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2022年02月15日 11:03 更新

単身赴任でもリモート駆使して育児をやりたい。挑戦するパパの働き方 #男性育休取ったらどうなった?

2022年4月から育児・介護休業法の改正により、働く男性も育児休業を取りやすくなることが期待されています。それに先立ち、すでに育休を取得して子育てに奮闘しているパパの声を聞いていくインタビュー連載・「男性育休取ったらどうなった?」をお送りします。

「単身赴任でも子育てをあきらめない」飯嶋家

今回のパパ
飯嶋弘昌さん/34歳/テレビ局ディレクター

●ご家族
妻:飯嶋美紀さん/34歳/専業主婦
長女:穂花ちゃん/5歳/幼稚園年中
長男:大翔くん/0歳9か月

(※お名前はすべて仮名です)

●飯嶋家の育休
第二子誕生(2020年4月)
夫:出産前後に有休と産休(※妻が出産する際に夫が休暇を得られる社内制度で、平日5日まで取得可能)を組み合わせて10日ほど休み、育休は5月に二週間ほど取得。6月から本格的に職場復帰。

飯嶋弘昌さんのタイムスケジュール

会社は「男性もどんどん育休取って」という風潮になっている

ーー飯嶋さんは、奥様の第二子妊娠が発覚すると同時に、東京から地方へ行くことになり単身赴任をスタートされたんですね。

飯嶋さん そうなんです。妻の実家が東京の自宅から比較的近いため、誰も知り合いのいない土地で長女を抱えて出産・育児をするのは大変すぎるだろうということで、単身赴任になりました。

ーー第一子のときは育休を取らなかったそうですが、今回、第二子の出産に合わせて取得したのはどうしてですか。

飯嶋さん 帝王切開で産むことが決まっていたので、産後はいっそう安静にしたほうがいいとわかっていましたし、妻の入院中に長女の世話をする必要があったので、第二子が生まれて軌道にのるまでは自分が頑張るぞ、という気持ちでした。なにしろ単身赴任ですし、正式に「休みます」としないと全然会えないんじゃないかとも……。

ーー育休を申請したとき、職場の反応はどうでしたか。

飯嶋さん 会社として男性の育休取得を推進しているため、快く送り出してもらえました。「もっと長く取らなくていいの?」と言われたくらいです。実際、3ヶ月とか半年とか取得している同僚もいますし。ただ、自分の場合は制作している番組のスケジュールの関係で、長期に休めなかったのですが、今振り返れば調整してもっとがっつり育休すればよかったなとも思いますね。

「家のことは全部自分がやる」つもりで育休に突入

ーー産休~育休中の生活はどうでしたか?

飯嶋さん 妻の入院中は、長女の三食の用意や家事などをして、退院後も家事と子どもの習い事の送迎など、いろいろとやりました。あの、長女の髪が結構長いんですが、僕は最初、結べなかったんですよ。でも妻が入院する前まで特訓してもらって、ふたつ結びができるようになって。それは結構、達成感があったんですね。櫛の細長い柄の部分はこうやって髪を左右に分けるのに使うのかあ、と初めて知りました(笑)。

ーー子どもの髪の毛は細くて絡まりやすいですし、均等なふたつ結びって簡単そうに見えて難しいんですよね。達成感、わかります。第一子だけのときは、あまり育児や家事にコミットできませんでしたか?

飯嶋さん やっていたつもりだったのですが、今思うと、妻の実家が近いこともあって、甘えてしまっている側面はあったと思います。比較すると今とは全然違いますね。

ーー事前に奥様のコメントをいただいたのですが、もう全然違うと。「1人目の時は夫が出来ていないことばかり気がついてしまい、私もイライラすることが多かった。でも2人目は夫が積極的に育児に参加しているので、やり方が違ったり、やれていないことがあってもイライラせず、これだけやってくれているのだから良いと思うことができた」そうです。2人目の時の方が、子どもが増えたぶん大変なはずですが、夫婦間の喧嘩や言い争いは減ったと伺いました。

飯嶋さん ああ、良かったです(笑)。自分で思うのは、心構えが変わったというか……以前は、子どものちょっとしたケアでもいちいち妻に「どうすればいい」と聞いていたんですね。でも今は基本的なケアは全部やれるので、自分で判断できるようになりました。今回、産休・育休に入るにあたって、「自分が全部やるぞ」って気合を入れて突入してるからですかね。第一子のときは「仕事もあるし……」という状態でしたが、その期間は育児と家族を支えることに専念すると決めて取り組めたので、うん、自分の意識が違ったんだと思います。

ーー気合が違う! それでも新生児のときは、眠れなくて大変ではなかったですか。

飯嶋さん 新生児は昼夜問わず授乳やおむつ替えがあるので、それはそうですね。でも第一子のときは「あなたは全然起きてくれなかった」と妻に怒られたのですが、今回は赤ちゃんが「ふぇっ」と泣き始めるタイミングで自分のほうが先に気づいて対応したりもできました。妻には少しでも寝ていてほしかったので。

ーーそれはすごく喜ばれたのでは。

飯嶋さん それが一番感謝されたかもしれないです(笑)。僕はショートスリーパーというか、睡眠時間が短くても大丈夫な方なので、夜中の対応はわりとできました。夜中の授乳では、レンタルしたウォーターサーバーがすっごく便利でしたね。いちいちお湯を沸かさなくてもいいので、あれは必須だと思います。
妻の入院中に練習した二つ結びは、ここまで上達!

単身赴任先から妻のピンチに急行した日

ーー育休を取って夫婦の関係性に変化はありましたか?

飯嶋さん 夫婦で助け合わないと乗り切れない場面が多いので、相手のちょっとした行動に対しても感謝の気持ちがわくようになって、「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えることがお互い増えたように思います。出産直後の妻をケアできたのもそうですが、子どもの生まれて間もない時期を逃さず見ることが出来たこと、家族と向き合うだけの時間を過ごせたことが本当に良かったです。

ーー奥様からは育休を経て「子どもたちのことを夫がよく知ってくれている」と思えるようになったことが大きいと伺っています。「以前よりも夫を頼りにすることができる」と。

飯嶋さん とはいえ、単身赴任ですからね……。大変なときに一緒にいてあげられないのは、やはり心苦しくはあるんです。コロナ禍ですが、感染者数の少ない時期には積極的に東京の家に戻って在宅ワークするようにしています。それでもやっぱり、自分の仕事の繁忙期にはなかなか帰ることができなくて申し訳なかったです。

ーーこれまでで一番のピンチだったと思うのはいつですか?

飯嶋さん 去年の秋、生後7ヶ月頃でしょうか。繁忙期でしばらく帰省できなくなっていたタイミングで、子どもの夜泣きがひどくなり、妻は慢性的な睡眠不足に陥って疲労困憊でした。夜中に、パニック状態の妻から電話がかかってきて「もう全然寝てくれないんだけどどうしたらいい」と。そう言われてもどうすることもできなくて、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

ーーどう乗り越えられたのですか?

飯嶋さん これは今、離れていたらマズイと思って。普通に仕事していたら絶対に帰れないのはわかっていたので、徹夜で仕事を無理やり終わらせて、東京の家に急行しました。

ーーそれはすごい……! 奥様ほっとしたでしょうね。

飯嶋さん はい、でも少しの期間しかいられなくて。日曜の夜にまた赴任先へ戻る予定だったんですけど、「じゃあ」というタイミングで子どもがギャーって泣き始めたんですよ。
「いいよいいよ、夕方いつもこんなふうに泣くから。赴任先に戻りな」と妻は言うんですが、「いやこんな状況で帰れないよ」と思って、翌朝の始発で戻ることにしたんです。そしたら、妻がポロポロ泣き出しちゃって。
「また今夜から1人でやらなきゃいけないんだって心細かったから、そんなふうに言ってもらえてうれしい」と……そのとき、「こんなに追い詰められていたんだな」とようやく気付きました。
父の日と母の日に、長女が描いてくれた絵

リモートを駆使して仕事と育児両方やる

ーーそれ以降、働き方にも変化が?

飯嶋さん はい。赴任先に戻って、上司や同僚に「仕事のやり方を少し変えさせてもらえないでしょうか」と相談しました。
僕は番組ディレクターなのですが、この番組では複数のチームが動いていて、1チームが3ヶ月に1本を制作するような体制なんですね。なので、今までよりも早め早めに動けるスケジュールを組めれば、自分だけじゃなくチームのみんなも余裕を持って仕事を進められるのではないかと思いました。それを相談すると「よし、じゃあそうしてみよう」と動いてくださって、今は演出の方法も含めて試行錯誤しています。

ーーテレビ制作のお仕事って、毎日スタジオなどに通い詰めなければならないイメージなのですが、そうでもないのですか?

飯嶋さん 時期によりますね。撮影や編集は、やはり会社でやる必要がありますが、資料を集めたり取材したりという仕込みや台本を書く仕事はリモートでも全然問題なくできるので、僕はその時期は東京の家で在宅勤務にしています。

ーー番組作りって大勢で行うものなので、リモートだと不都合もあったりしませんか?

飯嶋さん 基本的にはオンラインのミーティングなどで済むものも多いので大丈夫なのですが、技術さん・美術さんなど別の部署のスタッフとのやりとりは、イメージの具体的な共有のために対面で行うようにしています。なので、平均すると一ヶ月のうち三分の二ほどは会社へ行って働いて(単身赴任)、三分の一は東京で在宅勤務です。

ーー柔軟な働き方ができるようになっているんですね。育休を取って終わりじゃなく、その後も育児をしながら働いている男性社員の方は結構多いですか。

飯嶋さん そうですね。会社としても育児中の社員を応援してくれていて、僕も変則的な働き方をしていますが「そういう働き方を確立してほしい」と言っていただいています。

ーーいい会社ですね。奥様は出産を機に退職されたそうですが、いずれは復職される予定なんですか?

飯嶋さん 子育てを主軸にしながらも、将来的にまた働きたいそうなのですが、「正社員はきっと無理だからパートかな」とも言っているんですよね。出産前は正社員でバリバリ働いていましたが、ブランクがあるともうパートしか雇用がないんじゃないかと言うんです。
一方で僕は、育児と仕事の両立で非常に苦労している同僚も何人も見てきました。なのでもう少し柔軟に、育児に比重を置きたい時期は一時的に離脱しても戻れるような社会であって欲しいなとは思うんです。キャリアリターン制度とか、退職後しばらくしてからも再就職する機会を増やすとか、企業や社会側が育児中の人材にもっとアプローチしてもいいんじゃないかなと思います。
ハイハイを始めて目が離せなくなった息子。どうしても構ってあげられない時の最終手段として「ジャンパルー」を重宝しているそう

(取材・文:マイナビ子育て編集部、イラスト:すみれ)

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