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2022年07月14日 09:48 更新

【医師監修】赤ちゃんの予防接種は副反応が不安……熱や下痢があったときの対処法

おもに2歳までの間に、たくさん打つことになる赤ちゃんの時期の予防接種。副反応が起きないか不安になるのも当然です。ただ、予防接種は子供の時期だけでなく、大人になってからの感染症予防のためにも大切なもの。受ける前後の注意点や接種後に症状が出たときの対処法を知っておき、適切な時期に受けるようにしましょう。

赤ちゃんの予防接種はなぜ大切?

予防接種を受ける赤ちゃん
Lazy dummy

「予防接種」とは、ワクチンを接種すること。「ワクチン」は病原体の毒性を弱めるか、無毒化したものです。一度感染症にかかると、二度とかからないか、二度目は症状が軽くてすむ、といわれていますね。それは体に「免疫がつく=抗体ができる」ためです。

「免疫」は体が病原体と闘う仕組みのこと。生まれながらにもっている「自然免疫」、母親から胎盤や母乳を通して受け取る「受動免疫」、病気を経験したときに自分で抗体をつくる「獲得免疫」があります。

ワクチンを打つと、「獲得免疫」が得られます。予防接種をし、ワクチンに対する抗体を作っておけば、後にその病原体が入ってきても速やかに体が守られて、病気にかからないか、かかっても軽い症状で終わることになります。

感染症にかかることでも抗体は作られますが、この場合、その感染症によりおもに起こる症状のほかにも、まれにではありますが、いろいろな合併症を起こす危険があります(おたふく風邪による難聴、麻疹による脳炎など)。また、自分が病気にかかることで、周囲に病気を拡げてしまうこともあります。ワクチンで予防できる病気は、予防接種を受けてかからないようにするのが一番なのです。

予防接種は受けた人個人をその感染症から守るだけではありません。たくさんの人が予防接種を受けることで感染症が増えにくい社会を作ることになり、健康上の理由から予防接種を受けられない人や、新生児などまだ予防接種を受けていない子供を感染症から守ることができます(集団免疫)。感染する人を減らすことで、医療費を抑えることにもつながります。

実際に、ポリオやジフテリアは予防接種を受けられるようになったことで、現在の日本では流行しなくなりました。ところが、たとえばポリオは、南西アジアやアフリカのいくつかの国で今も流行しています。 ポリオウイルスに感染しても症状が出ない場合が多く、感染したことに気が付かないまま帰国して感染が広がる可能性があります[*3]。

予防接種の大切さはわかっていても、赤ちゃんに何か起きないか不安に思う人も多いでしょう。そんなとき、不安な気持ちをそのままにしていると、予防接種のあとに起こる些細なことでも、副反応ではないか? と心配になってしまいます。

そこで、予防接種を受ける際に、どんなことに注意して観察すればいいのか確認しておくのがおすすめです。なるべく具体的に、熱が出やすいワクチンの場合は何日様子を見ていいのか、どうなったら受診すればいいのか聞いておけば、落ち着いて対処できるようになります。

予防接種の種類について

予防接種は大きく「定期接種」と「任意接種」に分けられます。

定期接種と任意接種の違い

定期接種は、法律に基づいて市区町村が実施する予防接種。接種費用は公費のため、受けるときに費用が必要になることはありません(一部で自己負担もあります)。

任意接種は、接種するかどうかを保護者が任意で決める予防接種。費用は自己負担ですが、自治体によっては助成金が出ることもあります。

定期接種と任意接種は単に制度上の扱いが異なるだけで、ともに重要な予防接種です。任意接種から定期接種へ変更されたものもあります。任意接種は費用負担がありますが、ワクチンで予防できる病気を防ぐために積極的に受けるようにしましょう。

生ワクチンと不活性ワクチンの違い

ワクチンには「生ワクチン」と「不活化ワクチン」があります。

生ワクチンは病原微生物を弱毒化したもの。そのため、自然にかかったのと同じくらい強い抗体がつきます。ごくごくまれにその病気にかかった場合と同じような軽い症状が出ることがあります。また、免疫の病気がある場合に受けられないことがあります。

不活化ワクチンは、病原微生物の感染力をなくしたもの。生ワクチンのように、その病気にかかったときのような症状が出ることはありませんが、自然感染や生ワクチンを接種したときほど強い抗体がつかない(一度上がった抗体価がより早く下がってくる)ので、追加接種が必要になります。

国内で接種可能な定期予防接種[*4]

生ワクチン
■ ロタウイルス:1価,5価(※)
■ BCG
■ 麻疹・風疹混合 (MR)
■ 麻 疹 (はしか)
■ 風 疹
■ 水 痘
※ロタウイルスワクチンは、2020年10月1日から定期接種になりました(2020年8月以降生まれの乳児が対象)

不活化ワクチン・トキソイド
■ 百日咳・ジフテリア・破傷風・不活化ポリオ混合 (DPT-IPV)
■ 百日咳・ジフテリア・破傷風混合 (DPT)
■ ポリオ (IPV)
■ ジフテリア・破傷風混合トキソイド (DT)
■ 日本脳炎
■ 肺炎球菌 (13価結合型)
■ インフルエンザ菌b型 (Hib)
■ B型肝炎
■ ヒトパピローマウイルス (HPV):2価,4価
■ インフルエンザ
■ 肺炎球菌 (23価莢膜ポリサッカライド)

国内で接種可能な任意予防接種[*4]

生ワクチン
■ 流行性耳下腺炎 (おたふくかぜ)
■ 黄熱
■ 帯状疱疹(水痘ワクチンを使用)

不活化ワクチン・トキソイド
■ 破傷風トキソイド
■ 成人用ジフテリアトキソイド
■ A型肝炎
■ 狂犬病
■ 髄膜炎菌:4価
・ 帯状疱疹
※定期接種を対象年齢以外で受ける場合

予防接種を受ける前と後に注意すること

予防接種の注射のイメージ
Lazy dummy

予防接種の前後に注意することを確認しておきましょう。

予防接種を受ける前に気をつけたいこと

事前に接種するワクチンの説明を読み、わからないことは医師に質問して、メリットとデメリット(副反応)についてよく理解して受けるようにしましょう。必ず体調が良いときに受けてください。軽い病気や体調不良などで迷う場合は医師に相談を。

予防接種を受けることができない場合

以下に該当する場合は予防接種を受けることができません。
なお、発熱の場合は、基本的には治ってから1〜2週間後、風疹、水痘、おたふく風邪では治ってから2〜4週間、麻疹では4週間程度間隔をあけて受けるようにします[*1]。

・発熱(通常37.5℃以上)している
・重い急性の病気にかかっている
・接種予定のワクチンに含まれる成分でアナフィラキシーを起こしたことがある
・BCGやその他の予防接種、外傷などによるケロイドがある
・免疫不全症の場合の生ワクチン接種
・B型肝炎の予防接種で、母子感染予防として出生後にB型肝炎ワクチンの接種を受けた場合
・上記以外の理由で医師が不適当と判断した場合

予防接種前に相談が必要な場合

以下に該当するときは前もってかかりつけ医を受診し、予防接種を受けていいか確認しておきましょう。

・予防接種を受けて2日以内に発熱や発疹、じんましんなどアレルギーと思われる異常がみられた
・熱性けいれんやてんかんを起こしたことがある
・川崎病などの治療で免疫グロブリン製剤を投与したことがある
・過去に免疫不全と診断されている、近親者に先天性免疫不全症の方がいる
・ワクチンの製造過程で使う卵の成分、抗菌薬(抗生物質)、安定剤などにアレルギーがある
・ラテックス過敏症、ラテックスと交叉反応のある果物など(バナナ、栗、キウイフルーツ、アボカド、メロンなど)にアレルギーがある
・BCG接種の場合は、家族に患者がいたなどして過去に結核に感染している疑いがある子供
・慢性疾患で治療を受けている[*2]

接種後の注意点は?

予防接種を受けたあと、約30分間は医療機関で様子を見るか、医師とすぐに連絡をとれるようにしましょう。まれに接種直後に急な副反応が起きることがあり、その際にすぐに対応できるようにするためです。

また、ワクチンを接種したあとに気になる症状が出た場合は、接種した医療機関の医師の診察を受けましょう。後述の対処法も参考にしてください。

予防接種を受けた当日は、はげしい運動は避けて接種部位を清潔に保ちます。当日から入浴してかまいませんが、接種部位をこすらないようにしましょう。

副反応って何?

予防接種を受ける赤ちゃん
Lazy dummy

予防接種で心配な副反応とは、どんなものなのでしょうか。

副反応とは?

予防接種は感染症に対する免疫を作るために受けるものですが、免疫ができる以外に、発熱や注射部位のはれなどが起こることがあります。このような目的とは異なる反応が「副反応」です。

予防接種の副反応のほとんどは軽い発熱や注射部位の発赤、はれ、しこり、発疹で、数日で治ります。ワクチンの種類によって異なりますが、これらは数%〜数10%の頻度で起こるとされています。まれに起こる重い副反応には、アナフィラキシー、急性脳炎、急性脳症、けいれん、急性散在性脳脊髄炎、ギランバレー症候群などがあります。

副反応の症状や発生する割合はワクチンの種類によって異なるので、接種前にワクチンの説明を見て確認しておきましょう。たとえば水痘ワクチンは、健康な子供が接種した場合、ほとんど副反応が起こらないといわれています。一方、肺炎球菌のワクチンでは注射した場所が赤くなったり、はれたりすることが約70%に見られるといわれています[*1]。

副反応と副作用の違いは?

病気を治療するための薬の主な働きを「主作用」といい、この主作用とは異なる作用や、体に良くない作用が「副作用」です。

ワクチンの場合、「主作用」は、ワクチン接種によって体に免疫反応が起こり、その病気に対して免疫がつくことです。ワクチン接種時に発生することがある、主作用以外の反応(発熱、はれ、重ければ脳炎・脳症など)については、医薬品による副作用とは分けて「副反応」という用語が主に用いられています。

定期接種と任意接種の救済制度の違い

まれなことではありますが、副反応によって健康被害があった場合、定期接種には「予防接種」法に基づく救済制度、任意接種には「医薬品医療機器総合機構」による救済制度が適用されます。

定期接種の副反応で健康被害(入院相当の治療が必要になった、生活に支障が出る障がいが残ったなど)にあった場合、「予防接種法」に基づく給付を受けられます。国の審査会で審議したうえで、予防接種によるものと認められた場合に、被害の程度に応じて法律で定められた金額が支給されます[*2]。

任意接種による健康被害の救済制度となる「医薬品副作用被害救済制度」は、医薬品などによって健康被害を受けた場合の公的な救済制度です[*3]。この場合は、医薬品医療機器総合機構に請求を行います。

接種後に熱や下痢があったらどうすればいいの?

予防接種後に発熱や下痢がみられる赤ちゃん
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予防接種を受けたあとに副反応が起こることもありますが、予防接種とは関係なく、偶然その時期に別の病気を発症することもあります。

接種直後のアナフィラキシーや接種部位の反応以外の症状(発熱や下痢など)は、それが副反応なのか、ほかの病気によるものか見分けるのは難しいものです。

予防接種後に発熱や下痢が出たときは、別の病気の可能性も考えて、下記のように対処しましょう。

接種後に発熱したときの対処法

予防接種の当日や翌日以降に発熱の目安の37.5℃以上になった場合でも、すぐに病院に行く必要はありません。元気があり授乳ができていれば様子を見ていいでしょう。

とくに、小児肺炎球菌ワクチンは接種した当日か翌日、麻疹ワクチンは1週間後くらいに発熱しやすいといわれていますが、ほとんどが38℃前後で半日から1日程度で解熱します[*4]。

脱水症状対策を

発熱したら、脱水症状を起こさないようこまめに水分を補給しましょう。

受診の目安

副反応による発熱はほとんどが1〜2日で治ります。それ以上熱が続くようであれば受診しましょう。熱があっても、元気があり、水分がとれているようであれば、あわてる必要はありません。発熱以外の症状(咳や鼻水、嘔吐、下痢など)を伴うときも受診するようにしてください。

接種後に下痢になった場合の対処法

ロタウイルスの予防接種後に、5%未満の割合で嘔吐や下痢が見られますが、軽いもので治療が必要となることはありません。通常の嘔吐、下痢と同じように対処しましょう。

ロタウイルスの予防接種で注意したいことに、数万接種に1例程度ではありますが、「腸重積症」の発生が多くなることがあります。特に1回目の接種のあと7日以内での発生が多くなっています。

「腸重積」とは腸のなかに腸がはまり込んでしまうことで、機嫌が悪い、ひどく泣く、嘔吐、おなかが膨れる、血便といった症状が出ます。こうした症状がみられたら、すぐに受診しましょう[*1]。

また、ロタウイルスの予防接種後は、1週間ほどウイルスが便中に排泄されます。このウイルスから胃腸炎に感染する可能性は低いとされていますが、念のためオムツ交換の際はよく手を洗うなどして注意してください。

水分補給をこまめに

熱がある場合と同様に、下痢をしている間はこまめに水分を摂らせて脱水症を予防しましょう。

受診の目安

ロタウイルスワクチンの接種後、何度も嘔吐する、一定の間隔をおいて泣く、便がイチゴジャム状に赤い(粘血便)などの症状があったら、腸重積の可能性があるので、時間外であってもすぐに受診してください。腸重積は早期に発見し、治療を開始すれば治りやすいとされています。

「下痢に関しては、回数が少なくて機嫌が良ければ4~5日様子を見ても良いでしょう」(梁先生)

接種部位がはれたときの対処法

ワクチンの種類にもよりますが、接種部位のはれやしこり、発疹はよく起こるものです。通常は何もしなくても数日で治まるので治療の必要はありません。4種混合ワクチンやインフルエンザワクチンはとくにはれやすいとされています。

刺激を与えないことが大切

はれたり固くなったとき、その場所を揉んだり触ったりすると、悪化させることがあります。あまり触らないようにしましょう。

受診の目安

はれが強く、肘を超えてはれてきたときは受診してください。

まとめ

ママに抱っこされる子供
Lazy dummy

予防接種の副反応はワクチンの種類によって異なるもの。どんな症状に注意が必要なのか接種前に確認しておきましょう。もし発熱、はれ、下痢などの副反応が出ても、多くは自然に軽快するので症状が軽ければ様子を見て大丈夫。とはいえ、予防接種とは関係ない別の病気が原因で副反応と似た症状が出ることもあるので、その可能性も考えて心配なことがあれば予防接種を受けた医療機関を受診するようにしましょう。

(文:佐藤華奈子/監修:梁尚弘先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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