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2022年05月19日 14:39 更新

めまいに効果のある漢方薬は?代表的な3つの漢方を解説<ママのお悩み漢方相談室#12>

ぐるぐると回転するようなものから、ふらっとする感じまで、めまい(目眩)の症状を感じる女性は少なくありません。そんなめまいを漢方で改善することはできるのでしょうか?今回は「めまいの原因と効果のある漢方」について、漢方薬剤師の西崎れいな先生(KAMPO MANIA TOKYO)に教えていただきます。

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この記事でお伝えすること

1. めまいのしくみって?
2. めまいを引き起こす病気とは
3. 生活習慣でめまいを予防するためにできること
4. めまいに効果のある漢方薬は?

1. めまいのしくみって?

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最近はストレスでめまいや耳鳴りを発症する人が周囲に増えてきました……。

天井や風景がぐるぐると回転するようなめまいから、立ちくらみのようなふらっとする程度のめまいまで、患者さんによって症状の出方は様々です。めまいが慢性化している患者さんは、原因がよくわからないことが多く、漢方薬に頼りたいと相談に来られる方がたくさんいらっしゃいます。

最近は急に耳が聞こえにくくなり、めまいや耳鳴りを伴う突発性難聴などで休業される芸能人の方も多いですよね。

目眩を感じる女性

耳には「三半規管」といって人間の体のバランスを司る規管があります。その名の通り、三半規管は前半規管、後半規管、外側半規管の3つの半器官で構成されています。これらの規管はリンパ液で満たされていて、このリンパ液が体の動きに合わせて動き、バランスをとっています。ここに異常をきたすとめまいが起こると言われています。

症状があるならば早めに受診を

めまいは、激しい頭痛や嘔吐を伴う場合を除いて命に関わるようなことは少ないのですが、長期にわたって耳鳴りやめまいに悩まされている患者さんにとっては、生活の質が下がる深刻な問題です。

例えば、グルグルした回転性のめまいでずっと気分が悪い状態が続き、受診してお薬をもらったとしても、つらい吐き気で内服が難しかったりします。またひどい人は日常生活にも支障をきたすので、発作を恐れて外出が怖くなってしまう場合もあり、めまい発作の心配がかえってストレスになってしまい、悪循環に陥る人もいるくらいです。

めまいは、医療の世界ではおもに耳や脳の病気が疑われます。早めに治療を受けないと回復が難しくなってしまう病気もあるので、異常を感じたら、一度早めに医師の診察を受けましょうね。

2. めまいを引き起こす病気とは

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めまいが起きたとき、具体的にはどのような病気が疑われるのでしょうか?

めまいを伴う病気といえばメニエール病や突発性難聴が有名ですが、代表的なめまいを引き起こす病気には、以下のようなものがあります。

1、 突発性難聴

ある日突然発生するのが特徴です。本人が自覚できるレベルで、片耳が詰まったような感覚になり聞こえにくく、大体が耳鳴りを伴います。また、めまいを伴う場合もありますが、繰り返すことはほとんどありません。

原因はいまだ明らかになっていませんが、過度なストレスや過労、睡眠不足などが引き金となって起きると考えられています。

早く治療を開始しないと聴力の回復が難しくなる場合があるので、症状が出たら早めの受診と早期治療がカギとなります。

働き盛りの40代〜60代に多い病気だと言われていましたが、最近では芸能人の休業で話題になったり、若い世代での発症も増えたりして、幅広い年齢層でみられる病気です。

2、 メニエール病

天井や風景がぐるぐると激しく回転するようなめまいが数分〜数時間にわたって続き、難聴、耳鳴り、ひどい吐き気、冷や汗、頭痛といった非常に不快な症状を伴います。これらの症状を繰り返す場合、メニエール病と診断されます。

この状態の患者さんは内リンパ水腫といって、内耳のリンパ液が増加して、水ぶくれのようになることが原因で起こりますが、ストレスなども大きく影響しているといわれています。

メニエール病の場合も早期治療が重要です。異常に気付いたらすぐに耳鼻咽喉科に相談しましょう。
30〜40代の女性に多い病気だと言われていましたが、最近では男女問わず幅広い世代に増えてきています。

3、 良性発作性頭位めまい症

寝返りをうったり、寝ている状態から起きたりして頭の方向を変えた瞬間にふらっとくるめまいで、たいていの場合は数分以内のわずかな時間のふらつきでおさまります。吐き気や嘔吐を伴うこともあります。先ほどのメニエール病や突発性難聴との大きな違いは、めまいが持続する時間が短いこと、難聴や耳鳴りなどの耳の自覚症状を伴わないことです。

三半規管と繋がっている前庭という場所には、耳石(じせき)という炭酸カルシウムの塊がへばりついています。この耳石が、何らかの原因で三半規管の中に入り込むことによってめまいを生じます。

女性や高齢者に多いめまいですが、最近では男性の訴えも増えてきています。

4、 前庭神経炎

難聴や耳鳴りなど耳の症状がなく、突発的に立っていられないような激しい回転性のめまいが数日〜1週間続きます。また、吐き気や嘔吐も伴います。

風邪のような症状の後に経験する人が一定数いるため、ウイルスが関係しているのではないかと言われていますが、はっきりしたことはわかっていません。

5、 脳の病気

脳出血や脳梗塞などの脳の病気でも、めまいを発症します。この場合は、激しい頭痛で歩くことができない、呂律が回らない、手足が痺れる、ものが重なって見えるなどの特徴があります。

めまいに加えてこれらの症状が現れ急激に悪化している場合は、命に関わることがあるので、迷わず救急車を呼んでください

疲労感があり、めまいに悩む妻を心配する夫

めまい症状はその他にも、うつなどの精神疾患に伴うものや、血圧が低すぎたり高すぎたりする場合などでも起こってきます。あとは更年期の女性にも多くみられますね。

きっかけは人によってさまざま。 毎日ストレスフル、疲れがとれない、睡眠不足などの状態が続いているのであれば、仕事や家事よりも、早めにお布団に入って休息を取ることが必要ですよ。

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原因が色々あると特定が難しいですね。

そうなんです。そしてこれらの病気の多くには、先ほどからお話しているように、ストレスや睡眠不足などの生活状態が関係しています。

患者さんの属性として几帳面で真面目な人が多く、ストレス発散が下手な人が多いとも言われています。気がついたら、定期的なめまい症状に悩まされている、なんて方も多いんですよ。

3. 生活習慣でめまいを予防するためにできること

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日常生活でめまいを予防するためにできる工夫はありますか?

めまい症状を訴える患者さんの中には、医者にかかっては治り、かかっては治りを繰り返している人もいて、そういう方は根本的に働き方、パートナーとの育児や家事分担を見直すなど、ストレスの根本的な原因を改善していくことが重要ですね。

まずはストレスの原因となっているものを探すことが早期解決の近道です。お仕事の業務過多なのか、育児ストレスなのか、あるいは別の心配ごとなのか、職場の人やパートナーにも相談してみると、解決の糸口が見えてくるかもしれませんよ。

夫に相談する妻

全ての体調不良の改善はバランスのとれた食事、適度な運動、ストレス解消、十分な睡眠の4つに帰結します。
1. 栄養バランスのとれた食事をとること
2. 適度な運動やストレッチなどをすること
3. こまめに休憩をとり気分転換をすること
4. 質の良い睡眠を十分にとること

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体調管理の基本はやっぱり食生活や生活習慣の改善なのですね。

4. めまいに効果のある漢方薬は?

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めまい症状におすすめの漢方薬にはどのようなものがありますか?

めまい症状は、漢方医学では「水」の巡りが悪くなることや「血」の不足が原因であると考えます。

これは先ほどの説明にもあったように、耳症状のあるめまいの多くは三半規管を満たすリンパ液の異常が原因であることからもわかりますね。西洋医学でもメニエール病や難聴の治療には血液の巡りを良くするお薬と利尿作用のあるお薬を併用することが一般的です。漢方も同じように、めまい症状の改善には「水」の巡りをよくする利水剤を用いて治療を行うことが多いです。

水の代謝トラブルで引き起こされるめまいは、「証」によっては水をたくさん飲むことでかえって症状を悪化させる場合もあるので、水分摂取には注意が必要です。専門家の指導のもと、人それぞれ適した量を飲むように。
関連記事 ▶︎漢方の証ってなに?<漢方相談室#2>

めまい症状を改善する代表的な漢方薬をご紹介しますね。

苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)

【体質、症状】水の巡りが悪く停滞することで引き起こされるめまいや立ちくらみの代表処方です。めまい以外にものぼせ、頭痛、尿の量が減るなどの症状、不安感など神経症状のある場合に有効です。
【効能】4種類の生薬で構成される漢方薬です。胃腸の機能を整え、水分代謝を改善します。水を巡らせて外に出す代表的な生薬である茯苓が、無駄な水分を排出して巡りをよくします。また、精神を安定させるはたらきもあります。
【使われている生薬】茯苓、蒼朮、桂皮、甘草

真武湯(しんぶとう)

【体質、症状】めまいのほか、むくみや冷え、下痢をしやすいなど、水が滞った状態である水滞(すいたい)の方に向いています。フワフワと浮動感のあるめまいに有効です。
【効能】茯苓の利水作用で体の余分な水分を取り除き、滞った水の流れをよくします。体を温める作用のある附子には、冷えを改善し新陳代謝を高めるはたらきがあります。
【使われている生薬】茯苓、芍薬、白朮、生姜、附子

半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)

【体質、症状】胃腸虚弱で体力がないタイプの方に向いています。めまいの他にも、食欲不振、吐き気、倦怠感などを伴います。
【効能】半夏は胃腸の水分代謝を整えて、体の湿気を取り除く効果があります。天麻は痙攣やめまい、手足の震えなど、体の動きに異常をきたす症状のときに使われる生薬です。白朮の作用で胃腸の機能を回復させることで水の巡りをよくしてめまいを改善します。
【使われている生薬】半夏、白朮、茯苓、沢瀉、天麻、人参、黄耆、乾姜、陳皮、黄柏、麦芽、生姜

まとめ

薬剤師の先生から漢方について学ぶ「ママのお悩み漢方相談室〜不調な私の取扱説明書〜」。第12回の今回は、めまいを伴う病気や生活の工夫、めまいにおすすめな漢方薬についてお伝えしました。
漢方医学では、めまいは「水」の過剰・停滞と考えます。体質に応じて、水分の摂り方には注意が必要で、体の循環を促すためにも適度な運動習慣を心がけ、睡眠をしっかりとりましょう。また、ストレスは万病のもとと思い、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。
そして、音の聞こえ方が変わった、耳鳴りなどの耳症状を伴うめまいは、放っておくと回復が難しくなる場合もありますので、早めに受診し医師に相談してください。

(解説:西﨑れいな 先生<KAMPO MANIA>)

※画像はイメージです

参考文献
症状からチャートで選ぶ漢方薬 翔泳社
生薬と漢方薬の辞典 日本文芸社
まずはこれだけ!漢方薬 じほう
漢方薬辞典 主婦と生活社
厚生労働省 e-ヘルスネット「突発性難聴について」
厚生労働省研究班(東京大学医学部藤井班)監修 ヘルスケアラボ「めまい・耳鳴り」


※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、薬剤師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます
  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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