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2021年01月10日 15:10 更新

【医師監修】子供のヘルペスウイルス感染症って、どんな病気?

ヘルペスは口内炎など、体のさまざまな箇所に水ぶくれのできる病気です。実は水疱瘡もヘルペスの仲間ということは知っていましたか? ここでは、子供や赤ちゃんがかかるヘルペスウイルス感染症について紹介します。

ヘルペスウイルス感染症って、どんな病気?

 子供もヘルペスに感染して疱疹ができて不快で泣く赤ちゃん
Lazy dummy

ヘルペスって、何?どうして起こるの?

ヘルペスとは日本語では「疱疹(ほうしん)」と訳され、小さな水ぶくれが集まって現れる急性の皮膚病のことを「ヘルペス」と呼んでいます。

ヘルペスの原因は、ヘルペスウイルス科に属するウイルスです。そのうち、ヒトの病気の原因となるのは、単純ヘルペスウイルス1型、2型、水痘帯状疱疹ウイルス、ヒトヘルペスウイルス6A、6B、7、などです。

このうち、水痘帯状疱疹ウイルスが引き起こす水疱瘡(水ぼうそう、水痘)に対しては、2014年10月から予防接種が定期接種になりました。1歳の誕生日から3歳の誕生日の前日までの子供を対象として、2回の接種を行います。これによって今後、子供の水疱瘡は減っていくと予想されています。

ここでは水痘帯状疱疹ウイルス以外によるヘルペスを中心に解説していきます。

ヘルペスにはどうやって感染する?

水痘帯状疱疹ウイルス以外のヘルペスウイルスは、唾液や尿などを介した皮膚や粘膜の接触により感染します。このため、しばしば家族内や密接な関係のある人同士で感染します。精液を介した感染もあります。

ヘルペスウイルスに感染していても症状が出ない場合もありますが(不顕性感染)、この状態でも、人にうつります。

なお、感染しているお母さんからは、授乳時に母乳を介して赤ちゃんに感染することがあります。また、出産時に産道で感染したり、お腹のなかにいるときに胎内感染する可能性もあります。

ヘルペスウイルス感染症の症状

発症するとどんなことが起こる?

先に述べたように、ヘルペスウイルスにはいくつかのタイプがあり、症状はそれぞれ異なります。以下に、子供に現れることの多いヘルペスウイルス感染症をまとめます。

・歯肉口内炎

単純ヘルペスウイルス1型の初感染によって起こる、乳幼児に多い病気です。家族などからの直接的な接触により感染することが多いと考えられています。発熱とともに歯肉(歯ぐき)やほおの内側、舌に小さな水ぶくれが現れます。

・口唇ヘルペス

主に単純ヘルペスウイルス1型によって起きる、くちびるの発疹です。直接的な接触による感染や唾液を介した感染により発症することが多く、軽いかゆみやピリピリする感じで始まり、1日から数日たつと赤く腫れ、小さな水ぶくれができます。発熱を伴うこともあります。

・角膜炎

単純ヘルペスウイルス1型によって目の角膜(黒目あたりにある透明な粘膜)に潰瘍ができ、痛みを感じたり、まぶしい感じがします。

・突発性発疹

ヒトヘルペスウイルス6B、7に初めて感染した時に発症します。多くの人が乳幼児のうちに発症します。知恵がつき始めた子供に起きることが多い病気なので、「知恵熱」と呼ばれることもあります。

39.5℃以上の発熱が3~4日続いた後、解熱とともに発疹が出現し、発疹は数日間で消えていきます[*1]。熱性けいれんを引き起こすこともあり、まれですが、脳炎を起こすこともあります。

・カポジ水痘様発疹

アトピー性皮膚炎の子供に多い病気です。アトピー性皮膚炎などで皮膚のバリア機能が低下したところに単純ヘルペスなどの感染が重なり、全身に水疱やうみの入ったできもの(膿疱)が広がってしまいます。アトピー性皮膚炎の治療で用いるステロイド薬(炎症を抑えますが、免疫を抑制する作用もあります)は、この発疹の状態を悪化させることがあります。

・性器ヘルペス

単純ヘルペスウイルスの感染で起こります。大人に多い病気ですが、ヘルペスウイルスに感染した子供に発症することもあります。痛みやかゆみが現れます。

・ヘルペス脳炎

まれな病気ですが、治療が遅れると命にかかわります。主に単純ヘルペスウイルス1型の感染で起こり、発症時に発熱やけいれんが現れ、意識障害が進行します。

・新生児ヘルペス

生後28日以内の赤ちゃんに起きるヘルペス感染症を「新生児ヘルペス」と呼びます。

出産時に母親の産道を通ることで感染することが多く、多くは生後1週間以内に発症します。産道感染のほかに、胎内で感染したり出産後に感染することもあります。

新生児ヘルペスには、症状が皮膚や口、眼球の表面に現れる「表在型」と、脳炎などを起こし後遺症が残ることがある「中枢神経型」、そして全身に影響が及び命が危ぶまれる「全身型」があります。

ただし、発症の初期はこれらの症状がはっきり現れず、またヘルペスに感染していても無症状なお母さんが多いため、新生児ヘルペスの診断は難しいことがあります。

新生児ヘルペスの3つのタイプのうち、表在型は比較的軽症で、中枢神経型、全身型の順に重症となり、治療が遅れると命にかかわります。なお、胎内感染していた場合に小頭症や脈絡網膜炎(眼の奥、眼底の病気)などが生じるとの報告もありますが、極めてまれです。

新生児ヘルペスの国内での発症頻度は、1万4,000〜2万人の赤ちゃんに1人と推定されています[*2]。

・その他

思春期以降にヒトヘルペスウイルス4(エプスタイン・バーウイルス)に感染すると、伝染性単核球症(キス病)や血球貪食症候群という病気を起こしたり、のど(上咽頭)のがんの原因になります。

ヘルペスの潜伏期間はどのくらい?

単純ヘルペスウイルスでは感染してから症状が現れるまで、2日~2週間ほど間があります。ヒトヘルペスウイルス6B、7による突発性発疹の潜伏期間は10日前後です[*3]。

なお、ここで言う潜伏期間とは、初感染後に初めて発症するまでの期間のことです。ヘルペスウイルス感染症は発症後に一度治っても、ウイルスが体内から完全にいなくなることはなく神経に潜んでいて、あるとき急に活性化して症状が出ることがあります。

発熱やストレス、疲労、紫外線の刺激、妊娠などがきっかけになります。再活性化した場合に症状が現れるのは、初回に症状が現れた箇所と同じとは限りません。

子供がヘルペスにかかったら。治療法は? どのくらいで落ち着く?

抗ウイルス薬でヘルペス退治!

単純ヘルペスウイルスに対しては抗ウイルス薬があります。

抗ウイルス薬には、内服薬(飲み薬)、外用薬(塗り薬)、点滴薬があり、症状の現れている部位や症状の強さなどによって使い分けたり併用します。ヘルペスによる脳炎が疑われる場合には、点滴治療など入院管理が行われます。

突発性発疹を起こすヒトヘルペスウイルス6B、7に対しては抗ウイルス薬がないため「対症療法」が行われます。対症療法とは、現れた症状ごとに治療を進めることで、例えば発熱に対して解熱薬などを使うといった方法です。

新生児ヘルペスに対しては、先に挙げた3つのタイプ(表在型、中枢神経型、全身型)のいずれにおいても、早期に集中的な治療を開始し、症状が現れていなくても抗ウイルス薬をしばらく投与します。

なお、出産時にお母さんが性器ヘルペスを発症している場合は、赤ちゃんへの産道感染を防ぐために帝王切開を行います。

登園・登校はいつから再開していいの?

単純ヘルペスウイルス感染症で、症状が口唇ヘルペスのみで全身の状態が良いのであればマスクなどをして登園・登校できます。

ただ、口内炎のために飲食が難しいなど、強い症状がある場合や、全身に水疱がある場合は登園・登校はせず、治療に専念しましょう。

突発性発疹では発疹が現れる時期にはウイルスを出して周囲にうつす時期は終わっているため、熱が下がって体調的に問題がなければ登園・登校して支障ありません。

ヘルペスウイルス感染症を予防するために

ヘルペスになるのを防ぐワクチンはある?

水疱瘡に対しては、1歳から3歳未満の子供に対しての予防接種が定期接種化されていますが、それ以外のヘルペスウイルスに対するワクチンはありません。

日常生活でできる予防法

水痘帯状疱疹ウイルス以外のヘルペスウイルスは、主に皮膚や粘膜が接触することにより感染します。接触感染では、皮膚や粘膜が直接触れ合うことのほかに、ウイルスが手などに付着したまま口や鼻に触れることでも感染します。そのため、手洗いを励行し、マスクを着けるようにしましょう。

まとめ

ヘルペスウイルスにはいくつかのタイプがあり、それぞれ経過や治療法が異なります。口内炎から皮膚のできもの、脳炎など幅広い症状が出る感染症です。水疱の痛みが強く、その点に注目しがちですが、まれではあるものの脳炎など、治療の緊急性が高い病気も起こり得ることに注意が必要な病気です。

(文:久保秀実、監修:武井智昭先生)

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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