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2022年03月08日 17:15 更新

卵は1日に何個まで?食べ過ぎにならない目安と卵を食べるメリット【管理栄養士監修】

さまざまな料理に使えてお財布にも優しい卵は食卓に欠かせない存在です。その適量については「コレステロールが多いため1日1個まで」と言われてきた一方、「1日1個以上食べても問題ない」という話もあったりして、結局、1日に何個まで食べていいのか迷いますよね。コレステロールとの関係や卵の養素の健康効果についてお伝えします。

卵の食べ過ぎは健康によくない?

卵1個の中には約200mgという多くのコレステロールが含まれます。そのため卵を食べるとコレステロールをとり過ぎてしまうのでは、と思う人が多いのではないでしょうか。

卵を食べるとコレステロールが増える?

確かにコレステロールは、血中にある量が過剰になったり不足したりすると、動脈硬化などの原因となり心筋梗塞、脳梗塞といった病気のリスクを高めるため注意が必要です。

しかしこの問題でまず押さえておきたいのが、コレステロールを含む食品を多くとるだけで血中のコレステロール値が高くなるわけではないということ。コレステロールには食品から摂取するもの(2~3割)と体内で合成されるもの(7~8割)があり、食品からの摂取が多い場合には合成を抑制するなど、体にはコレステロールの全体量を調整する働きがあるためです[*1]。

したがって、卵を食べたらその分、血中のコレステロールが増えてしまうというわけではありません。

Lazy dummy

血中のコレステロール値が高くなる要因としては、食品のコレステロールよりも飽和脂肪酸のとり過ぎによる影響の方が大きいとされます。飽和脂肪酸は牛肉や豚肉の脂、バターなどの動物性脂肪に多く含まれています。

卵の食べ過ぎは病気のリスクを高める?

ケースに入った卵

では、卵は食べ過ぎても健康に悪影響はないの? と気になりますよね。そうも言えないのがこの問題の難しいところです。

実は卵の摂取量と血管系の病気などの発症リスクについてはさまざまな議論があり、まだ明確な答えが出ていません。リスクの可能性を示すものもあり、卵を1週間に7個以上食べると心不全のリスクが上がるという研究結果[*2,3]や、女性が1日あたり2個以上の卵を食べた場合、総死亡率やがん死亡率が上がったという報告があります[*4]。

そのため、たくさん卵を食べても健康にはまったく影響がないと考えるのはやめた方が安心です。特に、脂質異常症、なかでも高LDL-コレステロール血症と診断されている場合には、症状の悪化を防ぐためにコレステロールを多く含む商品を食べ過ぎないようにしましょう。

食べ過ぎにならない卵の目安量

卵で即コレステロール値が高くなるわけではないにせよ、食べ過ぎには気を付けたいことを確認しました。では、具体的にはどのくらいが適量なのでしょうか?

1日1~2個がおすすめ

健康な人であれば毎日1個食べても血中のコレステロール値に影響はなく、かえって栄養状態が良くなるとの報告があります[*5]。コレステロールの吸収は人によって異なるので食べ過ぎに注意し、1日1~2個程度を目安にするのがおすすめです。

なお、脂質異常症になっている人は重症化予防のためにコレステロールの摂取量を1日200mg未満にすることが望ましいとされているので[*6]、1日1個にとどめておくのがよいでしょう。

卵に含まれる栄養素のメリット

卵には体に必要な栄養素が豊富に含まれています。食べ過ぎに注意しながら適量の範囲で摂取していきたい食品です。

良質なタンパク質がとれる

卵料理 炒め物
卵の主要成分であるタンパク質は筋肉や皮膚、毛髪などをつくり、ホルモンなどの成分となる重要な栄養素で、三大栄養素の1つに数えられています。 卵はこのタンパク質を豊富に含むだけでなく、その「質」のよさもポイントです。アミノ酸スコアが100と高く「良質なタンパク質」の1つとされています。

■アミノ酸スコアとは■

アミノ酸スコアとはタンパク質の質を表す指標です。リジンやバリンなどの9種類の必須アミノ酸がバランスよく含まれているかどうかを表しており、バランスのよいものは「100」となります。

アミノ酸スコアが100である代表的な食材は、卵をはじめとして、牛乳、牛肉、豚肉、鶏肉や、あじ、鮭、マグロ、さば、大豆などがあります。ちなみに主食となる精白米は93、キャベツは95です[*7]。アミノ酸スコアの低い食品でも足りない必須アミノ酸を含む食品を組み合わせると、アミノ酸スコアが上がります。

多様な栄養素がとれる

卵にはタンパク質だけでなく、ビタミンA、D、葉酸などのビタミン類、カルシウム、カリウム、マグネシウム、リン、鉄といったミネラルなど、体の健康維持に大切な栄養素が豊富に含まれています。

たとえばビタミンAは粘膜や皮膚、目の健康に、ビタミンDやカルシウム、マグネシウム、リンは丈夫な骨をつくるために欠かせません。葉酸は卵黄に含まれ、赤血球の生産を助けたり、タンパク質の合成を促進する働きがあります。

また、卵黄にはレシチンという脂質も含まれています。レシチンが不足すると、血管にコレステロールが沈着しやすくなり動脈硬化や糖尿病などにつながってしまうため、大切な栄養成分の1つです[*8]。

なお、卵黄と卵白では卵黄の方が栄養が多いですが、卵白にもタンパク質だけでなくマグネシウムや、血圧調整・むくみ予防に役立つカリウムが含まれています。卵黄と卵白の両方を食べるようにするといいですね。

卵の上手な食べ方

栄養豊富な卵ですが、もちろん卵だけで栄養摂取が完結するわけではありません。お伝えするポイントを押さえるとよりよい食事になります。

卵に足りない栄養|ビタミンCと食物繊維

完全栄養食品と言われている卵ですが、食物繊維とビタミンCは含まれていません。これらの栄養素を補える食品を組み合わせると、バランスのとれた食事になります。たとえば以下の食材と卵を一緒にとるとよいでしょう。

■ピーマン、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリー:ビタミンCを多く含む
■海藻類、きのこ類:食物繊維を多く含む
■じゃがいも、さつまいもなどの芋類、キャベツ、ほうれん草などの野菜、いちご、キウイなどの果物:ビタミンCと食物繊維の両方を含む[*9]

ブロッコリーとゆで卵のサラダ

食べ方のポイント|卵以外のタンパク質もとる

卵はタンパク質の摂取においてとても優秀な食品ですが、卵を食べていればタンパク質の摂取は大丈夫、というわけではありません。食材により構成されているアミノ酸の種類や量が違うので、さまざまな食材を組み合わせて摂取していく必要があります。タンパク質は卵だけではなく肉や魚、大豆・大豆製品にも含まれているので、バランスよく食べるようにしましょう。

そうすることでタンパク質以外の糖質、脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素もバランスよく取ることができ、全体の栄養バランスも自然とよくなるというメリットもあります。

調理方法|生? 加熱?

一般に食べ物は消化しやすいと栄養素の吸収がよくなり、胃腸にかかる負担も減りますが、卵は調理方法によって消化のよさが変化します。消化しにくい順に並べると、生→固ゆで→半熟卵となります。胃腸に負担をかけずに卵を食べたいときは、温泉卵や目玉焼き、茶碗蒸し、かき玉汁などにして食べるのはいかがでしょうか。親子丼にしてもいいですね。

妊娠中は卵の食べ方に注意が必要

妊娠中は食べ物に関していろいろな注意が必要になりますが、卵もその一つ。卵は食べてOKなのですが、いくつか気をつけるべきことがあります。

注意1|生や半生状態による食中毒

妊娠中は食中毒に注意が必要です。卵を生や半生(半熟)で食べるとサルモネラ菌による食中毒になる可能性があります。食中毒のリスクを避けるため、中心部の温度が75℃になってから1分以上しっかりと加熱してから食べるようにしましょう。

わかりにくい場合は固ゆでにすれば安心です。目玉焼きやスクランブルエッグも半熟状ではなく、全体が固まるまできちんと火を通してください。

なお、妊娠中の生卵について詳しくはこちらの記事で解説しています。
関連記事▶妊婦は生卵を避けて!妊娠中の卵と赤ちゃんのアレルギーリスクの関係は?

注意2|ヨウ素のとり過ぎ

ヨウ素はお腹の赤ちゃんの成長を促すために欠かせないミネラルです。しかしながら、妊娠中にたくさんとり過ぎると、赤ちゃんの甲状腺機能を低下させてしまうこともあります。

ヨウ素の耐容上限量(※)1日2000μgに対して、ヨード(ヨウ素)を添加した卵の場合、1個(50g)で約650μgほどのヨウ素をとることになります。ヨウ素は必要なミネラルではありますが、ヨードを添加した卵を3個以上食べると過剰になる可能性があることを知っておきましょう。

(※)耐容上限量とは、この量を超えて習慣的に摂取した場合には、健康に悪影響をもたらすリスクがゼロではなくなることを表します。耐容上限量を超えたらすぐに健康を害するということではありませんが、習慣的に摂取する食品では、耐容上限量を超えないように注意が必要です。

適量は1日1~2個

妊娠中においても卵を何個まで食べていいのかという目安は特にありません。しかし、同じものばかりを食べ続けると栄養バランスが偏ることになりかねないため、非妊娠時と同様に1日1~2個程度と考えておいたほうがよいでしょう。

卵のビタミンAは心配なし

卵にも含まれているビタミンA(レチノール)は、皮膚や粘膜などの上皮組織、視覚や聴覚、臓器の成長にかかわるため、妊婦には必要な栄養素ですが、一方で過剰摂取は胎児の奇形を起こす可能性があります。特に妊娠を希望する方や妊娠初期の方は注意が必要な栄養素です。

卵に関していえば、ビタミンAはそこまで多くないため心配する必要はありません。しかし、うなぎやレバーを食べた後に卵をたくさん食べるなどの食生活を毎日続けるようなことは良くないともいえるでしょう。

食品だけでなく、サプリメントや栄養機能食品によるビタミンAの過剰摂取にも気を付けることも大切です。

なお、妊娠期のビタミンA摂取について、詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
関連記事▶妊婦はビタミンAの過剰摂取に注意! その理由と上手な摂り方

まとめ

卵を食べるとコレステロールが増えると言われてきましたが、体内でコレステロール量は調節されていることなどから必ずしも卵だけのせいではありません。かといってとり過ぎもよくないため、1日1~2個程度にしましょう。タンパク質は肉や魚、豆・豆製品にも含まれているので、卵だけを食べるのではなくバランスよく食べるようにするといいですね。また、卵はいろんな調理法で食卓を彩ることができますが、妊娠中の女性はしっかりと加熱をしてから食べるようにしてください。

(文:二橋佳子 先生/監修:川口由美子 先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]厚生労働省:e-ヘルスネット「コレステロール」
[*2]Justyna Godos,et al., Egg consumption and cardiovascular risk: a dose–response meta-analysis of prospective cohort studies, European Journal of Nutrition volume 60, 1833–1862(2021)
[*3]スポーツ栄養Web:卵は良いのか悪いのか? 前向きコホート研究のメタ解析の結果は...
[*4]Nakamura, Y., Okamura, T., Kita, Y., Okuda, N., Kadota, A., Miura, K., Okayama, A., andUeshima, H., NIPPON DATA90 Research Group (2018). Re-evaluation of the associations of egg intake with serum total cholesterol and cause-specific andtotal mortality in Japanese women. Eur. J. Clin. Nutr., 72, 841‒847.
[*5]菅野道廣:卵と健康:コレステロール問題を中心に,日本食品科学工学会誌66(9)362-367(2019)
[*6]厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2020年版)
[*7]新カラーチャートアミノ酸成分表,264-293
[*8]厚生労働省:e-ヘルスネット「リン脂質」
[*9]文部科学省:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、管理栄養士の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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