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2021年10月04日 10:23 更新

ピジョン、低体重で生まれた赤ちゃんを救う「日本橋 母乳バンク」開設1周年イベントを開催 -- 普及に向けさらに支援活動を

ピジョンは9月29日に、「日本橋 母乳バンク」の開設1周年を記念したイベントを本社にて開催しました。同社では一般社団法人 日本母乳バンク協会の活動に賛同し、2020年からゴールドスポンサーとして支援を開始しています。

母乳バンクって何?

母乳を必要とする早産・極低出生体重児(出生体重1,500g未満の赤ちゃん)が自分の母親から母乳を得られない場合、医療機関からの要請に応じ、寄付された母乳を処理した「ドナーミルク」を提供する施設が「母乳バンク」です。施設では、国際的な運用基準に基づき、母乳の検査や低温殺菌処理を行い、安全に保管、保存することが求められます。また、ドナーミルクは赤ちゃんの医学的な必要性に応じて利用すべきという考えに基づき、無償で提供されています。

母乳バンクでは、母乳バンクの仕組みについて動画でわかりやすく説明しています。

ドナーミルクの正しい知識と理解が母乳バンクの普及に不可欠

「日本橋 母乳バンク」開設1周年イベントの様子
ピジョン株式会社 代表取締役社長 北澤 憲政

イベントでは、同社の北澤代表取締役社長が主催の挨拶を行い「母乳バンク開設1周年への想い」を語りました。2018年にブラジルの母乳バンクを訪れた北澤社長は、早産で小さな赤ちゃんにとって母乳は重要な薬と再認識し、日本での母乳バンクの支援を開始したとのことです。日本で2拠点目となる「日本橋母乳バンク」が1周年を迎え、低体重で生まれた赤ちゃんがドナーミルクですくすくと成長している姿を目にし、今後も継続的な普及活動を支援していくと語りました。

一般社団法人 日本母乳バンク協会 代表理事 水野 克己先生

次に、日本母乳バンク協会 代表理事の水野先生より「日本橋 母乳バンク開設後の実績」についての話がありました。母乳バンクの持つ、「お母さんの母乳が出ない場合に、赤ちゃんに母乳を提供すること」、「1,500g未満の極低出生体重の赤ちゃんが障がいなく元気に育つことを実現すること」、「小さな命をみんなで助ける社会の実現すること」という3つのミッションについて語られました。

ドナーミルクを使っている病院数は2019年から順調に増加。ドナーミルクを使用した赤ちゃんも2019年から倍々で増え、本年度は昨年の2倍以上であるおよそ500人に提供できることを見込んでいるそうです。そのためには、より多くのドナーが必要ですが、コロナ禍の影響から遠方のドナー検診施設を訪れることが難しいという現状もあり、ドナー検診施設を増やすことが喫緊の課題であると語りました。

公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院 小児科 未熟児・新生児部門 部長 水本 洋先生

また、現場の医師である北野病院小児科未熟児・新生児部門部長 水本 洋先生からは、ドナーミルクの提供した実際の症例が紹介されて、ドナーミルクの必要性を説明されました。

さらにトークセッションには、水野先生とドナーミルクを使用しためいちゃんとパパがオンラインで参加しました。めいちゃんのパパは「当時、母乳バンクの存在をまったく知らず、ドナーミルクの話を最初に先生から聞いた時は戸惑いや抵抗感が強くありましたが、今、子どもが元気にすくすく育っているのはドナーミルクのおかげだと思っています。これからママやパパになる方には、ドナーミルクがどんなものなのか、そして小さく生まれた赤ちゃんにとって母乳がどれだけ有効なのかを正しく理解いただき、お子さんにとってベストな選択をして欲しいと思います」と語りました。

ドナーミルクを使用して成長しためいちゃんと、パパ

母乳・ドナーミルクはなぜ必要なのか

母乳には、赤ちゃんにとって必要な栄養素がバランスよく、消化しやすい形で含まれており 「最適な栄養食」と言われます。さまざまな感染症、病気にかかるリスクが高い早産児において、母乳には赤ちゃんの生死にかかわる壊死性腸炎(腸の一部が壊死する病気)に罹患するリスクを、人工乳のおよそ1/3に低下させる効果があります[*1]。早産児がかかりやすい未熟児網膜症や慢性肺疾患などの予防に役立つ物質が含まれている[*2・3]ほかに、長期的な神経発達予後を改善する効果についてのエビデンスも出てきています[*4・5]。しかし、母親が必要量の母乳を与えられないこともあります。そのような場合に、ドナーミルクを提供して早産の赤ちゃんの疾患の罹患率と重症度を低下させ、長期的予後の改善を図ります。

母乳バンク認知の現状ーー2021年母乳バンクに関する意識調査結果

同社では、現在妊娠している女性(プレママ)、現在3歳未満のお子さんがいる女性(ママ)合計516名に「母乳バンクに関する意識調査」を行いました。調査結果によれば、「母乳バンクの言葉も内容も知っている」と答えたのは20.2%で、前年の13.6%から7ポイント増加。「言葉を聞いたことがある」を含めると65%を超え、認知は広がっていました。

「どんな赤ちゃんを対象に、どんな場合にドナーミルクが必要となるか」という質問に対しては、「よく知っていた」と「なんとなく知っていた」と回答した人が半数を占めましたが、よく知っていると答えた人は約12%にとどまっていることから、プレママやママに母乳バンクを正しく理解してもらう必要があることが明らかになりました。

しかし、「もしご自身の赤ちゃんが1,500g未満で生まれ、医師からドナーミルクが必要と判断され利用することになった場合、あなたはどのように思いますか?」という質問に対して、自分の子どもにドナーミルクを与えることに「抵抗がない」と回答した人は36.6%、「抵抗がある」と回答した人は57.6%でした。

抵抗感を感じてしまう理由については、「自分以外の母乳を与えることに抵抗があるから」が31.5%、「ドナーミルクに安全上の不安があるから」が30.2%という結果でした。

一方で、「母乳バンクの寄付をしてみたいと思いますか?」という質問には、「寄付してみたい」、「どちらかといえば寄付してみたい」と思うプレママ・ママが合わせて64.7%でした。自分以外の母乳を自分の子どもに与えるのには抵抗があるものの、ママ同士助け合いたいという気持ちを感じられる結果でした。

ピジョンの支援活動

同社では、より多くの方に、より深く正しく母乳バンクを理解いただくための普及啓発活動に取り組んでいます。今回のイベントのほかにも、ドナーミルクを使用した家族の声を聴く座談会を開催し、ドナーミルクへの抵抗感を減らすための情報発信をしていきます。さらに、ドナーの安定的確保のために主要都市におけるドナー検診施設を順次増やす支援といった包括的なサポート活動を拡充していきます。

ピジョン
https://www.pigeon.co.jp/

(マイナビ子育て編集部)

[*1]Quigley MA. Henderson G. Anthony MY. et al. Formula milk versus donor breast milk for feeding preterm or low birth weight infants. Cochrane Database Syst Rev. 2007; (4):CD002971.
[*2]Patel AL et al. Influence of own mother's milk on bronchopulmonary dysplasia and costs. Arch Dis Child Fetal Neonat Ed. 2017;102(3):F256-F261.
[*3]Zhou J et al. Human milk feeding as a protective factor for retinopathy of prematurity: a meta-analysis. Pediatrics. 2015;136(6):e1576-1586.
[*4]Lewandowski AJ et al. Breast milk consumption in preterm neonates and cardiac shape in adulthood. Pediatrics. 2016;138(1):pii:e20160050.
[*5]Vohr BR et al. Beneficial effects of breast milk in the neonatal intensive care unit on the developmental outcome of extremely low birth weight infants at 18 months of age. Pediatrics. 2006;118(1):e115-123.
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