子供がどうしても泣き止まない時、親はどうしたらいいの? 小児科医「いつでも抱っこで泣き止ませるのは無理」
子供が頻繁に泣く、なかなか泣き止まないといった時、親でも何をどうしたらいいかわからなくて心配になったり、疲れてイライラしたりしがちですよね。そこで、小児科医の森戸やすみ先生に対応策を聞いてみました。
「赤ちゃんは泣くのが仕事」
「赤ちゃんは泣くのが仕事」というくらいですから、小さな子供が泣き止まないのは、世界中のたくさんの親が一度は経験したことのある困り事のひとつではないでしょうか。
日本では1950年頃まで、よく泣いたりむずがったりする赤ちゃんを「疳が強い」「疳の虫がいる」などと言い、祈祷やおまじない、お灸、投薬などが行われることも、めずらしくありませんでした。なんと300年以上前から、よく泣く赤ちゃん向けの薬があったようです。
では、どのくらい泣くと「よく泣く赤ちゃん」なのでしょうか。ある研究によると、生後8日以内の新生児が1日の中で泣いている時間を合計すると、50例の平均は117分で、最長は243分、最短は48分だったそうです[*1]。243分というのはかなり長く、個人差が大きいですね。1日3時間以上泣く日が、週に3日以上あると「過剰泣き」とする調査が多いようです。
あまりにも子供が泣き止まないと、親御さんは何か健康上の問題があるのではと心配になるかもしれません。また毎日だと、泣き止ませられない自分が無力であるような気がしたり疲れたりして、イライラしたり、落ち込んだりすることもあるでしょう。
公共の場で泣き止まない場合は特に、周囲の迷惑にならないよう静かにさせないと、というプレッシャーも感じてしまいそうですね。そんな時には、どうしたらいいでしょうか?
安全だけ確保して離れてもいい
まず、「泣く子と地頭には勝てぬ」というくらいですから、理屈の通じない乳幼児を泣き止ませることは、ほとんどできません。
母乳やミルク・食事が足りていて、おむつがきれいで、ゲップも出していて、体に異変もなく、眠くもないようで、暑くも寒くもないようで、さらに可能な範囲で抱っこしたりあやしたりしてもダメなら仕方がありません。
時と場合や子供の性格によっては、散歩したり、ベビーカーに乗せたり、車に乗せたり、別の部屋に連れていったりすれば、泣き止む場合もあるでしょう。でも残念ながら、絶対に泣き止むという方法はないのです。
親のほうも疲れた時には、窒息や怪我をしないよう安全だけは確保して、少しの間だけ離れるのもいいでしょう。赤ちゃんが泣き疲れて眠ってしまうこともあると思います。24時間体制で、いつでも抱っこして、全く泣かせないようにするなんて不可能ですから、無理をしないでくださいね。
そうして、赤ちゃんはいつまでも赤ちゃんのままではありません。そのうちに、必ず泣かなくなります。例えば生後6週時には1日に4.4時間も泣いていた子が、1歳時には1.5時間しか泣かなくなったという研究結果もあります。ですから、周囲の人たちにも乳幼児たちの「泣く」という期間限定の仕事をあたたかく見守ってもらえたらと思います。
参照)森戸やすみ『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版社)
参考文献)
[*1] Aldrich CA et al. J Pediatr.1945 27:P428-435
[*2] Baildam EM et al.Dev Med Child Neurol.1995 Apr;37(4):p345-353
(編集協力:大西まお)