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2022年04月11日 11:47 更新

漢方薬と普通の薬ってどう違うの?<ママのお悩み漢方相談室#1>基礎知識編①

ドラッグストアで見かけると、難しい漢字の名前がついている漢方薬。「自然で体に優しい」「副作用が少なくゆっくり効く」そんなイメージがありますが、そもそも漢方とはどんなものなのでしょうか。今回は、漢方とは何か?という基本的なことを漢方薬剤師の西崎れいな先生(KAMPO MANIA TOKYO)に教えていただきます。

漢方相談室

漢方ってなに?

さっそくですが本日のご相談です。

体にやさしいと聞くので興味があるのですが、漢方ってそもそも何ですか?

「漢方」とは、元々中国から伝わり、日本で発展してきた数千年の歴史を持つ医学のことです。自然科学を基準にした「現代医学(西洋医学)」に対し「漢方医学(東洋医学)」と呼ばれています。

両者の大きな違いは、西洋医学が検査などの診断プロセスを経て病名を特定し、その病名にフォーカスして科学的な治療を行うのに対し、漢方医学の場合は病名よりも病気をもつ「人」の体調全般にフォーカスして治療を行うことです。

不調を治すための治療という意味では、医療のひとつなんですね。

そうです。ただ、西洋医学の場合、症状から疑われる病気を推測し、血液検査やレントゲンなど、必要な検査をして病名を特定しますよね。漢方医学の考えには、「あらゆる不調は心と体のバランスの偏りや巡りの悪さによるもので、これらを整えることで不調を改善する」という基礎概念があります。

漢方医学の治療は、崩れたバランスを戻すこと。古代からある実績と、漢方医学特有の考え方を用いて、「生薬(しょうやく)」と言われる、植物や鉱物などの成分を組み合わせたお薬「漢方薬」を使用します。

「漢方薬」という言葉でみなさんが想像する、乾燥させた植物をすりつぶした粉みたいなイメージは、そこからきていると思います。別に脅かすつもりはありませんが、中にはびっくりするような虫の抜け殻なんていう生薬もありますよ。

生薬

乾燥させた植物……たしかに、そんなイメージがありますね。

お薬の話が出ましたが、「漢方」と「漢方薬」は違うんでしょうか?

実は、厳密にいうと「漢方」と「漢方薬」の指すところも異なります。

「漢方」は古代中国から伝わり日本で独自に発展した治療理論や技術である、漢方理論全般の考え方をいいます。これには、体質改善や心と体を整えるために、薬膳や養生などの行動全般を含めることもあります。

一方で「漢方薬」は、この漢方理論に基づいて使用される医薬品のこと。自然界にもともとある薬効をもつ成分を組み合わせて飲むお薬のことです。原材料が化学物質ではなく自然由来のものなので、いろんな人が持っている「体にやさしい」というイメージは、そこからきているのだと思います。

漢方のお茶

みなさん「葛根湯」という名前は聞いたことがありますよね。風邪のひきはじめに飲む、有名なアレです。この葛根湯も漢方薬のひとつ

あまり実感がないかもしれませんが、実は、西洋医学のイメージが強い医療現場でも、漢方薬は現役で大活躍しています。特に咳、鼻水などの風邪症状がでたときには、実際にお医者さんから処方されたことのある方は多いと思いますね。

それに、市販されている健康ドリンクにも「生薬」が配合されているものは数多くあります。CMなどでも耳にしたことがあるかもしれません。それぐらい、漢方は身近なものなのです。

西洋薬と漢方薬の違いとは?

漢方は意外と身近にあるんですね!

西洋医学とは違う考え方で作られたということですが、漢方薬にはどんな特徴があるんですか?

漢方薬の特徴を説明するのに、西洋医学でいうお薬(以下西洋薬)と、漢方医学でいうお薬(以下漢方薬)の違いを見てみましょう。

西洋薬は科学的に合成されたものをいい、その多くは1つの成分で構成されています。痛みを和らげる、熱を下げる、血圧などの数値を下げる、菌を殺すなど、症状に対してピンポイントに効くお薬です。ものにもよりますが、即効性のある薬が多いです。

西洋薬

一方で、漢方薬は複数の生薬を組み合わせて作られており、薬効のある成分が複数入っています。このため、複数の不調に対して同時に効果を期待できるという特徴をもっています。漢方薬は時間をかけてゆっくり効くイメージがあるようですが、そうとも限りません。

例えば、先ほど例に出した葛根湯ですが、寒気がするような風邪のひきはじめに服用するとかなり早い段階で効果を感じることができます。逆に冷え症のような体質を改善するための漢方は、継続して服用することでゆっくり効いてきます。

もちろん効果には個人差もありますし、症状の進行度合いや状態によっても使うお薬は変わってきます。

漢方医学には「証(しょう)」といって患者さんの体質と状態を的確に診断するための基準があります。誤った「証」によって漢方薬を服用すると、期待したほどの効果が得られないだけでなく、副作用があらわれることもあるので、自分自身の「証」を知ることはとても大事です。

西洋薬と漢方薬の比較を表にすると、こんな感じです。

漢方薬と西洋薬の違い

なるほど!

得意分野が違う感じでしょうか?

その通りです。検査などで病名や原因がはっきりしている場合は西洋薬でピンポイントで治療した方がいいことが多く、なんとなく調子が悪く原因がわからない不調については漢方の方が得意だと言われています。

冷え性や寝つきが悪い、生理前でイライラしたりだるかったりなど、病院に行くほどではないような、「なんとなく不調」には、自分の体質や状態に最適な漢方薬を服用することをおすすめしています。

西洋薬には西洋薬の、漢方薬には漢方薬の、それぞれの良さがあるんですね。

漢方とサプリメントの違いとは?

日常生活のなかでうまく活用したいですが、漢方はサプリメントとはどう違うのでしょうか?

いい質問ですね。漢方薬は心と体の不調を改善するための医薬品、サプリメントはあくまでも食品です。

サプリメントは補助的に利用することで、ふだんの食事であまり取れていない栄養を補う目的で利用します。パッケージなどに効果が謳われているようにみえるものもあるので、漢方薬と混同されることも多いのですが、不調を改善したり、治す目的で使用したりするのは医薬品である漢方薬ということになります。

実際に製造、販売されるまでのプロセスも、医薬品と食品ではまったく違います。医薬品は薬事承認といって、効き目の確認から工場での製造工程まで何重もの厳しい審査があり、それをクリアしたものだけがようやく市場に出回りますが、サプリメントの場合は衛生面などのハードルはありますが、医薬品ほどの厳格な審査はありません。

漢方をうまく利用するコツは?

漢方薬はあくまでも治療のための「薬」ということですね。

では、ドラッグストアに売っている市販の漢方薬と専門薬局で薬剤師に相談しながら購入する漢方薬に違いはありますか?

漢方薬には特許もなく、ジェネリック(後発品)という概念もありません。

ドラッグストアに別の企業が作ったまったく同じ名前の漢方が売っていたりもしますが、多少の配合の違いはあるにせよ、基本的な生薬のレシピは同じように作られています。専門薬局で販売されるものよりも、市販品のほうが生薬の含有量が少なめに設定されていたりするという違いはあります。

ドラッグストアで売っている漢方薬は法律的には「一般用医薬品」という分類で、みなさんが購入する風邪薬や花粉症の薬と同じように、自分で選んで購入できます。

いくら自然由来のものだからといって、過信は禁物。やはり薬なので、中には飲み合わせに注意が必要なものもあります。慣れないうちは私たちのような薬剤師に相談したうえで、自分の体質と症状に合った漢方薬を購入するのがオススメです。漢方薬は「治療のために服用する薬である」ということを念頭においていただきたいですね。

まとめ

今回から始まった「ママのお悩み漢方相談室〜不調な私の取扱説明書〜」。第1回では西洋薬とは違った特性を持つ漢方薬の基礎知識をお伝えしました。今後、漢方薬の飲み方や副作用、具体的に症状に対してどんな漢方薬があるかなどをまとめてしていきますので、お楽しみに!

(解説:西﨑れいな 先生<KAMPO MANIA>)

※画像はイメージです

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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