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2022年09月10日 06:38 更新

HSCは繊細な子供のこと?4つの特徴と23のチェックリスト【心理カウンセラー解説】

子どもたちのなかには感受性が強く、他の人と同じ刺激を受けても人一倍傷つきやすい子が一定の割合で存在します。何気なく言われた言葉にひどく落ち込む姿や、理由のわかりにくい機嫌の悪さに「どうして?」と対応に困ることもあるかもしれませんね。「繊細さん」と呼ばれるHSCを理解して正しく向き合うための方法を臨床心理士が解説します。

HSCとは?

HSCとはHighly Sensitive Child(ハイリーセンシティブチャイルド)の略で、「人一倍敏感な子ども」を意味する言葉です。1996年にアメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士によって提唱されました。
HSCは、成長するとHSP(Highly Sensitive Person)となり、男女問わず人口の15~20%ほど存在する、決して珍しくない個人の特性です。

新生児の頃から特徴がみられる

HSCは生まれ持った個人の特性であり、環境によって作られるものではありません。その特徴は、よく泣いたり、眠らなかったりと新生児の頃からみられます
また、HSCは病気ではありませんが、繊細な気質を持っているために、心の問題を抱えやすくなることがあると考えられています。

HSCと発達障害の違い

HSCの特徴とよく似たものに「発達障害」があります。

発達障害とは、ADHD(注意欠陥・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)など、生まれつきの脳機能の違いにより、日常生活で様々な困難をきたしやすくなる障害の総称です。ADHDは、落ち着きや注意力が乏しく、衝動的であることが特徴です。また、ASDは、対人関係が苦手で、強いこだわりを持つことが特徴です。特にASDを抱える子どもには、感覚過敏※がある場合が少なくありません。

HSCがADHD(注意欠陥・多動症)と異なる点は、HSCがより慎重で用心深いこと、またASD(自閉スペクトラム症)と異なる点は、HSCがより共感性をもっている点にあります。
なお、ADHDやASDは医学上の正式な診断名ですが、HSCは子どもの性質を表す概念です。
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※感覚過敏:五感の刺激が過剰に感じられること

HSCが持つ4つの特徴

そんな繊細なHSCですが、主に以下のような4つの特徴があります。

1. 深く考えて処理する

思慮深く慎重なため、言われたことや周りの子どもがすぐにできるようなことについても、行動するのに時間がかかることがあります。

2. 刺激を受けやすく、感覚面での不快感が募りやすい

些細なことからも強い刺激を受けやすく、それが感覚面での不快感につながり、ストレスを感じやすい傾向があります。

例えば、
・大きな音が苦手
・味覚や嗅覚に敏感で偏食傾向がある
・衣類の肌触りへの過敏さ

などはHSCの特徴とも言えます。

3. 感情の反応が強く、特に共感力が高い

HSCの繊細さは、感覚面だけではなく、感情面にも強く現れます。

例えば、
・友達が叱られると自分も同じ気持ちになり落ち込む
・悲しいお話が苦手
・相手の考えに気付きやすい

など、共感力が強い傾向があります。

4. ささいな刺激を察知する

HSCの子は、周囲の様子や人の表情などがいつもと違うとすぐに察知する傾向があります。
感覚や感情の繊細さを持つため、他の人なら見過ごすような些細なことにも気づきやすいのもHSCの特徴の一つと言えるでしょう。

HSCを確認する23のチェックリスト

HSCのチェックリストを紹介します。以下の項目のうち、13個以上当てはまるとHSCとされていますが、当てはまるものが一つか二つでも、その度合いが極端に強ければ、その可能性があります。
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参考:HSCの子育てハッピーアドバイス HSC=ひといちばい敏感な子(明橋大二 1万年堂出版 2021)

1. すぐにびっくりする
2. 服の布地がチクチクしたり、靴下の縫い目や服のラベルが肌に当たったりするのを嫌がる
3. 驚かされるのが苦手である
4. しつけは、強い罰よりも、優しい注意のほうが効果がある
5. 親の心を読む
6. 年齢のわりに難しい言葉を使う
7. いつもと違うにおいに気付く
8. ユーモアのセンスがある
9. 直感力に優れている
10. 興奮したあとはなかなか寝付けない
11. 大きな変化にうまく適応できない
12. たくさんのことを質問する
13. 服がぬれたり、砂がついたりすると、着替えたがる
14. 完璧主義である
15. 誰かがつらい思いをしていることに気づく
16. 静かに遊ぶのを好む
17. 考えさせられる深い質問をする
18. 痛みに敏感である
19. うるさい場所を嫌がる
20. 細かいこと(物の移動、人の外見の変化など)に気づく
21. 石橋をたたいて渡る
22. 人前で発表するときには、知っている人だけのほうがうまくいく
23. 物事を深く考える

HSCとの関わり・親の向き合い方 5つのポイント

HSCは、その特性を理解したうえで大人が関わることによって、大きく成長します。しかし、言葉がけや積極的になれない時の背中の押し方については、注意が必要です。必ずしも一般の育児書のアドバイス通りにして上手くいくとは限りません。

HSCは大人の要求を察して、無理をして合わせようとしてしまいます。大人が上手くいったと思っても、意に添わないことを言えずに、精神的なストレスが身体の症状に表れる子どもも少なくありません。

HSCであるその子の苦手なことを変えようとするよりも、大人が目の前の子どもに対して、より深く理解して適切な方法で向かい合うことで、子どもが大きく伸びて、やがては自分の長所を活かせるようになるのです。

ポイント1:悪く捉えず、良いところを見る

人一倍敏感なHSCの行動は、ともすると「わがままで神経質」などと悪く捉えられてしまいがちですが、時には大人がある程度、子どもの気質についての見かたを変える必要があります。

わがまま=自分をしっかり持っている
神経質=人の気持ちによく気付く

といったように、捉えられるといいですね。

ポイント2:厳しい叱責はNG

HSCは、自分自身に対して厳しい面があり、一部の否定を全否定のように受け止める繊細さがあります。
「こんなに時間がかかるなんてダメじゃない!」などと厳しく責め立てるのではなく、「これは結構難しいから時間がかかるよね。やり方を変えてみるのはどうかな?」などと伝えたいことは穏やかに伝えましょう。

ポイント3:嫌なことは無理にさせない

「嫌なことを無理にさせない」のは甘やかしではありません。初めての経験を成功させてあげたい時は特に、その子のペースに合わせて様子を見ながら進めるようにしましょう。少しずつ段階を踏んで進められるように本人の意見を聞いて、話し合いながら進めるのもよいですね。

ポイント5:刺激(音や光)を減らす工夫をする

刺激を感じやすいHSCの子は、騒がしい場所や注目される場所では力を発揮しにくいことが多く、特に音や光などの環境因に配慮することで落ち着いて取り組めるようになる場合があります。

大人や周囲の人にとっては気にならない音や光でも、その子が騒がしい・まぶしいと感じるようであれば、それらを上手に避ける方法を一緒に探していけるといいですね。耳栓やサングラスなどを活用しているお子さんもいますよ。

ポイント5:気持ちを受け止める

子どもが困難に直面したときなどには、上手くいかなくて残念な気持ちに対して、「そのままでいいよ」大人がHSCの特性を否定せずに受け止めることで、安心してまた再挑戦することができるようになります。

受け止めてもらえたら、HSCは力を発揮できるはず

今回はHSCへの対応を中心にお話しましたが、その対応方法はそうではない他の子との関わりへのヒントにもなります。
もし子どもの言動に共感できなくても、子どもの気持ちに寄り添ってあげてくださいね。わかってもらえたと思えたとき、自己肯定感が高まり、HSCは素晴らしい力を発揮します。優しくて、人の気持ちがよくわかるHSCの長所を是非伸ばしてあげてください。
そして対応に困ったときにはひとりで解決しようと思わずに、支える大人も周囲に助けを求めてくださいね。

(文:うららか相談室 梅村かおり/構成:マイナビ子育て編集部)

参考文献
HSCの子育てハッピーアドバイス HSC=ひといちばい敏感な子(明橋大二 1万年堂出版 2021)
幼児用Highly Sensitive Child Scale 日本語版作成の試み(鈴木亜由美 日本教育心理学会第59回総会発表論文集 2017)
「気が付き過ぎる」子どもの日常・学校生活の「悩み」と「伸ばし方」を理解する(杉本景子 時事通信社 2021)

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、専門家の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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