どのくらいのママが母乳をあげている?
今回のテーマである「母乳、いつまで?」についてママたちの声をご紹介する前に、「母乳育児をしているママの割合」や「母乳育児のメリット」について、おさらいしてみましょう。
母乳育児をしているママは意外と多い【母乳栄養の割合】
厚生労働省の調べでは、約8割のママが「授乳について困ったことがある」(0~2歳の子供を持つ保護者の77.8%)[*1]とか。そんな悩み多き母乳ですが、同様の調べで約9割のママが赤ちゃんに母乳を与えていることが分かっています(下図)。実に、30年前のデータと比べ18.2%も増加しているのです。
どうして母乳育児がいいの?【母乳育児の推奨】
これだけ多くのママが母乳育児を行っている背景には、ひとつに母乳育児が推奨されていることがあります。
母乳が勧められる理由としては、以下のものが挙げられます。[*2]
・母乳には赤ちゃんを感染症から守ってくれる免疫成分が含まれている
(免疫学的感染防御作用)
・母乳は赤ちゃんにぴったりの成分で、消化・吸収もいい
(成分生成が乳児に最適であり、代謝負担が少ない)
・アレルギーを起こしにくい
・授乳をするママにとって、子宮復古を促すなどの効果がある
(出産後の母体の回復を早める)
・授乳でスキンシップをとることで、ママと赤ちゃんの絆を深める
(母子相互関係の良好な形成に役立つ)
・衛生的・経済的で手間もかからない
みんなは母乳、いつまであげてる? 卒乳・断乳はいつ? ~ママたちの声~
母乳育児のメリットについてはわかりましたが、実際問題、そうそう理想通りに進むものでもありません。そこで、現在育児中のママたちに、「母乳、いつまで?」「卒乳・断乳はいつ?」について聞いてみました。
「2歳児の『おっぱい、おいしくない』」

卒乳がなかなかできず、夜中泣かれることもありましたが、次の子を妊娠すると「おっぱい、おいしくなくなった」と言い出し、急に卒乳できたのはビックリしました。
結局、3歳前まで授乳してましたが、やめるときはあっさりで、断乳で頑張ってたのが嘘のようでした。
(30代、長男7歳・次男4歳・長女1歳、公務員)
「おっぱい、おいしくない」って、地味にショックですね……。息子さん的に、妊娠中のお母さんを気づかった結果の一言だったりして!?
「1週間でおっぱいの吸い方を忘れる」

ちなみに、末っ子の時は鼻風邪をひいて「1週間くらい授乳をしていないなぁ」と思って飲ませようとしたら、吸わなくなっていました。
「あれ? でないよ??」と言われましたが、搾乳すると出たので、吸い方を忘れてしまったようです。
(30代、長男8歳・長女5歳・次男3歳)
「卒乳」でも「断乳」でもなく「忘乳」とは! 鼻で呼吸ができないとおっぱいを飲むのも難しいですもんね。

【助産師監修】授乳中に風邪をひいても、母乳は中断しなくていいの?
https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/7157授乳中のママが風邪をひいたとき、母乳から赤ちゃんに風邪がうつるのではないかと心配になるママもいるようです。でも、風邪は母乳からはうつらないので、母乳を中断する必要はありません。今回は、授乳中に風邪をひいてしまった時の正しい対処法を解説します。
「1歳3ヶ月で断乳。夜、続けて寝るように」

そして、1歳3ヶ月で断乳!
数日で執着なくなり、夜ぶっ続けて寝るようになり、色んな意味で解放感ありました。
(30代、長女6歳・長男2歳)
「授乳をやめたら、夜よく寝るようになった」という方は多いようですね。睡眠不足続きだったママにはありがたい話です。
「生後1ヶ月で職場復帰。どんどん出なくなっていった」

(20代、娘10歳・4歳・1歳、息子3歳、自営業)
職場復帰は心身共にママの負担も大きく、その影響が母乳に出ることも。
「母親の方が卒乳できなかった」

1日1回の授乳がしばらく続き、朝のおっぱいの張りもどんどんなくなり、急いでいるときは授乳しない日もあったりしたら、母乳がほとんど出なくなりました。そしてそのまま卒乳。当時、息子1歳4ヶ月。
息子以上に私の喪失感がすごくて、仕事復帰したことを悔やんだこともあります。母の気持ちの方が卒乳できなかったということですかね。
(30代、長男3歳、公務員)
授乳中は子供にとってもママにとっても癒しの時間。それが意図せず無くなるとなると、さみしくなってしまいますよね。
「母の言葉で1歳の誕生日に断乳」

息子は泣くわ寝ないわ、私のおっぱいは痛くて熱が出るわ、その後1週間ほど地獄のような日々を過ごした。
今、下の子を妊娠中だけど、今回は母の言葉を完全スルーしようと思う。
(20代、長男3歳、自営業)
おばあちゃん世代からのご意見は、貴重なものもある半面、現代の育児法にはそぐわないものも。いいものは取り入れつつ、聞き流しスキルは重要ですね。
「1歳前の断乳、今でも残る罪悪感」

手術の時期は何ヶ月か後にずらすことも可能でしたが、健康第一、おっぱいより私が元気でいることの方が大事と思い、医師と相談して入院を決めました。
それまでは、おいしそうにおっぱいを飲む息子を見て「いつまでおっぱいを飲むかな? 卒乳するときはちょっとさみしくなるかな?」などと考えていました。
予想外の早い時期の断乳に、自分で決めたこととはいえ罪悪感が半端なかったです。
せめて1歳まで授乳したかった、かわいそうなことをしたかなと今でも思います。
(40代、長男9歳、会社員)
育児相談員・助産師の川島先生からママたちへのアドバイス
ママのみんなさん、こんにちは! 育児相談員歴26年の助産師、川島智世です。
今回のテーマである「母乳育児、いつまで続ける?」について皆さんにお話ししたいと思います。
似ているようで異なる「卒乳」と「断乳」
母乳育児を終える時期をさす言葉に「断乳」がありますが、その後「卒乳」という言葉も出てきました。
・断乳とは
断乳とは、突然、急に母乳育児をやめること。
ママは母乳分泌量も多く、張りの強い乳房の状態で母乳育児を急に終えることになるので、乳腺炎になることがあります。また、乳房の張りが強いので、断乳後の乳房のケアに時間を要することもあります。
急にお乳が飲めなくなるわけですから、子供が泣きじゃくり、数日間にわたって泣きじゃくる子をなだめ、おっぱいをあきらめさせるケースも多いでしょう。
・卒乳とは
おっぱい終了日を決め、それに向けて子供が無理なく自然とおっぱいから離れていくように調整していくことを、俗に「卒乳」と呼びます。
ママは、張りの強い乳房の状態から、授乳回数を徐々に減らしながら乳房の張りを弱めていき、母乳の分泌量を減らしていきます。そうすることで乳腺炎になりにくいです。また、すでに分泌量が低下し、お乳の張りがなくなっているので、その後の乳房のケアも無理なくスムーズにできます。
子供には外遊びの楽しさや食事の楽しさを教えて、徐々におっぱいから離れさせていきます。外遊びの楽しさをおぼえた子供は、運動量と食事の量が増し、おっぱい離れが進むため、無理なく母乳育児を終えることができます。
断乳しても罪悪感は持たないで
卒乳が理想とはいえ、ママが母乳育児の頻繁授乳に疲れ切っていたり、病気で強い薬を使う必要があり医者から授乳ストップを告げられたり、乳腺炎を繰り返し治療費の負担・食事の制限など心身のストレスで、どうしても断乳を選択しなくてはならない場合もあるでしょう。
子供が母乳以外の栄養手段(粉ミルクが飲める、離乳食を食べる)があれば、断乳しても大丈夫です。決して罪悪感を感じることはありません。
あくまでも母乳もミルクも栄養手段なのです。ママやパパが子の笑顔を見て心癒されるように、子も同じで、ママやパパの笑顔で心癒されるのです。最高の安心感を得るのです。その笑顔に包まれた栄養方法が最高の栄養だと思うのです。
笑顔で、愛情をもって、与えること・食べさせることが一番大事だと、私は思います。
答えを出すのは自分自身
結論として、母乳育児の期間は「子供が〇歳までにしなければならない」というような決まりはありません。
「1歳になったら、断乳しなければならないと言われた」「2歳までは母乳育児を続けなければならないと聞いた」というママの相談を受けますが、人それぞれ、状況が異なります。だから画一的に答えを出すことは難しいのです。
私は「育児は生き方」だと考えています。
生き方は誰かに決められるものでも一方的に非難されるものでもなく、偏った意見によって捻じ曲げられるものでもありません。思うようにいかないことだってあるけれど、自分で考えて答えを探さなければなりません。
それは母乳の終了時期だって同じ。あなたがどうしたいか、どういう方法が自分らしいかを考え、出した答えは個々で違っていいのです。
自分たち母子に最適な「母乳、いつまで?」の答えを見つけてくださいね。

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(文・構成:マイナビ子育て編集部、監修・解説:川島智世先生)
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、助産師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます