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2021年01月29日 12:06 更新

【医師監修】小児喘息の5つの原因! 症状&治療ガイド

冬になると急激に気管支喘息が増えます。お子さんの咳(せき)が長引いていることありませんか? 風邪だと思っていたら実は喘息の発作で入院なんてことも。「遺伝する?」、「薬で治るの?」「大人の喘息とは違う?」など小児喘息の症状や原因、治療法についてお話しします。上手に症状をコントロールしましょう。

大人になったら治る? 小児気管支喘息とは

原因が色々ある小児喘息の治療でネブライザーを使う子供
Lazy dummy

気管支喘息は、空気の通る道(気道)が狭くなり、呼吸が苦しくなる喘息発作を繰り返す病気です。気管や気管支の筋肉の収縮や粘膜の腫れ、分泌物(痰)の増加によって、気道が狭くなってしまい、呼吸困難や咳、呼吸時に「ぜーぜー」「ヒューヒュー」といった音がする喘鳴(ぜんめい)などの症状が現れます。

喘息の発症のピークは2歳にあるといわれ、2歳未満の喘息を特に乳児喘息といいます。まだ肺が未発達で咳も上手にできないため、悪化するのが早いこと、また、呼吸が苦しくても本人はそれを上手に伝えられないことから、家族が注意深く観察し、治療していく必要があります。

乳児喘息を含む小児喘息の多くは成長とともによくなります。気管支喘息の有症率は6~7歳で 13.8%ですが、13歳以降は10%を切っています(2015年)[*1]。ただし、治りにくい成人喘息へと移行してしまうこともあります。

大人の喘息と違う点

喘息には、アレルギーによるアトピー型のものと、アレルギーが見つからない非アトピー型のものがあります。小児喘息の大半はアレルギーに関連するといわれ、気管支喘息の原因となるアレルゲンには、チリダニ、カビ、ペット由来のものなどがあります。一方、成人喘息の半数にはアレルギーが関与しないといわれています。

また、小児喘息の約60~70%が思春期のころには症状が落ち着いて安定した状態になるといわれています。一方、成人の喘息はなかなか治りにくいのが特徴です。

子供が小児喘息になる原因5つ

原因として考えられているものは、アレルギーや感染、精神的な要因、天気などさまざまです。アレルギーを主とした多くの要因がいくつも重なり合って発症すると考えられています。原因を細かく見てみましょう。

①アレルギー

健康な人にとってはなんともないものが、喘息の子供にとっては発作を起こす原因となります。アレルゲンは人それぞれ違います。

室内アレルゲン:ダニ、カビ、動物の毛など
※犬や猫を飼っている人に近づいただけで、症状が出てしまうこともあります。

室外アレルゲン:花粉(スギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサなど)、昆虫など

これらのアレルゲンは、決して珍しいものではなく、私たちの生活の中から完全に排除するのは難しいものです。しかし、じゅうたんや布製のソファをやめてダニの住む場所をなくしたり、定期的に窓を開けて部屋の湿度を下げ、こまめに掃除することで、アレルゲンに接する機会を減らすことができます。

②天気

小児喘息でアレルゲンと同じくらい厄介なのが、気象条件です。春先や秋口など季節の変わり目や台風による気圧の変化により、喘息発作が誘発されてしまいます。喘息患者の中には、台風が近付いてくるとわかる人もいるそうです。急激な気温の変化でも、喘息発作が誘発されることがあります。特に冷たい空気は気管や気管支を刺激して喘息発作が起こることが多いです。冬は、空気が乾燥しているうえに、気温が低く、喘息患者にとって悪条件が揃っています。

③運動

運動誘発性喘息というものがあります。運動することで、喘息発作が起きてしまうのです。運動をする際、またはしている時に冷たく乾燥した空気をたくさん吸い込むことで起きやすくなっていると考えられています。特に冬の寒い時期に起こりやすくなります。

④煙

タバコ、花火、お線香などの煙が、気管や気管支を通る際に、粘膜に刺激を与え喘息発作を誘発してしまう原因となることがあります。また、微小粒子状物質(PM2.5)との関連も疑われています。

■タバコ:タバコの煙には、4000種もの化学物質が含まれているといわれています。タバコの煙は吸っている本人にとっても、周囲の人間にとっても、喘息発作の原因になります。小児喘息の子供の家族は、少なくとも室内での喫煙は絶対に避けましょう。また、吸っているご本人のためにも子供のためにも、ぜひ禁煙をおすすめします。

⑤遺伝する? その他の原因

その他にも、遺伝的要因やストレス、薬によるもの、ウイルスによるものなどがあります。

■遺伝的要因:アレルギー体質は遺伝するといわれており、喘息にも遺伝的な要因がある可能性もありますが、はっきりしていません。また、両親にアレルギーがあるからといって、必ずしも子供がアレルギーになるとはいえないように、喘息をもつご両親のお子さんが、必ず喘息になってしまうわけではありません。

■感染:ウイルス感染が引き金となって喘息発作が誘発されることがあります。ウィルスの種類により喘息症状の起こしやすさは異なります。細菌感染でもマイコプラズマなどは喘息発作を起こしやすいです。

■ストレス:家庭内不和、幼稚園や学校でのトラブルなどが子供に強い精神的ストレスを与え、喘息を悪化させることがあります。

風邪との違いは? 小児喘息の症状4つ

風邪症状とよく似た症状が現れますが、最大の特徴となるのは喘鳴です。また、風邪をひいた後に、咳が長引くときも、喘息の可能性があります。症状を細かくみてみましょう。

①喘鳴(ぜんめい)

喘息の代表的な症状です。喘息では、空気の通り道である気管や気管支が炎症により腫れてしまったり、分泌物(痰など)により狭くなってしまいます。そのために、呼吸時に、「ぜーぜー」「ヒューヒュー」「ゼロゼロ」といった音がします。これを、喘鳴といいます。喘鳴が長い期間続いたり繰り返すことが、喘息の診断材料のひとつになります。

②呼吸困難

息を吸ったり吐いたりするのがつらい、苦しい状態をいいます。たいていは早く浅い呼吸になります。

③咳(せき)

夜から朝方にかけて咳が出やすくなります。気管の粘膜が敏感な状態になっており、ちょっとした刺激で過剰に反応し、咳が出始めます。一度咳が出始めると、次から次へと咳が出て、激しく咳き込んでしまいます。

④痰(たん)

気管内の分泌物(痰など)が増えます。痰が気管内に溜まり気管を狭くしてしまいます。胸に耳を近づけると「ゼロゼロ」と痰が絡みつくような音が聞こえます。小さなお子さんでは、なかなか自力で痰を出すことが出来ず、呼吸困難となる要因でもあります。

薬で治る? 小児喘息の治療方法

気管支喘息の治療では、長期間発作が無い状態を維持することが大切です。薬による治療と環境整備、そして日常生活におけるセルフケアで症状をコントロールすることがとても重要になってきます。特に重要なのは、薬での発作予防を日常的に続けること。発作や症状がなくなったからといって、勝手に自己判断で吸入や内服を中止することはやめましょう。特にお子さんが小さいうちは、家族の理解と積極的なケアが必須です。

薬物療法

薬での治療は、日常的に予防のために使用する長期管理薬と、発作が起きたときに使用する発作治療薬があります。喘息発作が起きていないときも、気管支の炎症は続いています。発作が起きたときだけ対処するのではなく、気管支の炎症を抑え、なるべく発作を起こさないよう、医師の指示どおり、定期的に長期管理薬を用いて、予防を続けましょう。

■長期管理薬
発作が起きていないときに、定期的に使用して、気管支の炎症を鎮め、喘息発作を予防します。発作が起きてしまうと、気管の炎症が進み、ちょっとした刺激にも過剰に反応して、さらに発作が起きやすくなるという悪循環が生まれてしまいます。長期管理薬を用いて炎症を鎮め発作を予防することで、徐々に喘息発作が起こりにくくなっていきます。

・吸入ステロイド剤:【フルタイド(R)・キュバール(R)・パルミコート(R)・オルベスコ(R)など】
炎症を抑える働きが強く、一般的に用いられるのが、ステロイド剤です。吸入薬は、気管に直接到達して作用します。

・ロイコトリエン受容体拮抗薬【オノン(R)・シングレア(R)・キプレス(R) 】 
喘息発作予防薬としては、これらの薬も使われることがあります。気管支が収縮しやすい状態を改善する働きがあります。

■発作治療薬
発作が起きたときに、狭くなった気道を広げ、呼吸を楽にするための薬です。飲み薬や吸入薬があり、吸入薬のほうがより早く効果があらわれます。医師の診察を受け、年齢や症状に合わせて処方された薬を使用しましょう。

・気管支拡張薬:【ベネトリン(R)・メプチン(R)など】 
急性発作などの時にはこれを一番に使用します。気管支を素早く拡張するので、喘息発作に効果が大きいです。吸入する場合と、内服する場合があります。

環境整備

喘息の治療で、薬の投与と同じように重要なのは、環境を整えることです。症状や喘息発作がおきないように以下の注意点を心がけることが大切です。

■アレルゲンの除去
お子さんの住環境を整えて下さい。発作を引き起こす可能性があるアレルゲンをお子さんの身の周りから除去しておきましょう。ほこりやダニなどをなるべく除去できるように、定期的に掃除します。

運動

運動が誘因となることがわかっている場合、運動をする時には、ほこりがたたないよう注意しましょう。運動は子供の発達には欠かせません。運動によって喘息発作が起こっている場合でも、運動自体を制限する必要はありません。医師に相談の上、薬を使って、運動しても発作が起こらないようにコントロールしましょう。

セルフケア

小児喘息の治療では、自分自身で喘息の状態を理解し、コントロールしていくことも大切です。子供が小さいうちは、ご家族がケアしていきましょう。小児喘息のセルフケアに役立つ方法をご紹介します。

■ピークフロー測定
ピークフローとは、大きく息を吸い込んで、力いっぱい息を吐いたときの強さを表す数値のこと。ピークフローを測る道具をピークフローメーターといい、気管支の状態を理解するのに役立ちます。自宅でも簡単に使用でき、いろいろな種類が市販もされていますので、医師に相談して取り入れてみるといいでしょう。

■喘息日記
発作の症状、薬、天候など発作のきっかけになった条件といったことを日記につけていくことで、どんなときに発作が起きやすいのかがわかり、予防のヒントを見つけることができます。独立行政法人環境再生保全機構では、「小児ぜん息日記 まいにちげんきノート」を無料で配布しています[*2]。PDFをダウンロードすることもできるので、ぜひ利用してみましょう。

入院!? 発作が起きた時の対処方法

お子さんが突然喘息発作を起こしてしまった時でも、慌てず対処して下さい。日ごろから医師とよく相談し、発作時に飲ませる薬や、症状が激しい時に受診する医療機関についても確認しておきましょう。

■症状をよく観察:発作がみられたら必ず、すぐそばで症状を観察して下さい。とても強い呼吸困難がみられたり、意識がハッキリしていなかったり、興奮しすぎている時、息を吸うときにのどや肋骨の間などがはっきりとへこむ時には救急車を呼ぶことも検討しなければなりません。そこまでの強い症状でなくても、苦しくて眠れない、気管支拡張薬を使っても改善しない、気管支拡張薬が手元にない時には、医療機関を受診することをおすすめします。

■薬を吸入する:子供が目を覚ましていて、吸入による気管支拡張薬が処方されていれば、使用しましょう。気管に直接作用するので、突然の発作にも素早い効果が得られます。幼児では吸入噴霧器(ネブライザー)で薬を吸入させます。

■薬を内服する:吸入薬ではなく内服薬(飲み薬)として、気管支拡張薬が処方されていることもあります。

発作の重症度別に対処方法をチェック

■小発作:多少喘鳴があっても呼吸困難がなく、睡眠や食事・会話などに支障が無い場合には、医師から指示されているとおりに薬を内服または吸入して様子を観察しましょう。

■中発作:喘鳴があり、呼吸困難あり、眠っていても時々目を覚ましてしまう状態です。やや食欲が無く、会話が辛い場合には、医師の指示通り薬を内服または吸入し、なるべく受診した方が安心です。内服または吸入しても改善しない場合、悪化している場合にはすぐに受診して下さい。

■大発作:明らかな喘鳴があり、強い呼吸困難がみられ、食事をしたり睡眠をとったり会話をするなどの日常生活が送れない状態の時には、医師の指示通り薬を内服または吸入した上で、すぐに受診して下さい。唇や爪が暗紫色になるチアノーゼが表れ、意識がはっきりしなくなっていたらすぐに救急車を呼ぶ必要があります。

お子様の症状や状態をしっかりと観察して、素早く判断し行動に移すことがとても重要です。特に赤ちゃんは、自分で呼吸困難を訴えることができないので、様子を見て判断することが大切です。

まとめ

小児喘息の遺伝の可能性や治療方法、症状、大人の喘息との違いなどについてご紹介しました。小児喘息は、お子様だけではなく、見ている親御さんもとても辛い病気です。身の回りからアレルゲンを除去したり、ほこりやダニを除去するなど、周囲の環境を整え、薬で発作をコントロールして、小児喘息と上手に付き合って下さい。小児喘息の原因は環境だけではありません。喘息の発作が起きても、掃除が足りないことが原因と決まっているわけではありません。薬をしっかり続けたり、時に変えてもらうことも必要です。医師や専門家のもと、適切なアドバイス・治療を受けながら、根気強く対処を続けましょう。

参考文献
[*1]「アレルギー疾患対策に必要とされる疫学調査と疫学データベース作成に関する研究」(厚生労働科学研究成果データベースより)https://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201611001A 
(参照2018-6-29)

[*2]独立行政法人環境再生保全機構 小児ぜん息日記
まいにちげんきノート(マイメロディ版)
https://www.erca.go.jp/yobou/pamphlet/form/00/archives_1004.html
まいにちげんきノート(しんかんせん版)
https://www.erca.go.jp/yobou/pamphlet/form/00/archives_992.html
(参照2018-6-29)

※この記事は 医療校閲・医師の再監修を経た上で、マイナビ子育て編集部が加筆・修正し掲載しました(2018.07.09)

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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