって運営しているプレイグループへの参加を決めたこと。アメリカのママたちは自分がダメなところや困っていることを、なんの躊躇もなく相談してきます。それにどれほど救われたことか。

Photo by Alexander Grey on Unsplash

「自分だけじゃない」との思いは私を孤育てから救ってくれました。

あの頃の自分に声をかけてあげられるとしたら、「いいんだよ、肩の力を抜いて」と言ってあげたい。だから、もし、今「子育て=大変=つらい」と感じている親御さんがいたとしたら、その一言を贈ります。

助けてくれる人も話を聞いてくれる人も、探せば必ず周りにいます。たった一言「助けて」と言えばいい。

それは恥ずかしいことでも勇気がいることでもない。自分を救済して、子育てを楽しくする魔法の言葉。そう思うと言いやすくなりますよね。

あっという間に終わってしまう子育てをエンジョイするためにも肩の力を抜いて、そして必要な時は「助けて」と言ってみてね。

応援しています。

(文:ボーク重子)

ボーク重子さん最新刊『しなさいと言わない子育て』(サンマーク出版)発売中

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子育てをしているとつい言ってしまいがちな「〇〇しなさい」「○〇やったの?」「早くして!」という言葉。「しなさい」という言葉は、子どもから能力を「奪う」言葉だと、ボークさんは言います。そうした言葉を使わなくても、子どもが自律的に行動できるようになる、今日から家庭で実践できる育児法があるんです!

ボークさんは、子どもに身につけてほしい「自分自身を大切に思う(自己肯定感)」「自分はできる(自己効力感)」「自分を管理できる(自制心)」という3つの能力を、「非認知能力」として育児に生かすために研究・調査を重ね、自身の育児にも活用。

本書は、ボークさんが勧める子育て法の「基本」が「もっとも簡単にわかる入門書」にして初のマンガ版です。単に子どもに対する声がけを変えるだけでなく、親の「マインドチェンジ」と「ちょっとしたしかけ」で子どもを伸ばす方法がたくさん。今日から、「しなさいと言わない子育て」を始めてみませんか?

【目次】
「しなさい」と言わない子育ては究極の自己肯定感をはぐくみます
■1日30分の「空想タイム」ルーティンで子どもに余白を与えよう
■習いごとは2つまで「今日何しよう」は好奇心の扉
■習いごとのキモは「小さく始めること」「やめ方のルールを決めておくこと」
■意見を持つ子どもを育てるために親にできること
■「子ども部屋を片付けなさい!」はムダなしつけ?
■時間制限と門限を「子どもと一緒に」決めていますか?
■ゲームがやめられない子どもに最適な「インターバルトレーニング」
■「受験」でも非認知能力を伸ばす大事なポイント

ボーク重子さんのプロフィール

Shigeko Bork BYBS Coaching LLC代表。ICF(国際コーチング連盟) 認定 ライフコーチ。英国の大学院で現代美術史の修士号を取得後、1998年に渡米、出産。世界最高の子育てを求めて「非認知能力育児」と出会う。子育てと並行して自身のキャリアを積み上げ、2004年にアジア現代アート専門ギャラリーをオープン。2006年、ワシントニアン誌上でオバマ前大統領(当時は上院議員)とともに、「ワシントンの美しい25人」の一人として紹介される。また、一人娘であるスカイは2017年「全米最優秀女子高生」コンクールで優勝し、多くのメディアで取り上げられた。
現在は、全米・日本各地で“子育て・キャリア構築”“ワーク・ライフ・バランス”について、コーチングと講演会を開催している。
著書に『世界最高の子育て』(ダイヤモンド社)、『「非認知能力」の育て方』(小学館)、『しなさいと言わない子育て』(サンマーク出版)など


<関連リンク>
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