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2023年01月17日 10:12 更新

「捺印」「押印」はどう違う? 印鑑とハンコの違いも解説

「捺印(なついん)」と「押印(おういん)」はどちらも印鑑を押すことを指す言葉ですが、厳密にいうと異なる意味を持っています。同じような言葉なので混同しやすく、どちらを使うべきか悩む方もいるでしょう。本記事では「捺印」と「押印」の違いについてわかりやすく解説します。

「捺印」と「押印」はどう違う?

「捺印」と「押印」は違う意味の言葉

「捺印(なついん)」と「押印(おういん)」は、どちらも印鑑を押すことを指す言葉ですが、厳密に言えば異なる意味を持っています。

書類に印鑑を押す場面になったとき、「こちらにご捺印してください」または「押印をお願いします」と言われたことありませんか?
同じことだけど言い方が違うだけなのか、もしかしたら違う意味なのにわからないまま使っているのか、はっきりと判別できている人は多くないかもしれませんね。

いざ印鑑を押す立場になったとき、また、印鑑が必要な書類を作成する立場になったときに慌てないためにも、捺印と押印がそれぞれどういう意味を持ち、どういう場合で使い分けるのか、詳しく知っておきたいもの。知っていて損はないので、社会人の常識として心得ておきましょう。

「捺印(なついん)」の意味とは?

そもそも「捺印」とは、「署名捺印」という言葉が省略され「捺印」という言葉になったものです。
署名捺印と言われれば、捺印が「直筆の署名と共に印鑑を押す」ということだとわかるのではないでしょうか。署名とは手書きの直筆のサインのことです。

直筆のサインは筆跡鑑定で本人の証明ができるため、「本人の意思に基づいて作成された書面である」という高い証拠能力を持ち、法的効力があります。
捺印にはこういった意味が含まれているので、捺印を求められた書類には、必ずよく目を通すようにしましょう。

「押印(おういん)」の意味とは?

「押印」は、元々「記名押印」という言葉ですが、現在は省略されて「押印」と言われています。

記名とは、自筆に限らず氏名を記載するという意味です。たとえば、印刷された名前やゴム印、社印を使って押された名前、代筆された名前などが該当します。よって「押印」とは、記名されている箇所や署名も記名もない箇所に印鑑を押すことを指すのです。

捺印と押印は「自筆の署名(サイン)をするかしないか」で区別する

捺印と押印のそれぞれの意味を知ると、自ずと違いが見えてきたのではないでしょうか。自筆の署名(サイン)をして印鑑を押すときは「捺印」、自筆以外の方法で氏名を記載したり、ただ印鑑だけを押したりする場合は「押印」となります。

「捺印」と「押印」、法的効力に差はある?

法的効力に差が出る理由とは?

先述しましたが、捺印は署名捺印、押印は記名押印を表します。署名と記名では、本人かどうかの証明能力に差があるため、「捺印」のほうが法的効力は上です。

これは筆跡鑑定を行った場合、紛れもなく本人が書いたものとみなされれば証明能力が高いという理由からです。

契約書をよく読まないうちに安易に捺印してしまい、のちに「高額過ぎる商品を買わされた」「必要のない資格の有料講習に申し込んでしまった」と気付いて慌ててしまうケースも耳にします。十分に気を付けるようにしましょう。また、契約してから8日以内なら"クーリングオフ制度"で契約を無効にできるはずです。消費者センターや弁護士などに相談してみてください。

『クーリング・オフってなに?』
クーリング・オフは、いったん契約の申し込みや契約の締結をした場合でも、契約を再考できるようにし、一定の期間であれば無条件で契約の申し込みを撤回したり、契約を解除したりできる制度です。

出典: https://www.kokusen.go.jp

法的効力が高い順

法的効力の高い順に表すと、以下のようになります。
(1)署名捺印
(2)署名のみ
(3)記名押印
(4)記名のみ
やはり一番法的効力が高いのは自筆の署名と印鑑が押されている「署名捺印」です。次いで自筆の署名だけのもの、自筆の署名以外の氏名があるもの+印鑑が押されているもの、自筆の署名以外の氏名があるものと続きます。

押印・捺印が必要になるシーンとは?

契約書は捺印が必要となるケースが多い

ビジネスシーンでは契約を取り決める際など、金銭の動きがある場合に必ず「捺印」が必要になります。また一般的にも住宅やマンションなど不動産関連だったり、車などを購入したりする際に必要となります。おおむね物の売買には捺印が必要と覚えておいてください。

請求書は押印が必要となるケースが多い

請求書や見積書、検収書、給与明細書などといった"金銭のやり取りが関連する書類"には、必ずと言っていいほど押印が必要となります。法人の場合は角印、個人の場合は認印による押印であることがほとんどです。
しかし昨今では、郵便によるやり取りを省略して、スムーズな進行にするために電子印鑑での押印にするケースも多いのではないでしょうか。特にビジネスシーンでは、脱ハンコの動きが高まっているようです。

「印鑑」と「ハンコ」の違いとは?

一般的には「印鑑=ハンコ」と認識されていることが多く、使い分けている人は多くないでしょう。しかし、厳密にいうと印鑑=ハンコではありません。それぞれの言葉の持つ意味を見ていくと、違いがわかります。それでは早速見ていきましょう。

「印鑑」とは?

「印鑑」とは、署名の脇に押す朱印のことを指します。押した後の状態のことです。また朱印のことを別な呼び方で「印影(いんえい)」と言うこともあります。
印鑑は、所有者が登録されている印影のことであり、地方自治体や銀行などの機関に登録をしているハンコのことを指すもの。実印や銀行印が該当します。ですので厳密にいうと、三文判やシャチハタなど、公的に登録していない認印のことは印鑑とは呼ばないということになります。

「ハンコ」とは?

「ハンコ」とは、印鑑本体の持ち手の部分を指します。別な呼び方で「印章(いんしょう)」と言うこともあります。

本来は「印鑑」と「ハンコ」はまったく違う意味を持つもの

「印鑑」とは、押した後の朱印のこと、「ハンコ」は持ち手の部分のことです。それぞれの言葉の持つ意味を知ると、印鑑=ハンコではないということがわかったかと思います。
ただし日常的な会話では、「印鑑持ってきて」でも、「ここにハンコ押して」でも通じるものです。逆に印影や印章という言葉では通じないかもしれませんね。

まとめ

『捺印と押印』
■「捺印」:自筆署名とセットで印鑑を押すこと
■「押印」:自筆以外で氏名などを記載したものと、押された印鑑がセットのこと
■法的効力が高いのは、①捺印 ②押印の順である

『印鑑とハンコ』
■「印鑑」:署名の脇に押す朱印のこと
■「ハンコ」:印鑑本体の持ち手の部分のこと

今回の「捺印」と「押印」、「印鑑」と「ハンコ」の違いのように、知っているようで知らない言葉はたくさんあるでしょう。一般的な社会人の常識として身に付けておきたいですね。

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