エビの食べ過ぎのリスクとは?痛風になるって本当?知っておきたいエビの栄養【管理栄養士監修】
生で食べても、加理調理して食べてもおいしいエビ。たんぱく質が摂れて気になる脂身もないので、たんぱく質のおもな摂取源として活用している人もいるかもしれませんね。一方で、食べ過ぎのリスクも気になるところです。エビには気を付けたい成分などはあるのでしょうか? 管理栄養士が詳しく解説します。
エビに含まれる栄養素は?
エビにはどのような栄養があるのか、食べ過ぎのリスクを見ていく前に確認しましょう。
エビのカロリー
エビのカロリーは厳密にいえば種類によって多少の違いがありますが、ブラックタイガー(養殖)が77kcal、車エビ(養殖)が90kcalほどとなります(いずれも100gあたり[*1])。ちなみに、伊勢エビや甘エビはその間くらいです。白身魚やイカ、タコなどとおおむね同じくらいのカロリーと言えるでしょう。
タウリン|肝臓の働きを助ける
タウリンはたんぱく質が分解される途中でできる、アミノ酸に似た物質です。一般にエビやイカ・タコ、貝類などに多く含まれるとされています[*2]。
タウリンの働きとして、胆汁酸と結びついてコレステロールの吸収を抑えたり、心臓や肝臓の機能を高めることなどが期待されています[*2]。ドリンク剤の成分として知っている人も多いでしょう。
タウリンは体内でも生成できる成分なので、あまり不足する心配をしなくてもよいと思いますが、エビの栄養の特徴として覚えておくのはよいかもしれませんね。
カルシウム|干しエビに豊富
「干しエビ」と呼ばれるものには、かき揚げなどに使われる桜エビの素干しと、中華料理などに使われるサルエビを干したものなどがあります[*1]。どちらもカルシウムが豊富です。
<可食部100gあたりのカルシウム量>[*1]
干しエビ(サルエビ)…7,100mg
桜エビ(素干し)…2,000mg
桜エビ(生)…630mg
ブラックタイガー(生)…67mg
甘エビ(生)…50mg
伊勢エビ(生)…37mg
干しエビや桜エビ(素干し)のカルシウムが特に多いことには理由があります。乾燥しているため栄養素が凝縮され、同じ重さで比べると栄養価が高くなるのです。また、殻ごと食べることも、カルシウムの量が増える理由の1つでしょう。
なお、他のエビは殻を除いた部分の値なので、エビの殻を素揚げにして食べたりするとカルシウムが摂れるかもしれません。殻のカルシウム量のデータがないのでどのくらい摂れるかを言うことはできませんが、たまには殻を食べるのもいいかもしれませんね。
アスタキサンチン|カロテノイドの一種
エビに含まれる赤い色素はアスタキサンチンと呼ばれるものです。β-カロテンと同じカロテノイドの1つとして、抗酸化作用が期待されています。
生のエビは黒っぽいですが、加熱するとアスタキサンチンと結合しているたんぱく質が変性し、アスタキサンチンの色が現われてくることで赤色になります。鮭などにも含まれている色素です。
健康食品やサプリメントとしてアスタキサンチンが販売されていますが、残念ながらエビを食べてその効果を得ることは難しいでしょう。
エビを食べ過ぎたらどうなるの?
健康のために、エビに含まれるタウリンやカルシウムをたくさん摂りたいと思うかもしれませんが、食べ過ぎのリスクはないのでしょうか?
消化不良や腹痛のリスク
どんなものであれ、そればかりをたくさん食べ過ぎると消化に負荷がかかり、腹痛や下痢などが起きる可能性があります。1日の食事の内容がすべてエビというような食べ方はしないようにしましょう。また、エビの殻は硬くて消化が難しいため、干しエビやエビの殻の食べ過ぎには特に注意してくださいね。
尿酸値が高い場合|プリン体に注意
エビにはプリン体が多く含まれており、たとえば、車エビは100gあたり約195mg、大正エビは約273mgとされています[*4]。プリン体の数値は日本食品標準成分表などには記載されておらず、成分値の特定や判断は難しいものですが、プリン体が300mg以上だと「きわめて多い」、200~300mgだと「多い」とされます。
通常、プリン体は肝臓で代謝されて尿酸となって体外へ排泄されますが、肝臓の働きが弱ったり、プリン体を摂り過ぎたりして尿酸が多くなりすぎると、尿酸が結晶化して蓄積され、痛風を引き起こす可能性があります[*5]。
尿酸値が高くなっていたり、高尿酸血症と診断されている人はプリン体の摂取量を抑える必要があるため、プリン体の多い食べ物には注意が必要です。エビの他にもビールやレバーなどに多く含まれるので気を付けましょう。
また、高尿酸血症のリスクとして肥満があります。日頃からカロリーの摂り過ぎに気を付けることも大切です。
干しエビの場合|カルシウム過剰摂取
カルシウムは不足しがちなので積極的に摂りたい栄養素ですが、過剰に摂取すると心配なこともあります。
カルシウムを摂り過ぎて血中のカルシウム濃度が増えると、高カルシウム血症や高カルシウム尿症、尿路結石、前立腺がんといった病気のリスクを高めたり、鉄や亜鉛の吸収障害、便秘などを起こすことがあるためです[*3]。そのため、日本人の食事摂取基準でもカルシウムは1日2,500mgが耐容上限量(※)とされています[*3]。
ただしこれは、1日や数日、干しエビをたくさん食べて上限量以上のカルシウムを摂取したからといって起きるものではなく、カルシウムを含むサプリメントなどを毎日多量に摂取した場合に考えられるリスクです。
たとえば、中華料理などに使う干しエビ(サルエビ)には100gあたり7,100mgのカルシウムが含まれますが[*1]、仮に1日にこの量を食べたところで病気になったり、何らかの障害が出るとは言えません。干しエビをたくさん食べてしまったときは、そのあと1ヶ月ほどは食べないようにするなどの工夫をすれば問題ないでしょう。
また、実際問題として、干しエビ(サルエビ)は大さじ1が6gなので、100gというと大さじ15杯以上に。この量の干しエビを一度に食べることは難しそうですね。
エビの適量はどのくらい?
エビは通常の量を食べる分には問題のない食べ物です。他の食べ物とのバランスという観点から、だいたいの適量を考えてみましょう。
1日の適量は80gくらい
健康な人が食べて特にリスクのある栄養素が含まれるわけではないため、エビの適量を決めるのはなかなか難しいのですが、もし具体的な目安を知っておきたいということであれば、食事バランスガイドをもとにして考えましょう。
食事バランスガイドでは、1日の主菜(肉、魚などのたんぱく質)の量として、成人は3~5単位としています[*6]。1単位はたんぱく質約6gを意味しており、卵1個、納豆1パック(40g)が1単位の目安です。エビならば40gで1単位分となります。
1日にエビで2単位くらい摂ってよいでしょう。エビの1日の適量は80g程度と考えられますね。車エビやブラックタイガーで1尾が約20gなので、80gというと4尾くらいです。
なお、干しエビの目安としては1日大さじ1~2杯(10g程度)がおいしく食べるにはほどよい量かもしれませんね。
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エビで注意したい「アレルギー」
エビの食べ過ぎのリスクを確認しましたが、エビにはそれ以外に注意したいことがあります。エビのアレルギーについて知っておきましょう。
エビは7大アレルゲンの1つ
エビはいわゆる7大アレルゲンの1つです。鶏卵、牛乳などとともに、加工食品のアレルギー表示が義務付けられている「特定原材料7品目」に数えられます。この特定原材料とは、アレルギー症状を引き起こすことが明らかな食品のうちで、発症例数や重篤度からみて、特に表示の必要性が高いとされた食品を意味しています。
エビのアレルギー物質は熱を加えても減少しないため、加熱調理して食べても症状の出やすさは変わりません。
カニアレルギーも起こりやすい
エビはいろいろな種類がありますが、エビ類であればどの種類でもアレルギーを発症することが多いです。エビと同じ甲殻類のカニも、主なアレルギー物質(トロポミオシン)の構造が非常に似ているので、エビアレルギーのある人はカニアレルギーもあることが少なくありません[*7]。
また、トロポミオシンはイカやタコ、貝類にも含まれるので、エビアレルギーを持っている場合はこれらの食べ物でもアレルギー反応がでることがあります。
エビとともにカニやイカ、タコ、貝類をひとくくりに避ける必要はありませんが、初めて食べるものがあれば注意しましょう。
ダニアレルギーがある場合も注意
ダニアレルギーがある場合、エビでもアレルギー症状を起こすことがあります。ダニはエビなどの甲殻類と同じ節足動物であり、エビの主なアレルギー物質(トロポミオシン)とダニなどの節足動物のアレルギー物質が似ているためです。
ダニアレルギーがあるからといってエビアレルギーを発症するとは限りませんが、気を付けておくとよいかもしれません[*7]。
トロポミオシン以外が原因の場合も
エビのアレルギーはトロポミオシンの他にも、ブラックタイガーなどにみられるアルギニンキナーゼなども考えられます。発症頻度も症例数も多くはありませんが、これも軟体類やダニとの交差がみられるので、エビアレルギーの場合は基本的にカニ、イカ、タコ、貝類などにも注意しましょう。
まとめ
エビは生のものか干したものか、殻を食べるかどうかなどで栄養が異なります。小さいエビは殻も薄く食べやすいので、カルシウムをとりたいと思ったら、干しエビなどを使うといいでしょう。食べ過ぎによる健康へのリスクは小さいですが、消化不良になる可能性もあるので、色々な食材の1つとして食べることをおすすめします。アレルギーのリスクもありますが、不必要に怖がる必要はありません。適量を楽しんで食べられるといいですね。
(文・監修:川口由美子 先生)
※画像はイメージです
[*1]文部科学省:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
[*2]厚生労働省:e-ヘルスネット「タウリン」
[*3]厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2020年版)
[*4]痛風・尿酸財団:食品・飲料中のプリン体含有量
[*5]厚生労働省:e-ヘルスネット「プリン体」
[*6]農林水産省:食事バランスガイドについて
[*7]海老澤元宏、伊藤浩明、藤澤隆夫(監)『食物アレルギー診療ガイドライン2021』協和企画
本来は「エネルギー」と呼びますが、本記事では一般的になじみのある「カロリー」と表記しています。
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、管理栄養士の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます