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2022年04月14日 15:56 更新

【医師監修】産後うつは二人目の妊娠・出産でも気を付けて! 症状の特徴と対処法

「産後うつ病」という言葉はよく知られるようになってきましたが、何事にも気を張っている初産の時と比べて、二人目ではそれほど不安に思わないかもしれません。ただ、二人目の妊娠・出産でも、産後うつ病には注意が必要です。どんな病気なのか、産後うつ病かもしれないと思ったらどうすれば良いのかなどを説明します。

産後うつ病ってどんなもの?

赤ちゃんを抱く女性のイメージ
Lazy dummy

産後うつ病はどんな病気なのか、その特徴を紹介します。

10人に1人以上!産後によくおこるメンタルの病気

うつ病は誰にでも起こるメンタルの病気。とくに女性は男性の2倍うつ病にかかりやすく、女性では「およそ12人に1人」が一生に一度はかかるといわれています[*1]。

中でも、妊娠中から産後は特にうつ病になりやすい時期です。産後うつ病はおよそ10人に1人がかかる[*2]とされていますが、これは診断された人の割合。国内のあるアンケート調査では、産後の女性の約8割が「産後うつ病一歩手前」だったと回答したという結果もあります[*3]。

産後うつ病は治療が必要

産後に起こるメンタルの不調では「マタニティブルーズ」も知られています。これは妊娠中に増えたホルモンの分泌量が産後一気に低下することや、心身の疲れ、環境の変化によって起こる生理的な反応と考えられており、涙が出て止まらなくなったり、理由もなくイライラしたりと精神的に不安定になります。

マタニティブルーズと産後うつ病の違い

マタニティブルーズは産後3~10日で発症する一過性の軽い抑うつ状態で、通常2週間以内に治まります[*4]。発症後数時間~2日ほどで自然によくなることが多く、この場合、治療は不要とされています[*5]。

一方、産後うつ病は放置して重症化すると自殺につながるリスクもあり、治療が必要な病気です。産後数ヶ月間は発症する可能性がありますが、とくに産後1ヶ月以内の発症が多いとされています[*4]。マタニティブルーズの症状が2週間以上続き、産後うつ病につながるケースもあります[*5]。

二人目出産後もなるの? 産後うつ病の原因は?

赤ちゃんと幼児の兄弟と父母

二人目の出産後でも、産後うつ病のリスクはあります。産後うつ病の原因は実はよくわかっていませんが、妊娠中から産後にかけての次のような状況が関わっていると考えられます。

1. 妊娠・出産による急激な変化

妊娠・出産によって女性の体はさまざまな影響を受けます。特に女性ホルモンのバランスが大きく変わることで、脳のストレスに耐える力が低下すると、メンタルの不調を起こしやすくなります。

2. 大きなストレス

産後うつ病の発症には、夫婦関係や経済的な問題、パートナー含め家族のサポート不足などから来るストレスも関係していると言われています。

二人目の場合は、育児による負荷が一人の時より増えることも関係してくるでしょう。二人目でも新生児のお世話が大変なことはあまり変わりませんし、子どもはそれぞれ違うので上の子で経験しなかった問題に直面することも。加えて上の子の面倒もママが主体になってみていれば、誰でもキャパシティをオーバーしてしまう可能性があります。上の子と年齢が近い場合は、なおさら育児は大変でしょう。

ほかにも、マタニティブルーズ、妊娠前や妊娠中のうつ病、産後うつ病にかかったことがある、うつ病の家族歴なども、産後うつ病に関係していたり、リスクを上げる場合があるとされています。くわしくはこのあと「産後うつ病になりやすい人の特徴」でも紹介します。

産後うつ病の症状は? なりやすい人って?

出産直後のママ
Lazy dummy

産後うつ病は普通のうつ病と違うのか、またなりやすい人の特徴を確認しておきましょう。

産後うつ病はうつ病の一種

産後うつ病は出産した女性に起こるうつ病のこと。症状はこの時期以外に起こるうつ病と大きく変わることはありません。

産後うつ病の症状例(10項目)

産後うつ病ではおもに次のような症状が見られます。

・気分が落ち込む
・イライラする
・疲れやすい
・食欲がない/気を紛らわせるために食べ過ぎる
・性欲がない
・不眠(寝つきが悪い、眠りが浅い)
・楽しいことを楽しいと感じない
・何にも興味を持てない
・否定的な考え方をする
・不安が強い

ひとつひとつは産後に限らず誰にでも起こりうることですが、こうした症状のうちのいくつかが産後に2週間以上続いたら、産後うつ病が疑われます。また悪化すると絶望的になり、「死にたい」という自殺念慮や実際に自殺しようとする自殺企図につながることがあります。

産後うつ病になりやすい人の特徴

次のようにうつ病の既往歴がある人や、家族からのサポート不足のような環境的なこともリスク要因になります。

・妊娠前、妊娠中にうつ病になったことがある
・一人目の出産で産後うつ病になった
・近親者にうつ病の人がいる
・夫婦関係や経済面で問題をかかえている
・家族のサポートが不足している
・早産や先天異常などで赤ちゃんに心配ごとがある
・計画外の妊娠で出産をためらっていた
・産後にマタニティブルーズになった

また真面目で責任感が強い人、完璧主義の人もうつ病になりやすい傾向があるため要注意です。

<体験談>産後うつ病!? ママが悩まされたメンタル不調

不安な女性のイメージ

「自分は産後うつ病ではないか」と感じたことのあるママは多いようです。具体的にどんな時そう思ったのか聞いてみました。

産後うつ病ではないかと思ったことはありますか?またどんな時に思いましたか?

実際に産後うつ病だった人も

※マイナビ子育て調べ  調査期間:2020年9月16日~2021年10月4日 調査人数:147人(21歳~40歳以上の女性)の回答から抜粋 ※ここで紹介した方法と結果は、個人の体験によるものです。記載の方法を推奨したり、結果を保証するものではありません。

自分は産後うつ病かもしれないと思ったら

具合の悪そうなママのイメージ
Lazy dummy

産後うつ病が疑われるときは専門家に助けを求めることが大切です。

早めに専門家の治療を受けるのが大事

産後うつ病を放っておくと悪化させてしまったり、何度も再発を繰り返したりする可能性があります。長期にわたって産後うつ病が続くと、その後の子育てに影響する可能性もあり、早めの対処が重要です。

産後1ヶ月や人によっては産後2週間には「産婦健診」があるので、その時に産後うつ病かもしれないと相談してみてください。もちろん不安な場合はそれより早く専門の精神科医に相談してください。

なお、産後うつ病の治療には、抗うつ薬が処方される「薬物療法」のほか、認知行動療法や対人関係療法などの「心理療法」があります。

話しづらい場合はまず電話相談も

「いきなり受診はハードルが高い」「受診の前に一度相談したい」というときは、全国のこころの相談センター(精神保健福祉センター)の無料電話相談を利用するという方法も。地域の相談センターは次の一覧から調べられます。

多くの抗うつ薬は授乳中でも服用可能

なお、もし産後うつ病と診断されたら、治療薬が母乳を通して赤ちゃんに影響しないか心配な人もいると思います。

たしかに授乳中のママが飲んだ薬の成分は母乳中に移行するので、赤ちゃんも多少摂取することになりますます。ですがその量は妊娠中に胎盤を通して伝わる場合よりずっと少ないことがわかっています。また、多くの抗うつ薬は授乳中に服用したとしても、赤ちゃんに副作用を起こす心配はほとんどないことがわかっています。

ただし、赤ちゃんの状態などによっては避けたほうが良い場合もあります。疑問や不安に思うことは医師に確認したうえで、母乳の授乳を続けたいかどうか自身の希望を伝えるようにしましょう。

診断を怖がったり恥じたりしないで

産後うつ病は産後によく見られる病気で、産後のママは誰でもなる可能性があります。産後うつ病になってもママが悪いわけではありません。診断を受けることを怖がったり恥ずかしいと思ったりせず、おかしいと感じたら専門家の手を積極的に借りるようにしてください。

ママが産後うつ病かもしれないとき、家族がすべきこと

赤ちゃんを抱っこするパパ

「産後は誰でもつらい」「気持ちが不安定になって当たり前」という考えから、産後うつ病が見逃されてしまい、治療を受けられないままになっていることもあります。家族はママの異変を見逃さず、産後うつ病かもしれないと思ったら次のように対処してください。

途中で遮らないで「とにかく話を聞く」

うつ病のママは「がんばりたいけれど、がんばれない」と悩んでいます。「がんばって」など励ましの言葉は追い詰めてしまい逆効果に。本人が話しだしたら決して遮らず、まずは話をよく聞いてください。

また、良くなることを伝えて安心させ、必要な治療を受けることを勧めてください。なお、決断を迫ることは避けてください。育児や家事の日常のことでも、できるだけこちらから提案して、考えることや決断を迫ることは避けましょう。

育児・家事を負担して

「休養すること」も産後うつ病の治療のひとつです。責任感が強くまじめなママは、病状が悪くても無理をして育児や家事をしてしまうことも。できるだけ周囲の家族で負担して、本人を休ませるようにしてください。

父親も産後うつ病になる|一人で無理は禁物

ママの産後うつ病は知られるようになりましたが、実はパパもまた産後はうつ病になりやすい傾向があることがわかってきました。ママが抑うつ状態だと、パパも影響を受けてうつ傾向になりやすくなることもわかっています。

ですから、ママを支えようとパパ一人で頑張りすぎるのも禁物。家庭だけで抱え込むのではなく、地域の家事代行サービスや育児支援なども利用して二人の負担を減らしましょう。また困ったときは自治体の相談窓口を利用することも検討を。

まとめ

出産直後の家族のイメージ
Lazy dummy

産後うつ病は出産したら誰でもかかる可能性がある身近な病気で、二人目でもリスクがあります。メンタルの不調は早めの対処が大切。「何とかなる」と抱え込まずに誰かに相談し、必要な場合は治療も受けて心の健康を取り戻しましょう。

(文:佐藤華奈子/監修:直林奈月 先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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