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2021年11月27日 17:55 更新

【助産師解説】母乳はいつまで出る?薄くなる?<体験談>卒乳後も止まらない時の対処法

最初は、なかなか出ない人も多い母乳ですが、卒乳が近くなると、今度は「一体いつまで出るの?」と疑問に思うかもしれません。また、卒乳したのになかなか母乳が止まらないという人も。ここでは、母乳はいつまで出るのかなどについて、助産師の坂田先生に解説してもらいます。

母乳はいつまで出るものなの?

授乳中の赤ちゃんとママ
Lazy dummy

産後すぐは母乳がなかなか出なくて苦労する人も多いものですが、卒乳を考え始めると逆に「いつまで出るんだろう?」ということが気になってくることも。母乳は普通、いつまで出るものなのでしょうか。

授乳しているうちは出続ける

母乳は、「赤ちゃんに授乳を続けているうち」は基本的に出続けます。赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激で「プロラクチン」というホルモンが分泌されるからです。

プロラクチンは母乳の分泌を促すなどするホルモンです。妊娠中には増え続け、乳房を発達させる働きもあります。出産するとプロラクチンの分泌量は急激に減りますが、産後は赤ちゃんが乳首を吸うたびに分泌量が急増します。それによって、母乳がつくられるのです。

母乳が減るのは授乳回数が減ったとき

ですから、赤ちゃんが乳首を吸う回数が減ると母乳の量は減ってきます

なお、母乳は産後3、4ヶ月で平均800mL/日くらいの分泌量になりますが、授乳回数が減らない場合、この量が出続けるようです[*1]。

ずっとあげていると母乳の栄養は減っていく?

胸に手を置く女性

もうひとつ気になるのが、授乳を続けているうちに「母乳の栄養は減ってくる?」ということではないでしょうか。

あまり変わらない

産後1年までの女性から採取した母乳を時期ごとに分析した研究では、母乳に含まれる成分(糖分、脂質、たんぱく質、ミネラルなど)は、授乳期間が長くなってもそれほど変わらなかったという結果が出ています。

たんぱく質は産後半年で15~35%減少するものの、その後の減りはごくわずか、糖分は10ヶ月以降はむしろ増加しましたが、脂肪とエネルギー量は産後の時期による違いはほとんどなかったそうです[*1]。

”もう栄養がないからあげなくて良い”は「間違い」

赤ちゃんが大きくなってくると、「もうおっぱいが薄くなっていそうだから止めていいのでは」などと言われることがあるかもしれませんが、そういわれても気にしないで大丈夫。

卒乳するかどうか決めるとき、一番大切なのは「赤ちゃんの成長とママの気持ち」です。ママが続けたいと思うなら、気にせず母乳を与え続けて良いのです。

卒乳するかどうか悩んでいる人は、下記の記事も参照してください。

母乳はいつまで出ていた?<体験談>

赤ちゃんがおっぱいを吸ううちは、母乳は出続けます。ですから、基本的に卒乳や断乳を境に量が減ったり、出なくなってくることが多いわけですが、先輩ママが卒乳・断乳した時期はいつごろが多いのでしょうか。アンケート調査で聞いてみました。

いつまで母乳をあげていたか<アンケート結果>

先輩ママへのアンケートで、「母乳メイン」「母乳・ミルク混合」と回答した人たちがいつ卒乳・断乳したかを調べたところ、もっとも多かったのは「1歳前半」で45%を占めていました。

母乳の場合の卒乳時期のグラフ
母乳の場合の卒乳時期

母乳はどのくらいで出なくなった?<アンケート結果>

また、卒乳・断乳したあと、だいたいどれくらいで母乳がまったく出なくなったかも聞きました。

1ヶ月間未満~1年以上後までと幅広い回答が集まりましたが、最多は「2~3ヶ月後」で33%でした。

卒乳・断乳後、母乳がまったく出なくなった時期のグラフ
卒乳・断乳後、母乳がまったく出なくなった時期

卒乳後も母乳が出続けたとき、どうしましたか?<体験談>

上記のアンケート結果にもあるように、卒乳・断乳した後で母乳がまったく出なくなるまで比較的時間のかかった人もいるようです。

そんなママたちがどう対処したのかも、一部紹介します。

※マイナビ子育て調べ  調査期間:2021年10月28日~2021年11月12日 調査人数:150人(21歳~40歳以上の女性)、有効回答数75人の回答より抜粋
※ここで紹介した方法と結果は、個人の体験によるものです。記載の方法を推奨したり、結果を保証するものではありません。

卒乳後にも母乳が出ていたらどうすればいい?

疑問のある女性のイメージ

さて、最近、卒乳したのにまだ母乳が出続けているという人も中にはいるかもしれません。これにはどんな理由が考えられるのでしょうか。

「搾乳しすぎていないか」チェック

最初に解説したとおり、母乳は赤ちゃんに乳首を吸われることが刺激となってつくられます。そのため、授乳回数が減るとつくられる量は減ります。

実は、このほかに乳房に乳汁が溜まったままになることでも母乳の量は減ります。母乳のなかには「乳汁産生抑制因子(FIL)」というたんぱく質が含まれていて、乳汁が長時間乳房に溜まるとその濃度が上がり、母乳の産生が抑えられるからです。

卒乳するときに乳房の張りや痛みが出た時は、いわゆる「圧抜き」といって搾乳しますよね。

これは、乳房に乳汁が溜まり過ぎることで起こる「乳腺炎」の予防や対処として必要なことですが、このとき搾乳しすぎてしまうと、母乳の産生が続くこともあります。

卒乳時の圧抜きは、「少し軽くなったら、止める」とお伝えしています。

ただ、軽くなるといっても、人それぞれ捉え方が違うので難しいところ。「張りがひいたらやめる」と考えても良いと思います!

卒乳時の搾乳は、あまり搾りすぎないことが大切なのです。くわしい方法と注意点については、下記の記事を参照してください。

卒乳後も母乳が出続けている|注意が必要な場合

ここまでで解説したように、母乳を卒乳・断乳しても乳汁の産生はすぐに止まるわけではありません。

赤ちゃんへの授乳や搾乳を止めたあとしばらく出続けていてもほとんどの場合は問題ありませんが、まれに下記のような病気が原因で母乳が出続けることもあります。

高プロラクチン血症

授乳期に母乳が分泌されているのは普通のことですが、産後に授乳をやめたのに母乳の分泌が長く続く場合はまれに、病的にプロラクチンの分泌量が増える「高プロラクチン血症」が原因になっていることがあります。

出続ける母乳の量は「自覚するほどもれ出る」場合もあれば、「搾るとにじむ程度」までさまざまですが、「生理が再開しない」という症状もあります。この場合、プロラクチンの分泌を抑える薬などで治療することがあります。

乳がんなどの腫瘍

乳房にできた腫瘍が原因で、乳首から分泌物が見られることもあります。この場合の原因は、通常、乳管にできる良性の腫瘍ですが、悪性腫瘍(がん)が原因のこともあります。

乳がんは女性がかかるがんの中でもっとも多く、年々かかる人は増えています。下記に当てはまるものがある人は、なるべく早く受診して検査を受けるようにしてください[*2]。

・乳首をつまむなど、刺激していないときでも分泌物が出る
・40歳以上の女性
・片側の乳房からだけ分泌物が出る
・分泌物に血が混じっている、またはピンク色・茶色をしている
・しこりを伴う
・乳房にえくぼのようなくぼみがある

まとめ

赤ちゃんにキスするママ

「母乳はいったいいつまで出るものなのか」「与え続けているうちに栄養は減らないか」「卒乳したのに母乳が出続けている場合の対処法」などについて解説しました。

中にはいつ卒乳したらいいかわからず、「もしかして栄養が減っていくなら、早く卒乳すべきなの?」と悩んでいるママもいるかもしれません。でも、ここで解説したとおり、出産から時間が経ったとしても母乳の栄養はあまり変わりません。

また、赤ちゃんがよく飲んでいるうちは、量も基本的に減らないはずです。卒乳のタイミングは、母乳の栄養や量が続くかどうかではなく、おもに「離乳食で十分栄養が摂れているか」「赤ちゃんがおっぱいをまだ欲しがっているか」「ママは授乳を続けたいと思っているか」に注目して考えます。

授乳は負担の大きいお世話ではありますが、卒乳する日はどんな子にも必ず来るものです。その日が来るまでは、母子の幸せな時間として、ぜひ楽しんでくださいね。

(文:坂田陽子先生/構成:マイナビ子育て編集部)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]森戸やすみ:小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK, メタモル出版, 2015
[*2]MSDマニュアル:乳頭からの分泌物

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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