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2022年03月15日 16:36 更新

海苔を食べ過ぎたらどうなる?メリットと注意点、適量の目安【管理栄養士監修】

日本ではおなじみの海苔。風味が高く料理をおいしくしてくれますよね。海苔は栄養をたっぷり含んでいる食品であり、体にうれしい効果があります。ただしその反面、食べ過ぎによるリスクが伴う栄養素も。日頃から摂取することの多い海苔のいいところと、食べ過ぎにより懸念される体への影響についてお伝えします。

海苔にはどんな効果があるの?

海苔はたんぱく質、脂質、食物繊維、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンCといったビタミン類、カリウム、カルシウムといったミネラルなど、健康維持に必要な栄養素がたくさんつまっている食材です。まずは海苔の栄養のうれしい効果について簡単にお伝えします。

海苔のもつ栄養のポイントとして
・食物繊維
・ビタミン類
・EPA

の3つが挙げられます。

1.食物繊維

食物繊維は野菜に多いイメージがありますが海苔にも豊富です。焼き海苔1枚(3g)にはレタス1/3個、きゅうり1本と同じ量の食物繊維が含まれます。また、海苔に多いのは水溶性食物繊維ですが、この水溶性食物繊維には便を軟らかくしたり、血糖値の上昇抑制や血中コレステロールの低下に働きかける作用があります。

■ベジファーストとしても使える?
ベジファーストとは食事のときに野菜から食べることです。野菜などの食物繊維を多く含む食品から食べることで血糖値の急上昇を抑えようというもの。野菜と同じく食物繊維を含む海苔は同様の効果が期待できます。

ただし、海苔は野菜と違って一度にたくさん食べられる食品ではないため、野菜の代わりにするのは現実的ではないでしょう。佃煮や味付け海苔は食べやすいかもしれませんが、塩分の摂り過ぎになる可能性があります。食物繊維の不足分を海苔で「補う」程度に考えておくのがよいでしょう。

海苔 ご飯

2.ビタミン類

美肌づくりに関与するビタミンC、赤血球の生産を助けている葉酸、植物性食品にはほとんど含まれていないビタミンB12も含まれています。ビタミンB12は、葉酸とともに造血作用に関与して貧血予防に働くほか、神経機能の維持に必要な栄養素です。

3.n⁻3系脂肪酸(EPA)

青魚などに含まれる脂質として有名なEPAですが、海苔にも豊富に含まれます。EPAは血液をさらさらにして動脈硬化などの生活習慣病を予防する効果が期待できます。

食べ過ぎるとどうなるの?

海苔はカロリーも焼き海苔1枚(3g)で9kcalなので、気にせずにたくさん食べたくなるかもしれませんが、あまり海苔を食べ過ぎるのはよくありません。

ヨウ素の過剰摂取のリスク

海苔に含まれる栄養素のうち、注意したいものとしてヨウ素があります。

ヨウ素は1日に130μg(18歳以上)摂ることが推奨されていますが、日本人はヨウ素を多く含んでいる海苔や昆布などの海藻類を日常的に摂取しているため、ヨウ素不足になる心配は少ないとされます。

一方で注意したいのがヨウ素の摂り過ぎです。ヨウ素を過剰摂取すると甲状腺ホルモンの合成が妨げられるなどの影響があります。

通常、海苔だけを摂取してヨウ素の過剰摂取になるとは考えにくいですが、他の海藻類も多く摂っていないかなども含めて意識してみましょう。

■ヨウ素って何?■
ヨウ素はミネラルの一種です。食品から吸収されたほとんどのヨウ素は甲状腺ホルモンの合成に使われ、残ったヨウ素の大半が尿中に排出されます。甲状腺ホルモンはたんぱく質の合成や神経細胞の発達にかかわったり、エネルギー代謝を高める、発育を促進するなど大切な役割を担っています。

食物繊維の摂り過ぎにも注意

日本人の食物繊維の摂取量は目標(※)に対して不足している状況なので[*1]、基本的には積極的に摂っていきたい栄養素です。また、通常の食生活では摂り過ぎることはほとんどありません。しかし、食物繊維が体によいからといって摂り過ぎると下痢を起こすことがあります。また、カルシウムや鉄などの吸収を妨げてミネラル不足になることも考えられます[*2]。食品からだけでなくサプリメントからも摂取しているような場合は特に気を付けましょう。

(※)食物繊維の目標量:成人男性21g以上、成人女性18g以上

海苔の「適量」はどのくらい?

食べ過ぎに注意が必要なのはわかりましたが、海苔はどれくらいまで食べてもいいのでしょうか? ヨウ素の摂取の観点から考えていきましょう。

板海苔

ヨウ素の過剰摂取の目安

過剰摂取のリスクのあるヨウ素には耐容上限量(注)が設けられており、成人を含む15歳以上だと3,000μg(3mg)です。

この耐容上限量は、日本人が平均して1日1~3mgのヨウ素を摂取していても甲状腺機能の低下などの異常を起こすことがほとんどないことから設定されています。したがって、一般的な海藻類の食べ方でヨウ素を摂り過ぎてしまう心配は少ないですが、ただし昆布だしには多く含まれています。

たとえば海苔をたくさん食べる習慣がある場合には、昆布だしではなくかつおだしにしてみるなど配慮するといいかもしれませんね。

(注)耐容上限量とは、この量を超えて習慣的に摂取した場合には、健康に悪影響をもたらすリスクがゼロではなくなることを表します。耐容上限量を超えたらすぐに健康を害するということではありませんが、習慣的に摂取する食品では、耐容上限量を超えないように注意が必要です。

ヨウ素の上限量を海苔に置き換えると?

海苔に含まれているヨウ素の量は、焼き海苔1枚(3g)が63μg、青のり2gが54μgです。したがって、15歳以上の人が海苔だけでヨウ素の耐容上限量を満たすには約50枚を食べることになります。実際にはそんなに大量には食べられませんよね。そのため、海苔の食べ過ぎだけではヨウ素の過剰摂取にはなりにくいでしょう。

ただし、ヨウ素は海苔以外の海藻のほか、昆布だし、イワシ、サバ、カツオ、ブリ、寒天などにも含まれています。日常の食事はいろいろな食品の組み合わせなので、海苔を食べる量もほかの食品との兼ね合いで考える必要があります。

海苔の適量の目安|1日2枚程度

海苔をこれだけ食べていいという目安は明確にはありませんが、他の食品からヨウ素を摂取することや1回に食べることができる程度の量を考慮し、1日に2枚程度を目安にするとよいでしょう。たとえば、焼き海苔1枚を使った太巻きにのワカメの味噌汁を食べても耐容上限量内に収まります。

ヨウ素は過剰摂取のリスクがありますが、一方で必要な栄養素でもあります。摂り過ぎのリスクを気にして海藻類を食べないとヨウ素不足につながるので、目安を参考にうまく摂取できるといいですね。

妊娠中・授乳中、子どもはどう海苔を食べればいい?

食事の内容が気になることの多い妊婦中の場合は、海苔の食べ方に特別な注意は必要なのでしょうか? また、子どもの場合はどうなのでしょうか?

妊娠中・授乳中のヨウ素の摂り過ぎ

胎児や新生児はヨウ素の感受性が高いと言われているので、妊娠中や授乳中も過剰摂取に注意しなければなりません。妊婦・授乳婦の耐容上限量は1日2,000μgとなっています。摂り過ぎにならない範囲で海苔も上手に摂取しましょう。妊娠していないときと同様、焼き海苔であれば1日2枚程度を目安にしておくとよいですね。

ヨウ素不足にも気をつけて
ヨウ素をもとに合成される甲状腺ホルモンは、胎児の脳や骨格などの発達や成長に関与しています。妊娠中のヨウ素欠乏によって流産や死産、胎児の先天異常、胎児甲状腺機能低下、子どもの注意欠如や多動症などのリスクが増えるとされます[*3]。海藻類を食べる日本人は不足する心配はありませんが、一切食べないというようなことはやめましょう。

妊娠中に必要な葉酸が摂れる

ざるそば 海苔

海苔には妊娠中の人にうれしい葉酸も含まれます。葉酸は胎児に「神経管閉鎖障害」と呼ばれる異常が起こるリスクを減らすため、妊娠前からしっかり摂りたい栄養素です。海苔は1回に食べられる量が多くないので、焼き海苔1枚(3g)で摂れる葉酸は57μgとそれほど多くありませんが、補う役割として活用するとよいのではないでしょうか。

なお、妊娠中の海苔の食べ方についてはこちらの記事でより詳しく解説しています。
▶妊婦は海苔を食べても大丈夫?気になるヨウ素や食べていい量

子どもは大人よりも少ない量で

子どもの場合も大人同様、甲状腺機能への影響が懸念されるため、食べ過ぎには注意しましょう。体が小さい子どもは大人よりもヨウ素の耐容上限量が低く設定されています。

1~2歳……300μg
3~5歳……400μg
6~7歳……550μg
8~9歳……700μg
10~11歳…900μg
12~14歳…2,000μg

また、消化機能が未熟な子どもは食物繊維による胃腸への負担もかかりやすくなります。年齢によりますが、大人よりも少ない量にしましょう。

まとめ

おにぎりや太巻き、佃煮など日本の食文化に欠かせない海苔。不足しがちなミネラルやビタミンなど多くの栄養素を含んでいるので、健康維持に一役買ってくれそうですね。海苔に含まれるヨウ素は、海藻類を多く食べる日本人の食生活では不足することはほとんどありませんが、摂り過ぎても不足しても疾病のリスクがあります。1日2枚程度を目安に摂るといいですね。

(文:二橋佳子 先生/監修:川口由美子 先生)

※画像はイメージです

「カロリー」という表記について
本来は「エネルギー」と呼びますが、本記事では一般的になじみのある「カロリー」と表記しています。

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、管理栄養士の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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