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2021年01月27日 13:57 更新

【医師監修】流産の原因はなに?どんな兆候・症状があるの?

妊娠が分かってママになる日を心待ちにしている妊婦さんにとって、ちょっとした体調の変化で心配になるのが流産ではないでしょうか。怖いけれど知っておきたい流産の兆候や症状、原因について説明します。

なぜ流産してしまうの?原因と確率

流産かもしれないお腹の痛みを押さえる女性
Lazy dummy

流産とは、妊娠22週未満で赤ちゃんがママのおなかの中から外に出てしまったり、おなかの中で亡くなり、妊娠が終わることを言います。妊娠22週より早い時期では、赤ちゃんはママのお腹の外では生きることができません。

流産が起こる頻度

医療機関で妊娠と診断された妊婦さんの約15%で流産が起こるとされています。このうち、早期流産(妊娠12週未満の流産)が13.3%、後期流産(妊娠12週以降22週未満の流産)が1.6%と報告されており、流産の8割以上は早期流産です[*1]。

また、妊娠したすべての女性の40%が流産しているという報告もあり、残念ながら流産は稀な現象ではありません[*2]。

なお、年齢別による流産の頻度は、20~30代前半では15%前後、35歳で20%、40歳では35%、45歳では60%となっており、妊婦さんが高齢になるほど流産の確率は高くなっていきます[*3]。

流産の主な原因

流産の主な原因は、早期流産と後期流産では異なります。早期流産では、胎児側の原因(染色体の異常)による流産が多いと言われています。

一方、後期流産の場合は、頸管無力症、絨毛膜羊膜炎、子宮奇形などによって起こることが多いとされています。

また、喫煙、肥満が後期流産の原因となることもあります。流産全体の8割以上が早期流産であるため、流産の原因でもっとも多いのは赤ちゃんの染色体の異常によるものと言えるでしょう。

これは受精の瞬間に将来の流産が決まってしまうということです。流産では、妊婦さんやパートナーの注意や努力ではどうにもならない場合が多いということは、本人も周囲の人も心に留めておきましょう。

流産を繰り返す場合に考えられる原因

流産を2回繰り返す場合を反復流産、3回以上繰り返す場合を習慣流産と言います。それぞれ頻度は、反復流産が2~5%、習慣流産が1%程度とされています[*2]。

流産は珍しい現象ではなく、また、偶発的に繰り返してしまう場合もありますが、両親がかかっている病気や染色体の異常、子宮の形の異常などが原因になっている場合もあります。これらは検査を受けて判明すれば、治療できる場合もあります。

一方で検査をしても65%の方は、原因が見つからないとされていますが、これらの方々も家族や医療スタッフの支えのもとで、次の妊娠時に良い結果が得られていることも報告されています[*3] 。

流産を繰り返してしまう場合、妊娠後はもちろん、妊娠する前からも周囲の人による精神的な支援が大切なのです。

自然流産の種類とそれぞれの状態

人工妊娠中絶以外で、自然に起きる流産のことを自然流産といいます。自然流産は、その状態によって分類されます。

進行流産

子宮口が開き、流産が始まっている状態。多量の出血や下腹部痛が強くなっている場合もあります。流産の進行を止めることはできません。

不全流産

流産が進行した結果、胎児や胎盤などが完全に排出されず、一部が子宮に残っている状態のこと。
自然流産の多くは不全流産になります。

完全流産

流産が進行した結果、胎児や胎盤などが母体から完全に排出された状態のこと。

稽留(けいりゅう)流産

胎児が亡くなり子宮内に留まっている状態。子宮口は開いておらず、下腹部痛や出血がない、またはあっても少量の場合が多く、自覚症状にとぼしいため、医療機関で確認されるケースが多いです。

切迫流産

流産の危険はありますが、流産は始まっていない状態。少量の出血はあっても、胎児は生存した状態で子宮内にとどまっているため、妊娠を継続できる可能性があります。少量の出血や軽い下腹部痛、腰痛などがみられます。切迫流産は流産の状態ではなく、妊娠初期の主に出血の症状につけられた名前です。

化学(的)流産

妊娠検査薬や血液検査で妊娠反応があったものの、超音波検査で妊娠が確認される前に、生理様の出血があり流産した状態。妊娠検査薬で検査を行わなければ、妊娠に気付かないまま通常の生理と勘違いする場合も多いです。特に治療は必要としません。

流産の兆候、症状とは?

流産には兆候、症状を伴う場合もありますが、必ずしもあるとは限りません。

流産の症状と対処法   

妊娠初期に、流産の兆候、症状として少量の出血や軽い腹痛が見られる場合がありますが、これらは正常な妊娠でも起こることのある症状です。

これらの症状がたとえ切迫流産や流産によるものであっても、現在のところ、有効な対処法はないため、すぐに救急外来を受診する必要はなく、安静にして様子をみて、翌日、あるいは予定された健診の受診でよいと考えられています。

ただし、出血が生理時よりも多い場合や腹痛がひどい場合には、異所性妊娠(子宮外妊娠)、進行流産の可能性がありますので、休日や夜間であってもすぐに医療機関へかかりましょう[*2]。

流産後の経過と次回の妊娠

流産後はまた妊娠できるのでしょうか。また、できる場合は流産の後どのくらいの期間をおけば良いのでしょうか。

流産したときの治療と経過

流産では妊娠の継続ができないため、治療は子宮内の胎児や胎盤など(子宮内容物)を取り除く手術が行われるか、子宮内容が自然に排出されるのを待つ待機管理と呼ばれる方法かのどちらかになり、流産の状態や患者さんの希望によって選択されます。

どちらも、最終的に子宮内容物がなくなったことが検査で確認されて妊娠が終了になります。1週間程度は軽い出血がある場合もありますが、出血量が多かったり発熱や腹痛がある場合は受診するようにしましょう。

次回の妊娠、性生活について

流産後、生理が1回くれば、妊娠が出来る体に戻っていると考えられます。

「流産から次回妊娠までの期間の長さ」と「次回妊娠の成功率」とは関連性がないといわれ、流産後に妊娠を希望する場合は長期間、避妊する必要はないとされています。それよりもむしろ、年齢が上がるほど流産の頻度は上がってしまうため、早く次の妊娠に向かう方が良いと言えます。

ただし、流産は心身に大きな負担がかかることです。セックスの再開はもちろん体調をみてくれぐれも無理のないようにしましょう。

なお、流産した女性の80%が、流産後5年以内に出産しているという報告もあります[*4]。

まとめ

流産の原因は、赤ちゃんの染色体の異常で起きてしまうものが最も多いと言われています。赤ちゃんを失うことはとても大きな悲しみですが、自身を責めることはやめましょう。

ただし、流産の危険因子のなかでも喫煙や肥満は、妊婦さん自身の努力でコントロールできることです。流産のリスクをできるだけ減らすために、ママになる人は禁煙と適正体重の管理を徹底するようにしましょう。

(文:島田直子/毎日新聞出版MMJ編集部、監修:浅川恭行先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]厚生省心身障害研究班報告書(平成3~5年度)
[*2]公益社団法人 日本産科婦人科学会 流産・切迫流産
[*3]公益社団法人 日本産科婦人科学会 監修, Babyプラス, 42, 44p
[*4]公益社団法人 日本産科婦人科学会, 公益社団法人 日本産婦人科学会, 産婦人科診療ガイドラインー産科編2017, CQ202

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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