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2022年05月19日 14:39 更新

頭痛に効果のある漢方薬ってどんなもの?<ママのお悩み漢方相談室#11>

慢性的な症状を抱えている人が多い頭痛ですが、漢方で改善することはできるのでしょうか。今回は「漢方薬と頭痛」について、漢方薬剤師の西崎れいな先生(KAMPO MANIA TOKYO)に教えていただきます。

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この記事でお伝えすること

1. 片頭痛型と緊張型、あなたの頭痛はどちらのタイプ?
2. 頭痛を予防する生活習慣とは?
3. 頭痛に効果のある漢方薬は?

1. 片頭痛型と緊張型、あなたの頭痛はどのタイプ?

頭痛に悩む女性
Lazy dummy

慢性的な頭痛に悩まされています。仕事がつらいと思うような頭痛が月に何回かあり、鎮痛剤が手放せません……。

頭痛に悩まされる女性は多いですね。頭痛は市販薬などでセルフケアができるものなので、慢性的に頭痛に悩まされていても、「私は頭痛持ちだから」とそんなに気に留めていない人が多いように思います。

頭痛には様々な要因があって、肩こりや首こりなど血流の悪さからくるもの、気圧の変化、女性の場合はホルモンバランスの変化、メガネの度数が合っていないというのも頭痛の原因になります。

また頭痛にもタイプがあり、「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」と大きく3つに分けられます。

このうち今回は特にお悩みの方が多い「片頭痛」と「緊張型頭痛」について説明していきましょう。

1. 片頭痛タイプ

片頭痛は、1ヶ月または1週間に何度か、ズキンズキンとこめかみが脈打つような頭痛が繰り返し発作的に起こります。吐き気や嘔吐を伴うことが多く、症状があるときは光や音、においに敏感になります。女性に多いのも特徴です。

片頭痛の原因として、脳の血管が拡張することで三叉神経という感覚の神経を刺激して起こると考えられています。

2. 緊張型頭痛タイプ

緊張型頭痛は、頭をギューっと締め付けられるような痛みで、肩や首のこり、めまいなどを伴う頭痛です。

主に精神的ストレスや長時間のデスクワークなどが原因となります。緊張型頭痛のしくみは、頭や肩、首の筋肉が緊張して血流が悪くなり、周囲の神経が刺激されるというものです。

まずは、自分が片頭痛、緊張型頭痛のどちらのタイプなのかを見極めることが大事です。まさに漢方医学でいう「証」ですね。
関連記事 ▶︎漢方の証ってなに?<漢方相談室#2>

片頭痛と緊張型頭痛は痛みや周期に違いがあります。片頭痛には周期があり、発作的に起こるもので、痛みも強く鎮痛剤なしでは寝込んでしまうような人もいます。緊張型頭痛は毎日痛みがあっても、日常生活に支障をきたすようなレベルではないことが多いです。

また、片頭痛の場合は吐き気、光や音に敏感になるなど頭痛以外の特徴的な症状があるので、これらの症状が合致するかどうかも判断のポイントになると思います。

こんな頭痛には要注意! 必ず受診を

注意していただきたいのは、
・今までに経験したことのないような痛みを感じる
・だんだん痛みがひどくなる
・激しい吐き気や嘔吐を伴う
・発熱がある

などの場合は、脳卒中などの脳の重篤な疾患である可能性があるため、必ず医療機関を受診するようにしてください。

また、最近問題になっているのが、頭痛薬の飲みすぎで頭痛を誘発しているケースです。「薬物乱用頭痛」といって、鎮痛剤を長期にわたって連用していることが原因で、かえって頭が痛くなるという頭痛です。例えば市販薬の強い薬でないと効かなくなってきたり、月に10日以上使用したりしている方は、頭痛の専門医に一度相談してみることをおすすめします。

2. 頭痛を予防する生活習慣とは?

Lazy dummy

私は吐き気があったり、まぶしいのがつらくなったりして、タイミングとしては週末に起こることが多いです。片頭痛タイプということみたいですね。
日常生活ではどんなことに気をつけたら良いですか?

実は、片頭痛と緊張型頭痛は、発症した時の正しい対処や予防の仕方が違うんです。

共通するのは「ストレスを溜めない」こと。片頭痛の場合はストレスからの解放が、緊張型頭痛は慢性的なストレスが頭痛の原因になっていることが多いので、普段からストレス発散、リラックスできるような趣味などを見つけられると良いですね。

特に片頭痛の場合は、自分がどんな時にどんなタイミングで発症しているのか、きっかけになるものを見つけることで頭痛を回避するヒントになります。

片頭痛の場合の対処法・予防法

片頭痛がつらい女性

1. 頭痛が起こったら暗いところで安静にする
お風呂に入ったり、マッサージしたりといった行為は血管を拡張させるので、かえって痛みを悪化させてしまいます。昼間でもカーテンを閉めるなどして部屋を暗くし、横になって安静に過ごしましょう。

2. 血管を収縮させて症状を緩和

痛みや吐き気がひどくなる前に、熱が出た時に使うような氷枕を当てたり、緑茶やコーヒーなどのカフェインを含んだ飲み物を飲んだりすることで、血管を収縮させ、症状が楽になることがあります。

3. 普段からストレスを溜めない生活を
週末に頭痛が起こるというお話でしたが、片頭痛は「ストレスから解放されてリラックスできたタイミング」で起こることが多いと言われています。例えば、土日になって仕事が休みになった、心配事が解消した、大きな仕事がひと段落したなどのタイミングです。ほっと一息つく時間を定期的に作りましょう。

4. 休日もできるだけ睡眠のリズムを整える
休日の前夜はつい夜ふかしをして、次の日朝寝坊したり、寝だめをしたくなりますよね。寝過ぎや寝不足は片頭痛の引き金になるので睡眠のリズムを一定にすることがとても重要です。普段から十分な睡眠をとり、普段と同じくらいのサイクルで生活するのがベストです。

5. 誘発因子やタイミングを見つけてそれらを避ける
これも片頭痛の特徴の一つなのですが、アルコール類、チョコレート、チーズなど、特定の食品の摂取が片頭痛のきっかけになることがあります。しかし誘発因子には個人差があり、食べ物以外の生活習慣も関係してくるため、特定できるわけではありません。頭痛が発生したタイミングや環境を把握し回避することで、頭痛を防ぐことができます。

緊張型頭痛の場合の対処法・予防法

仕事中に伸びをする女性

1. 温めて気分転換を
頭痛が起こったら、仕事中であれば休憩を入れる、その場を立ってストレッチするなど、環境を変えて気分転換すると良いです。もし自宅などで環境が許すなら、蒸しタオルで肩まわりを温める、お風呂に入るなども痛みの緩和になります。

2. 枕が高すぎる人は見直しを
肩こりがひどい人は、毎日寝ている枕が高すぎることがあります。枕を見直したり、タオルを重ねて代用し調節したり、自分にあったオーダーメイドの枕を店頭で相談するなどして試してみてはいかがでしょうか。

3. 長時間同じ姿勢は避ける
最近はプログラマーなど、PCの前に座りっぱなしの仕事の方が増えていますし、在宅ワークなどで通勤しなくなったことで運動も不足しがちです。タイマーをかけて定期的にデスクから離れる時間をとり、腕を回したりして血行を良くする運動を取り入れましょう。

4. シャワーだけでなく湯船に浸かる習慣を
定期的に湯船に浸かりましょう。忙しいと時間がなくてシャワーで済ませてしまう人も多いですが、筋肉の緊張を和らげて血行を良くすることで、痛みの改善に加えて、頭痛そのものの予防になります。ゆっくりとリラックスしてお風呂に入る習慣をつけましょう。

3. 頭痛に効果のある漢方薬は?

Lazy dummy

冷やすと温めるで対処法を誤ると悪化するんですね。気をつけないといけませんね。

慢性的な頭痛を改善するためにおすすめの漢方薬はありますか?

はい、頭痛薬として使われる漢方薬は数多くあります。

漢方医学では、先ほど説明した頭痛のタイプに加え、患者さんの体質や症状を細かく確認して証を見極め、漢方薬を選定します。
片頭痛の場合は痛みを和らげて胃腸の働きを整える漢方薬、緊張型頭痛の場合は血管を広げて血行を良くする漢方薬などが利用されます。

代表的なものをいくつか紹介しますね。

呉茱萸湯(ごしゅゆとう)

【体質、症状】ズキンズキンと脈打つような痛みが発作的に起こる片頭痛の方に向いています。もともと胃腸虚弱で体の冷えが強い、頭痛の発作時に吐き気や嘔吐、みぞおちあたりの膨満感を伴う場合に有効です。
【効能】呉茱萸湯は、片頭痛に用いられる代表的な漢方薬です。呉茱萸が痛みをやわらげ、人参が胃腸機能を整えます。発作時に服用し、即効性のある漢方薬です。
【使われている生薬】大棗、呉茱萸、人参、生姜
【服用のアドバイス】独特の強い苦味のあるお薬です。エキス剤を服用する場合は、先に水を含んでからお薬を入れて一気に飲み干すことをお勧めします。

葛根湯(かっこんとう)

【体質、症状】緊張型頭痛に向く漢方薬です。体力は充実していて、慢性的な肩こりや首こりに悩んでいる、マッサージや温めることで頭痛が緩和するタイプの方に有効です。
【効能】風邪薬の代表格ともいえる葛根湯ですが、麻黄、生姜、桂皮には炎症を抑える効果があり、頭痛薬として保険適用もされていて、医療現場でも広く使われています。体をあたため血行を促し、筋肉の緊張をほぐす役割があるので、頭痛や肩こり、筋肉痛などの痛みに用いられます。
【使われている生薬】葛根、大棗、麻黄、甘草、桂皮、芍薬、生姜
【服用のアドバイス】麻黄を含むため、妊娠中は服用を避けましょう。

釣藤散(ちょうとうさん)

【体質、症状】慢性的な緊張型頭痛を抱えていて、特に朝方やイライラした時に症状がひどくなる方に向いている漢方薬です。また血圧が高く、めまいやふらつきなどを伴う場合に有効です。
【効能】興奮を落ち着かせ、筋肉の緊張を緩める作用のある釣藤鈎が含まれており、ストレスによるイライラを抑えてくれます。人参や茯苓で胃腸の消化吸収を強めて気を補い、全身の機能を高めます。菊花は、目の充血や頭痛を和らげる作用があります。
【使われている生薬】釣藤鈎、陳皮、半夏、麦門冬、茯苓、人参、防風、菊花、甘草、生姜、石膏

まとめ

薬剤師の先生から漢方について学ぶ「ママのお悩み漢方相談室〜不調な私の取扱説明書〜」。第11回の今回は、頭痛の種類と、それぞれのタイプ別の対処、予防法、おすすめの漢方薬についてお伝えしました。まずは自分の頭痛タイプが「片頭痛」なのか「緊張型頭痛」なのかを知って、タイプに合わせた対処・予防をしながら、うまく漢方薬の活用しましょう。

(解説:西﨑れいな 先生<KAMPO MANIA>)

※画像はイメージです

参考文献
症状からチャートで選ぶ漢方薬 翔泳社
生薬と漢方薬の辞典 日本文芸社
まずはこれだけ!漢方薬 じほう
漢方薬辞典 主婦と生活社


※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、薬剤師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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