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2022年07月02日 11:31 更新

ルールは変わるもの。柔軟に2人育児を楽しむための「今」のルール 森田夫妻の場合 #共働き夫婦のセブンルール

世の共働き夫婦は、どう家事を分担して、どんな方針で育児をしているんだろう。うまくこなしている夫婦にインタビューして、その秘訣を探りたい。そんな想いから、スタートした企画。それぞれの家庭のルールやこだわりを7つにまとめ、その夫婦の価値観を紐解いていきます。

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【左】森田聡さん(仮名/41歳/紙製品/販売) 【右】森田友美さん(仮名/39歳/広告/制作)

友美さんの会社の取引先担当者だったという聡さん。

「周りにも『素敵な方ですよね』なんて話をしながら、少しずつアプローチしました」(聡さん)と、微笑ましいなれそめを話してくれた。

夫婦とも物腰柔らかで明るく、つき合い始めたころから「なんだか二人、雰囲気が似てるよね」とよく言われていたという。

もともと波長の合う仲良し夫婦だからこそ、結婚して2人の子どもが生まれてからも、細かい決め事を作らなくても家庭が回ってきたという。ただ、その背景で言葉にしていなかっただけの共通の想いが、暗黙のルールとなっていた。

7ルール-1 明確なルールは作らない

森田夫婦は現在、5歳の長女と3歳の長男の園児2人を育てながら共働きを続けている。

「料理は妻、風呂洗いは夫といった、明確な業務分担はありません。お互いにできることをしています」と聡さん。

「むしろ、一時期流行っていた家事分担を図にするようなことはできなくて。分担を明らかにしたり決めてしまうと、プレッシャーになってしまうんです」と友美さんも同意する。

結婚当初は、夕食は早く帰ったほうが支度していた。子どもが生まれ、友美さんが時差フルタイム勤務で復帰してからは、保育園のお迎えは友美さんが担当。朝の送りは聡さんが担当ということだけ決まっている。

聡さんは帰宅後、その日、友美さんの手が回らなかった家事をこなすのが日課だ。

「家ではお互いがフルに家事と育児をがんばって、やっと回っています。どちらもサボっていないと信じているので、そこは信頼関係がありますね」(友美さん)。

そのため、家事・育児で片方しかできない業務はほとんどない。

「自分とやりかたが違うと思うことがあっても、気にしません」(友美さん)
「妻がこうするなら、自分もこうしてみようか、ということはありますが、言葉にはしません。言い合っても、よい結果は生まれないので」(聡さん)

排水溝の掃除は夫がしてくれることが多い、献立を考えたり子どもの書類関係を記入したりするのは妻がしていることが多いという、ふんわりとした分担はあるが、これも時期によって変わる可能性がある。

夕食は、以前友美さんが朝5時に起きて作っていたが、1年ほど前から聡さんが前の日の夜に作るようになった。

「きっかけは、朝早く起きていた妻がつらそうな顔をしていたからです。手軽なミールキットを使うことも多いですが、やり出したら楽しいんですよね。今では自分や妻の弁当も作るようになりました」(聡さん)

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子どもを早く寝かせることを優先し、夕食はミールキットで前日の夜に調理するという聡さん。「ただそれも今現在そうだというだけで、時期によって変わる可能性はあると思います」(聡さん)

家事に育児にと多忙を極めているからこそ、「これは誰の仕事」と決めてしまうと、どうしてもつらくなることがある。だから、

①ふんわりした分担はあってもお互いに気づいたことがあればフォローする
②それも厳しくなってくれば分担をシフトする
③お互いのやり方が違っても口を出さない

明確なルールは作らない代わりに、その背後にはこれだけの暗黙のルールがある。似たもの夫婦だからこそ、特別な相談をしなくてもルールができたということだろう。

7ルール-2 今は子どものことを楽しむ

子どもたちとの日々の生活を回すこと、子どもの習い事、子どもとのお出かけ、そして夜は早く休める日は子どもたち一緒に寝ること。

「今はとにかく子どもたちのことで手一杯で、夫婦それぞれの個人の時間は正直あまりありません」(友美さん)

だが、それでまったく構わない。「子どもたちが親と一緒に過ごしてくれるのは、数年だけかなと思うからです」と友美さんは言う。

友美さんは半年前からリフレッシュのために土曜にテニスを始めたが、朝6時30分から8時までの早朝クラスに通っている。これなら休日を犠牲にすることなく、運動することでストレス解消になり、子どもたちとの時間をさらに楽しむことができているという。

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友美さんが最近揃えたテニス道具。「自分がテニスを習うことで、子どもの習い事に関しても強制や無理強いでないか、感覚がわかるようになった気がします」(友美さん)

聡さんは屋外にいることがリフレッシュになるため、子どもたちの習い事のない日曜日はほとんどいつも家族でピクニックに出かけている。

「僕が弁当を作って、シートを敷いて子どもたちが遊んでいるのを見守りながら、昼からビールを飲んで。今はこれが一番楽しいから、他にやりたいことがなくなってきましたね(笑)」(聡さん)

実はこのインタビューも公園で行った。天気もよく、緑豊かな公園でピクニックをしていればストレスはたまらないという聡さんの言葉に、とても共感した。

7ルール-3 服やモノ、手作りを楽しむ

夫婦それぞれの時間が少ない分、森田夫婦には共通認識として大切にしていることがある。趣味や好きなものなど、日常を楽しむことだ。

「夫婦で好きなものが似ているんですよね。洋服も同じブランドが好きなので、セール情報を共有したり、お互いの服をうらやましがった末に、あとからおそろいを購入したりしています」(友美さん)

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おそろいの帽子とバッグでお出かけすることも。友美さんが購入した服を、聡さんが先に試着してしまう、ということもよくあるとか

手作りを楽しむのも好きで、「先日のホワイトデーには夫がヤドン(ポケモン)マカロンを作ってくれました(笑)」と友美さん。

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聡さんお手製のヤドンマカロン。「よく作ろうと思ったよね…!」と言う友美さんに、「別に得意ではないのですが、娘もポケモンが好きだし、楽しませるのが好きなんですよね(笑)」と聡さん

クリスマスにはクリスマスツリーを、お正月には門松を家族全員で描いて飾っている。子どもたちの成長によって毎年、仕上がりが違うことも思い出になる。

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2021年に家族で描いたクリスマスツリー。購入した“リアルなツリー”は小さいというが、作品は大作! 子どもが小さくても、これなら倒れて壊れる心配がない

「派手な趣味やイベント事は多くありませんが、日常の“フツウ”を楽しむだけでも満足ですね」(友美さん)

7ルール-4 ホワイトボードカレンダーで楽しみを待つ

そんな森田家では、夫婦の予定や子どもたちの習い事、週末のピクニックや食材配達の日程などを、ホワイトボードカレンダーに書き込んでいる。

「僕はいつも寝かしつけの時間に帰って来ますし、朝も子どもたちの支度で忙しいから、夫婦で予定を確認する時間がないんですよね。だからこのホワイトボードカレンダーで、お互いや子どもたちの予定を共有しています」(聡さん)

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「ほぼ日」のホワイトボードカレンダーを何年も愛用中。話す時間がなくても家族の予定を把握できる

聡さんが友美さんの予定を見て、「今日は在宅ワークなら、お弁当はいらないね」と確認することも。下の子のトイレトレーニングが成功したご褒美にシールを貼る場所にもなっている。

記入するのは友美さんだが、「次の楽しみは何かな、と考えながら書くのも楽しいですよ」と笑顔。

ぎっしり書き込まれ、にぎやかなシールも貼られたホワイトボードカレンダーから、森田家の楽しそうな雰囲気が伝わってくる。

7ルール-5 寝る前には必ず読み聞かせをする

「ドタバタの毎日で、平日は子どもとのんびり遊ぶ時間がないんです」と友美さん。

だからこそ、唯一、毎日欠かさないよう決めているのが寝る前の読み聞かせだ。赤ちゃんのころから毎日、まずは下の子に2冊、次に上の子の長めの絵本を1冊読んでから消灯している。

「本を読む楽しさを知ってほしい」(友美さん)と、ジャンルを問わず何でも読む。図書館で借りると返却に行く時間がないため、家にある100冊ほどの絵本を繰り返し読んでいるという。

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子どもたちが好きな絵本。「家族の誰かが興味をもった本はとりあえず読んでいます」と友美さん

長女はポケモン図鑑が大好きで、聡さんが読み聞かせを担当する日は、2冊のポケモン図鑑を使ってバトルをするという。

「それぞれに1冊ずつ持って、パッと開いたページのポケモン同士でバトルするんです。8回対戦してから寝るのがお決まりですね」(聡さん)

絵本は図書館を活用するパパママも多いが、返却する手間を考えて購入してしまうというのもひとつの手だ。何度も読み込み、本を使って対戦までしていたら、子どもの記憶にも強烈に残るに違いない。

7ルール-6 【夫】 夢中になれる「うんてい」を探す

聡さんには、子どもとの忘れられない思い出があるという。

ある日、公園で娘さんがうんていに何度も何度も挑戦し、「背中から落ちようが、手のまめが潰れようが、こっちがつい『もうやめたら?』と言ってしまっても諦めない姿に感動しました」と振り返る。

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聡さんに見せてもらった、うんていの動画。この後、うんていから落ちてもやり続けた娘さんの姿は、親でない私が見ても確かに胸が熱くなった

「いつの日か、あの日のうんていくらい打ち込める何かを見つけられるように、一緒に探してあげたい。そのために、子どもが『やりたい』と言ったことはやらせてあげたいと思っています」(聡さん)

今はダンスやお絵描きなどの習い事にトライ中。でも、「たとえ今の習い事が続かなくてもしょうがない」と聡さん。「それ」が見つかればやる子だということを知っているから、幅広い事柄に興味を持つように見守っている。

7ルール-7 【妻】 家族はそれぞれ個人

うんていの話は、このルールにもつながっている。

友美さんは、特に子どもが女の子でも「子どもは自分の分身だと思っちゃいけないと、ずっと自分にいましめてきました」と言う。

「だから、子どもが好きなもの、やりたいことは絶対に批判しないよう意識的に努めています。服やモノを買うときも、必ず本人に意向を確認しているんです」(友美さん)

ただ、取材中に聡さんからこのうんていの話を聞いて、「実は私も子どものころ、うんていとか鉄棒をものすごくやり込んだんです」と友美さん。

「うんていってゴールがわかりやすいから、絶対に結果を出そうとのめり込んだのだと思います。そういうところ、私にそっくりなんですよね。ただ、自分が子どものころ、ピアノや絵など、結果がわかりにくい習い事ももっとしっかりやって習得できていたらよかったのに、と今になって残念に思っているんです……」(友美さん)

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しばらく考えたのち、「同じタイプだからこそ、誘導してあげることがあってもいいかもしれませんね。このルールは、今が過渡期なのかもしれません」と納得。

家族のルールが変化していく瞬間に、立ち会ったような気がした。

彼らの7ルールを一言で言うと……?

森田夫婦の7ルールの特徴は「決めつけない」ということだ。

夫婦の分担も、家事・育児のやり方も「何が正しい」と決めつけない。お互いのことを誰よりも理解する似たもの夫婦が、フォローし合い、柔軟に変化しながら生活している。

といっても、揉めることがまったくないというわけではない。頻度は低いが、普段は朗らかな友美さんが爆発して、「○○が大変だ」と聡さんに訴えることがあるという。これをきっかけに夫婦のルールが変わっていくこともある。

小さな子どもが2人ともなれば、夫婦ともに日々力を出し切って努力しないと回らない。夫婦でじっくり話す余裕なんてはっきりいってない。だからこそ、森田夫婦は旅行など大きな予定は無理して立てず、日常を楽しみながら、カレンダーや子どもと行くピクニックの場でさりげなく情報共有している。

実は今回の取材で、あえて7ルールの話をすることで「お互いに考えていることが同じであることを確認できて、いい機会になりました」と夫婦ともにうなずいていた。

誰もがうらやむ仲良し夫婦でも、刻々と変わりゆく「今」を言葉にして確認することは、意味のあることだったようだ。つまり、考えていることも好みも正反対な夫婦なら、もっともっと口に出し、確認し合うことが必要だというわけだ。たとえば、我が家のように。

(取材・文:中島 理恵、撮影:梅沢 香織、イラスト:二階堂 ちはる)

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