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2022年06月16日 11:50 更新

肩こりに効果のある漢方薬は?<ママのお悩み漢方相談室#17>

日常生活に影響が出るぐらい頑固なつらい肩こりに悩んでいる人は少なくありません。一方で、改善を半ば諦めてしまっている人も。17回目の今回は、慢性的な「肩こり」の悩みについて、漢方薬剤師の西崎れいな先生(KAMPO MANIA TOKYO)に教えていただきます。

この記事でお伝えすること

1. 肩こりはなぜ起きる?
2. ただの肩こりではない要注意な痛みは?
3. 肩こりをやわらげるためにはどうしたらいい?
4. 肩こりに効果のある漢方薬は?

1. 肩こりはなぜ起きる?

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慢性的な肩こりがひどく、痛みで仕事に集中できません。
コロナ禍のリモートワークでデスクに座っていることが多くなり、以前よりひどくなった気がします。

リモートワークになって、通勤がなくなったことによる運動不足や腰痛、肩こりに悩む方は増加傾向にあるようですね。これはコロナ禍前の調査ですが、2019年の厚労省の調査でも、女性が自覚症状を抱える症状のトップです。そもそも肩こりとは、首の付け根から肩、背中にかけて感じる張り感、不快感、痛みを伴う症状のことです。

2. ただの肩こりではない要注意な痛みは?

筋肉がこわばり、血流の滞りが慢性化して、人によっては、頭痛やめまい、吐き気などを伴う場合もあるので、生活の質が低下するつらい症状といえます。たかが肩こりと軽視されがちですが、頚椎(首)や肩の関節などに炎症が起こる病気が隠れている場合もあります。いわゆる四十肩、五十肩と呼ばれる肩を動かす筋肉の炎症、「肩関節周囲炎」もそのひとつですね。

また、胸から肩、背中にかけての広い範囲で急に強い痛みが走り、どんな姿勢をとっても改善されないような場合は心筋梗塞など命に関わる痛みの可能性もあります。次のような症状が伴う場合には注意が必要ですので、早めに医師の診断を受けるようにしましょう。
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 昨日までと違う強い痛みが突然出てきた
 横になるなど、姿勢を変えても痛みにまったく変化がない
 手の感覚が弱く感じる、腕に力が入らない
 胸や腰、背中の痛みが伴っている
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肩の痛みが命にかかわることもあるとは知りませんでした。

3. 肩こりをやわらげるためにはどうしたらいい?

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お薬を使う以外で、肩こりをやわらげるために工夫できることはありますか。

原因となる生活習慣をやめることですね。長時間にわたるデスクワークや、パソコンに向かってじっとしている作業などは肩こりの症状を悪化させてしまいます。定期的に、血流を促すような行動をとることが大事です。やはり漢方薬を活用するうえで、一時的に痛みをとることはできても、肝心の姿勢や生活習慣が変わらないと根本的な治療は難しいです。
しつこいようですが、バランスのとれた食事、適度な運動、ストレスフリーはどんな体調改善においても大切ですね。

1. 定期的にデスクを立って動く、同じ姿勢を長く続けないようにする
学校の授業に時間割があるように、できればタイマーなどで時間を区切って、定期的にデスクを立って動く習慣をつけましょう。長い時間同じ姿勢をとり続けることは、筋肉の収縮を招いて肩こりの悪化につながります。
気分転換に散歩に出かけてもいいですし、そういった時間をとれない方は、肩をすくめた状態からゆるめて落とす体操や、肩に手を当てて肩甲骨を回す肩回しのストレッチなどを取り入れることで筋肉の緊張がほぐれ、肩こりの予防や改善になります。うまく活用しましょう。

2. 定期的な運動を心がける
気、血、水の巡りをよくするためにも、ウォーキングなどの軽い運動をおすすめします。全身運動をすることで筋力も強化され、肩の血流もよくなって、肩こりの改善につながります。
また、ストレスも肩こりの原因のひとつです。ジムに通えとまでは言いませんので、気分転換するためにもお散歩やジョギングといったご自身が無理なく続けられる程度の運動を生活に取り入れることが重要です。

3. 温めた蒸しタオルを首や肩にあててあたためる
痛みや違和感が強くなってきたときは、温めることで筋肉の緊張をほぐし、痛みを軽減することができます。蒸しタオルをあてたり、可能ならばゆっくり入浴したりしてリラックスすることで、痛みがやわらぎます。また、眼精疲労などが原因で肩こりを引き起こしていることもあるので、パソコン作業時間の長い職種の方はいったんデスクから離れて目を休める時間をつくると良いですね。
最近では電子レンジを活用した肩や目を温めるためのグッズなども市販されているので、職場環境にもよりますが、利用できる方はうまく活用しましょう。

4. 机や枕など、普段使うデスクや寝具の高さに注意する
数年前の緊急事態宣言で、急にリモートワークに移行したとき、ダイニングテーブルやこたつなどの体に合わないテーブルで仕事をすることになったということで、肩こりや腰痛が増加していることが話題になりました。今ではだいぶ自宅での仕事環境が整ってきたかと思いますが、テーブルの高さや座ったときの姿勢の悪さが肩こりに大きく影響してきます。何か土台になるものを置いてディスプレイの目線の高さを変える、バスタオルを重ねたり座布団を敷いたりして寝るときの枕や椅子の高さを調整するなど、新たにお金をかける必要のない範囲で工夫してみましょう。

4. 肩こりに効果のある漢方薬は?

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肩こりにおすすめの漢方薬には、どのようなものがありますか?

はい、最も有名なものは風邪薬としても知られる葛根湯があります。肩こりに処方される漢方薬によく使われている生薬として、芍薬(しゃくやく)がありますが、この生薬に含まれるペオニフロリンという物質は、筋肉を弛緩させ血流を良くする働きがあります。甘草(かんぞう)に含まれるグリチルリチン酸にも同じような弛緩作用があり、痛みを止めるための生薬としてよく使われています。

漢方医学では、肩こりの原因を水の巡りの悪さや冷えによる血行不良ととらえ、これらを改善する漢方薬が使われます。それでは、肩こりに効くおすすめの漢方薬についてご紹介しますね。

葛根湯(かっこんとう)

【体質、症状】冷えによって血行が悪くなり、肩の筋肉が収縮することで首筋から肩にかけてのこわばりが強い。痛みがある、寒くなると肩こりがひどくなる方に向いています。
【効能】皆さんご存知、風邪のひきはじめに使われる有名な漢方薬です。風寒(ふうかん)といってゾクゾクするような寒気を感じる風邪によく使われます。風邪薬と思われがちですが、体を温めて筋肉の緊張をほぐす作用があり、肩こりの治療に使われる代表的な漢方薬です。
【使われている生薬】葛根、大棗、麻黄、甘草、桂皮、芍薬、生姜
【服用のアドバイス】麻黄を含む漢方薬のため、高齢者の服用は注意が必要です。また、妊婦さんは服用することができません。

柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)

【体質、症状】ストレスを受けやすい、日々疲れがとれない。頭痛や吐き気を伴う肩こりで、肋骨の下の不快感を伴う方に向いています。
【効能】気の巡りを良くして精神安定に働く「柴胡」を含む漢方薬で、体のさまざまな場所の炎症や痛みをとるために使われる漢方です。こちらも風邪薬としても活用されています。肩こりやそれに伴う吐き気、頭痛のほか、食欲不振を起こしている場合にも使用されています。
【使われている主な生薬】柴胡、半夏、黄芩、甘草、桂皮、芍薬、大棗、人参、生姜

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

【体質、症状】肩こりに加えて、下半身の冷えやむくみ、生理痛などの女性特有の不調を伴う場合に用いられます。
【効能】血の巡りをよくする桃仁、牡丹皮という生薬が入った漢方薬で、血行不良の状態を表す瘀血(おけつ)を改善します。気血の流れを整える桂皮、血を補い筋肉の緊張をやわらげる芍薬が使用されており、血流をよくして肩のこりや痛みを軽減します。
【使われている主な生薬】桂皮、芍薬、桃仁、茯苓、牡丹皮

芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)

【体質、症状】証にかかわらず、肩の痛みを感じている方に頓服として使用されます。
【効能】痛み止めとして使用される代表的な漢方薬です。筋肉を弛緩させて痛みをとる作用がある芍薬、甘草の2種類のみで構成されたシンプルな漢方薬です。肩こりだけでなく、腰痛、腹痛、生理痛など広く痛みの軽減に用いられます。
【使われている生薬】芍薬、甘草
【服用のアドバイス】痛みが強いときに頓服として服用するもので、長期にわたる服用はできません。

まとめ

薬剤師の先生から漢方について学ぶ「ママのお悩み漢方相談室〜不調な私の取扱説明書〜」。第17回の今回は、肩こりの原因とその予防や対処、肩こりに効果のある漢方薬についてお伝えしました。
肩こりは頭痛やめまいなども引き起こすことがある厄介な存在。また、病気が理由で肩こりを感じていることもあるので、記事で紹介したような気になる症状を伴う場合は早めに受診しましょう。

(解説:西﨑れいな 先生<KAMPO MANIA>)

※画像はイメージです

参考文献
症状からチャートで選ぶ漢方薬 翔泳社
生薬と漢方薬の辞典 日本文芸社
まずはこれだけ!漢方薬 じほう
漢方薬辞典 主婦と生活社


※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、薬剤師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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